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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第四章:ギルド編

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75頁:尾行には注意しましょう

『忍術スキル』

 忍法を使うスキル。

 汎用型スキルで、移動、回避、隠密活動などに向いている。回避に失敗したときのダメージは痛いが、敵に察知されずに接近して懐に潜り込んで繰り出す一撃は相手にとって手痛い一撃になり得る。

 また、手裏剣などの投擲技も多いので、遠巻きに攻撃しながら相手の戦い方を見極める偵察戦もできる。

 ホタルがライトに仕え始めて二日目の夜。

 ライトとスカイはホタルについてメールを交わした。


『蛍はかなり広い情報網を持ってるし、噂話とかに関しては特に詳しい。そんな蛍が「泥棒狐」の「犯罪者だけを狙う」って噂を知らないわけないんだ。それを敢えて言わなかった……自分のことだから謙遜したんだろうな』


『日本人の習性よね。まあ、それ以上にライトの「目を見れば嘘が分かる」って能力を知らなかったのが残念だったわね。ライトが聞いたとき、真面目に真正面から目を見て答えてたし』


 ライトには人の嘘が分かる。

 顔筋……特に眼球の動きで嘘を見抜くことが出来る。ライトが幼いときから持っていた、今のライトの能力の起点となった特技だ。


 今のライトは『他人の技術を人格ごと真似る』という『哲学的ゾンビ』の能力の方が目立つが、ライトの元々の特技は相手を真似ることが可能になるほどの人間観察である。


 ライトについて詳しく調べていたらしいホタルも流石にそれは知らなかったらしい。


『まあ、ホタルが何をしたいのか分からないけどな。ホタルの過去の活動を調べてもらっていいか? かなりレベルが高いが、ナビキに調べてもらったら初期の前線にはそんな名前のプレイヤーは居なかったらしいからな。オレもナビキも知らない所で力をつけたなら、それがホタルを知るの鍵になるかもしれない』


『情報料、借金に加えておくわよ』






《現在 DBO》


 ホタルがライトに仕え始めて三日目の夜。

 ライトは攻略の前線に近い町の宿に部屋を借りて武器や装備の手入れをしていた。


 ホタルと会う前にはギルド勧誘で追われていたためフィールドで『威風堂々』を使ってモンスターを遠ざけたり、安全エリアで夜明かししたり、NPCの家の馬小屋に潜んだりと逃亡犯のような生活をしていた。

 しかし、ホタルの索敵や抜け道の知識によってこうして人に追われずに宿にたどり着けるようになった。しかも、ライトが一向に捕まらないためか、ライトに対しての勧誘競争も鎮静化しつつあるようだ。


 ギルド結成のクエストは最低六人のプレイヤーがパーティーを組んで行う必要があり、さらにレベルは必要ないが少々手間と時間がかかるはずなので、もうしばらくしたらある程度決まったメンバーで本格的にギルドを作り始めるだろう。

 クエストに参加するプレイヤーはギルド結成に必要な『ギルドマスター』『サブマスター』などの資格を得て、初期のリーダーや幹部などになるので、ギルドメンバーが固まればその選考も始まって勧誘も収まるはずだ。


「オレが聞くのもなんだが、ホタルはどこかのギルドに入る気とかは無いのか? スカイもホタルの情報力は気に入ってたし、その戦闘能力なら前線の攻略系ギルドにも入れてもらえるだろうし」


「私は、ライト様が入るならどこにでもお供します」


「……悪いが、どこにも入る予定はないな。」


「ならば、私にも予定は皆無です」


 謎の忠誠心は健在だ。

 ホタルはライトに倣って自分の武器である《クナイ》や《鎖鎌》、《忍び刀》などを磨いている。


「てか、いつまでオレと一緒にいるつもりなんだ?」


「……お望みならば床の中までも」


「望まないし違う。オレが聞いてるのは期間とか目的とかの話だ。オレについてきても大した得はないぞ。働きの報酬だってスカイの方が出してくれる」


「報酬なんて必要ありません。強いて言えば、ライト様の武勇伝でも聞かせていただければ満足です。」


「『武勇伝』か……オレから聞き出したい情報があるのか?」


「…………」

 ホタルは顔を伏せて答えない。


「『言いたくないけど忠誠した相手に嘘も言いたくない』って感じか……妙な所で真面目だな」


「申し訳ございません」


「まあいい。オレは一人で寝るから、ホタルは自分の部屋で寝てくれ。夜這いとかすんなよ……振りじゃないからな!」


 やや残念そうに部屋を後にするホタルであった。





 そして、日付が変わる頃。

 町娘のような服装をしたホタルは足音を殺して自分の部屋を出る。

 ライトの部屋の前……を通り過ぎて宿の出口を目指して歩いて行く。


 そして、ホタルが通り過ぎた後にライトは扉の裏で呟いた。


「聴音スキル『サウンドセンサー』気功スキル『エナジーセンサー』……足音は小さいが、ジャックほど静かじゃないんだな」


 ライトはそっとドアを開き、足を踏み出し、声が出ているか出ていないかというレベルの小声で唱える。


「クライミングスキル『フロッグマン』軽業スキル『アクロバットマン』」


 床ではなく、壁に手をついて足音が立たないように移動していく。

 相手は隠密行動に長けた『忍者』だ。普通に追跡していてはすぐに感づかれるだろう。

 だが、ライトは臆せず進む。


 隠密スキル派生技能『気配隠匿』、『忍術スキル』と『歩行スキル』のコンボ技『忍び足』、『ペイントスキル』『闇属性魔法』『染色スキル』で作った迷彩マント、『水属性魔法』と『炎属性魔法』のコンボ技『蜃気楼』……一つ一つのスキルは低めでもここまでやってあればまずばれないだろう。


 まあ、ライトとしてはホタルにばれても咎められるようなことはないので大して問題は無いのだが……



 ホタルは宿屋のドアを開けて外に出る。

 ライトは少々遅れてドアから外に出る。


 ホタルは走って物陰に隠れ、装備を忍び装束に変える。『お色気バージョン』ではない露出の少なく締め付けの強い、『暗殺者』というような様相の忍び装束だ。ボディーラインも隠蔽されて性別もわからなくなる。そして、白い狐の仮面を付ける。

 ライトはその間に『投げ縄スキル』『綱引きスキル』『軽業スキル』で屋根の上に上がり、身を隠す。


 着替えたホタルは屋根に上り、町を駆ける。

 ライトは少し遅れながら追跡する。


 だが、ホタルは足が速い。追いかけっこを続ければライトの方が置いて行かれる。


 しかし、追いかけっこは案外すぐ終わった。

 ホタルは……『泥棒狐』は獲物を見つけたらしく、屋根の上から町を見下ろす。

 その目線の先には、一人の男。


 腰に剣を装備し、闇夜に隠れる暗色の装備に身を固めるプレイヤー。

 その目つきは悪意に満ち、明らかにモンスターではない獲物……プレイヤーを探している。

 そして、『狐』はその上から彼を見張り、さらに後ろからライトが彼女を見張る。


 男は、町の外へ向かって歩く。

 『狐』と彼女を追うライトは屋根の上から追跡する。


 そして数分後、その男が町の出口を見つけ、町の加護の無いフィールドに出る直前に心を固める瞬間……『狐』は動いた。



 屋根から飛び降りながら鎖を取り出し、落ちる勢いをそのままに男の首に鎖を引っかけてその頭を地面に叩きつけた。


「があっ!?」

「被害件数4件のフィールド強盗『ベータ』だな」


 衝撃に悶絶して動けない男の剣や防具を手早く奪い、ホタルは素早く逃げ去る。

 そして、ライトはその手口に感嘆する。


「……なるほどな、下調べした犯罪者をああやって襲ってるのか。物騒な噂が多い町を選んで正解だったな」

 あそこまで一連の行為が速ければ特徴なんて目立つ仮面くらいしか噂にならないのも無理はない。あるいは、そのために目立つ狐の面をしているのかもしれない。


「……」


 『狐』は屋根の上に上り、気配を探るように辺りを見回してしばし動きを止める。

 ライトは死角になる煙突の裏に身をひそめる。

「やば、気づかれたか……」


 三十秒ほど周囲を見回した『狐』は、気配を探るのをやめて町の外に走り出す。


「次の町へか……大したもんだな」

 あの足なら近くの町をいくつか梯子して朝には帰っているということも可能だろう。

 ライトはマップを開き、フレンドの位置を確認する機能を使用し、レンタルの馬を使って追跡することにした。





 四十分後。

 三つ目の町にて、またも『狐』は奇襲によってガラの悪いプレイヤーから武器を盗んだ。

 そして、屋根の上に上り気配を探るように周囲を見回す。


 毎回、同じ動作をしている。

 そして、三十秒ほどするとやめて次の町に行くのだ。


 しかし、今回は違った。

 まるで、『狐』が辺りを探ったのと申し合わせたように……



 角を生やした面を被ったプレイヤー……『殺人鬼』が現れた。


 黒いジャケットを着て、腕に赤く『DEATH』と染め抜かれたバンダナを巻いた殺人鬼。

 対するは、灰色の忍び装束を着た盗人。



「…………」

「……四日ぶりですか?」


 殺人鬼は……ジャックは無言でその凶器≪血に濡れた刃≫を鞘から抜き、その赤い刃を見せる。

 『狐』は……ホタルは鎖鎌を取り出し、右手に鎌、左手に分銅の付いた端を構える。


「…………」

「……わかりました」


 次の瞬間、両者が同時に奇襲を仕掛け合うかのように戦闘は始まった。

 ジャックは凶器を構えながら接近する。

 ホタルは分銅を投げ、さらに開いた手で隠し持っていたクナイや手裏剣を投げる。


 だが、ジャックはそれら全てを難なく避け、弾き落とした。

 さらに、ホタルは鎌を投げ、鎖を使って操作して当てようとするが、それも弾き飛ばされる。

 そして、ジャックが間合いに入り、ホタルは後ろに飛び去ろうとするが……ジャックの素早い攻撃はホタルの胸を切り裂いた。


「っ!!」


 『忍者』は素早いが、その代償として紙耐久だ。

 ホタルのHPは急激に減少し、ついには真っ赤に染まる。回避が少しでも遅ければ死んでいたかもしれない。


 強さの次元が違う。


 大ダメージを受けたホタルは背中を向け、一目散に、全速力で逃げる。

 ジャックも追うが……速度は若干ホタルのほうが速い。

 しかし、ジャックは懐から投擲用の毒針(アイスピック)を取り出して、投擲の体勢を取り……


「ジャック!!」


 間に飛び込んだライトに阻止された。





「前言ったよね、『正当防衛だと思って』って」

「前言ったよな、『どっちも殺させない』って」


 ライトとジャックは竹光と刃をぶつけ合いながら言葉を交わす。


「先に仕掛けてきたのはあっちだよ。ボクをあの狐が殺そうとしてきたんだ。正当防衛でしょ?」

「もう戦意なくして逃げる奴の背中に毒針を投げるのが正当防衛か? なんか違うと思うんだが」


 ジャックはライトの横を抜こうとするが、ライトはそれをさせない。

 そうしている内に、ホタルは見えなくなる。


「てゆうか、ライトはいつも口出さないでしょ? なんで今回はこんなところにいるの?」

「生憎と、あいつは知り合いだからちょっと今回は看過できないんだよ。」


 ジャックは獲物を取り逃がした以上ライトとやり合う理由は無いらしく、後ろに下がって構えを解く。


「看過してよ……あいつ、ボクを殺す気みたいだからさ。ボクは自分を守る為にもあいつを殺さないといけない」


「あいつは名は売れてても所詮泥棒だぞ? 犯罪者を狩る者同士ただバッティングしたんじゃないのか?」


「違う……この前、あいつはボクに対して明確な殺意をもって接近してきた。」


 そう言ってジャックは先ほど弾いたクナイを拾い上げる。


「ボクを殺そうとする奴を生かしておくわけにはいかない。」


 殺人鬼には自分の命を守るために他人を殺すことに躊躇いを抱かない。

 普段はその刃を秘めていても……本質的にはあの日の大量殺人の時から変わっていない。

 むしろ、吹っ切れてしまった分殺すことに抵抗がないのだ。一度や二度失敗しようと、どこまでも殺すまで諦めないだろう。


 しかし、それでもライトは呼びかける。


「なら、オレがあいつを諦めさせる。そしたらジャックも諦めてくれるか?」


「諦めさせる? あの狐が『諦めました』って言ったらボクが納得するとでも思ってるの? 一度諦めても殺意が再燃するかもしれない、ボクと戦って得た情報を不利益な相手に渡すかもしれない……そんな危険な可能性、放置すると思う?」


「あいつを殺したらオレがジャックを殺すって言ったら?」


「あいつを殺した後ライトも殺す。決まってるでしょ?」


 ジャックの声に迷いはない。

 そう、これが殺人鬼なのだ。

 殺すことについて、リスクを考えることはあっても後悔を考えることはないし罪悪感もない。


「……ジャック、オレはおまえが知らないところで犯す殺人については『しょうがない』と思ってる。オレは全知全能でもないし、知らないところで知らないときに知らない人間が殺されるのなんて止めようがないし、それを止めるために前もってジャックを殺すなんて本末転倒だからな……だが、今回は違う。あいつもジャックも、オレの手の届くところにいる。オレが鑑賞できるところにいるんだ。だから、そんな出来損ないの悲劇のシナリオなんてオレが書き換えてやる……期待してろ」


「期待しないでいるよ」






 そして、しばらくして。

 ライトはフレンドの位置確認機能で路地裏に隠れていたホタルを見つけた。


 ホタルは斬られた胸を押さえてうずくまっている。


「ホタル、どうしたんだその怪我!?」


「ラ……ライト様……不覚を取りました。夜中に勝手に外出して、しかもこんな無様な姿を見せることをお許しください」


「言ってる場合か!? それにその傷……治らないのか?」

 本来、四肢切断並みに深い傷でない限りHP保護エリアの中ではアバターへのダメージはすぐに回復するし、そうでなくとも痛みはすぐ消える。

 しかし、ホタルは未だに痛みを感じているらしく顔をゆがめる。


 回復の妨害と痛覚の継続。

 おそらく、殺すほど強くなる武器である《血に濡れた刃》に新たに加わった効果であろう。


「すぐに病院に行って傷を治そう。ここの町にはちゃんとした病院があったはずだし……」


 ライトがマップで病院の場所を探そうとするが、ホタルはその手をつかんで止める。


「待ってください……病院は押さえられているかも」


「……ならとりあえず、適当に宿の部屋借りてそこで治療しよう。詳しいことはその後で聞かせてもらうからな」


「……ごめんなさい。迷惑をおかけして……ごめんなさい」

 その声は震えていた。





 宿の部屋を借りてホタルをベットに寝かせたライトは、ストレージから鎮痛薬を取り出して飲ませる。


「とりあえず傷の治療に入りたいんだが……斬られたの胸元なんだよな」


「はい……さすがはライト様、怪我の治療も出来るとは流石……」


「そんなこと言ってる場合か。そうじゃなくて、『裸を見ることになるがいいか』って事だ。」


「!! それは少し待ってくださっ……痛っ!!」


「いつも見せていいっぽいこと言ってたのに、こんな時だけ嫌がるなよ。薬飲んでも痛むんだろ? 心配しなくてもオレは怪我人を襲うような外道じゃない。」


「しかし……準備がありまして……」


「……ホタル、服の下に何隠してるんだ? もしかして他にもやられてるんじゃないか?」


「い、いえそんな何も隠してなど……」


 ライトに嘘は通じない。

 服の下に何か……それも重大な何かを隠している。

 ライトは先に謝るように手を合わせた。


「ごめん……武器破壊スキル『アーマーブレイク』」


 ライトは斬られた忍び装束の裂け目に指をかけ、一気に引き剥がす。

 裂け目が広がり、その下に隠された胸部から腹部にかけた皮膚が露わになる。


「か……隠してて申し訳ございませんでした……」


 そこには、煙草を押しつけられたような火傷の痕がいくつもあった。ベルトで打ち付けられたような痣があった。それらは、正面より腰や側面の方がひどかった。

 おそらく、背中にはもっと……


「現実世界での傷か……悪かった」


 この手の傷は皮膚に塗りつけるクリームのようなアイテムで隠すことが出来る。だが、その効果は永続的ではないし、クリームもただではない。

 ホタルの言う『準備』とはクリームで傷を隠すことだろう。

 傷の状態を見ればそれが隠したい傷であることは想像に難くない。


「……オレはそんなもの気にしないつもりだが……ホタルは気にするよな。本当にごめん」


「いえ……悪いのは黙っていた私です。そればかりか、もしライト様が私の身体をお求めになったら小細工をして隠そうと思っていた罰が当たったのでしょう」


「それは『上手く脱がずにすませる』くらいに思ってて欲しかった……てゆうか、普通に事故で裸見ちゃうとかより数段気まずい。正直治療に戻れないんだが……自分では応急処置とか出来ないよな」


「……すいません……」

 ホタルはもう泣きそうだ。

 ライトは他にもダメージを受けてやせ我慢しているのではないかと考え、強引だが確かめようとしたのだが……完全に裏目に出てしまった。


 二人がどうしようもなく押し黙っていると、宿部屋の扉をノックする音がした。



「ライト、女の子の病人がいるって聞いたけど……大丈夫?」



 その声に、ライトは動きを止める。

 その声は、ライトのよく知る少女の声だった。



「まさか、治療とかこつけて女の子に変なことしてないよね? 女の子の治療ならボクの方がいいと思うから代わるよ。開けてくれない?」



「ライト様……」

「静かにしてくれ」



「……開けてくれないと、ドア破壊して無理矢理入るよ?」



 声色からして本気だ。扉の向こうの相手なら爆薬でも何でも使って入ってくるだろう。

 仮に窓から逃げたとして、彼女は追ってくるだろう。

 ライトは意を決して、警戒を怠らずに、しかし平常を装いながらドアを開けた。


 そこにいたのは、エプロンドレスの少女。

 あの殺人鬼(ジャック)の表の顔。


「どうも、ボクは『黒ずきん』。職業は『医師』だよ。ライトから連絡を受けてあなたを治療しに来た」








 同刻。

 ある町の酒場にて、ある男の元に一通のメールが届く。


 男はそれを開き中を読むと、表情が変わる。

 憎悪に満ちた顔で、遠くを見据える。


「ついに……この時が来た」


 男は立ち上がり、酒瓶から直接酒をあおり、飲み干して瓶を床にたたきつけて割る。


「貴様は……貴様だけは、絶対に殺す……待っていろよ」


《肌色クリーム》

 アバターの皮膚の色を一時的に変えられるクリーム。防水タイプや耐熱タイプもあるが、効果は時間経過で徐々に消えてしまうので注意。


(スカイ)「こ、こんかいは……こちら」

(イザナ)「スカイさん!? 顔色凄い悪いですよ!?」

(スカイ)「大……丈夫……ガクッ」

(イザナ)「スカイさぁぁあん!!」

(スカイ)「とまあ、今回の商品はこんな風に仮病とかもお手のもの《肌色クリーム》です~」

(イザナ)「ちょっと驚かさないで下さい。本気で心配しましたよ」

(スカイ)「あはは、ごめんごめん。こんな風に、日焼けバージョンとか病人バージョンとかいろんな色があるって御披露目したかっただけだから。なんなら、イザナちゃんもこれやってみる?」

(イザナ)「これ、何の色ですか? 真っ青っていうか、完全な青色ですけど」

(スカイ)「『銀河帝国からの侵略者バージョン』よ」

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