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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第三章:チームワーク編

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58頁:過剰防衛には注意しましょう

『弓術スキル』

 弓矢で戦うスキル。

 レベルが上昇すると矢の威力と射程、命中率が向上する。

 また、『狩人』『弓士』などの職業を得ると矢を現地調達したり、隠密行動に補正が付いたりする派生技能を習得できる。

 約一半前。

 太平洋の真ん中に浮かぶ空母にて。

「今度は私の天敵ってわけですか?」


 金色のメダルを首からぶら下げた金髪の少女は空母の甲板で空を見上げる。

 メダルと言ってもそれは欠けていて、六分の一ほど欠落している。

 『未完成』の金メダルだ。


 空には無数の無人兵器。

 その表面には『FROM FLYING DEVIL』という悪魔をイメージしたコミカルなロゴが刻まれている。


 近くの島々には同じロゴが刻まれた無人戦車や、銃火機を積んだ最新鋭のロボット達。


「無人兵器ばっかりですね……どうしましょこれ」


 いつも顔に浮かべている笑みがひきつり気味だ。


「下手したら第三次大戦が起きますよこれ……収拾つきます?」


 無人ヘリの下から機関銃がせり出す。

 狙いは明らかだ。


「ゲームスタートってわけですか!」


 少女は空母の中に走る。

 このデスゲームを生き抜くために、勝つために。



 少女がデスゲーム『THE GOLDEN TREASURE』をクリアするのは、一週間後のことだった。






《現在 DBO》


 ライトとジャック(黒ずきん)が合流する四時間前。


 ライトが見守る中、エリザは目覚めた。

 だが……


「……あれ? 友達、どこ?」

「あ、おはようエリザ。」


 エリザの顔に浮かんだの困惑だった。

 そして、それが怒りに変わる。


「友達……どこ?」

「いや、別にオレが隠してるわけじゃないよ? てか、オレが誰かわかってないのか?」


 エリザは貫くような視線でライトを見つめ、犬歯をむき出して言った。


「人間……」


 その姿は変貌する。

 思わず、ライトは呟いた。


「いやそれ、反則じゃないか?」





「知ってたなら教えてくれても良いだろう!」

「いやライトならナビキのことくらい全部把握してるかと思ってたし!」

「知るわけないだろ、てか、知ってたら教える!」


 その夜。

 ライトとジャックは近くの村の宿の一室で言い争っていた。

 その議題はもちろんエリザのことだ。


「「まさかあそこまで強いなんて思うわけないだろ(でしょ)!!」」


「……んにゃ?」


 当の本人は話に興味なさそうだ。

 というより、ライトとジャックが何に驚いているのかわからないといった感じだろう。


 それくらい、エリザは自然に力を使っていた。


 ナビキは音楽系スキルによる支援が中心。

 ナビは大鎌による力押し。

 ならば、持っているスキルは音楽系、槍•鎌系統が中心のはずであり、ジャックもライトもそれらによる戦闘を予想していた。


 しかし、エリザの戦闘法は予想を覆すものだった。



「大体ね、最初からあんな戦い方してくるってわかってたらボクだって不意を突かれたりしなかったよ。」


「オレもだよ。あんな技、プレイヤーの使える技として情報を聞いたことがない。ここは一つ、エリザにどういうスキルが聞いてみないと……」


 ライトが半ばダメ元でエリザにどんなスキルを使ったのか問おうとしたとき、エリザとジャックが突然同じ方を向いた。


 ライトも同じ方向を向いてみるが、そこには壁しか見えない。


「どうした?」


 ジャックは窓を少しだけそっと開き、ライトにも促して共に外を目視した。


「敵襲……結構殺気立ってるよ。距離150m前後……まだ村の外だね、人数は約十人。」

「敵、来る。」


 ライトは殺人鬼二人の危機察知能力にそれほど驚きはしない。というより、ある種の信頼がある。

 ライトにはよくわからない感覚だが、一度『三十人分の殺意』に曝されたジャックは殺気にかなり敏感になったらしく、その精度は高い。

 エリザはどちらかというと動物的直感に近い反応だが、これもまた妙に確実性が高い。


 つまり、ほぼ確実に夜襲をかけようとしている者達がいる。


「攻撃の『予知』……っていうより、『透視』に近いよな。しっかし、ここはまだHP保護かかってるはずだし、何したいんだ?」


「ボクが殺人鬼だってわかってるならこの程度の戦力で来るとは思えないし、奇襲にしては多すぎる。多分夜の内に宿の周りに張り込んで罠を張っておくつもりだと思う。昼間の仕返しかな?」


 殺気からそこまでわかるものなのかとライトは感心する。常に死と隣り合わせで生きているだけある。


 だが、殺人鬼に『なりたて』のエリザは違った。

 敵の気配を感じてすぐに行動を開始する。


「「あ!!」」

 気付いたときには時すでに遅し。

 エリザは窓から飛び出し、夜のフィールドに繰り出していた。




 『小枝の村』の入り口にて。

 エリザを追って宿を飛び出したライトとジャックはなんとか事が起こる前に追いつくことができた。


 しかし、戦闘が始まる直前であり、もはや戦闘は避けられない状態だったが……


「そっちから来てくれるとはいい度胸だな」

「コケにしやがって……」

「予定とは違うが、袋叩きだこの野郎!!」


「……誰?」


「「「昼間にお前に襲われたやつらだよ!!」」」




「エリザの援軍に行く?」

「やだ、巻き込まれたくないし」

「そうだな、殺人事件に発展しそうになったら止めに入ろう」

 『村へようこそ!』の看板の裏に隠れてこそこそしながら、ライトとジャックは秘密会議を始める。


 秘密会議とは言っても、『エリザが負ける可能性』は全く論じられない。むしろ、議題の中心は『エリザの勝ち方』だ。

 二人とも、エリザの信じられないような戦い方に負けたのだ。それをもう一度確認したい。

 無法者達を実験台にしても確かめておきたい。


「本当に『あんなこと』ができるなら、今の『ナビキ』はとんだジョーカーだ」







 エリザは8人のプレイヤーを前にして、ただ一言だけ呟いた。


「狩る」


 その瞬間、エリザの身体アバター)に影のようにエフェクトが纏わりついた。


 全身が薄く金色のエフェクトに包まれ、闇の中ぼんやりと輝く。

 腕の肘から先が黒いエフェクトで覆われ、爪が伸びて小さな鎌のように爪の形状が変化する。

 その目が赤く輝く。


 その姿は、まるで……


「化け物が……」

 無法者達がそれぞれ武器を手に取る。

 だが、エリザは動じない。平静にその異形の手を地面につき、爪を食い込ませる。


 そして、獣のように飛びかかる。

 勢いをそのままに、鋭い爪で敵を切り裂く。

 その背中を攻撃しようとしたプレイヤーは、肩から蒸気のような白い光のエフェクトを吹き出して綿袋のように軽々と投げ飛ばす。

 さらに、倒れた敵には馬乗りになり、その抵抗する腕に食らいつく。

 敵から受けた攻撃には、傷口から血のように酸を吹き出し、逆に武器を腐食する。


 その戦い方は、まるで怪物モンスター)だった。




「〖アシッドマウス〗の腐食液だな。金色のエフェクトは多分〖ゴールデンビートル〗の腐食耐性技、あれを組み合わせて服が溶けないようにしてる。あの手と目は〖ブラッドウルフ〗だろう。夜目が利くし、与えたダメージの一部で回復するからな。あの怪力は〖ブーストゴリラ〗辺りの強化改造モンスターの腕力強化か。それに、ただの噛みつき攻撃にしては威力が高すぎるし回復もしてるあたり、あれは『カーニバル』か?」


「え、ボクの技……じゃあやっぱり」


「ああ、どうやってかは知らないが、あいつモンスターや他人からスキルや技をコピーしてる。あんな肉体変化みたいな技は普通プレイヤーには無いしな」


 話しながらも、ライトとジャックはエリザの戦い方を観察し続ける。

 二人はエリザに負けた。

 だが、それは必ずしも実力差によるものではない。

 その、『何をしてくるかわからない』戦い方に翻弄されたのだ。


「あのスピードは? 『ナビキ』のアバターってパワータイプでしょ?」


「あれはエフェクト無いしモンスター技じゃないだろうが……タネは四足歩行だな。地面や壁を『引き寄せる』ことでパワーをスピードに転換してる。まあ、あの戦い方なら野戦より立体的に戦える室内戦の方が強いだろうが、最大速度だけ考えたら下手なスピード型より速いだろうな」


「……無茶苦茶だね」


「……そろそろ止めに入ろう。死者が出る前に」


 二人で看板の裏から身を乗り出す直前、ジャックは宿を振り返った。


「どうした?」

「なんか……見られてた気が……」


 しかし、事態は切迫していたため二人は取りあえずエリザを止めに入った。





 結局、エリザ一人に翻弄されまくっていたプレイヤー達はライトと黒ずきん(ジャック)の介入を見るとすぐさま一目散に逃げ出した。

 エリザは逃げる敵にあまり興味はないらしく、黒ずきんに促されるまま宿に戻って寝てしまった。


 そして……

「…………」

 宿の窓の隙間から戦いを見ていた闇雲無闇は、窓を閉めて弓矢の整備に戻るのであった。





 翌朝。早朝。


「…………」

 闇雲無闇は早起きして望遠鏡で敵の軍団を見張っていた。

 敵の数と進路は概ね予想通り。

 得た情報をメールにしてスカイに送る。


 そして、そのついでにと村やフィールドの木々から適当な枝を矢の材料として集める。

 少し木に悪い気がしたが、戦うためには仕方ないことでもあるし、どちらにしろ今日中にここら一帯は蹂躙されることになるのだ。このくらいは大目に見て貰えるだろう。


 そう思っていると……

「お、無闇か。朝早くからご苦労様」


 山羊の乳を絞るライトがいた。

 こんなときに、なかなかほのぼのとしたことをしている。


「…………」

「このクエストのことか? これ『飼育スキル』の派生技能『山羊飼育』のクエストだ。もうすぐ終わるが、塩やり、小屋の掃除、ブラッシング、そして搾乳で一時間半くらいかかる。だが、山羊は比較的育てやすいし、転向を考えることがあったら……それか気分転換に放牧でも考えたらいいかもしれないぞ」


 ほのぼのしてると思ったらクエストをしていた。

 聞いてもいないのにやたら役に立つ情報をくれる。しかも、自分より早起きだった。


「…………」

「あ、作戦会議は朝食の時に一緒にやるから一緒に食べよう。食べながら話すのは行儀悪いかもしれないが、まあ時間が惜しいから多めに見てくれ。その代わり、デザートも追加するから」


 それ以前に無闇は一言もライトと話をしたことがないのだが、サラッと会議に参加させる気だ。


「あ、あと会議には昨日居なかったメンツがいるかもしれないが、気にしないでくれ。夜の内に合流したとでも思って置いてくれると助かる」

「…………?」




 朝九時、作戦会議にて。

 結局、闇雲無闇は会議に出ることになった。


「こちらライト。これより襲撃イベントについて作戦会議を行いたいと思う。出席者は自己紹介を……一応知ってるとは思うが、オレはライト、職業は無職で使う武器は不定。半分以上生産職に足突っ込んでるが、戦力として数えてもらえるくらいには戦えるつもりだ」

 ライトは宿の簡易食堂で、クエストで得たチーズを配って会議を始める。


「ボクは黒ずきん。職業的には医者だけど援護くらいはできるし、自分の身くらいは自分でも守れる。回復役兼援護だと思って」

 黒ずきんが自己紹介する。

 黒魔法を修行しているらしく、中距離戦闘での戦闘能力はそこそこ高い。


「…………」

 無闇は黙って手を挙げ、自分のプロフィールを表示する。

 職業は『狩人』だ。


 そして……

「あたしはナビ。職業は無いけど武器には鎌を使う接近戦型で……正直こんな会議なんてさっさと終わらせてモンスターの群れをバラバラにしに行きたいところなんだけど」

「悪い、もうちょっとだけ待ってくれるか? その代わり、戦いになったらナビには暴れてもらうから」


 赤いコートを纏い、宿の中ですら大鎌を背負った前線の戦闘職、TGWの赤兎に次ぐ戦闘狂バトルマニア)の『ナビ』がいた。前線ではよく噂に上がるが、信憑性はあまり高くない。


 戦闘になると凶暴になる。

 突撃ばかりかと思えばサポートもできる。

 時に極端に男らしく、時に極端に女の子らしい。

 赤兎との大食い対決で勝った。

 男からも女からもモテるが、本人は人間に興味がない。

 

 無闇はその手の噂には疎いが、目の前のナビをみる限り男っぽい女の子だ。

 昨日暴れていた髪の長い少女と顔立ちは似ているが……ライトはそこを突っ込んでほしくないのだろう。


「ちなみに、エリザはわけあって参加できない。『時計の街』は防衛や急増した盗賊NPCの対処に人手が足りないから応援は来ないと思ってくれ。何かするなら、ここにいる四人でなんとかしなきゃならない。というより、あんまり多すぎると移動力も減るし、下手に弱いプレイヤーが居れば被害者が出る。少数精鋭だ」


 本来、数百の敵にたった四人で挑むなど戦略にもならない。

 だが、このゲームにはレベルという要素がある。レベルに大きな差があれば何十体という敵モンスターが居ようとも蹴散らせる。

 まして、ここに居るのはプレイヤーの中でも最高レベルの面子だ。

 低級モンスターではほとんど数にならないだろう。


「でもどうするの? 敵軍は数百倍、そこそこ強そうなのもいるし、ゲリラ戦で『時計の街』に入るまでに削りきるのはさすがに無理だよこの戦力じゃ。流石にこんなところで死んでも止めるっていうほどの理由はないし」


 黒ずきんが戦略的視点からライトに進言する。

 前線には居なかったが、戦術に通じるなら心強い。


 ここから出来るのは、遠巻きに攻撃しながら敵の戦力を削りつつ、行軍を少しでも遅らせること。そして、敵の戦力をより詳しく調べてスカイに連絡し、厄介なモンスターを先に潰す。


 幸い、ここには回復、接近攻撃、遠距離攻撃、万能型と人が揃っている。これなら継続的にゲリラ戦を仕掛けることも出来るはずだ。


 常識的に考えればそれが最善手。

 ライトもきっと……


「わかってる。作戦は実はもう出来てる」


 だが、ライトの表情はそんな『妥協案』を言い出すそれではなく、『画期的解決法』を言い出す顔だった。



「本丸に奇襲をかけるぞ」







 同刻。

 モニタールームにて。


「やっとわかりました……このプレイヤーのチップ、一般のやつじゃありません。これが他のアカウントをコピーしてるんです」


 他より飛び抜けて小さな少女は集めたデータを並べて言った。結局、他は忙しいと言うことでチート対策にはこの少女とサボっていた男があたる事になったが、この男は結局ほとんど手伝わなかった。


「おいおい、冗談やめろよ。違法改造チップくらいでデータの改竄なんてできるわけないだろ? このゲームのサーバーの化け物みたいなセキュリティー、お前だって知らないはずがないだろ?」


「ううん、これ違法改造なんかじゃないです……これのハードとプログラム、主任が設計した奴です」


「それこそちょっと待てよ、今のMBIチップ関連のプログラムなんて主任が関わってないやつないだろ?」


「違います。これは医療目的ですが、主任が直接デザインした量産を無視した高機能型です。しかも、機能の最適化、可変性に特化したタイプで、このゲームのアカウントにも互換性を発現したようです……このままだと、この人はそのうち全てのスキルを掌握してしまう」


「おい、それはヤバいじゃねえか。すぐチートペナルティーで……」


「これはチートですが、本人の意図したものではありません。完全に私達運営側のミスですし、ペナルティーを発令するわけには行きません……でも主任も忙しくてこっち来れないし……」


「どうすんだよ? いくらなんでも放置するには危険すぎる。こいつがこのままアカウントを集め続けてゲームバランスが壊れちまったら元も子もない」


 男はイライラを誤魔化すようにスナック菓子の袋を開ける。だが、少女の方は違った。まるで、『画期的解決法』を見つけたかのような笑顔を浮かべて言った。


「なら、今の内にこの人には退場願いましょうか。ちゃんとしたルールの範囲内で」


 そして、GM専用のメニュー画面を開き、その場に自分と同じくらいの少女を一人呼び出して言った。


「キサキちゃん、ちょっと行ってこの人殺してきてくれない?」

≪家畜≫

 牛や馬、山羊や羊、他にも鶏のような飼育に向いた役に立つ動物。

 モンスターではなくアイテムに近い扱いで、うまく飼育すれば増やすことも可能。


(スカイ)「今回はちょっとお高い商品、家畜です。ほら、今回はお手軽にひよこちゃん。この前の祭りで手に入れたやつの子供。大きなのだと山羊とかもいるよ~」

(イザナ)「売ってるんですか!?」

(スカイ)「入荷が難しいから高いけど、NPCから買う以外にも廃屋とかモンスターの少ないフィールドとかに稀にいるのよ。捕まえて農業とか畜行とかの類のスキルを持った人に育てて増やしてもらってるけど。実際の動物より成長が速くて助かるわ」

(イザナ)「すぐ大人になるんですねー」

(スカイ)「そしてすぐお肉にできるからいいわね~。モンスターの肉より柔らかくて美味しいって声もあるし。早く大量生産できるようにならないかな~」

(イザナ)「……ひよこちゃん、頑張って生きてくださいね」

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