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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第三章:チームワーク編

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50頁:無理のない修行を心がけましょう

『玉乗りスキル』

 バランスを維持するスキル。

 サーカスのイベント中に発生したクエストで修得できたが、サーカス終了後には修得方法は『歯車の国』では見つかっていない。

 NPCによるとサーカスは国々を転々としているらしいので、他の国で修得できる可能性もある。


 平地での戦いではほとんど役に立たないが、不安定な足場での戦いでは便利。

 ボスダンジョン攻略五日目の早朝。

 マリー=ゴールドと黒ずきんは、聖王国軍が使用していた砦の門を西側からくぐり、その先に見える『時計の街』を見据えた。


「ふう……東側の砦を通り、北の砦の先の土地を経由して、とうとう西側の砦を潜るとは……短いようで長い道程でしたね、黒ずきんちゃん」


「ボクなら走り抜けるだけでいいなら一日で行けたんだけど……まあ、マリーさんがいないと意味なかったし、しょうがないか……」


「フフ、私の出番はここまでですよ。ここからの主役は黒ずきんさんやナビキちゃん、そしてスカイさんです。頑張ってくださいね」


 マリー=ゴールドは黒ずきんを優しく激励する。それが気恥ずかしかったのか、黒ずきんはそっぽを向く。


「ちゃんとやるよ。出番があったらだけど」


「はいはい、ライトくんのこと、よろしくお願いしますよ」




《現在 DBO》


 ボスダンジョン攻略五日目。

「これより、アイコ強化プロジェクトを始めます!!」


「お願いします」


 昨日は赤兎とアイコのペアだったためという口実で、今日はライトとアイコのペアになり、ダンジョン攻略はひとまず赤兎に任せ、アイコの強化プロジェクトを実施することとなった。


 それというのも、マリー=ゴールド発案の『アダムとイブ作戦』の後、ライトの下に駆けてきたアイコはこう言ってきたのだ。

『今の自分じゃ赤兎の足を引っ張るだけ。あたしは赤兎に守られるだけじゃなくて、守れるくらい……あいつに負けないくらい強くなりたい』


 アイコは今までソロで戦ってきて、戦えば必ず勝ってきたことは想像に難くない。だが、もっと上があることを知り、気が付いたらしい。


 自分が変わらなければ、どんなに小細工をしても赤兎には並べない。


 そこでまず、今までただリアルで得た技術に任せて戦ってきた自分を反省し、数多のスキルを使いこなすライトにゲームならではの戦い方を習おうと思ったのだ。


「見習うにしろ……赤兎に教えてもらったらどうだ? ついでに親密度も上げられるかもしれないぞ?」


「いろいろ考えた結果、単純に突っ込んで殴りかかるだけの単純な戦闘スタイルを改善した方が速いかと……」


「まあ、赤兎の修行法は『ひたすら反復練習』って感じだから、オレの方が速効性があるだろうな。それに改善点も確かにいろいろあるし……よし、じゃあ自分磨きから始めよう!!」


 という運びになったのだ。






「というわけで、まずはアイコのビルドをより具体的に決めたいと思う。」


「質問!!」


「はい、アイコ。もうわからないことが出たか?」


「『ビルド』ってなに?」


 ライトは、ゲーム開始前にミカンに覚え込まされた知識からゲーム用語を引っ張り出す。


「ビルドを決めるとは、簡単に言えば『どんなプレイスタイルにするか』を考えてスキルの振り分けや能力値の上げ方を決めることだ。まあ、このゲームではスキルに関しては種類無制限だから『主にどんなスキルを使うか』くらいで考えておけばいい。たとえば、赤兎は完全な近接戦闘型、スキルは『剣術スキル』を中心にして他のスキルはその補助。能力値は使わないスキルを還元して筋力、速力、防御力、HPをどれもかなり高い数値まで上げている。まあ、近接戦闘型の極端な例だがな」


「ライトは?」


「オレは気にするな、例外だ。……それより、大事なのはアイコ自身のビルドだ。それによって、連携の取り方も変わる。ボス戦では壁役、攻撃役、援護役、遠距離攻撃、遊撃なんかの役割に分かれるはずだが……アイコはどれにあたると思う?」


 ライトは説明しながら安全エリアの地面に竹光の鞘で図を描く。ボスを表す大きな罰印と、その取り巻きの小さな罰印がその周囲に複数。そして、プレイヤー側は大きなボスモンスターを前に、最前列には壁役を表す盾のマークと攻撃役を表す剣のマーク。その後ろには援護役の杖のマークと、さらに後ろに遠距離攻撃の弓のマーク。そして、取り巻きを相手に散らばる遊撃のナイフのマーク。


 アイコは少し悩んだ後、恐る恐るといったふうに剣を指差し答えた。


「攻撃役……かな? 接近戦なら自信あるし……」


 ライトはさも正解だというような表情を作り……アイコが安心してきたところで言った。


「残念、不正解だ。」


「え、あれ!?」


「まあ、点数制なら30点くらいだがな。アイコのメインのスキルである『気功スキル』は汎用型。使い方次第で戦術の幅が広がるんだ。だが、今のアイコはそれを身体強化にしか使ってない、使いこなせてない。だから、回答が30点というより、自分のスキルに関する認識が30点だ。」


「ちょっと厳しい」


「アイコの立ち位置はスキルを使いこなした場合を踏まえるとここら辺になる。」


 ライトは盾、剣、杖の丁度真ん中に丸を描く。

 攻撃、防御、援護……自分も戦いながら仲間にも援護を出すポジション。


「まあ、遊撃もできるだろうが……仲間との連携を考えるとこっちだ。それに、オレとしてはこれからアイコには『赤兎との共闘』を前提とした鍛え方をしてもらうつもりだしな」


「つまり、ライトはあとの70点分を叩き込んでくれるわけだね……もし、それを完璧に身につけられたら、あたしはどのくらい強くなれる?」


 アイコは少し不安げな顔で問いかける。彼女にとって、赤兎やライトは高い壁なのだろう。

 だが、ライトはアイコの目を見て、口元にはギラギラとした笑みを浮かべながら答えた。


「『強くなる』んじゃない。アイコは既に十分強い。だから、アイコが使ってなかった強さを『活かす』んだ。」









 そして午後。

 ダンジョン東側の深部にて、ライトとアイコ、そして赤兎は合流した。


「どうだった? マップの方は広がったか?」


「いや、そっちはあんまりだ。だが、別の収穫があった。な、アイコ」


「う、うん。大収穫だったよ。せ、赤兎はどうだった?」


 アイコは話を逸らすように赤兎の戦果を尋ねた。だが、赤兎は話を逸らされたことなど気が付かなかったかのように、明るい笑顔で応える。


「聞いて驚け、レベル50になった。」


「50!?」「速いな」


 本来はレベルなど軽々しく公言するものではないのだが、赤兎の発現はそれに対する突っ込みを忘れさせるものだった。


 レベルは、数値が高くなるほど次のレベルに上がるために必要な経験値が多くなり、ハイレベルなダンジョンに入っても難しくなる。

 現在の最前線平均レベルが推定45程度。

 

 ライトはかなりの密度でこなしていたクエストの経験値もあり、今はレベル48。これは前線でもなかなかに高い。


 アイコはソロとして狩りを続けていたため、倒した敵の経験値を全て独占していたが、そのかわり確実に勝てる相手としか戦えなかったので効率はそこそのといった具合であり、レベルは45。


 基本的に暗黙の了解としてプレイヤー達は安全のため攻略するダンジョンは『出てくるモンスターのレベル=自分のレベル-5』までとしている。このダンジョンはボス系以外のレベルは最大40程度とされている。


 だが、赤兎は最前線でも少々抜きんでている。


「しかも50になってスゲー技出たんだよ。次モンスターの群れ見つけたら使うから見てくれ!」


 油断していると置いて行かれる。

 ライトは、そっとアイコの背中を押す。


 そして、アイコは口を開いた。


「あ、あのさ、あたしも新しい戦い方やってみたいんだけど……見てくれない?」


 赤兎に付いていくためには、アイコも強くならなければならない。





 〖ギアコング〗

 〖ドワーフエイプ〗の上位種〖フェイノゼゴリラ〗の強化改造モンスター。

 全身毛の長いゴリラの肩から背中にかけて機械の鎧で覆われたような容姿であり、〖フェイノゼゴリラ〗には不可能な急加速(背中のブースターによるもの)を使い、その大重量の突進は驚異である。


 しかし、ダンジョン東側でさらに気をつけなければならないのが、〖ギアコング〗の背中の機械がより大きく真新しい銀色の装置と換わっている〖ギアコング シルバーバック〗というモンスターだ。

 遭遇率は低い。しかし、問題は万一遭遇してしまったとき。プレイヤーを視認すると、自分の胸を拳で打ち鳴らし、十数体に及ぶ〖ギアコング〗を呼んでしまうのだ。


 攻略メンバーの中では『見たら逃げるべきモンスター』だと言われているのだが……


 ライト達三人は、〖ギアコング シルバーバック LV38〗と、〖ギアコング〗の群れと対峙していた。


 しかも、一番レベルの低いアイコが前に立ち、ライトと赤兎は後ろに下がっている。


「おい、ホントにやるのか? アイコは集団戦は苦手なんじゃ……」


 赤兎は心配そうにアイコの背中を見守るが、ライトの表情にはそのような心配は見られない。


「まあ見ててやれ、昨日までならさておき、今のアイコならこのくらいの集団戦……むしろ得意分野だ。危なくなったら助けてやりゃいいさ」




 アイコは、ゴリラの群れに向かって走り出した。

 敵の接近に反応したゴリラ達は手を伸ばしてアイコに掴みかかろうと迫ってくる。


 だが、アイコは先にその手を掴み……

「そぅりゃ!!」


 一本背負いで地面に叩きつけた。

 モンスターの重量が重かったこともあってか、HPの三割ほどが一気に削れる。


 そして、アイコはさらに倒れたゴリラの首に足刀を落として追撃。

 しかし、そうしていると今度は別のゴリラが迫って来て……


「だぁら!!」


 またしてもそのゴリラを投げ、しかも一体目のゴリラの上にすさまじい勢いで落とす。


 そして、横からブーストで突進してきたゴリラを避けながら足に蹴りを打ち込んで別のゴリラに突っ込ませ、さらに避けた先で掴みかかってきたゴリラを後ろも見ずに投げる。



 その光景を見ていた赤兎は呟いた。

「あれは……『投げ』か?」


「ああ、アイコは囲まれての対複数戦が苦手だった。まあ、普通の拳法は基本の前提が一対一だから当然かもしれないがな。だが、『投げ』なら、敵が多くてもその敵自体を武器にして戦える分かなり集団戦にも強くなる。それに、ああいう重いモンスターはただの殴打よりあっちの方がずっと効きやすい。」


 ライトが教えたことの一つは『投げ技』の使い方だった。

 アイコはライトを相手にしたときには投げ技を使っていたのに、モンスター相手ではほとんど使っていなかった。理由を尋ねると『重いモンスターを投げようとすると筋力強化でEPを消費して燃費が悪い』から殴打を基本戦法としていたらしいのだが、ライトはむしろ投げ技を推奨した。


 燃費が悪いなら、一撃で複数にダメージを与えればいい。


 モンスターをモンスターに投げつければ、両方にダメージを与えられるし、倒れたモンスターに追撃するチャンスも出来る。


 午前中、数体のモンスター相手に試したのだが、確かに効果的だった。『投げ技スキル』のレベルはまだ低いが、持ち前の技術と『気功スキル』の力技をプラスすれば、アイコは重量級のモンスターでも投げられる。


 アイコは敵を投げ、倒した敵の上に別の敵を投げ込み、迫ってくる敵に別の敵を投げつけ、攻撃と防御を同時に行っている。



「だが、あんな囲まれた状態で大丈夫なのか? 後ろからの不意打ちとかは大丈夫か?」


「気功スキル『気配探知』。前はテンパってろくに使ってなかったし、戦闘中は目視に頼って戦ってたが、付け焼き刃でも後方から急接近してくる敵くらいは反応できるようになってるよ。アイコはあれを移動中の索敵くらいにしか思ってなかったらしいが、戦闘中だって十分に使える」


 これが二つ目。

 視覚で敵を感知する『暗視スキル』、音で感知する『聴音スキル』はダンジョン攻略では必須だと言われるが、『気功スキル』の探知能力は他とは少し違う。


 情報量が少ないのだ。

 遠くを見ることもできないし、遠くの音を聞くこともできない。

 『気功スキル』は『気』を感知するため、プレイヤーかモンスターの居場所しか探知できない。アイコはそれを欠点だと考えていた。


 しかし、ライトが教えたのだ。

 余計な情報が入ってこないなら、余計な情報に気を取られず敵だけを感知できる。

 感知したら、何も考えず攻撃するだけで敵に当たる。 


 『暗視スキル』では真後ろは見えないし、『聴音スキル』では余計な音で感知しにくくなる。つまり、戦闘中の使用に『最適』なのは『気功スキル』なのだ。


 そして……


「あっ、アイコ後ろだ!!」


 赤兎が叫ぶ。

 その直後、アイコの背中に〖ギアコング〗のブーストの比ではない速度で岩が『命中』した。その射線の根元には、背中の機械部をカタパルトのように変形させ、アイコにその『砲台』を向ける〖ギアコング シルバーバック〗。


 普通の〖ギアコング〗の機械はただのブースターだが、そのリーダーであるシルバーバックの背中には他とは違う銀光りする大きな機械が積まれていた。それは折り畳まれたカタパルトだったらしい。


 アイコは思わぬダメージを受けてよろける。

 そして、さらに他のゴリラ達からも攻撃を受け、HPが一気に減る。


 シルバーバックは遭遇したら逃げろと言われていたモンスターだ。その能力が知られていなかったことも要因にはあるだろう。しかし、それに加えて『気配探知』が遠距離攻撃の探知には不向きな事も原因の一つだ。


 赤兎は助けに入ろうと刀に手をかけ……


「アイコ、回復しろ!!」

「わかってる……『ヒールブースト』『不殺生道』」


 体勢を何発か攻撃を受けてから転がるように敵の群を抜け出したアイコの体を、ピンクと緑の混じり合ったようなエフェクトが包み込む。ピンクはHP、緑はEPの回復を示すスキルのエフェクト。


 光を纏いながら、アイコは相手からの一方通行な攻撃を避け続ける。


「なんで反撃しないんだよあいつ!!」


「わざと反撃しないで回避に専念してるんだよ。『気功スキル』の特徴はEPを消費して攻撃力、防御力、回復力をブースト出来ること。だが、回復力を上げて急激に回復しようとすればEPをすぐ消費してしまう。専門のスキルよりやや燃費も悪い。だが、『瞑想スキル』でEPを回復しながら戦えば持久戦も十分に出来る。瞑想スキル『不殺生道』はダメージを与えられなくなる代わりにEP回復する技だからな。」


 これが三つ目。

 これだけは、ライトが『与えた』ものだ。


 実のところライトは攻略本の情報確認のために『気功スキル』も『瞑想スキル』も修得している。そして、その二つが相乗効果を持つ相性のいいスキルだという情報もあった。


 ライトが『糸スキル』に『釣りスキル』を組み合わせて、重りの代わりに鉤針を飛ばして技を使い易くしているように、二つのスキルを組み合わせると効果が増強されるスキルの組み合わせがある。その組み合わせの一つが『気功スキル』と『瞑想スキル』だ。


 しかし、アイコはそのことを知らず、また『瞑想スキル』も持っていなかった。だから、ライトが『伝授』したのだ。


 『看板の町』の特殊クエスト『道場破り』。

 スキル修得クエストを提示するNPCを倒すことによって、クリアしたプレイヤーが他のプレイヤーにそのスキルを修得させるクエストを提示し、条件をクリアすればスキルを与えることができる。


 ライトは『看板の町』でクエスト巡りをした際、クリアに時間のかかる『瞑想スキル』のクエストを受け、一度に受けられる人数に限りがあり手間のかかるこのスキルは需要が高くなるかもしれないと考えて『道場破り』をやっていたのだ。(クエストを出すNPCの〖魔羅〗は手強い相手ではあったが、なんとか倒すと秘伝技まで手には入ったので報酬的には悪くなかった)


 『瞑想スキル』を修得(一時間座禅をクリア)したことにより、『気功スキル』は消費EPが減少し、アイコはより効率的に戦えるようになり、回復にEPをまわす余裕も出てきた。


 そして……


「うりゃぁあ!! 『パワーブースト』!!」


 回復を終えた後も暫し攻撃を避け続けたアイコは、当然攻勢にまわった。


 離れて自分を狙っているシルバーバックに向かって走り出し、間にいたゴリラも押し込んで体当たりし、壁まで押し切った。


「そして何より、『瞑想スキル』の技は大抵『○○しない』って『溜め』みたいな技なんだが、それが『気功スキル』を持ってると『気』を溜める動作になるらしくてな。コンボで使うともともと持ってた『気功スキル』の効果自体がブーストされる」


 アイコは、ライトの教えの下、見違えるほど強くなっていた。






 十数分後。

 疲労しながらも〖ギアコング〗の群を相手に大立ち回りしたアイコは勝ち誇ったような表情で戻ってきた。


「どうだった? あたし、強くなった?」


 戦いの結果としては、アイコが他を相手にしながらも遠距離攻撃を狙ってくるシルバーバックを追いかけ回して倒すと、生き残っていた五体ほどのゴリラ達は方々に逃げていった。


 〖ギアコング シルバーバック〗を倒せば、呼ばれて現れた〖ギアコング〗も撤退するというのは聞いたことのない情報だった。おそらくシルバーバックを初めて倒したのはアイコなのだろう。


「ああ、さすがオレが教えただけあるな」


「昨日より全然動きも良いし、アイコホントにスゲーな」


 赤兎はごく自然にアイコの頭を撫でる。


「そ、そんな、そんなこと……」


 赤兎に頭を撫でられて赤くなるアイコ。

 先ほどまでの戦いっぷりから一転、照れてとても女の子らしい顔だ。


 ライトは二人の距離が縮まったのを見て、事がうまく行っているのを確信し、口元に笑みを浮かべる。



 その時、何か大きなものが地下からせり上がって来るような音が響き、地面が大きく揺れた。



「んなっ、地震か!?」

「きゃっ!?」

「玉乗りスキル『ベストバランス』!!」


 ライトはとっさにスキルで自分が体感する揺れを無効化し、他の二人は近くの壁に手をついて揺れをやり過ごす。


 そして、音のした方を見ると……


 そこには……ダンジョン北区画には錆び付いた鉄の歯車と鉄骨で造られた『城』が、地下からせり上がるように出現していた。

 中世の城をあり合わせのパーツで組み立てたかのようなその『城』は、まるで一つの大きな機械のようにも見えた。


 そして、その城の中からなのか、はたまた壁面からなのか、どこかにスピーカーがあるのかはわからないが、腹に響くような低い声が大音量で発せられる。


『よくぞ我が城下の迷宮を突破した!!

 東西の守護者も敗れ、残るは我のみ!!

 だが、我は鍛鉄の王なり!!

 この鋼の玉座を奪いたくば、我と我が百の鋼の軍団を蹂躙して見せよ!!』


 ついに、このダンジョンの主……この国の『王』が表舞台に現れた。

《異臭ハーブ》

 異臭を放つハーブ。

 うっかり踏んでしまうと、とても後悔する。


(スカイ)「今回はこちら、異臭ハーブ。お香や薬の材料になるよ~」

(イザナ)「なんで瓶に入ってるんですか?」

(スカイ)「あ、嗅いでみる? ほら!」パカッ

(イザナ)「きゃっ!! ……あれ? 結構いい匂いですね」

(スカイ)「意外でしょ? ちょっと実を潰して嗅いでみるともっと良く香りがするわよ~」

(イザナ)「どれどれ……うわくさいです!? ゲホゲホ!! 騙しましたね……」

(スカイ)「またね~(鼻声)」

()「」

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