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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第三章:チームワーク編

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49頁:仲間を罠にかけるのはやめましょう

『穴掘りスキル』

 穴を掘るスキル。

 地形を一部変えることができる。

 掘った穴は時間がたつと浅くなり埋まってしまうが、落とし穴、ビバーク、地雷など応用範囲が広い。

 掘る速さと深さはレベルに左右されるが、深く掘るとレアなアイテムを掘り当てることもある。

 時には『水源』や『温泉』を見つけることもある。

 教会で、『金メダル』は尋ねた。


「この銅メダルって人、どんな人なんですか? なんか、優劣が最初からわかりやすくついてるようには思えないんですけど……」


「まあ、金銀銅に関しては優劣っていうよりバージョンの違い……得意分野の違いみたいなのがあるから一概に順位なんてつけられないね。まあ、むしろ『金メダル』と『銀メダル』に匹敵する最後の一人だから便宜上『銅メダル』になっただけで、むしろ敵に回したらあなたや『銀メダル』の天敵だと言っていいかもしれない」


「私達の……天敵?」


「あなたを予言通りに運命を作り出す『天使』だとするなら、彼は滅びの運命すら覆しかねない『勇者』。予知能力で予知できない奇跡を起こす可能性を持つ、不確定要素。まだその才能は完全には目覚めてないけど、きっと彼の行動はあなた達の予測の斜め上を行くわ」




《現在 DBO》


 映画や小説では良くあることだが、青年が少女を助けざるを得ない状況が連続し、いつしか少女を助けるのが当たり前のこととなり、その内ただの庇護欲とは違う感情が芽生える。


 もちろん、吊り橋効果というものも要因として上げられるだろうが、それだけではなく、護り続けるうちに護る側の心の中で護る対象の存在が大きくなり、護るという目的上近くにいないと落ち着かないという状態になるという考え方もある。


 ……まあ要するに、ピンチは恋愛感情の引き金になり得るのだ。


 ということで、ダンジョン攻略4日目の午後からはライトは赤兎&アイコのペアとは別行動し、別ルートから先回り。そして、『赤兎攻略遠隔会議』で各々から発案された『ピンチ』を演出する仕掛けを施し、その場を後にしてダンジョンの別ルートを探索し、夕方に集合場所で二人と合流。

 そして、夜にはアイコからの結果報告を聞く手はずだったのだが……


 夜、ライトは屋根のある安全エリアの中で……鬼の形相で激怒するアイコに腕をねじり上げられていた。


「なにあの罠!! 死ぬかと思ったわ!!」



 赤兎攻略遠隔会議にて

 『恋愛感情を発生させそうな危機的シチュエーション』の意見案。

(スカイ)『同人誌ふうにネバネバとか触手はどう?』

(ナビ)『赤兎は単純だぜ? 事故に見せかけて胸でも触らせてやれ』

(黒ずきん)『ポップストーンを利用したモンスター四面楚歌。背中合わせの共闘なんてどうだろ』

(マリー)『アダムとイブ作戦なんてどうでしょう? 環境を整えればいい雰囲気になりますよ。』

(ライト)『わかった。やってみる』



「ということでまずネバネバ触手作戦として落とし穴を掘って、ダンジョンで見つけたイソギンチャクっぽい強化改造モンスターを何体か投げ入れておいて、あと床にはトリモチの罠を満遍なく……」


「捕食されるところだったわ!! そもそもイソギンチャクと落とし穴を組み合わせるな!! ピンチがどうとか言う前にイソギンチャクの口に落ちて即死するところだったわ!!」


「イギギ……ま、まあでも赤兎が助けてくれたんだろ? どんな感じだった?」


「……それが……助けてはくれたんだけど、その後……」


「どうしたんだ?」


「『でかしたアイコ!! こいつらの肉、ゲテモノだが滅茶苦茶旨いんだ』って喜んでた」


 スカイ発案『ネバネバ触手作戦失敗』

 敗因……花より団子



 アイコはライトにかける力を強める。


「それだけじゃないでしょ!! 二つ目のあれ何!?」


「えっと、二つ目は……揉みくちゃ螺旋落とし穴だったな。苦労したんだぞ? 直下じゃなくて転がり落ちるような落とし穴掘るの。どうだった?」


「私だけ落ちたわ!! 赤兎さんごく自然に素通りした後だったし!!」


「結構大きく作ったはず何だけどな……なんでわかったのかな……」


 ナビ発案『揉みくちゃ螺旋落とし穴作戦』失敗

 敗因……恐るべきスルースキル



 ライトの肩から骨のきしむような音がする。

「そして、三番目のあれ!! あれは完全にただのMPKだ!!」


「ああ、赤兎は強さ的に半端な敵じゃあピンチだと思わないだろうから、ポップストーンでのモンスター召喚に加えて周囲のモンスターをパンの耳で誘導して出来るだけ大量に……」


「あまりの戦力差に絶望したわ!! 赤兎さんが全部倒してくれて助かったけど!!」


「え、あれ全部倒したのか!? おかしいな……計算的には赤兎がアイコをお姫様抱っこして逃げ出す展開になるはずだったんだけどな……まさか全部相手にするとか、馬鹿だろあいつ」


 黒ずきん発案『愛の逃避行作戦』失敗。

 敗因……背中の傷は男の恥



 そして、現在に至る。

「あいつ、計算通りに動かなさすぎだろ……てか、そろそろ腕離してくんない? もう腕が千切れそうなんだけど」


「真面目にやって!! あたしは真面目に赤兎さんとの距離を縮めようとしてるのに、これじゃあライトの作戦はただの妨害だ!!」


「頑張ってる割には呼び捨ても出来てな…イタタタ!! マジで腕ちぎれる!! 第一、トラップはアイコの防御力と赤兎の戦闘力的に死ぬことはないと思って……」


「あたしの防御力が高いっつっても限度があるわ!! あんた、あたしを不死身の怪物かなんかと勘違いしてない!?」


「いや、オレはアイコを一人の恋する乙女だと思ってるよ? 多少怪力で暴力的かもしれないが…ギギ、機嫌なおしてくれよ!! そんな『女の子』のためにいいプレゼントがあるんだ」


「プレゼント?」


「とにかく、ついてきてくれ!! きっと喜ぶから!!」





「え……なにこれ?」


 そこにあったのは、半径3m、深さ1mほどの泉。

 小さな安全エリアの地面のほとんどを占めているが、周りに天幕が吊され、『着替え』のスペースも用意されている。


 そう、水浴び用の泉だ。

「落とし穴を掘ってるときに水脈を見つけたからな。本当は温泉にでもしたかったところだが……まあ、水浴びで我慢してくれ」


「とんでもない事するわね……ダンジョンの地形を変えるとか……」


「即席だから明日には埋まって地面に戻ってるよ。さあ、一番風呂だ。後で他の奴らにも教えるからさっさと入ってくれ」


 どうやら、アイコへのプレゼントというのはついでであって、本当の目的はボス攻略のプレイヤー達へのサービス充実らしい。まあ、ここまで大きな泉はダンジョンにはまずないし、宿屋で利用できるような風呂やシャワーも皆ご無沙汰のはずなのに喜ばれるだろう。


 だが、特にその手の不満が溜まっていたのはやはり『女の子』であるアイコだった。


「わ、わかったわよ……これで、許してあげる」




 五分後。

 装備を全てストレージに収納したアイコは、ゆっくりと泉に足を差し入れ、その割と冷たい温度に感覚を合わせてから、全身を水に入れる。


「ああ……生き返る……」

 死んでいたわけではないが、幾つもの死線を潜った後にこれくらい言ってもあながち間違いでは無いだろう。


「あいつすごいな……料理はともかく、こんなの家庭的ってレベルじゃない」


 ライトの生産系スキルはただの家事や装備の整備だけではない。使い方、組み合わせ方によっては今回のように強力な罠を作り出したり、戦闘に応用したりできるのだ。


「その能力の使い方には問題あるかもしれないけど、侮れないわ……」


 最初決闘を申し込んだ時には、戦闘で負けることは無いと考えていた。戦闘職のサポートはできても、一対一に持ち込んでしまえば負けるはずはないと……しかし、数多のスキルを持つライトは、十二分に強かった。ほぼ単一のスキルを単純に振り回して戦う自分とは違い、その無数のコンボを使いこなし、単一のスキルでも思わぬ応用法を作り出す。


 リアルで培った拳法の技術と、それを発揮できる身体強化に長けた『気功スキル』の組み合わせで十分に強いと思い上がっていた。


 その一方で、自分と同じように自前の技術を信じ、ひたすら剣を振るう赤兎も、アイコより十二分に強かった。アイコはこの二日間の間に二つの対照な強さを見せつけられた。


 片や一つ一つの技術は極限まで至らずとも、その組み合わせ、応用で予想も付かないような動きをする万能型のライト。

 片や、一つを極限まで鍛え上げ、知恵も小細工も真正面から突き破る特化型の赤兎。


 二人の共通点はおそらく……妥協を知らない向上心。

 そして、遙か先に見据える『何か』。慢心を許さない程の高き目標。


 こんな事では、たとえ共に歩むことが出来たとしても、すぐ置いて行かれてしまう。

 もしかしたら、ライトはそれを伝えて置きたかったのかもしれない。

『おまえでは、ついて行けない。足を引っ張りたくなければ諦めろ』


「考え過ぎかな……でも、赤兎さんが逃げなかったのはきっと……」

 赤兎の方が足は速い。全速力で逃げようと思えば、簡単に出来たはずだ……一人でなら。

 文字通り、アイコの存在が足を引っ張ったのだ。


「未だに呼び捨てにも出来てない……タメ口も出来ない……対等じゃないと、自分で思ってる」


 かつてダンジョンで見かけた赤兎とナビのコンビを思い出す。

 まるで競い合うように敵を切り刻んでいく二人。その顔には楽しそうな笑顔が浮かび、まるで子供が遊んでいるように無邪気だった。


 一緒にいたいからいるのではなく、楽しいから一緒にいる。一緒にいたいという気持ちでは勝っていても、対等さでは負けている。

 赤兎は自分を助けたことを覚えていなかった。きっと、助けた人なんてたくさん居過ぎて、覚えていない。


 助けられているうちには、特別にはなれない。



「ん? もう他の奴が入ってんのか……まあいっか、攻略に来てるのは男ばっかりだし」


 

 その声は、確かに想い人のものだった。

 アイコは慌てて身を隠す場所を探すが、逃げようとすればフィールドに出るしかないが、装備を何一つ装備していない。


 今は、身体を隠す服どころか、布切れ一枚すら出していない。


「お邪魔するぜ~」

「あ、ちょまっ!!」


 時既に遅し。


「あ、わ、わりい。アイコが入ってるなんて思わなくって……てか、アイコが女だっての忘れてて……」

「み、み、見るなぁぁぁああああ!!!!」


 ドカッ バキッ ゴキッ メキッ ガコン





 同刻。

 メール圏内になっているエリア。

 ライトはマリー=ゴールドとメールを交わしていた。

『生まれたままの姿で「アダムとイブ作戦」、成功したみたいだ。』


『あらあら、ライトノベルの定番でしたけどうまく行きましたか』


『あいつは完全に主人公体質だからな。行動パターンの予知もうまく行かないし、ホントなんなんだあいつ』


『あら? 先生から聞いてたんじゃないんですか? 銅メダルの性質』


『性質? てか、師匠の技見たときの反応で薄々わかってたけど、やっぱり同門か……で、あいつも予知とか出来るのか?』


『「運命を変える能力」「私達の天敵」そして、今日の話からわかりましたが、おそらく「予知封じ」……「予測不能」。それが私達の先生で言うところの「能力」なんでしょうね』


『なるほどな、まあだけど……今回は本命のこの作戦が成功したから良しとするか』


『喧嘩するほど仲がいいってやつですね。喧嘩して仲直りすれば、彼らの絆はより近く強いものになるでしょう』


『拳で語って友情が芽生える……まあ、恥ずかしくって敬語でしか話せないようじゃ恋愛以前の問題だからな』


 そこまでメールで会話を交わしたタイミングで、プレイヤーがライトに駆けてくる音がした。


 ライトがそちらを向くと……アイコが、道着を着て肩を震わせて立っていたを


「あ、アイコ……どうした?」


 ライトはHPを確認。

 こんな時のために満タンにしてある。何発か殴られることになったとしても十分耐えられる。


 アイコは腕に力を込め、その手を地面に叩きつけ、激しく砂をまきあげ……



 ライトに土下座していた。



「……え?」

「わかったの!! 今のあたしじゃ赤兎には釣り合わない!! だから……あたしを強くして!! このとおりです!!」


 どうやら、赤兎の『予測不能』は周囲にも伝播するらしい。

《袋》

 アイテムを入れられる袋。

 粉末や粒状のアイテムは基本的にこれに入れて重さで取り引きされる。

 材質によって液体を入れられたり、尖ったものを入れても破れなかったりする。


(スカイ)「今回は旅の意外な必需品《袋》です。当店では麻、皮、絹など様々な種類を揃えております~」

(イザナ)「種もみとかはこれがないと買えませんからね。他にも、ポップストーンや細かい鉱石を入れることもありますね」

(スカイ)「あと、女の子一人くらい入れて運んでも大丈夫な大きな袋もあるよ~」

(イザナ)「犯罪の匂いがする袋ですね」

(スカイ)「初めてそれやったのライトだけどね~」


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