あとがき
『デスゲームの正しい攻略法』をここまで読んで頂いた皆さんにはまず感謝すべきなのかいろいろと謝罪すべきなのかわかりませんが、きっとここまで読んでいただけるような辛抱強く物好きな読者の方には多少なりとも楽しんでもらえたと信じてまずは深く感謝を。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
『書いてみたい』という気持ちと勢いで初めてネット小説という世界に踏み出してみて、長編の構成の難しさや単純な文章力不足などに直面しながら手探りで書いていったこの作品。読み返せばかなり精神的にキツい部分(特に初期の3点ディーラーなど)がありましたが、一度始めた以上は最後まで物語を完結させなければならないという信念(作者が読んでいる作品が途中で止まっていた時の悲しさ)から途中うまく話が進められず停滞したりしながらも、最初に思い描いていたエンディングまで突き進むことができたのは、時折いただいた感想と増えていったブックマーク数のおかげです。
とまあ……作者の弁解と自己満足にしかならない初長編失敗談の類はここまでとして。
せっかくのあとがきなので、ここまで読み進めてくださった皆様に感謝の気持ちとしての本編の話などをしようかと思います。
まず、もはや書いている内にブームが少し過ぎてしまった感はありますが、『デスゲーム』というジャンルは作中で書いたように『謎のオーバーテクノロジーによる思考加速型』と『強制ログアウトで即死する強制型』という二つの種類に分かれ、現実世界からの干渉を遮断していますが、今回は『強制型』に見せかけた『思考加速型』という少々珍しいかもしれない方法を採用しました。
そして、そのゲームの目的も運営側で二つに分かれており、『スカイの退屈を紛らわせるために大量の人間を巻き込んで「成り代わり」を完成させる』という側と『スカイを倒すためにプレイヤーの進化を促す』という側でのぶつかり合いにより話をややこしくしていました。
そのために玉姫がゲームバランスでミスをして謹慎を受けたり『成り代わり』側がゲームの難易度を上げてプレイヤーを全滅の危機に追いやったりという内輪揉めイベントが多発。読者の方々も『運営は何がしたいんだ』と思っていたかと思います。
デスゲームの外の世界観については簡単に言ってしまえば『普通に見せかけて実は普通ではない世界』です。主にスカイの思考加速から技術の異常発達が目立ちますが、それ以前から『人生幸せ計画』や『桃源郷雑技団』、『桐壷ラボ』など人外レベルの才能や超能力を持つ人間が閉鎖的な隠れ里に住んでいるような世界でした。
そして、その中でもおそらく飛び抜けて異質だったマリー=ゴールドの正体は『ヒロインズ・リザルト』で言及された情報生命体そのもの、彼女自身はいわゆる『エルサレム症候群』がモデルの一つです。『自分は救世主である=自分が世界を救わなければならない』という思想が場所に縛られず人から人へ伝播し、今回のように最終的には実際の世界の危機に対して人々の脳力(誤字にあらず)を一つにして立ち向かうという役をこなしてくれました。
いわゆる『主人公じゃなくたって世界を救おうとしちゃいけないわけがない』というやつですね。
この『主人公じゃなくても』というのは赤兎とライトの関係にも言えることで、単純明快一直線な赤兎を攻略の中心にしながらも物語の中心にはしない(実はゲームの目的をスカイがプレイヤーを誘導して楽しむことだという視点で見るとライトや鎌瀬側が中心)という全体として王道から一歩外したラインで物語を進めることで他のデスゲームものとは少し違った趣が楽しめていたらと思います。
中には『デスゲームなのに結局死んでねえのかよ!』という方もいるかもしれませんが、基本ゲーム中で死んだ人は現実世界に記憶が引き継がれていないので精神的に死んだということで勘弁してください。
『人生は終わらない』と締めくくったように、彼らは多くの物語での『世界は平和になり、能力も失って普通に大人になっていく』という道ではなく人外として、攻略者として、それまでの日常を突き抜けて未知数の世界へ進化していく道を選びました。
この小説のサブテーマ、というよりも作者の主義のようなものですが、『間違った道でも突き抜けて行けば新しい場所へ行ける』という感覚をより多くの方に感じてもらえていたらと思います。
長々と書きましたが、この未熟ながらも皆様のおかげで完結できた物語が、あなたの心や生き方に少しでも影響を与える疵を残せていたらと思います。
また近々全く新しい世界で長編作品を連載し始める予定ですが(二章までは一応書き終わっています)、それまでしばしのお別れを。
2019年4月29日。
新作『転生したので狂信します』の一章が投稿完了しました。
今作の続編ではありませんが、今作に負けず劣らずの個性的な主人公がお待ちしておりますので、気が向いたらどうぞお楽しみください。




