345頁:特集『あとがき』
これは『特集』の最後ではありますが、本編のあとがきではないので悪しからず。
小学生の時、私には二人のとても仲のいい友達がいた。
一人は男の子、もう一人は女の子。まだ異性とかを意識することはなかったから、男の子のハーレムとかってことはなかったし、誰が誰を好きとかそういうのはなかった。なかったからこそ、三人グループで普通に仲良くしていられたんだと思う。
ただ、まだそういうのがわからない頃だったから、今になって会っても互いがわからなかったってこともあるかもしれない。
一番変わってなかったのは、男の子……鎌瀬鋭次くんだった。
昔から背は低めだったし、よくいじめられてたし、泣き虫だったし、でもすごく優しかった。近所の老犬に変なものを食べさせようとする同級生にそれをやめさせようとして泣かされたりとか、まあそういう子だった。
少なくとも、悪い子じゃないのは知っていた。
パーティーメンバーを生け贄にして自分だけ見逃してもらうとか、そういうことをする人じゃないっていうのもわかってた。
あの時ばかりは結果から推理を後付けした、完全に私情で解決した事件だった。
変わらなかった鎌瀬くんに対して、一番変わってしまったのは七海ちゃん……ナビキさんだったと思う。
彼女が家族と一緒に乗っていた自動車が玉突き事故に巻き込まれて、彼女が長期入院を始めたのは鎌瀬くんが家庭の事情で転校してすぐのことだった。彼が事故のことを知らなかったのは、親の離婚とかでゴタゴタしてた時期だったからしょうがないかもしれないけど、それにしたって七海ちゃんの変化は大きかった。
昔はもっと活発で、男の子と見間違うようなところもあって、お父さんとお母さんのことが大好きだった。ナビキさんの別人格だったっていう、ナビさんの方が事故の前の彼女に近かったかもしれない。
彼女は事故で奇跡的に生き残ったけど、脳に大きな傷を負った。傷を治すための整形で顔つきも少し変わって、記憶もなくなって、性格も変わった。彼女が小学生の時の友達だったと言われても、きっと仲のいい友達だったとしても過程を知らなければわからない。
そして、私もナビキさんほどじゃないけど変わった。
私は、昔もっとチビだったし、いつも塾に行かされて眼鏡かけてたし、口数は少なかったし、男の子みたいな格好してた。両親は、頭が良かったけど事故で呆気なく死んじゃった兄さんの面影を私に求めてたみたいだけど、今思えば迷惑な話だ。おかげで今でも女の子らしくて可愛い服より中性的で真面目っぽい服装の方が落ち着く癖が付いちゃったんだから。オシャレするの好きなのに。
ただ、両親も私が中学生に入って急に成長期に入るとさすがに息子の面影を重ねるのが無理になったのか……というか、女子中学生に見えないような体型になっちゃった私を見て、ようやく本当に私を見てくれるようになったし、オシャレしても何も言わなくなった。私は常々自分を立派な女体にしてくれた遺伝子(両親に非ず、祖父母以前のご先祖たち)に感謝してきたけど、鎌瀬くんと再会した時ばかりは少し後悔した。
まあ、あの時の彼の精神状態じゃ私が昔と大差ない姿でもわからなかったかもしれないけど。
中学生の時は高校生に間違われた私の身体は、高校生になると大学生や大人と間違えられる完成度だったし、完全に年上だと認識されてたよね。
こっちも結構ビックリした。
何せ、本名でVRMMOにログインしてると思ったからね。後で聞いた話だと、両親の離婚で苗字が変わったから今は本名じゃないらしいけど、てっきりお父さんの方に行ったと思ったから意外だった。
まあ、おかげで『実は小学校の頃同級生だったけど憶えてない?』とか言うタイミング逃したんだけど。あの時そんなこと言っても騙して取り入ろうと思ってるとしか見えなかったよね。
おかげで味方と認識してもらうために変なキャラ付けしちゃったし……いや、キャラ付け自体はアサルトちゃんとか相手にも身内ロールプレイみたいな感じでやってたからいいんだけど、すごく胡散臭くて底知れない人みたいな印象つけちゃったのは失敗だったと思う。あんな忠犬みたいに懐くと思わないもん。昔からいじめられてるとこを助けてあげると泣きついてきて可愛かったけども。
でまあ、そんなこんなでそれまでケンカの仲裁とか示談交渉の立ち会いとか流れでやってたのを、本格的に探偵業立ち上げたみたいになって、逆恨みとかされたくないし犯人側の弁護もやってたら中立者的な名声が広まって、あれよあれよとギルド結成。
ダンクさんはまあ、あれだね……部活のかっこいい先輩ポジションだったというか、可愛いポジだった鎌瀬くんと別腹だったというか、時々相談に乗ってもらったりして、いつか好きになってくれたいいからそれまで迷惑じゃなかったら一緒にいさせてくれとか言われたし?
うん、認める。ごめんなさい、私は割りとお尻の軽い女です。少女マンガ読んで逆ハーレムとか憧れます。でも本命はやっぱり鎌瀬くんでした。
ていうか、私が別の男の人と付き合ったらもうちょっと嫉妬して怒ってくれてもいいと思うじゃない! 勝手に付き合っておいてなんだけど、結構あっさり受け入れられたことにショック受けたからね! それを相談したらダンクさんには『俺は当て馬か』とか苦笑されたけど。
まあ、そんなこんなで私はちょっと秘密を持ったまま鎌瀬くんと妙な距離感を保ってやってきた。
いつになったら気付くかな、なんて思って小出しに情報を出してみたら『どんどん心理分析されて過去を暴かれてる』なんて誤解されて彼の頭の中の私が余計にすごい完璧頭脳になっていくから答えから遠ざかっていったけど。
ちなみに、ナビキさんの方は完全に高校に入ってからの記憶、つまり事故後の私との記憶はなくなってたから最初に声をかけたときに警戒されて近付けなくなったから無理に近付くのはやめた。あの嘘吐きさんの方が警戒解くの上手かったし、あっちが先輩ポジションって言ってるのに無理に同級生だって言って話が矛盾したら余計に混乱させるからね。
ちなみに、さすがに彼女をいいように利用しようとしているのは見え見えだったから問い詰めたら土下座してくれたからまあ許した。なんか言いなりにするというより、自分を振り回してくれる相手を探してる感じだったし、無防備な彼女のいいボディガードになってくれるかもしれないと思ったからね……だから、あの結末についても特に言うことはないよ。私の見る目がなくて、私が助けられる状態になくて、事態が彼の手に負えなかった。彼一人のせいにして責任逃れするつもりなんてない。
まあ、彼の方はちゃんと責任とるつもりはあったみたいだし、実際頼んだら鎌瀬くんを助けてくれたからね。
私のオーバー100の固有技『残像投影』。
鎌瀬くんには『一人で暗い部屋にいることを条件に過去の遠い場所の写真を取る』なんて説明したけど、実は大嘘。
本当は『幽体離脱して念写する』っていう固有技。最期に触れた相手のところに霊体になって移動して、誰にもばれずに憑依対象者以外の全てを透過して写真を撮ったり記録をつけたりできる。その間、私の霊体……というか『本体』は他のものに一切干渉できなくなる代わりに無敵になる。
ミリアさんの固有技は正確に私の『本体』にダメージを与えようとしてきたけど、私は霊体が無敵になってたから、私は死なずに済んだ。まあ、代わりに無防備な脱け殻が残されちゃったわけだけども。
この技のことを知ってたのは、私が永い眠りに入る前は私自身と仮面屋ちゃんの二人だけだった。仮面屋ちゃんは、この固有技を使ってるときに意図せず素顔を見ちゃって、それを謝るために話さざるを得なかったんだよね。
なんで鎌瀬くんにも黙ってたかというと、まああれだね。鎌瀬くんも思春期の男の子だし、私に好意があるだろうとは推理できないわけじゃないし、一番信用してて私の部屋を守って貰いたいにしても肉体が無防備で眠ってて何してもバレないとか教えるのはさすがにね……それを何も気にせず教えられたら私は女の子として大事なものをどこかに落っことしてると思う。
というわけで、自分の心臓を締め始めた呪いの気配を感じた私はやむを得ず、『残像投影』で霊体化してHP全損を緊急回避したものの、何も手出しできずに私を起こすために頑張る鎌瀬くんの毎日をひたすら見守る守護霊みたいな存在になったのでした。
……ちなみに、さすがにいろいろプライバシーに関わる部分は壁に埋まったり床に頭つっこんだりして見ないようにしてたよ? お風呂の時に裸を凝視したりとか品のないことはしてないからね?
あと、キスは二回しちゃったけど、あれは必要だったから。リリスさんがあんな条件で呪いかけるのが悪い。ていうか『I want your love』で解呪ってなに? ちゃんと愛してあげろと?
まあ、それはともかくこの状態になると本当に何にも干渉できないから困ったものだったよ。
この状態の私を見つけた人たちはほんとすごいと思う。
マリーさんはどうやってかわからないけど、多分鎌瀬くんのステータスを見たときに確信したんじゃないかな?
で、あの嘘吐きさんは私の固有技をコピーして使って、同じ位相をのぞき込んできたからまあ裏技的な感じですごい。
リリスさんは一回目の解呪あたりで気付いたかな。
ミクさんは壁抜けして見てた感じでは、私の抜け殻に噛みつこうとしてたけど、その時に中身がないってわかったように見えた。あの時はさすがに結構冷や冷やした憶えがある。
で、ミリアさんは鎌瀬くんの固有技『斯くも美しきこの世界』のお陰で気付いた感じだったね。私は透過するけど、一応接触判定はあるから私が通り抜けた後は時間の止まってできた浮遊物が身体のある空間を出るまで移動する。そのせいで浮遊物が何もない空間が動いてるように見えてたんだろうね。
一応、どんな攻撃も透過するし完全に姿も見えないし音もしないし物も触れないから気付かないのが普通だよね。
まあでも、一応鎌瀬くんにも気付くチャンスはたくさんあったけど。
『TW2Y』こと『The World with You』だって、私が眠る前は使い慣れてなくて上手く使えてなかったと思ってたみたいだけど、実はあれもかなりのヒントだったよね。
技名を意訳すれば『共有する世界』。
つまり、誰かと一緒に時の止まった世界へ入る技。説明文にも、触れた相手と一緒にって書いてあったのに、鎌瀬くんは気付かなかったみたいだし。
あの技は本来、他のプレイヤーを巻き込まないと発動できない。単独では使えない固有技だ。
敵と触れ合った状態で使えば敵も動き、味方なら相当な訓練でもしていないかぎり満足に動けず戦闘の邪魔になる。
ある意味、裏切られるのが怖くて人を遠ざけてるけど、本当は触れ合いたい、触れ合う理由がほしいって願望のあった鎌瀬のための技としては最適だったと思う。
シャークさんが言ってた『オーバー100として見ても技のポテンシャルがおかしい』というのは、ある意味当然だ。だって、一番縛りになる条件を無視してるんだから。
尾行で使う時には手を繋いだりして一緒に動いたりしたし、彼が戦闘であの技を連発する必要のあるときはさり気なく触れて守護霊のごとく張り付いてたから、彼は動きを制限されずに行動できた。そして、あの技は私が眠ってからは常に接触した状態だったからいつも問題なく発動した。
まあ、説明文も解釈次第では一人で発動できそうだし、何よりやってみたらできちゃうんだからなかなか疑問に思わないよね。
毎回、技名が『貴女との二人きりの世界』みたいな由来だって意識するとちょっと恥ずかしかったけど。
恥ずかしいと言えば、私が聞いてるって知らないにしても鎌瀬くんの発言はいろいろと顔真っ赤になったりゴロゴロ悶えたりする部分はあったけど。
ていうか仮面屋ちゃん、私がいるって知ってて『好きだ』とか言うように会話持って行くんだから意地悪だよ。全部終わってから全部見てて聞いてたとか言いづらくなるのをわかっててやってるんだからたち悪い。
仮面屋ちゃんが私にそういう意地悪する理由もわからないでもないけどね。私が事前に調査結果を全部教えてたら結果は違ったはずだし。
でも、私が偶然辿り着いちゃった『成り代わり』の真実は無闇に拡散できる情報じゃなかったから、あの時はあの判断で間違ってなかったと思う。あの時ミリアさんの傍らにいた『不知火白亡』はかなり危なかったから。
まあ、あの時は私も個人としては特定できてなくて『攻略連合』の誰か、くらいまでしか確信できてなかったんだけど。司令塔というかブレインの性格は集団の動きからしてかなり危なかったのはわかった。
それも、かなり性質が悪い……『不知火白亡』は、本当に全体の動きを考える自分を『副官』、重要な能力を持ちながらも本当のことを知らないミリアさんを『司令官』にすることで、『釣り』をしていたのだから。
ことの本質とその重大さを知らないミリアさんは、本質を知っていて慎重に自分を隠す『不知火白亡』よりも早く、真実を求める者に見つかる。言わば盾であり影武者だった。下手をすれば命を狙われてもおかしくない立場に彼女を置き、真の黒幕である『不知火白亡』はミリアへと過度の警戒を見せるプレイヤーをその利発さと油断を誘う容姿や年齢を武器に仕留めていった。
『成り代わり』は人間の高精度なコピーだけあって『成り代わる』以外での殺人行為には生身の人間とそう変わらない程度の忌避感があるけど、元々人間としてそうだったのか『不知火白亡』は自分の陣地に取り込めないとわかると間接的な方法でこそあるけど容赦なくプレイヤーを殺した。私が不用意に核心に近付けなかったのは、そういった不審死の痕跡がいくつも見つかったせいでもあった。
ある意味、ミリアさんへの敵意ではなくある種の尊敬を持ってその傍らにいた『不知火白亡』を直接狙い撃ちにした仮面屋ちゃんは運が良かったと思う。そして、大局的に見て、良くもあったし悪くもあった。
偶然の流れ弾に近い形で『不知火白亡』が舞台から引きずりおろされたことで、『成り代わり』の戦略的行動力、諜報力は下がってかなり攻撃性が落ちたし、以前の状態なら鎌瀬くんは核心に触れることはできなかったはずだ。
だけど、罠にかからなかった代わりに事を焦ってしまった仮面屋ちゃんはミリアさんという真実に触れさせてはいけない爆弾を抱えてしまった。
ぶっちゃけ、私が囮構造を知ってて仮面屋ちゃんはその潜入スキルでミリアさんと『不知火白亡』まで辿り着いてたんだから、ここの段階で情報共有してたらこんな複雑な事態にはならなかったよね。
ただ、私たちは友達であっても全ての情報を共有できるほどの信頼はなかったし、というか実を言うと仮面屋ちゃんの義手やら改造チップやらが明らかにオーバーテクノロジーでこのゲームの運営に繋がってるんじゃないかって疑ってた部分もあるんだけど……鎌瀬くんとの会話を聞く限り、運営と関わってたとしてもナビキさんと同じように『不幸な事故に遭った都合のいい実験台』だったんだと今では思ってる。疑ってごめん。
鎌瀬くんはミリアさんの失敗を『疑わずに盲信したこと』って言ってたけど、それを言うなら私は『信じるべき人を信じきれなかったこと』が失敗の原因だったんだろうね。結局、鎌瀬くんにすら本当の固有技を教えてなかったせいで心配かけ過ぎたわけだし。
『成り代わり』の被害が拡大したのも仮面屋ちゃんだけの責任じゃない。生身の人間と同じくらいの殺人への忌避感を抱く『成り代わり』も、生身の人間と同じくらいに道を踏み外しやすい。正体露見を防ぐためなら殺人もやむなしと考える思想も『成り代わり』の中で伝染して過激派を作っていたくらいに。シャークさんを狙った彼らも、私と仮面屋ちゃんが早期に協力して『不知火白亡』に対処していればあんなことはしなかったかもしれない。
反省会はこのくらいにしよう。
余分な懺悔は罪悪感を減らす鎮静剤にしかならない。私は自分の罪は過不足なく受け止めるつもりだ。
事件は終わった。
事件の大きさに釣り合わなかった探偵の代わりに、弱虫で泣き虫だけど頑張り屋で努力家の少年が事件を解決した。
たくさんの犠牲が出た、最前の答えを出せなかった局面があった、誰もが何かを間違えて、失ったものに見合った者を得られた人はきっといない。
それでも、事件は終わった。
犯人は罪を告白し、握っていた心臓を全て手放した。
ならば、探偵の出番はもう終わりだ。誰が悪かったかを探す物語はもう終わり。
だから、ここから始まるのは別の仕事。
誰が悪いかではなく、何が悪かったかを探す仕事。
こればかりは、鎌瀬くんに押しつけるわけにはいかない。
《12月30日 DBO》
『同盟』の用意した簡易法廷に足を踏み入れる。
視線が刺さる。
でも、一番厳しい視線を受けているのは私じゃない。
明らかに赦されないはずの罪を犯した被告人を弁護しようなんていう物好きを糾弾するより、被告人本人を見る目の方が厳しいに決まっている。
悪意がある。
敵意がある。
恨みがある。
偏見がある。
殺してしまうべきだという思いがある。
死ぬよりも恐ろしい目に会うべきだという言葉がある。
まあ、そういう考え方もあるだろう。
でも、みんな勘違いしてるはずだ。
彼女は怪物じゃないし、あなたたちは神様じゃない。
鎌瀬くんが自分の命を懸けてでも作った『正当な裁き』を受けさせるチャンスを、不意にしてたまるものですか。
語って、教えて、理解させてあげよう。
彼女の苦悩を。
事件の真相を。
鎌瀬くんと違って、彼女を止められなかった、彼女に罪を重ねさせてしまった私たちの無能ぶりを。
「どうも皆さん。この度、被告人の弁護を請け負ったワトソンと申します。この一連の事件の解決までを傍観し記録した者として、被告の罪とそれに相応しい罰を計るのにご協力させてください」
オーバー100『残像投影』。
霊体化し、発動前の最後に触れたプレイヤーに取り憑いて写真を撮ることができる固有技。霊体側は実体を持つ物体に一切の干渉ができないが、その代わりにあらゆる知覚や探知を含めた干渉を透過し、影響を受けない無敵状態になる(ただし、当たり判定は肉体側に取り残されるのでそちらがHP全損すれば死ぬ)。
尾行調査に関して言えば文句なしに最強の能力。
取り憑いた相手とはへその緒のようなラインが繋がるため、行動範囲が制限されるが短時間ならラインを引っ張って距離を伸ばせる(時間の限界と距離の限界は反比例するので長く離れすぎると憑依が解除されてしまう)。
憑依中は何枚でも写真が撮影でき、その時の状況や尾行を記載できるメモ欄の付属したアルバム(見た目は写真付き絵日記のような形式)を技の解除時に自動作成する。
メモ欄は自由に記載でき、文字数が一定を越えるとテキストファイルとして圧縮されるのでほぼ無制限に書ける。
・補足
なお、12月29日の固有技解除時に作成されたアルバムは証拠品としての信用度を確認するため作成直後にライトに没収され、鎌瀬の行動や周辺情報と矛盾がないことを確認された上でメモリの脳に記憶された。
注意するべき点として、アルバムのメモ欄に記載された内容は『悪人の罠にかかって呪いを受け醒めない眠りについた「恩人」という名で呼ばれるヒロインが彼女を慕う主人公の少年の活躍によって呪いを解かれ、最後には永遠の眠りから救い出される』という、事実を歪めない範囲で脚色が施された物語形式で記載されていたことが挙げられる。膨大な文量と主観性を欠く解釈の防止のために周辺情報と照らし合わせ信用度の高い部分をまとめた要約が作成され、翌日の裁判に証拠として採用された。
ちなみに、記録の作者であるワトソン氏は『他人に読ませるつもりはなかった。他にできることがなくて暇だったのが悪い』と脚色に関する詳しい動機の説明を拒否。また要約が作られたのを確認し原本を焼却しようと試みたが、重要な証拠品であるため既に原本のコピーを複数作成し『同盟』の裁判に関わる各部署に配布されたことを知らされると膝から地面に崩れた後、二時間ほど自室のベッドで毛布をかぶり動かなくなった。
また、その隣に用意された部屋では証拠品の確認として渡されたコピーの一部を読んだ鎌瀬少年が同じように活動を停止していたことをここに報告する。
このオチがやりたかった。
あとがきの後書きでの長文で申し訳ないです。しかし後悔はしていません。




