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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第二章:戦闘編

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31頁:火を使うときは火事に気をつけましょう

 次回から、オマケコーナーテコ入れします。

「『他人の望む未来が読める予知能力』?」


「オレの師匠の言い方だとそうなる。あの人少年マンガとか大好きだから」


 二日前の夜、ライトの答えにジャックは困惑を示した。それはジャックの知る『予知能力』とは方向性が異なっているように思ったのだ。


「えっと……直接聞けばよくない?」


「何気にヒドいこと言うなよ。まあ確かに、師匠によると予知と言うより読心テレパス)の派生系らしいが……」


 他人の望みさえわかればそれに合わせて行動できる。そうすれば、その未来を間接的に実現することも出来るし、場合によっては逆に妨害も出来る。


「そういえば、よく話に出てくる『師匠』って何者? まあ、多分普通の人じゃないんだろうけど」


 すると、ライトは少し顔をほころばせてこう言った。


「オレに『人間』を教えてくれた恩人だよ」







《現在 DBO》


 グツグツ……グラグラ……


「ねえライト……あと、どのくらい?」


「頑張れ、あと十分だ」


「うぅ……腕痛い、熱い」 


「終わったらアイス買ってあげるから」


「く……」


 巨大な鉄鍋のすぐ近くの台に乗って鍋をかき混ぜる二人。

 下から上がってくる熱、鍋の湯気、腕を酷使する重いヘラ。


「これ地味にキツいよ」


「これをクリアしないと医者にはなれないよ」


「……これ、医者と関係なくない?」




 約一時間前。

「そういえば、ライトって職業なんなの? いろいろ生産系のスキルもってるけど、やっぱりなんかの生産職?」


 工房を使い終わったライトが戻ってきたとき、ジャックはライトに問いかけた。

 直前までのチイコとの会話で気になったのだ。職業さえわかればライトのプレイスタイルの傾向くらいはわかるかもしれない。


 だが、返答は意外だった。

「オレ? 『無職』だけど?」


「……は? あんだけスキル持ってて無職!?」


 ジャックは武勇伝からてっきり『大工』あたりになっているかと思っていたのだが、ライトは全くそんな様子は見せていない。店とかを作ったならそろそろレベル100にはなっていると思うのだが……


「そんなこと言われてもなあ……黒ずきんは職業あるのか?」


「え、えーと……ない」


「じゃあ人のこと言えないだろ」


「違うの!! やりたいことが無いわけじゃなくて、スキルのレベルが上がらないだけなの!!」


「何になりたいんだ? 『ナイフスキル』か『隠密スキル』の暗殺者か? それとも『忍術スキル』の忍者か?」


 ライトはジャックの戦闘スタイルに当てはまりそうな職業を挙げていく。しかし、ジャックの反応は『違う』と言っていた。


 一通りライトが職業を挙げると、ジャックは少し恥ずかしそうにフードで顔を隠して一言だけ言った。


「……お医者さん」


「ああ……そういうことか」


 医者になるには『医療スキル』を上げなければならない。

 しかし、ライトとジャックは戦闘でひどいダメージを受けることがほとんどない。治療してスキルを上げるにも患者がいないのだ。


 しかも、『医療スキル』を十全に使うためには包帯や薬などの消耗品が必要になる。おいそれとは上げられないし、下手をすれば既存のポーションの方が安上がりになる。


 最近では東の魔法国から魔法が流入して回復魔法も確認されている。現在『医者』はマイナーな職業なのだ。


「いや、不便なのはわかってるよ? 一応急所ダメージの底上げもあるみたいだし、やっぱり親が医者だからやってみたいな……って」


 ジャックは戦闘職として素晴らしい才能を持っているが、それが夢と一致するかは別問題だ。むしろ、戦闘向きでも援護向きでもないどっちつかずの変則ビルドになりかねない。


 だが、ジャックはそれでも躊躇しながらも『やってみたい』と言えるほどには意志を固めていて、もう『医療スキル』も修得しているのだ。


「『調合スキル』。温泉地だから『医療スキル』派生技能『針治療』『指圧』『お灸』たしかそこら辺の情報があったな……この町」


「え、それって……」


 今まで、クエストで手に入る『条件付き派生技能』はコンプリートした『主だったクエストの情報』にはあまり入っていない。前提的に全てのプレイヤーが持つ『拳術スキル』の『瓦割り』、戦闘系の定番『ナイフスキル』の『鎧通し』などの多数のプレイヤーの利益になるものはコンプリートしているが、マイナーなスキルの派生技能は効率的に考えてとばしている。


 だが、それでもライトはスカイに入った情報は大抵知っているのだ。そのライトが、この町で手に入る『医者』に役立ちそうなスキルや技能を挙げている。


「緊急医療の技術じゃなくてもスキル自体は成長するから、取っといて損はないだろう。それに、医者として使う長期で見れば薬は自作した方が安上がりなはずだ」


「……じゃあ」


「どちらにしろ攻略本のために情報は集めるんだ。客のほしがるメジャー情報じゃなくても、ちょっとそっちを優先させるくらい問題ないだろ」





 クエスト『飽食の魔女の秘伝レシピ』。

 薬の材料を切って入れた鍋を焦げないように一時間かき混ぜ続けるクエスト。完成すれば『調合スキル』と一度だけEPを全快させる《魔女の栄養剤》が手に入る。



 そして、冒頭の十分後。

「やった!! ボクはやったよ、ライト!!」


「ああ、これで医者への道はかなり近づいた……あ、そういえばまだ誰も成し遂げてない『飽食の魔女の秘宝』ってクエストもあったような……」


「もう勘弁して!! 今は基本的な薬さえ作れたら良いから!!」


 そう言ってジャックはクエストで手に入れた《薬物調合レシピ入門》という本を見せつける。ジャックは一緒に小さな鉄鍋ももらっており、本に書かれた材料を鍋で混ぜて自分で薬を作れるようになったのだ。


「あ、そうだ。約束通りアイス」


「ああ、そうだったな。でももう少し涼しい場所に行ってそこで買おう。ここじゃすぐ融けるから」


 この町は地熱で暖まっている……というより、地面の所々から噴き出している炎で暖まっている町だ。なんでも、NPCの話によると大昔にこの町を訪れた〖火種の魔女〗という強力な魔女が、そのときは冬だったため暖をとろうと魔法で『消えない種火』を作ったため、その炎が今でも残っているという言い伝えがあるとか……なんともはた迷惑な魔女である。


 ただし、設定はともかく今はその炎がこの町の名物となっている。


 噴き出す炎にはそれぞれに固有の温度があり、プレイヤーやNPCはそれを使って製鉄や料理、薬の調合やガラスの加工などを行っている。


 わざわざ地面から噴き出す炎を使わなくても良いと思うかもしれないが、高い熱量を出し続けようとすると薪代が馬鹿にならない。高品質な金属を鍛えたければそれに見合った温度が必要になり、この町ならそれがタダで利用できるのだ。


「はあ……生き返る。ここ数年夏は病院だったから熱いの慣れてないんだよね。温泉は好きだけど」


「まあ分からないことはないな……さて、オレはスカイのお遣いを済ませてくるから、ジャックは派生技能取ってこいよ」


「いいの? パートナーなんだしボクもクエストに行った方がいいんじゃない?」


「この町のクエストは大抵生産系の内容だから、オレなら持ってるスキルですぐ出来るよ。夜になったらチョキちゃんと同じ宿屋で落ち合おう」


「わかった、しっかりやる」


 この町には『暗視スキル』を含め、攻略本に載せるべき情報が沢山ある。ライトの方も時間がかかるだろう。

 この日、二人は日が暮れるまで別行動だった。




 その夜。

「あー、誰か疲れてる人いないかなぁ」


 無事に派生技能『針治療』『指圧』『お灸』を修得したジャックは宿の玄関の酒場で夕食を摂っていた。


 現在、ジャックのスキルには『医療スキル LV45』があり、主に応急措置、針治療、指圧、お灸ができるのだが、商人などと違いスキルの練習台はなかなか見つからない。ライトもまだクエストをやり続けている。


 宿屋の中には入り口には簡素なカウンターがあるだけの小規模なものから、酒場などの飲食店が玄関で営業している大規模な宿まである。ここは後者だ。


「あ、黒ずきんさん!! 一人?」


「うん、一人だけど……チョキちゃん、ちょっと揉んだりしてみていい?」


「ちょっと、いきなり何!? もしかして黒ずきんさんってロリコン!? 百合!? それともマリーねえみたいなタイプ!?」

 チイコは胸を手で隠す動作をする。それを見て笑ったジャックはすぐに誤解を解く。


「いや、ただ単に怪我人とか疲れてる人とかでスキルの練習したいだけだよ。でもなかなか居なくてね……」


 町の中なら、大抵のプレイヤーは病院か教会て回復しているのでなかなか丁度良い負傷者がいないのだ。


 至って健康そうなチイコもスキルの練習台にはならないだろう……そう思っていると、チイコはしばし悩んだ後、周りを気にしてからジャックに耳打ちした。


「ねえ、『ヒト』じゃなくてもいい?」




 ジャックはチイコに連れられ、町の端の小規模な岩石地帯に来た。ただし、チイコの希望でライトにも何も言わずに来ている。


 岩山は所々から突発的に火が噴き出していて、チイコ以外のプレイヤーが来ることはほとんどないらしい。


「本当にこっち? 患者が居るのって」


「うん。とにかく付いてきてー、あとあたしと同じところ通らないと危ないよー」


 ジャックはチイコと全く同じルートで岩石地帯を進んでいる。道が入り組んでいて視界が通らないので、すぐ近くで追いかけなければならないが、一度も炎にはさらされていない。チイコは炎の出る場所を熟知しているらしいのだ。


「この先に何があるの?」


「あたしの秘密の場所。ライトさんにも言っちゃダメだよ?」


「秘密基地? まあ、ボクも昔は作ったけど……」


 チイコの秘密基地は炎の迷路があるため秘密の機密性が違う。


「このままだと町の外に出ちゃうよ」


「うん、あそこは安全エリアの外側になってるから」


 あれ? もしかして罠に嵌められる途中?


 などとジャックが思い始めたとき、前のチイコから声がかかった。


「着いたよー、でも、ちょっとそこで見ててねー」


 チイコが先行してその『秘密の場所』に入っていく。ジャックは取り敢えず岩陰からその様子を見た。すると、そこには予想もしなかった光景があった。



 食料らしきアイテムの入った袋を取り出して躊躇なく前進するチイコ。

 そして、その先にいる子象型モンスター〖ツールエレファント LV12〗。今は何も持っていないようだが、初めて投擲で遠距離攻撃をしてくる序盤では少々厄介な敵モンスターだ。


「な……」


 ジャックは声をあげそうになったが、チイコは迷わずツールエレファントに歩み寄り、袋からパンの欠片らしき物を取り出して手に乗せて差し出した。


「ファンファン、食べて」


 ジャックはチイコが襲われたらすぐにでも助けにいけるように身構えたが、敵であるはずの〖ツールエレファント〗は大人しく差し出されたものを食べた。


 そして、チイコは振り返る。

「紹介します。あたしの友達のファンファンです。この子の怪我を治してください」




 ファンファンと呼ばれた〖ツールエレファント〗には深い傷がいくつもあった。ジャックは『医療スキル』で薬や包帯をあてがいながらチイコの話を聞く。


 まず、チイコがここを見つけたのは製鉄に使えるより強い炎を探していた時らしい。町の敷地からはみ出してフィールド扱いだったが、岩に囲まれて外からは易々とは入れない場所だった。


 最初は逃げ出そうかとも思ったが、怪我をしていることに気付いて恐る恐る近寄り、試しに持っていた食べ物を与えたところ食べてくれたのだという。


「それからは毎日こうやってご飯をあげてるよー、《パンの耳》が好きなんだけど人気だから早起きしないと売り切れちゃうんだー」


 〖ツールエレファント〗……ファンファンはHPのダメージより局所的な部位の破損が激しい。そちらは市販の回復ポーションではなかなか治らないのだ。


「でも、傷が治って動けるようになったら襲ってくるかもしれないよ? いいの?」


「それはイヤだけど……やっぱりそれでも元気になってほしいな」


 チイコの目に迷いはない。

 ジャックにはこの事態がつかめている。

 モンスターが仲間になる種類のイベント『テイムイベント』だ。このまま進行すれば、ファンファンはまず間違いなくチイコのものとなる。


 だが、チイコはそんなイベントを予測して損得勘定しているわけではなさそうだ。ただ単純に怪我をしているから助けたいと思っている。


「うん、治るよ。体力もあるし元々回復しかかってた。このくらい応急処置ですぐ歩けるようになる」


「ホント? 良かった!」


「でも、本当に良いのかな?」


 ジャックはチイコに疑問を投げかける。


「本当に? どういうこと?」


「どんなに仲良くなってもこの子はゲームの世界からは出られないんだよ? それなら惜しくならない内に忘れてもいい、なんならボクが……」


「いつか『ゲームの中で何があったのか』って聞かれたら、黒ずきんさんはなんて答えるの?」


「それって……」


 人伝だが聞いたことのある台詞だ。

 ライトが二千人の前で匿名で叫んだ台詞。


「あたしたちはあの日決めたよ。みんなで『大変だったけど楽しかった』って言いたいねって」


 撫でられていた〖ツールエレファント〗が動き出す。だが、チイコは強い意志でそこに居座り続ける。


 そして、チイコの目の前に『テイム成功』の表示が出る。


「この子を治してくれてありがとう、黒ずきんさんは良いお医者さんだね」


 その笑顔はジャックには眩しいものだった。






「でも、遅くなっちゃったね。ライトもさすがにそろそろ宿に帰ってきてるよね」


「ファンファンのことも、どう説明しようかな……宿で飼えるかな?」


「パオーン」


 道行く人が皆振り返る。それもそのはず、チイコはテイムした〖ツールエレファント〗に正式に『ファンファン』という名前を付け、そのまま引き連れて……というより、乗って工房が付属している宿に向かっているのだ。


 最初は横一列だったのだが、火の噴き出す岩石地帯で狭い道を通るとき『乗って上から指示した方が良くない?』と試しに乗ってみたら定着してしまったのだ。

 怪我をしているファンファンに乗るのもどうかと思ったが、チイコが降りようとすると落ちると思うのか鼻で支えてくるためそのまま宿に向かっている。


「きっとこの子を見たらライトさんビックリしするねー」


「いつも驚かされっぱなしだから、たまにはそれもいいんじゃない? サプライズってや……何あれ!?」


「あ!! ライトさん!?」


 宿が見えてきたとき、二人は唖然とした。


 そこにいたのは《金鎚》と《砥石》を手に立つライト、そしてその周囲に倒れるそれぞれ武器を構えた三人のプレイヤー達。


「あ、二人とも遅かったな。あれ? どうしたんだその象!」


「「どうしたんだはこっちのセリフだ!!」」




 同刻。

 『時計の街』の内部のほぼ4時の方向に位置する、周りの建物の大きさなどから陰になりあまり目立たない通称『隠れ家』。


 そこには、一般的なプレイヤーも多かったが、少々柄の悪いプレイヤーも増えつつあった。


 その中には、前線のクエストボスがドロップするような高級装備で身を固めたプレイヤーもいた。


「ロロのダンナ、また三人入りましたぜ。これで16人でさ」


 『ロロ』と呼ばれたプレイヤーは声をかけてきた男を見る。いかにも下品な無法者という様相だが、実はあえてそんな格好にしているということを彼は知っている。


「そうか、じゃあ手はず通りに」


「へい、前金を渡して早速仕事に当たらせます」


「『狩場』の方は押さえてあるか?」


「バッチリ独占させてますや。資金の方は当面問題ありやせん」


 彼は三日前からとにかく部下の数を増やすために活動している。だが、そろそろ数だけでなく質も上げたい所だ。


「『スカウト』の人員を増やせ。ただし、下っ端は十分だから勧誘の相手はなるべく使える奴を選ぶように言え。それと、どうしても必要なら手をだしてもいいが、金で頷くなら金を使え」


「そうですか、では周囲の町に行ってる奴らにはそう連絡しますや」


 事務的な連絡を終えると男は連絡を回すために下がっていく。


 残されたロロは誰にも聞こえないように呟いた。

「ありがとう金さん、俺もデカいことできそうだよ」

(イザナ)「あなたは……スカイさん!!」

(スカイ)「こんないいスペースをギャグで消費するなんてもったいないわ。『大空商社』のコマーシャルコーナーにしたいの」

(キサキ)「そ、そんなことをされては……私達の出番がなくなります! それに、ここはNPC専用空間のはず……NPCしかここへのルートは知らないのに……」

(スカイ)「あなたはこのコーナーを降りなさいキサキちゃん。もはやここは『キサキの部屋』なんてコーナーじゃないの。ショッピングコーナー『大空通信』よ!!」

(キサキ)「何故私だけ……それにまだ、どうしてここに来れたかの答も……」

(スカイ)「さあ、どうしてかしらねアシスタントさん……いや、『道案内NPC』のイザナさん」

(イザナ)「イザナで良いですよ、新コーナーの支配者さん」

(キサキ)「イザナあんたここの場所を売りやがっ」

(スカイ)「警備員さ~ん、ここに関係者じゃない子がいるんで強制退場させてくださ~い」


(イザナ)「次回より、新コーナー『大空通信』が始まりま~す!!」


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