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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第二章:戦闘編

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24頁:手当たり次第にクエストを受けるのはやめましょう

この前、初めてのコメントいただきました!!

本当にありがとうございます。

読んでくれる人がいると実感できると力が湧いてきます。

 7月のある日、ミカンはゲームをしながら夏休みの宿題をしている正記に話しかけてきた。


「どうして勉強なんてしてるの? せっかくの夏休みなのに」


「いきなりやる気なくなる事言わないで下さい」


 今回のゲームはタイトル的にほのぼのとした日常系ゲーム……と見せかけたR20指定のゲームだ。時折、少女が喘ぐような音声が聞こえてきてより勉強に集中できない。


「別に答え写せばすぐでしょ? なんならセキュリティー外して見やすくするけど?」


「さらっと犯罪宣言しないでください。てか、それもロック外したんですか?」


「友達にこういうの得意なのがいるからね……あ、もう堕ちちゃったか」


「隣でやるならせめて健全なゲームにしてください!!」


 立体映像で触手やらなんやらが見えたが、見えなかった事にした。


「じゃあゾンビゲームにでもしようかな」


「健全じゃない上、オレの前でゾンビ殺しまくるとかどんないじめですか?」


「いや、ゾンビ側で人類滅ぼすゲーム」


 オープニング映像から大量の悲鳴が流れる仕様だった。しかも、ゾンビも人類の抵抗でどんどん死んでいく。


「どんだけ勉強させたくないんですか」


「そんな無駄な時間過ごすより遊ぼー」


「ぐあっ、アイアンクローはやめてください!!」


 とてもじゃないが集中できない。

 正記は諦めてアイアンクローからの脱出に全力を尽くして抜け出した。というより、ミカンが正記が勉強をやめたのを見て離してくれた。


「痛い……まだ痛い」


「第一、勉強なんてしたらまた職員室に呼ばれるよ。キミはしたいことしてればいいの」


 ミカンのその言葉に対して、正記は頭を抱えながらささやかな反抗をした。


「したいことを思いついたら、その時にはちゃんとやりますから、その時は黙って見ててください」


「はいはい、ちゃんと見守ってあげるわよ」






《現在 DBO》


ジャックは困っていた。

「………………」

「………………」

「………………」


 気まずい。

 目の前には二人の中学生。男女だが顔つきが似ている……兄妹、姉弟、いや、双子かもしれない。


「さ、冷めないうちにどうぞ」

「えっと……おいしい……はずです」

「あ……じゃあ、いただきます」


 ジャックは目の前の料理に手を付ける。

 確かにおいしい……自分自身で作ったものよりおいしい。


 ほぼ純粋な戦闘職のジャックが『料理スキル』を修得したのは純粋においしい物を食べたいからだ。


 この世界で思う存分、食べたいものを食べて、やりたいことをやる。


 その中で、一週間くらいならライトの『クエスト巡礼』に付き合うのも悪くないと思う。このゲームに全力で向き合って、本気でプレイするのもまあ悪くない。


 だが、ライトの出した『提案』がこの交渉を難航させた。


『ゲーム攻略の功労者として、攻略本に名前を載せよう』


 ライトにとっては最大限の謝礼のつもりだったのだろう。だが、ジャックはそれを聞き気づいたのだ。ライトとクエスト踏破なんてすれば目立ってしまう。


 ジャックはこの世界で有名になりたくはないのだ。


 そこでと、ライトはジャックをこの二人の料理人のもとに連れて来てもてなすように言った。そして、問題はライト自身が『帽子をとってくる』と言ってどこかに行ってしまったことだ。


 接待以前に、初対面の人間二人と一緒にされてどうすれば良いというのか?


 会話の糸口が見つからない。

 このままライトが戻ってくるまで沈黙しているのは耐えられない。


 ジャックがどんな話をしようかと思っていると、マイマイが突然口を開いた。


「あの……ライトさんとはどんな関係ですか?」


 ジャックはすぐに答えようとして……答えられなかった。今のこの『接待』はその『関係』を決めるものだからだ。


 なので、取りあえず事実だけを述べる。

「一緒にクエストを一つやったくらいの浅い関係だよ。それだって『どっちが多く狩るか』って勝負……遊びみたいなものだったし」


「ライトさんと勝負したんですか!? どっちが勝ちました!?」

 突然ライライが話に食いついた。


 ジャックは思い出しながら答える。


「正確な数はわからないけど……たぶんボクの勝ち。少なくとも最後はボクが仕留めたし」


「「ホント!?」」


 双子は息をそろえて驚く。


 そして、顔を見合わせてから頭を下げた。


「「お願いします。ライトさんに協力してください」」


「……な、なんなの、いきなり?」


 双子は真剣な眼差しでジャックを見つめる。

 そして、改まって話し出す。


「ライトさん、最近すごく頑張ってるんです。スカイさんの店が出来てからは落ち着くかと思ったんですけど……」

「皆で休ませようとはしてるんです。でも効果なくて、スカイさんなんて貨幣が減っちゃうのを理由に入荷の時間と量を制限するぐらいで」


「貿易摩擦レベルなのか」


 情報料に関しては借金からの差し引きなので制限出来ていない。スカイも攻略本の確認作業を考えてあえて制限していない。


「スカイさんが言うには『パートナーがいれば多少ペースを合わせる』そうなんですけど、わたし達なんかじゃとてもじゃないけどついて行けないくて……」

「スカイさんくらいの人じゃないとパートナーどころかお荷物で、とてもパートナーなんて申し込めないんです。スカイさんは店を離れられないし」


 仕事病。

 休むことができない病気。

 その結果があの大量のスキル。


 ライトの周りの『皆』は不安なのだろう。いつか突然電池が切れるように倒れてしまうことが。


 つまり……

「ボクにライトの『足を引っ張れ』ってこと?」


 双子は黙って頷く。

 冗談の顔ではない。


「ライトさんと互角に勝負できたんだったら、きっとライトさんもパートナーにしてくれます」

「時々縛り上げてでも、休憩させてください」


 それは割と必死の懇願だった。


「……なんでそこまで必死なの? 強制されてるならともかく、本人の裁量で働き過ぎて死んだとしてもそれは彼の自業自得じゃないの?」


 ライト一人の死でプレイヤーが全滅するわけでも無いだろうに、双子の想いは知人の一人を心配しているというレベルではない。


「ライトさんは表には出てないけど、この街を救ってくれたんです」

「ライトさんはこの街のプレイヤーに希望を与えてくれた、舞台裏のヒーローなんです」

「でも、自分の活躍は伏せて全部スカイさんとわたし達に手柄を譲ってくれて……」

「本当はライトさんが一番すごいのに『オレは手伝っただけだから』って……」


「手柄を譲った?」


 ジャックはこれまで、宿もアイテムも少しだけグレードの高い周辺の町を転々としながら、主に安全のためレベル上げに勤しんでいた。


 この周辺にしてはやたらレベルが高いのは、得意なVRMMOの経験を生かして上手く効率のいい狩場や良いアイテムを見つけているだけ。後は持ち前の戦闘技術だ。


 そんな風に周囲の町を動き回っていると、聞こえてくる噂がある。


『あるプレイヤーの売り出した攻略本が、絶望していたプレイヤー達を救った』


 ジャックもその噂が気になり一度『時計の街』に来てみたが、確かにその空気は前のように沈み、荒んだものではなかった。それぞれ出来ることを探し、取り合うように前を目指していた。


 その時、一度スカイの店に客として赴き、スカイを見かけている。最初は、初日に武器屋にいたプレイヤーだと思っただけだったが、客を上手く回す手腕を見て噂話に確信が持てた。


 しかし、その裏にあのライトがいた?


 別の噂ではこう聞いたこともある。

『情報料目当てで狂ったようにクエストを受けまくっている奴がいる』


 それは攻略本の影響の一例として語られているが、本当はその逆。

 ライトこそが攻略本の真の著者。


 ライトの『攻略本に名前を載せる』という提案を思い出す。あれは出版しているスカイに個人的なコネがあるから頼むと言う意味かと思っていたが、本当は『著者の協力者』として書き添えたかったのだ。


 ライトの評判はそこまで高くない。良くても『あのスカイの下で働いている部下』程度のものだ。ジャックは見ていないが、サーカスでの演劇の後のスピーチも攻略本の話題に押し流され、伝聞で志だけが本と共に伝播している。


 そんな彼が、働き過ぎで死ぬなんて不憫すぎる最後ではなかろうか?


「「だからどうかお願いします!」」


「…………」

 ジャックは考える。

 働き過ぎで死ぬのは勝手だ。誰も悪くないし、人はいつか死ぬのだから、したいことをしながら死ぬのもいいだろう。


 しかし、それを許してしまうと自分のせいで殺したことにはならないか? しかも、ただ殺すのではなく、孤独に自滅させるという陰湿な方法で。もちろん、別のパートナーくらいすぐ見つかるかもしれないし、そこまでする前に自制するかもしれない。


 だがしかし、万が一の場合は取り返しがつかない。そんな陰湿な真似をすれば、この大切な『ジャック』の名前を汚してしまう。


 ジャックは答えを出した。

「『足を引っ張る』なんて出来るとは思えないよ、だってボクの方がすごいんだからさ」


 双子の顔が一瞬キョトンとした後、急激に明るくなる。


「格の違いを見せつけて、そんなやる気へし折ってやるよ」




 その数分後、ライトは新しい帽子を被ってかえってきた。ただし、装備が少し傷ついている。そして……


「ただいまー」

「うわっ、HPバー真っ赤!!」

「「どうしたんですか!?」」


「いや、ちょっと油断した。まさかアイツ、あそこまで強くなってるとは……」


 ライトは新しい帽子をしっかり手で押さえる。


 ジャックは次からはライトの帽子には気をつけようと心に決めた。





 その直後、ライトの後ろから幼い少女の声がした。そこに注目が集まる。


「あの、本当に頼んでいいんですか?」


「うん、でも少し待ってイザナちゃん。もう一人手伝ってくれるかもしれないから」


 赤毛の少女NPCを背に、ライトは申しわけなさそうに言った。


「悪いな、少し手間のかかりそうなクエスト受けちゃった」


 ジャックはまだ、この先の一週間がどれだけ波乱に満ちたものになるか想像もできなかった。

(イザナ)「どうも、NPCメールのコーナーです」

(キサキ)「お便り路線で行くことにしたの?」

(イザナ)「聞いてキサキちゃん、ひさしぶりに私出番だよ!!」

(キサキ)「まさかの世間話。あと、私には出番無いのになんでイザナだけ……」

(イザナ)「あ……ごめん」

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