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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第六章:ダーティープレイ編

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244頁:特集『終戦! ボス攻略作戦!』

 ちなみに、赤兎の固有技『ドラゴンズブラッド』(無敵モード)と、アイコの『モンクバリスタ』はコンボの相性の良さで決めました。

 ある意味、戦闘開幕時みたいにアイコが赤兎を誰よりも手加減なくぶん投げてるシーンが一番のカップルアピールかもしれないと思い始めています。

 鎌瀬が自身の方へ向かってくる青い三つの点をマップ上で見つけたのは、EP残量を確認したときだった。


 本当なら、そんな動きがわかるほど悠長にマップなど見ていられる状態ではなかったのだが、その動きがあまりに特徴的で一瞬で動きを認識できてしまった。


(迷宮をすごい速さで……しかも、壁を無視してほとんど真っ直ぐこっちに進んできてる)


 敵ボス『キング・オブ・メタルエッジ』は壁をすり抜ける能力を持ち、その間はマップ上から反応が消えるが、その三点は明らかに『壁の中』をも進んでいた。『メタルエッジ』が複数いるわけではないとすると……


(プレイヤーで壁を素通りできる能力を持った奴が何人か、レモンの助けを聞いてこっちに来てくれたわけか……なら!)


 鎌瀬は、追い込まれるルートを変更し、三点の方へと移動を開始した。


(袋小路へ追い込まれてるってわかる方がいいだろう。それに、四人なら壁に逃げ込まれないように囲える)


 袋の鼠は、既に猫を噛む計画を立て終えていた。










《現在 DBO》


 8月10日。19時52分。


「しっかし、まさか一人でこんなやつを五分以上引きつけてたとは、やるなお前!」


 壁を突き破って現れた赤兎は、座り込んだ鎌瀬にそう声をかけた。

 対する鎌瀬は、呆れたように言い返す。


「壁抜けするやつが多すぎるとは思ってたけどさ……てか、どうやったんだ? この壁、傷つけてもすぐ直るだろ?」


「ん? 直る前に通り抜ければいいんじゃね?」


「……」


 『直るとしても、傷つけられるなら突き破れるだろ?』と言ったふうに、当たり前に返す赤兎。

 現にもう既に『メタルエッジ』との戦闘に入っている他の二人、アイコと法壱も当然のように壁を突き破って現れているので反論する気にはならないが……


(赤兎は長刀があって『先陣スキル』の突破力、法壱とアイコは打撃系で純粋な破壊力……ナイフの俺とは壁を相手にしたときの相性も違うとは思うけど、なんかそれ以前に単純に『できる』と思ってるか思ってないかの違いって感じだな……)


 これが格の違いというやつなのだろう。

 今更それで落ち込むほど自分を過信はしていないが……


「ん、そろそろだな。構えろよ」


 赤兎が鎌瀬にそう言った直後、視界の端のマップで巨大ボス『キング・オブ・ストーンエッジ』のウィークポイントを示す紫の点が立て続けにはじけて消えて行く。その周りに集まったプレイヤー達が一斉に攻撃を始めたのだ。


「お前が敵ボスを引き付けてくれたおかげで、他のプレイヤーはみんな集合できたんだ。後は俺達がお前と合流したら攻撃開始の予定だったんだぜ?」


 基本的には四人一組、残った紫の点は九個に、鎌瀬が相手をしていた『メタルエッジ』には壁を壊して直進できる三人。ここにいるプレイヤーのほとんどがダンジョンでの急な事態への対応についての経験が豊かなプレイヤーであるがゆえに、打ち合せするまでもなく、おそらくレモンからの助けを聞いた赤兎辺りが鎌瀬の助けに駆け付けながら他のプレイヤーに呼びかけ、その動きから作戦を察したのだろう。


 紫の点が消えるとその代わりに……大量の『ストーンナイツ』が出現する。


「って! こんなに一気に取り巻き増やして大丈夫なのか!?」


「安心しろ、これでいいんだ。アイコ!  法壱! 派手にやれ!」


 鎌瀬達の周りの壁からも次々と『ストーンナイツ』が生まれ始め、『メタルエッジ』と大立ち回りを繰り広げる法壱とアイコの動きも制限されていく。特に、法壱は固有技『金剛錬武』で頑強な防御と強力な攻撃力を得ている代わりにスピードが極端に下がっているので細かな立ち回りはできない。しかし、それを補って余りあるパワーを利用し……


「どりゃ!」


 プレイヤーと同じように動きが制限されつつあった『メタルエッジ』を、周りの『ストーンナイツ』数体ごと抱きしめ、捕える。そして、アイコは距離を取り、手近な『ストーンナイツ』を掴んで固有技を発動する。


「『モンクバリスタ』!!」


 投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。

 それも、まるで砲台のように、勢いよく、景気よく、投げつける。

 的は、頑強な壁のような法壱に捕らわれた『メタルエッジ』。捕らわれたままでも動かせる部分の刃を振り回して飛んでくる『メタルエッジ』を切り裂いていくが、それでも動きが制限されたままでは全てを凌ぎ切ることはできず、着々とダメージを蓄積させていく。

 アイコにとって、弱い敵モンスターが大量にいるというのは、投げる『砲弾』がいくらでもあるということなのだ。このタイミングで取り巻きが大量に現れるように仕組んだのは、動きの素早い小型ボスである『メタルエッジ』の動きを縛り、尚且つこちらが戦いやすくなるから。


 そして、そうしている間に……


「さて、ところでしばらくあいつとやり合ってみてどうだ? 何か弱点とかわかってたら教えてくれないか?」


 赤兎は、鎌瀬から『メタルエッジ』の弱点を情報を聞く。

 相手は小さくともボスモンスター。このまま、拘束したままで削りきれるなどとは思っていない。アイコと法壱のやっていることは時間稼ぎだ。


 そのどこまで事前に打ち合わせたのか……おそらく、二言三言だけの会話で成立したであろうその連携にもはや脱帽どころか呆れすら感じながら、鎌瀬は『ボス攻略レイド』の一人として、敵の情報を伝えた。




 19時55分。


 状況が動いた。

 ウィークポイントをすべて破壊された『キング・オブ・ストーンブロック』のHPバーが残り二本を切り、迷宮に変化が起きたのだ。


 状況が動いたというより……ダンジョンそのものが動いた。


 ダンジョン全体が地震のように大きく揺れた後、不動だった壁や床が小刻みに振動し、一斉に組み変わり始めたのだ。

 床が立ち上がって壁に、壁がスライドして通路に、通路が折れて落とし穴に、そして一定周期でアスレチックのように最初の形に戻る。


 そして、動いた壁が『メタルエッジ』の動きを抑え込んでいた法壱の背中にぶつかり、不意を突かれたその瞬間を逃さず、危険な刃を全身に纏ったボスは捕まっていた部分の刃を射出してすり抜け、自身を遠距離から投擲で削り続けていたアイコの元へと襲い掛かる。


 『気功スキル』で防御力を強化していても法壱のようにほぼ完全にダメージを遮断できるわけではないアイコは格闘術で迎撃しようとするが、構えた直後に床が動き出し、態勢が崩れて出来た防御の隙間に刃が迫った……その時、一振りの長く真っ直ぐな別の刃が……『刀』が、その先に入り込んだ。



「待たせたな、選手交代だ」



 長刀を抜刀しながら割り込んだ赤兎は、刃を受け止めた刀に力を入れたまま接触点を目線の高さまで上げ、互いに力を込めて押し込める形に持ち込み、その強さを測る。


「なるほどな……切れ味はなかなか、パワーも……」


 法壱の拘束から抜け出すとき切り離した刃を身体に戻し、空いている片腕の刃を使って赤兎に攻撃しようとする『メタルエッジ』。

 しかし、赤兎は刀の柄を両手で強く握ると、そのまま力を込めて刀を押し込む。


「大体、同じくらいだな?」


 すると、『メタルエッジ』は急に動きを変え、攻撃に使おうとしていた片腕の刃をも防御に使い刀を止める。これは赤兎の力への対応のため……片腕のままでは受けきれず、『斬られる』と判断したのだ。


 そして、今度は両腕で刀を防御したまま、蹴りを放つように足の刃を使って攻撃するが……


「おいおい、ハンデか? 片足立ちで勝負なんてな!」


 赤兎は一瞬刀を僅かに引き、速度を付けてぶつけることで『メタルエッジ』を押し飛ばした。

 単純な力技ではなく、蹴りの瞬間の片足が浮き重心が不安定になる瞬間を狙った絶妙なタイミングを突く『技術(わざ)』だ。


 そして、押し飛ばされながらも刃を飛ばしながら反撃する『メタルエッジ』に向かい、刀で刃を弾き飛ばしながら楽しげに笑う。


「せっかくのって来たんだ。互いに遠慮せず、ちょっと二人だけで楽しもうぜ」




 鎌瀬は、赤兎の戦う姿を見て小さくため息を吐く。


「はあ……なるほど、ここまで違うのか。『最強』ってやつは……」


 動き回る足場をものともせず、手数の差を意に介さず、プレッシャーを気にも留めず、ボスと互角以上に渡り合える実力。それはもはや、別次元の戦い方とも思えた。


(流石……『最凶の殺人鬼』と並ぶ犯罪組織のブラックリスト筆頭、『最強の攻略者』。これはまともにやり合って勝てる気がしない)


 鎌瀬が固有技まで全力で使って逃げ回るしかなかった相手に、様子見のためか楽しむためか、ただの技術で立ち向かい、押している。何十という手数の中から相性のいいものを使って対策を立てながら弱点を突くのでも、チートじみた一撃で一発逆転を狙うのでもない、ただ単純に真っ向から戦って勝つべくして勝つ。強者にふさわしい戦い方、そして勝ち方だ。


 アイコと法壱もいつでも戦いに介入できるように近くに控えているが、今は残った取り巻きの処理を中心にして赤兎の方へは余計な手を出そうとしない。赤兎が集中して戦えるように雑魚を近づけないようにしているということもあるだろうが、その根底にあるのは赤兎が一人でも戦えるという、強さへの信頼だろう。


(法壱もなんだかんだですっかり馴染んでるんだな……元から、脳筋なところあったしな……)


 鎌瀬と赤兎の間には、大きな壁がある。

 それは、単なる実力差ではなく、『強さ』に対する姿勢の違い。弱さをどうにかしてごまかすことで負けを防ごうとする鎌瀬と、弱点を補って余りある強さを求め続け、その結果として堂々と勝利を手にする赤兎の違い。おそらく、法壱や『戦線(フロンティア)』のメンバーの多くは壁のあちら側の人間だろう。

 鎌瀬がこのような場にいるのは、ただ単に追い込まれた先がここに繋がっていたというだけだ。本来は、同じ土俵に立てるわけがない。そんな気持ちが湧きあがってくる。


 客観的に見て、あるいは物語的に見て、鎌瀬は本当にただの噛ませ犬だ。

 『メタルエッジ』の強さに追い詰められ、そこに颯爽と現れた主人公たる赤兎の強さの比較対象にされるだけの、脇役以下の存在だろう。

 そこに疑いはないし、文句もない。鎌瀬は、主人公になりたいとは思わない。


 しかし……


「おい! 鎌瀬! 聞いとるか!」


「……あ、悪い。どうした?」


 法壱が自分の方へ声をかけていることに気付く鎌瀬。周りは取り巻きがもうおらず、法壱は鎌瀬のすぐ側まで来ていた。


「ここは危ないだろう。さっさとレイドの本隊と合流した方がいい、出口がすぐそこに出来ている」


 法壱が顎で示す方向にあるのは、迷宮の変形で出来た開閉する門。よく見るとその先には元のボス部屋の床らしきものが見える。

 どうやら、この迷宮の本体である巨人ボスのHPが削れたことで出口がそこかしこに生まれているらしい。よく見ると、視界の端のマップからも青い点が次々と減っている。大量虐殺でもされていなければ、皆この迷宮から脱出しつつあるということだろう。


「そうか……『メタルエッジ』の方は? さすがに赤兎一人に全部任せてみんなで逃げるわけには行かないだろ?」


「それはそうだが……正直、足手まとい、いや、それ以前の問題だ。ここにいたら巻き添えを食うぞ」


「……範囲技でも使って殲滅するのか?」


「いや、あっちがやってくる。さっきあっちの離れたところまで追い込んだときからパターンを変えてきた。少し厄介な相手になったぞ」


 そう言った直後、動く壁の向こうから赤兎の声が聞こえた。


「来るぞ!」


 その直後、壁を『透り抜け』て何本もの刃が飛んでくるが、法壱が『金剛錬武』で防御を固めて鎌瀬の盾になる。


「っ! これはあいつの……」


「ぬっ、大丈夫か? 奴め、壁を透り抜ける刃を利用して壁越しに刃を放っているのだ。防御力の低い者は危険だろう」


 動く壁の間に見え隠れする通路から離れた所で戦う赤兎と『メタルエッジ』を見ると、赤兎との接近戦を不利だと判断したらしい『メタルエッジ』が距離をとり、全身の刃を射出して壁越しに一方的な攻撃を繰り返している。


 一瞬だけ姿を見せる赤い球体(コア)……攻撃の瞬間、おそらく感覚の中枢であり『目』として機能しているそれとマップの位置情報を合わせて赤兎の動きを予測し、先読みしながら刃を放っている。赤兎は遠距離攻撃の手段がないのか、壁から現れる刃を刀でたたき落としながら距離を詰めようとしている。しかし、刃が戻るとすぐさま人型形態を取り、防戦に徹して壁をすり抜けて逃げてしまう。


(だけど、負けそうな感じには見えないな。壁から飛び出した直後の刃にも十分反応してるし、毎回少しずつだけど接触の度にHPを削ってる。この調子なら、手こずっても最終的には勝つんだろうな)


 ボスの一本目のHPバーは残り一割弱、赤兎は攻撃をモロには受けていないためか八割以上残っている。このまま鎌瀬が戦線離脱しても、さらに言えば一人きりだろうと、勝ってしまうのだろう。


(大体60mか……遠い、本当に遠いな。逃げ回るしかなかった俺には、敵をあんなに追い込むなんて到底無理って話だ。前座はここらで退場するのがいいか。けどな……)


 鎌瀬は、まるで短距離走のクラウチングスタートのような姿勢となり、遠くの壁に見え隠れする赤いコアをまっすぐに見据えた。


「『T(タイム)R(ルール)L(ルーズ)P(ペース)D(ダウン)』、『TW2Y』」


 鎌瀬の手から、一本の赤い糸が壁の間を通って一瞬見えた『メタルエッジ』に繋がる。


 そして、『メタルエッジ』に戻ろうとしていた刃が突然、その動きを鈍くする。

 まるで、その『時間』が三倍ほど遅くなったかのように。


「俺の『T(タイム)R(ルール)L(ルーズ)』は触れた相手の時間も巻き込んで狂わせられる。散々ハイペースな斬り合いにつき合わされたんだ、少しくらいこっちのペースに合わせてくれてもいいよな」


 鎌瀬は、してやったりと小さく笑う。


「一定のペースで動く壁を計算に入れて刃を飛ばしてるってことは、飛ばした刃が『決まった時間』で戻るってことだろ。だけど、俺がその周期(ペース)遅く(ダウン)させた。こんな不意打ち、一度しか通じないだろうけど……あの時の『一歩』の分の借り、返させてもらうぞ」


 一瞬、驚いたような表情の赤兎と目が合う。

 だが、次の瞬間には、無言の内に理解していた。赤兎は頷き、刀を振り上げる。


 刃が戻る直前の、丸裸のボスの弱点(コア)に、赤兎は大きく踏み込んで、戻る刃に一歩分先んじて刀を振り下ろす。



 鎌瀬は、一本目のHPバーが削りきられた瞬間を見届け、『メタルエッジ』に繋がる糸を消して、迷宮から外に繋がる穴に飛び込む。


「じゃ、一矢は報いたことだし、後は『主人公』に任せて退散するか」







 今回のオチというか裏話(オフレコ)


 穴から落ちた鎌瀬を迎えたのは、予想外の『ダメージ』だった。


「ゴフッ……なんで、こんな……」


 腹のド真ん中を貫く衝撃とHPダメージ。

 しかしそれは、迷宮から出ようとした穴が罠だったわけではなく、下に取り巻きモンスターが待ちかまえていたわけでもなく……


「いやねえ、まさか転送されて行っちゃうとは思わなくて困ってたのよ。最初から言ってたでしょ? 勝手にゲームオーバーされちゃうと困るのよ」


「にゃは、もうボロボロだからお休みするといいにゃ!」


 鎌瀬を待ちかまえていたのは、鎧姿の『4番』と『11番』。『キング・オブ・ストーンブロック』の足下に生まれてくる取り巻きを処理する……という名目で鎌瀬を待ちかまえ、黒い闇のような腕で優しくキャッチ……ではなく、完全に攻撃の勢いで背中から腹をど突いたのだ。


 そして、腹から腕を引き抜くと鎌瀬を担いで回復能力やポーションの充実したレイド本隊へと向かって歩き出す。

 致命傷ではないが、十分に深手だ。それに鎧も喪失している。これで本隊へ戻れば、確実にケガ人としてボス戦から戦力として外されるだろう。それがわかっていて、戦線離脱させるために敢えてダメージを与えたのだ。


「えぇ……フレンドリファイアで戦線離脱って……締まらないな」


「大丈夫よ、この調子なら勝つだろうから。あなたの分まで私達働くし……聞いたわよ、女の子助けてボスに一人で立ち向かったそうじゃない?」

「十分働いてるにゃ! それに、平気そうにしてるより瀕死で帰った方が感謝されるにゃ!」


「嫌な計算だな……ボスにやられた傷じゃないってのに。恩着せのために罪の意識重くする気はないっつうの」


 運ばれながら、鎌瀬は開き直ったように笑った。


「はは、まあ疲れたし……これはこれでちょうど良いかもな。うん、これでいい」


 鎌瀬はスパイだ。

 変に活躍して武功を立ててしまうより、無様にボスから逃げ延びて命からがら帰還する程度の方が、小物らしくていい。


「だけど、ボス戦で途中退場って……ホント俺、主人公に向いてねえ」


 こうして、鎌瀬は第24ボス攻略作戦での役目を終えたのだ。







 そして、20時47分。

 第24ボス攻略作戦終了。


 戦闘での犠牲者は『キング・オブ・メタルエッジ』にダンジョンで狩られたソロのプレイヤーが一人と、座標シャッフルで運悪く孤立した中規模ギルドのプレイヤーが二人で合計三人。痛ましい犠牲ではあるが、より危険だったはずのダンジョン内部は鎌瀬が赤兎到着まで一人で粘ったおかげで最小限の数に抑えられたと言っても過言ではない……はずなのだが、瀕死の鎌瀬が担ぎ込まれたことで『いたぶられていた鎌瀬』を助けた赤兎という構図が広まってしまった。

 鎌瀬としては変に有名にならなくて良かったしそういう風に思われるように説明した感はあったのだが、少々複雑な心情になった。


 また、新エリアが一つ解放され、新エリアの探索の中心として活躍する『戦線(フロンティア)』は意気揚々と乗り込んでいった。


 そして、その直前で赤兎が鎌瀬の許へと来たのだが……



「ようやく思い出したぜ。お前、あの探偵さんの助手だろ? 前一度俺の所に話聞きに来た」



 鎌瀬は動揺に肩を震わせた。


(しまった……やっぱり『恩人』と一緒にいたところ憶えてやがったか……)


 実は鎌瀬は『攻略連合』参入以前に赤兎と会ったことがある。その時は『恩人』の添え物のような立場だったので憶えられてはいないかもしれないと思っていたのだが、どうやら戦いの中で意識して注目したことで記憶が想起されてしまったらしい。


 正直、その繋がりはあまり掘り返して欲しくないこと(スパイ事情的な問題)なのでどうやって素早く会話を打ち切らせるか考え始めたのだが……


「そういえば、探偵さんってあの後大丈夫だったのか? 最後に会った時大変そうだったけど」


「え……『最後に会った時』? それってまさか、俺がいない時?」


 鎌瀬の記憶では一緒に赤兎に話を聞きに行った時にはそんな『大変そう』と言われるような別れ方はしていなかったはずだ。しかし、赤兎の心配そうな様子は本気だ。


 それはつまり、鎌瀬の知らない所で窮地にあった『恩人』の情報……鎌瀬が求めている情報の可能性が高いということだ。


「それって、いつ頃の話だ!? 何を言ってた!?」


「確か3月の頭辺りだったと思うけど……言ってたことって言ったってあの時は偶然遭っただけだったしな……」


 詰め寄られた赤兎は、一瞬考えてから、『特に重要なことじゃないかもしれないけど……』と前置きした後、こう言った。



「『最近、黒死病(ペスト)のバッドステータスが見つかったらしいから気をつけて。もし潜伏中でも予兆を見つけたら、移らないように隔離しないとダメだからね』って言われたんだよ。その後、仲間に聞いても誰もそんなバッドステータス聞いたことないらしいし、デマかと思ったけど……なんだか、真剣だったし、必死そうだったからな」



 今日のまとめ


(4番)「ダンジョンから飛び降りた先は……意外! 無慈悲なるフレンドリファイア!」

(鎌瀬)「URRRRRRYYYYYYYyyyyyy!! こんな、はすじゃあ……俺の出番……」


(11番)「『22番』、戦線離脱(リタイア)!」


(??)「これはひどい……」


 このあと、メチャクチャ謝罪……しなかった。


 はい、ごめんなさい。

 後書きで遊びすぎました。

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