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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第一章:セットアップ編

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19頁:他人の力を借りましょう

次回は一気に長い回を2つ投稿して第一章完結させます。

文量が多くなりますが、程々に細かく読んでも、適当に流し読みしてもいいのでご自由にお楽しみください。

 祭り前日の夜中。

 ライトはナビキとフィールドに来ていた。


 目的は……

「やっ!!」

「斬るときに目を閉じちゃダメだ。あと、突きは身体の中心を意識して狙う」


 ナビキの戦闘訓練だった。


 ナビキは新品の槍をふるって〖オリジンマウス〗を攻撃し、時には危なっかしく防御する。


「てか、別に無理しなくてもいいぞ? 四人で何とかなるかもしれないし」


「そんな足手まといみたいに言わないでください!!」


 そう叫び、目の前の〖オリジンマウス〗を撃破する。初めての収穫だ。


 ナビキは槍を背中のホルスターに刺してライトに向き直る。


「それに、主役が活躍する舞台までちゃんと整えるのが演劇ですよね」









《現在 DBO》


『さあさあ御出で下さい!! 我らは「ネジマキサーカス団」!! そこの紳士も、そこの淑女も、退屈ならばどうぞこちらへ。我らは退屈の略奪者、感動の運び手、必ずやあなた方からその退屈を奪い取り、代わりに忘れられない感動をお届けしましょう!!』


 よく舌のまわる司会進行役のNPCがテントの入り口で客を出迎える。


 このサーカスのテントは外見だと一見百人の収容が限界のやや小規模なものに見える。しかし、ここはゲームの世界。物理的に矛盾しないという保証はない。


 実は、外より中が広いのだ。

 中には千人単位でステージを見ることができる空間があり、さらにそこから広がるアリの巣状の空間に様々な倉庫、控え部屋、飼育小屋などの設備が揃っている。


 何重もの半円状に並んだ椅子が内側から外側へ高くなるように配置されていて、最前列の数列からは下からステージを見上げる形になり、後ろの方はステージを見下ろす形になる。


「いや~それにしてもよくここまで準備したわよね。私たち」


 まだ客は来ていない。

 客が入場できるのはこれから。今は関係者以外立ち入り禁止。


 そして『関係者』たるスカイ、ライト、ナビキ、草辰、マイマイ、ライライは最後列で最後のミーティングしている。


「まあ、この魔法のテント自体じゃなくて、中の細かい部分の骨組みとかをやったんだけどな」


「最初はちっさいテントで楽だと思ったのに、おかげでクタクタだ」


「私は楽しかったですよ? みんなで準備ってなんか学芸会みたいで」


「わたしたち、何度か迷った」

「うん。でもがんばったよね」


 ライト、草辰、ナビキ、マイマイ、ライライが口々に感想を言う。


 今は祭り当日の夕方。

 今日は、いろいろとある意味昨日より大変だった。


 まず第一に、スカイの店は正式に営業を開始した。しかし、今のところはまだ祭りの雰囲気に紛れてあまり客は集まっていない。


 第二に、演劇は練習時間がほとんどない中、必死に練習した。特にスカイは主役で台詞が多いので大変だった。


 第三に、ライトとナビキが先日中断したデートをやり直した。今度は邪魔が入ることなく楽しんで来たらしい。


 そして、最後にライトの企画した『切り札』の仕上げ。

 おそらく、この一手はうまくいけば本当にこれからのゲーム攻略の方向性を左右する。

 それも、最大限の効果を狙うなら今夜しかない。


「でも……みんなはこっちの方出て来ないの? 劇の前にサーカスを見ててもいいんだけど?」


「いや、オレ達は仕上げがあるしそっちはいいよ。あ、でもナビキはどうだ? 社長と一緒にこっちの方で見ててもいいんだぞ?」


 ナビキは迷わず首を横に振る。

「いえ、私もあっち側で。重要な役だし、台本を覚えておきますよ」


 スカイは何も追求しない。

 ただ、ナビキの目の内の覚悟を見て頷く。


「ええ、頑張ってね。私も頑張るわ」


 友を信用し、自分は自分の戦いを誓う。

 スカイの戦いのステージは……商売だ。






「お弁当はいかがですか?」


 スカイは自分を見ていた観客に小声の定型句で接客する。


 今はサーカスのプログラムの中盤。演劇は最後の目玉『公開!! 伝説の猛獣〖ダイナミックレオ〗』の一つ前。まだ一時間ほど出番までは時間がある。今回の作戦の仕込みとして、スカイは観客席でマイマイ、ライライの作った弁当を売る『売り子』をしている。香ばしい弁当は悪くないペースで売れているが、今回の目的は稼ぐことではなく売ることだ。


「すいません。お弁当一つ」

「は~い」


 観客の中にはスカイのことをNPCだと思って弁当を買うプレイヤーも多い。テントの中はステージ上以外は暗く、手元も暗くてかなり見えにくいくらいだ。その中でNPCとプレイヤーを見分けるのは困難……というより、プレイヤーが弁当の売り子なんてしているとは思わないだろう。


 だが、それでいい。

 ここでの印象の弱い『溜め』が後で大きな力となる。


「は~い。お弁当一つ毎度あり~。あと、これはサービスで~す。あとでご覧くださ~い」


 弁当と一緒にあるアイテムを渡す。だが、この暗闇ではこれを見ることはできないだろう。


 全ては布石。そのためのコストは先行投資。


「あら、繁盛してますね」


 スカイに弁当を買おうとする客とは違う声がかけられた。

 そこには金髪で、カラフルな水玉模様の牧師服のプレイヤー……マリーだ。


「おかげさまで。それにしても、よくこんなに集めてくれましたね」


 今は仕事中なので営業スマイル。知り合いでも基本敬語だ。


「人間というのは可愛く無垢な子供に迫られては逃げられないものなんですよ」


 マリーの周囲には子供たち。

 マリーはこのゲームに保護者もなく来てしまった子供たちを世話して、心の支えになっている。そして、マリーとその子供たちにはビラ配りなどを手伝ってもらった。正直、席が半分埋まれば上出来と思っていたのだが、なんと全席満員という予想外の事態だ。


「それにしても、他の人たちはどうしたんです? マイマイとライライは元気ですか?」


「心配しなくてもあの子たちはしっかりしてますよ。中学生なんて言ったらもう……」


 そこで、スカイの視界の端に突如『メール受信』のメッセージが現れる。

 差出人は『ライト』。ライトが仕事中にメールをしてくるとは少し考えにくい。


「ちょっとすいません」

「どうぞ。お気遣いなく」


 ライトがわざわざ今メールするこということは、きっと後で確認していては手遅れなことなのだろうと身をかがめてメールを確認する。


 内容は簡素だった。


『ぶきおくれ』


 スカイは一瞬思案に困った。

 『ぶき』が武器であろうことはわかる。だが、そのあとの『おくれ』とはどういう意味だろう。


 もしや、『在庫整理』を使えということか、それとも、『お』は敬称で『くれ』なのか。


 だが、すぐに深く考えるのをやめる。

 『武器』と変換する時間も惜しんだのだ。きっと急ぎの用に違いない。


 スカイは、ライトの『武器整備スキル』習得の時に買った武器、行商で買った珍しい武器、ドロップで出てきた武器。バリエーションをそろえて送った。


 そして、少し考えて一つだけメールを送る。


『壊れたら後で弁償してもらうからね』




『さあさあ御立合い、ここにおります道化のジャンゴはどんな場所に閉じ込めても出て来てしまう、なんとも困った悪戯者……』


 プログラムも終盤に迫ってきた。

 スカイは最前列の方にやってきた。ここから舞台袖に入り、しばらく隠れて待機して出演者の出入りに紛れて演劇の準備のため楽屋に入るのだ。


 そこで、つい二日前に会ったパーティーに出会った。


「ん、よく見たらスカイさんか? ここでも商売やってんだな」


「あら赤兎さん。その節はどうも」


 赤兎達TGW(チームゴッドウォーズ)の面々だ。草辰が抜けて五人になっているが、それでもかなりの戦力だろう。一応礼は尽くしておく。


「草辰はちゃんと働いてるか? あいつなんか失礼なこと言ってそうで心配なんだ」


「ふふふ、仕事に忙殺されて生意気なこと言えなくなってましたよ。それに戦うばっかりじゃない仕事の大変さを知って少しは心境も変わったんじゃないですか?」


 草辰は最初、生産職のプレイヤーを馬鹿にするような言動を繰り返してたが、今では愚痴こそ多いものの、差別的発言はあまりなくなっている。


 スカイの言葉を聞き、赤兎はポツリと呟くように言った。

「あいつ、ホントは鍛冶屋志望だったんだ」


 鍛冶屋と言えば武器などを作るのが主な仕事のまごう事無き生産職である。

 スカイは赤兎の言葉に驚いたが、否定はしない。人に歴史ありだ。


「だが、このゲームがこんなことになってあいつ悩んだんだってさ。戦闘もそこそこ自信があったし、ベテランの自分が先頭に立って攻略を進めるべきじゃないのかってな。最終的には戦闘職を選んだけど、やっぱり心残りがあったんだろうな。あいつ、少しでも戦える奴はみんな戦うべきだって思ってる。そこで生き生きと生産職やってるアンタらを見たからつい怒っちまったんだ……あいつは気持ちのいい奴じゃないが、根っからの悪党でもない。それはわかってやってくれ」


 おそらく、このメンバーは互いに前のゲームで交流があったのだろう。パーティーとまではいかなくても、お互いのプレイスタイルや実力も知っていて攻略のための精鋭チームをつくったに違いない。

 草辰の実力は決して低いわけではなかった。だが、おそらくライトが純粋な戦闘職を選んでいたら草辰を大きく上回る戦力になっていたであろうことは想像に難くない。


「まあ、俺たちは戦闘しかできない戦闘馬鹿だからな。今ここにいるのも、半分そのためでもあるし」


「え?」


 スカイは驚く。このイベントにはそんな観客が戦わなければいけないような予定はないはずなのだ。

 もしかして……


「ライトから聞いてないのか? まあ、俺もくわしいことは何も聞いてないが、『万が一のために最前列で見ていてくれ。武器も忘れずに』って言われたんだ。まあ、予定通りなら出番はないらしいが……」


 赤兎はそこまで言った時、突如としてステージの出入り口の方を向いた。


「……どうしたの?」


「なんか、変な感じがした……気のせいかもしれないが、とにかくあっちで何か起こったみたいな……」


 スカイも同じ方を見る。だが、ステージの出入り口は音も映像も透過しない仕様になっている。向こう側で何かあってもわかるわけがないのだが……


 少しそちらを凝視していた赤兎だが、しばらくして見つめるのをやめてイスに深く座る。


「……動かないの?」


「ライトに『何も起こらなければ邪魔するな』って言われてんだよ。オレの方にヘルプメールが来ないってことはそういうことなんだろ」


 ライトはおそらく幾つもの安全策を練っている。それを総動員するほどの脅威があるのかもしれない。

 しかし、それをスカイに教えなかった。それは、スカイにこのイベントを何の心配もせずに成功させたかったからだろう。


 ならば、スカイも今回はそれに従う。それぞれできることをするだけだ。


 スカイは赤兎に一つのアイテムを渡す。

「このサーカスが無事終わったら、ぜひ中をみてください」


 今回は利益は度外視して配っているのだ。ここで有力なプレイヤーに一つくらい配っておいてもライトは怒らないだろう。


 それを受け取った赤兎は短く声を洩らした。

「へぇ~。あいつ、こんなもん作ってたのか」

 ここはステージの目の前で比較的明るい。しかも赤兎は夜目の利くスキルでも持っているのか、表面はしっかりわかるらしい。


「……お礼に、攻略の進行状況を教えてやるよ。……今、攻略は完全に行き詰まってる」


 赤兎は周りに聞こえない小さな声で語り始めた。


「この街から二、三時間歩いたところに次の町がある。1時、3時、5時、7時、9時、11時の方向に六つの町だ。そして、それを越えて半日くらいダンジョンを進むと、3時、9時、12時の方向には砦がある。盗賊と白い鎧の兵士、あとは黒マントの戦士たちがそれぞれにいるらしい。他の場所からは山や谷があって出られないから砦を突破しないといけないようだ」


 時計の街とその周囲の六つの町を囲む三つの勢力。そして、マップの拡大を阻む砦。


「レイド組んで挑んだんだけど、長期戦になれば回復場所もろくにないところじゃどうしてもジリ貧になる……補給部隊がいないからな」


 今は戦闘職以外はほとんど時計の街から出ていない。深刻な問題だ。


「まあ、俺は馬鹿だからどうすれば良いのかわからねえ。だから、アンタらに任すよ。」


 その時、司会役のNPCが何やらメモを持って慌てたように叫んだ。


『ここで残念なお知らせです!! 本日最後のプログラムですが……ライオンの体調がすぐれない為中止とさせていただきます。そこで次のプログラム「プレイヤーアピール」が最後のプログラムとなります。ぜひ、お楽しみください!!』


 スカイには一瞬意味が解らなかった。だが、すぐに理解する。


 自分たちこそが『トリ』になったのだ。


「私、少し急用ができました。失礼します」

「おお、ライトによろしくな」




 スカイはすぐにプログラムの変更を報告しに楽屋に急いだ。だが、そこで見たものは……


「おお、スカイ。台詞はちゃんと思えてるか?」

「私は全部覚えましたよ先輩」


 ピンピンしながらも装備がぼろぼろのライトとナビキが出迎え、ヘトヘトでボロボロな他のメンバーが全員そろっていた。


「一体何があったのよ!?」


「何もなかった。だよな、ナビキ?」


「はい。それより、これからの演劇です。がんばりましょう」


 二人は素知らぬ顔。


 何があったかは教えてくれないのだろう。知ってしまえば劇に影響が出るかもしれないと思っているのかもしれない。


「……あとで教えてね?」

 ならば今は無視しよう。


 だったら、今は自分は演劇にすべてを出し切ろう。


「ああ、必ず教えるよ。劇がうまく行けばな」


 ライトはこの手の約束を破ることはない。そんな気がした。


 なら自分は、自分の知らないところで繋がれたチャンスを、自分の力で成功へと繋げよう。


「じゃあ、みんなで頑張らなきゃね」


 スカイの返事に、ナビキがヘトヘトで座り込んでいる3人に顔を向け、元気よく号令をかけた。


「はい。皆さん、頑張りましょう!!」


「「「はい!!!!」」」


 草辰、マイマイ、ライライの三人は即座に気をつけして敬礼。心なしか怯えているような気もする。



 本当に、何があったんだろうか?




 同刻。


 観客席で弁当を食べながらステージを見るプレイヤーの一人が呟いた。

「何かやりましたね、銀メダル」


 銀メダルで事足りた以上、金メダルの出番はないだろう。ならば、自分のすべきことは……


「精一杯の拍手を贈りましょうか」


 綺麗な銀光に金色の光を混ぜるなんて無粋な事はしない。『先生』にもらった『金メダル』。それを誇り名付けた自身のキャラネームはそんな安っぽい他人の功績を奪った上に掲げるものではない。


 その名に『黄金』をもつプレイヤーは素直に『主役』を譲り、観客に紛れた。

(イザナ)「はいこんにちわ。NPC会話室のお時間です」

(キサキ)「会議でも談話でもなくなったんだ……」

(イザナ)「それにしても、とうとう一章も終わりにさしかかって来ましたね。ここらで私達の活躍でも振り返ってみますか」

(キサキ)「私は一回少し出ただけなんだけど」

(イザナ)「じゃあこのイザナちゃんの……あ、このデータネタバレ含んでる」

(キサキ)「やめて!!」

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