188頁:イレギュラーにも柔軟に対応しましょう
市街地戦の本格的な始まりです。
それは……『キメラ型』とドクター自らが命名したそれは、即席でありながらも彼の閃きが活かされた最高傑作でもあった。
自身の固有技『素体融合』によって何体ものモンスターを融合させ、能力を取得させたハイブリットモンスター。
融合に伴うデメリットやリスクはいくつかあるものの、モンスターの強さを足し算し、場合によっては相乗効果で何倍にも引き上げることの出来る能力をフルに活用した集大成。
そして、その中に自分自身までも組み込み、自身の肉体として使うドクターの心には、感じたことのない無敵感が充足している。
しかし……
「んじゃ、名誉挽回と行くか」
その巨大な力に臆せず立ち向かう勇気ある者達……そして、その先頭に立つ侍の目には、一切の迷いや躊躇いはなかった。
《現在 DBO》
『時計の街』の中央部『時計台広場』にて。
数分前までは、全て予定通りにことが運んでいた。
数の増え続ける『黒いもの達』は囲まれた広場の中で着実に数を削り取られ、飛ぼうが壁を上ろうが外に出る前に阻まれていた。
しかし現在、現れた一体の巨大な『黒いもの』が、その防衛線を乗り越え、広場を封鎖する壁となっていた建物を破壊して、その戦況を一気に変容させた。
「敵が流れ始めたぞ!! 回り込め!!」
「その前にあのデカいのを誰か早くなんとかしろ! 他のところも壊されるぞ!!」
「ダメだ! 速すぎて陣形作る前に逃げられる!」
混乱をきたし始めるプレイヤー達の視線の先にいるのは、街の中でも特に高い四階建ての宿屋の屋上に陣取りその姿を見せつけるように佇む混乱の元凶。
身長は6mほど……『イヴ』には少々及ばないが、二階建ての家屋と同程度のサイズを誇る巨体。
全身の体色は影のような黒で、基本的な体型は人型に近いが自重を支えるためか腕が人間より大きくゴリラに近い釣り合いとなっている。
しかし、あくまでも人の形に近いのはシルエットでの話。
その身体は、様々な形のナビキの分身……『黒いもの』の寄せ集めだ。それらは、彼が主導した《ガラスの靴》と『素体融合』の合わせ技によるナビキの分身の様々な形状、能力の組み合わせ実験で作成した試作個体。
脚は太い軸の周りにバネ状の筋肉が巻きついた構造になっていて、強い弾性で脚力を底上げできるようになっている。
腕は獅子の頭を象った形状。物を『持つ』のではなく『噛みつく』ことで強い握力を発揮する仕組みだ。肘から手首にあたる部分には籠手のように硬質な鬣に覆われていて、防具に近い役割をしているらしい。
胴体は亀の甲羅のような硬質なパーツをベストのように纏い、その隙間からはヤマアラシのような鋭い針が生えている。
その背中からは巨大なコウモリの翼が生え、甲羅の隙間に収納できるようになっている。
そして、その頭部に当たる部分には、半透明な半球状のドームが被せられ、その中に、モンスターの肉に同化して上半身だけを見せた白衣の男……ドクターがいた。
「フハハハハ! 見よこの姿を! 見よ、この強靭なる肉体を!!」
様々なパーツを組み合わせた『キメラ型』の肉体を纏ながらゲートポイントを転移して現れ、防衛線に穴を開けてその外側の宿屋の屋根の上に陣取ったドクターは高らかに笑う。
眼下に見えるのは、堰を切ったように街に溢れ出すナビキの分身……『黒いもの達』。
そして、混乱する防衛側のプレイヤー達。
今までは大軍を狭いところに押し止めて数の有利を発揮させないようにし、完璧に包囲することで有利に進んでいた戦況がガラリと変わったのだ。
そして、ドクターはその戦況の変化に対応しようとする動きを観察し、次の行動に移る。
「迅さは損なわない」
脚のバネと背中の翼、そして高い咬筋力を握力に転化した腕を用いた巨体に見合わないアクロバティックな動きで『キメラ型』を移動させ、防衛線の穴から出ようとする『黒いもの達』を押し止めようと固定機関銃や範囲魔法での遠距離攻撃を仕掛けるプレイヤーのいる場所へと飛び移り、巨腕で建物の屋上から払い落とすようにして妨害。そして、すぐさま次の建物へと飛ぶ。
そして次に、隊を分けて溢れ出た『黒いもの達』の前に陣取ろうとする『攻略連合』の兵士たちの動きに目を付け、そのド真ん中に舞い降りる。
「破壊力はボス並」
獅子の頭を象った腕で手頃な建物の屋根を引っ剥がし、道を塞ぐように投げ捨てる。
兵士たちは集合を妨害され、隊列を組むのが間に合わない。
すると、集合を妨害された兵士たちは目の前のドクターへ……『キメラ型』へ、敵意の目を向ける。
そして、弓矢や槍を放ってくるが……
「そして、防御性能も万全だ」
甲羅がエフェクトの光を放ち、それがバリアーのように広がって『キメラ型』を包み込む。そして、弓矢も槍もバリアーに弾かれて標的までは届かない。
その素早い動きに対応しきれず、その攻撃に足並みを大きく乱され、その防御を貫けず狼狽える兵士達。
その結果に満足したドクターは、異形の身体を震わせ叫ぶ。
「フハハハハ!! 見たかバカな戦闘職共!! これこそが、知恵と頭脳の力だ!!」
スカイは、取り囲まれないように素早く移動しながら戦況をかき乱していく『キメラ型』を遠目に見て嘆息する。
「全く……悪堕ちするとやたら強くなるタイプの人間ってホント嫌ね。元部下だし、後で責任問題とかなりそうで嫌だわ」
スカイは機械犬『シリウス』に跨がり、別拠点に移動しながら『キメラ型』を観察する。
「動きが立体的な上、防御が固くてしかもやたら理性的に動いて効率よくこっちの布陣を崩しに来てる。隊列が最大の武器になる『攻略連合』や後方支援がメインの『アマゾネス』を警戒しての連携崩しね……バカみたいに正面から突っ込んで来てくれれば楽なのに、ホント面倒くさいわ」
敵の主力は何千と湧き続け、増殖を続ける『黒いもの達』……遠くから見ていると、所々で『キメラ型』が数体を拾って食べていることから、『キメラ型』のエネルギー源も兼ねているらしいが、ドクターが包囲を破って黒い戦力域を拡大するほど『キメラ型』がエネルギー補充して消耗を考えず動き回れる範囲も広がるということだ。
『キメラ型』にかかりきりになれば、却って捉えにくくなる。
かといって、強力な敵戦力を無視して作戦展開などできない。
となれば……
「戦力の一部を割いてあのデカブツに対応するしかない。必要なのは、少数でもあれを倒せるだけの実力があって、なおかつあの立体的な動きに翻弄されずにすぐさま状況に対応できる戦闘センスを持ったプレイヤー達……そして、この状況に真っ先に対応して、自分達の役割を理解してもうアドリブで配置についている志願兵達」
スカイが到達したのは、非戦闘員の『大空商店街』メンバーが待機する陣地。スカイの到着を合図に、待機していたプレイヤー達は用意されていたメールを……『作戦実行』のメールを送る。
そして、前線基地の前で強い意志を感じさせる目をして巨大な敵を見つめる青年に、すれ違いながら声をかける。
「さあ、新しいギルドマスターがどのくらいの器か示すにはこれ以上の機会はないわよ……戦闘系トップギルド『戦線』」
青年は……『戦線』の新しいギルドマスターである『イチロー』は、一歩進み出て叫ぶ。
「ギルド『戦線』、行くぞ!!」
歴戦の戦士達への号令はそれだけで十分だった。
夜の闇に包まれた『時計の街』。
戦いの気配によってNPC達がどこへともなく姿を消し、家屋からも明かりのほとんど見えない暗い街だが、普段からダンジョンに潜る戦闘職達の持つ『暗視スキル』があればそれなりの光度が視界に維持される。
しかし、やはり影のように暗い色をしている『黒いもの達』は闇に紛れやすく、しかも視覚がほとんど機能せず動きの気配や匂いを感知するため闇に強い。戦闘では目を頼りにするプレイヤーの方が相手より若干不利になる。
しかし、スカイ達は開戦の時間をすぐ夜に入る夕方に決めた。
それはもちろん……闇夜でも相手と同等に、あるいはそれ以上に有利な条件で戦える策があったからだ。
眩い光が、街中の屋根から……屋根に設置された魔力光源の《サーチライト》から放たれ、『キメラ型』と『黒いもの達』を照らし出した。
《サーチライト》の眩い光は視界の確保と同時に光の方向、色、点滅などから予め決めておいた簡単な合図をメール以上に潤滑に街の全域に伝達し、状況の認識を共有できる。
そして……
「オーバー50『ローカルサイン』!」
ハッキリと視認したそれらを対象にイチローが固有技を発動する。
しかし、対象となったもの達は何らかの干渉を受けたような反応はしない。これまで通り、今まで通りの動きだ。
真に変化が出たのは、味方陣営……『戦線』。
俊敏に地上を走り、または屋根の上を飛び回る彼らは、技の発動とほぼ同時に自分達で全てを考えて動き始める。
ある者は、自分が一番近くにいる『黒いもの』へ全力で接近する。
ある者は、建物の死角になっていた場所から包囲の流れ出ようとする『黒いもの達』に先回りし、その道を封鎖する。
ある者は、キメラ型に対し最も自分が攻撃しやすい位置を確保し、攻撃の構えをとる。
そして……
「オーバー100『ローカルシグナル』……オールサイン、グリーンだ!!」
ギルドメンバー59人が完全に『同時』に攻撃を始める。
各地で『黒いもの達』への奇襲が始まる。
行動圏を広げようとする『黒いもの達』の単純な回避パターンを利用し、追い立てが始まる。
そして、『キメラ型』への全力攻撃が始まる。
一度はサーチライトに捉えられたが、すぐに光の中から抜け出し固定兵器の標準を合わせられないように建物から建物へ跳び回る『キメラ型』を操るドクターの目の前を、赤い光が通り過ぎる。
「ん? 今のは……」
その直後、次の屋根に飛び乗ろうとした『左脚』に違和感を感じ、『翼』の浮力でなんとか体勢を維持して着地する。
そして、『左脚』を確認すると……
「なに!? 今の一瞬で……『斬られた』のか?」
バネのスプリングの役目をした筋肉の一本が綺麗に一刀両断されている。
回復能力で治せない傷ではないが……相手が速すぎて、斬られたことにすらほとんど気付かなかった?
「ありえん! 我輩は確かにそれなりの高度にいたはずだ! 一番高い屋根から跳んだところで我輩の前を一瞬で通り過ぎるほどの推進力など……」
冷静さを失いかけたドクターはそこで我に返って頭を振る。
今重要なのは空中でどのように攻撃されたかではない。攻撃されたタイミングが計画的だったと考えると、この屋根に下りることまで計算されていなければおかしい。だとすれば……
「クッ、シールド!!」
甲羅のパーツの能力でバリアーを張るのと何十という槍が降り注いだのは同時だった。
そしてさらに、床……いや、乗っていた屋根が下から砕け、巨大なドリルのような岩が突き出て『キメラ型』をバリアーごと上に撥ね上げる。
「グッ、この高威力の攻撃特化型の固有技は……『戦線』の戦闘職かっ」
事前に敵情報をある程度把握していたドクターはすぐに敵を察する。
先ほどの赤い閃光は赤兎の無敵モード『ドラゴンズブラッド』、そしてさらに続いた槍やドリルはどちらもエリアボス戦でよく使われる対巨大ボス用の攻撃特化技。他のプレイヤーに固有技を知られるのは犯罪者との戦闘などでは危険が生じるためどのメンバーの固有技なのかはギルドの機密として秘匿されることが多いが、連携のためにある程度の情報が開示されることは珍しくない。
確か先ほどの二つの技は共に高威力だが『溜め』が必要で、消耗もかなり激しいものだというデータがあったはずだ。
だとすれば……
「確実に当てられるタイミングを見つけられなければつかえまい!! 暗闇同化!」
ドクターはバリアーを解き、真上に跳び上がりながら『翼』で飛ぶ方向を調節しつつ、『翼』のパーツに付属した能力で闇の中に姿を隠す。夜しか使えない能力だが、これならアイコンやゲージの表示も隠密状態となってそう簡単には見つからなくなる。
これで気づかれないように移動しながら傷を癒し、サーチライトや固定兵器を破壊して行けば……
「っ!!」
そっと次の屋根に下りようとした瞬間、またしても赤い閃光と違和感。
今度は『右脚』のスプリングが両断されている。
「位置を捕捉されたままだと!? それに、飛翔能力と高いスピードを持つ我輩を今度は追い抜く形で、一体どうやって……」
赤い閃光の来た根元の方を見たドクターは、そこにいる二人のプレイヤーを見て……察する。
一人は二枚盾の重厚鎧の戦士……最高の防御を誇ると言われるプレイヤー、アレックス。
しかし、彼は能力の大部分を防御に裂いてしまっているため機動力と移動力に乏しく、『キメラ型』に追いつけるはずもない。
しかし、もう一人のプレイヤーの姿勢が……その固有技が、それを補助している。
おそらく、先ほどから二度も赤兎が高速で『キメラ型』に一撃を決めて来たのも、『彼女』の技があったからこそ。
「オーバー100『モンクバリスタ』!!」
「『シールドチャージ』!!」
闇にまぎれているはずの『キメラ型』の胴体に、道着の女子プレイヤー……アイコが投石器のような『一本背負い』で投げ飛ばしたアレックスが、巨大な砲弾のように飛び込みめり込んだ。
『戦線』のメンバーには現在、『キメラ型』の位置が完全に捕捉されている。
それだけでなく、壁越しの死角にいるはずの『黒いもの達』も、敵に悟られないように屋内に潜んでいる仲間も、完全に把握できている。
だからこそ、アイコの『投擲』は躊躇なく味方を夜の闇の中に投げだせるし、溜めの必要な技を用意して待機している仲間の所まで敵を誘導できる。
これらは、イチローの固有技『ローカルサイン』と『ローカルシグナル』によって可能となる連携だ。
『ローカルサイン』は、簡潔に説明すれば『選択した対象にイチローのフレンドだけが視認できるアイコンを表示させる』という技。
表示されるアイコンは〇、△、□、☆のような単純なマークに色や番号を付けて識別される簡単なもので、HPバーのような厳密な情報や複雑な説明文などは表示されない。しかし、その代わりアイコンは一定距離内なら壁を透過して視認でき、対象となったアイテム、地形、オブジェクト、モンスター、プレイヤーなどが耐久を失い消滅するかイチローが技を解除しない限り表示され続ける。
そして、このアイコンはイチローのフレンドリストに登録されているプレイヤーにしか視認できず、対象とされた相手自身もいつから自分が『マーキング』されたのか、あるいは今もされていないのかを知ることができない。
これは本来、イチローが書類整理やボス戦の作戦を計画するために使っていた程度の技。緊急用件の書類やギルドメンバーの待ち合わせ場所に『マーキング』を施し、仲間内での情報共有を円滑にするために使っていた。
しかし、ある日のクエストボス攻略で、この技は事前に打ち合わせを済ましておけば、連携を取る際にはこれ以上ない技であることに気がついた。
攻撃の優先順位、味方の位置、敵に見えないように隠したトラップの位置、作戦での移動で通るべきチェックポイント……それら全てを、味方だけがはっきりと把握して戦闘を進められる。
そして、もう一つの『ローカルシグナル』は『ローカルサイン』で付けたアイコンにさらに複雑な設定を付加することができる技。
たとえば、味方に付けた同じ形状のアイコン同士での音声通話、アイコンのついた対象が破壊された時にフレンドの前に表示される簡単な定型文のメッセージ、『青は進め、黄色は注意、赤は中止』のようなアイコンの点灯サイン……それらを、膨大なパターンを組み込んで設定することで、応援を要する場所や敵の進行具合などをリアルタイムで把握でき、メール以上の情報量を戦闘中の仲間との意思疎通もできる。複雑な情報をやり取りしようとすればとんでもなく複雑で地味な下準備が必要になるが……その『地味な作業』こそが、彼の一番の得意分野ともいえる。
赤兎との決闘でも、戦闘直前にフレンドリストから赤兎を削除し、自分だけがトラップや赤兎の位置を完全に把握できるトラップ原を利用したのだ。
戦闘職の固有技としてはあまりに地味で無害で面倒くさいことこの上ない技だが……
「へー、これほど指揮官に向いた技もないかもね。しかも、使い手が地味すぎて知名度がほとんどないからあっちも何されてるのかわかってないし」
スカイの目線の先では、完璧に捕捉され見事な連携で翻弄される『キメラ型』が妨害もままならず逃げの一手になり始めていた。
まとめて捕捉されいる『黒いもの達』との位置関係もアイコンで把握され、地上に降りてエネルギー補給することもままならない。
片や、包囲に穴をあけられて流出し始めていた『黒いもの達』も再び大きな包囲網で囲まれつつある。
「このまま、なんとかなればいいんだけど……」
スカイが呟いた瞬間、『時計台広場』の方向から爆音……あるいは破裂音のような音が響いてくる。
そして、サーチライトが向けられた先に見えるのは……おそらく、『キメラ型』が持って来て、自身が巻き込まれないように時間差で爆発するように密かに建物の隙間にセットされていたらしき爆弾の入った包みが破裂し、中から大量の錠剤のようなものが飛び散り……『黒いもの達』に降りかかる。
「やっぱそうはいかないか……《栄養剤》とは、やられたわね」
スカイには、その包みの中から飛び出た錠剤の正体がわかった。
モンスターを強制ポップさせるアイテムであり、農地に撒くと上質な土壌となる天然石のアイテム……≪ポップストーン≫から作った錠剤。生命力が鉱石の形に凝縮されたとされる石は、植物を育てるのにも使えることからわかるとおり使い方によっては有益に使える。しかし、それはいわば『化学肥料』のようなものであり、プレイヤーが直接摂取しても体力(EP)の回復量よりHPのダメージや異物を摂取したような不快感が大きいためまず使わない。
しかし、モンスター化して毒耐性があって、しかも不快感をものともせず本能だけで動ける『黒いもの達』の群れにそれをばらまいたなら……
「みんな、覚悟しなさい……溢れるわよ!」
まるで、コップの中のコーラにミントキャンディーを入れたかのように……『黒』が、バリケードを越えて溢れた。
同刻。
夜の闇を切り裂く『静』の放火の残り火。
その影に同化した闇に隠れ、そこに存在しながらにして存在しないものが『イヴ』を見ていた。
『いきなりボロボロね……こんなのが「イヴ」を名乗ってるなんて、期待外れにもほどがあるわ』
『夜の女王』は、失望を露わにしながら誰にも聞こえないため息を吐く。
『はあ……せっかく用意したこれも、使いどころないかもね』
その手の中にあるのは、真っ赤な林檎に似た果実。
それは、彼女自身の分身のようなもの。
しかし……
『……あら?』
『イヴ』の目に宿る消えない闘志。
その心はまだ……折れていない。
『まあ……もう少しだけ、見ててあげようかしらね』
この戦いに興味を持っているのは、プレイヤー達ばかりではない。
この戦争の行方は……ゲームの行く末を左右する。
三大戦闘ギルドの特徴としては
戦闘可能プレイヤー数
『攻略連合』>『アマゾネス』>『戦線』
プレイヤー練度
『戦線』>『アマゾネス』=『攻略連合』
アドリブ力
『戦線』>『アマゾネス』>『攻略連合』
というふうになっています。
軍律が厳しい『攻略連合』は作戦行動、『アマゾネス』は後方支援、『戦線』は遊撃が得意で、もちろん今回の市街地戦でも特に『攻略連合』はいろんなパターンを想定した作戦を用意しています。
作者が布陣の模写にあまり慣れていないので行き当たりばったりの戦闘に見えるかもしれませんが、ご容赦ください。(さすがにドクターの乱入は少し想定外だったようですが……)




