乱丁15:自分を忘れてはいけません
今回のマリーさんのセリフは、催眠音声のテキストを参考にしています。文章だけでかかることはそうないと思いますが、解除音声のようなものはないので被暗示性が過度に高い人は読み流してください。
私は……
《6月27日 DBO》
私は今、マリーさんとお茶会をしている。
マリーさんの煎れてくれたハーブティーの香りを嗅いで、彼女の手作りだというクッキーを前にして、彼女の声を聞いている。
でも、私は迂闊に動けない。
それは、物理的に拘束されてるからでも、もちろん武器で脅されてるからでもない。
ただただ……マリーさんの所作の全てが、信じられないほど美しかったから。
ハーブティーをティースプーンで混ぜる動作も、指を輪に通すことなくティーカップの取っ手を摘まむ動作も、コースターを軽く持ち上げる動作も、クッキーを摘まむ動作も、私に送る目配せも……全て優雅で、洗練されてて、とてもじゃないけど私の素人臭い動作と比べることなんてできないほど綺麗だった。
そんな彼女の目の前では恐縮しちゃって、勝手な動きなんてできなかった。
ただただ、彼女の動きをよく見て、見惚れているしかなかった。
「緊張しなくてもいいんですよ。ここには私とあなただけ、そんなにつれない態度でいられるとなんだか寂しくなっちゃうじゃないですか」
マリーさんはそう言ってくれるけど……気楽に世間話なんてできない。そんなに真っ直ぐ見つめられてちゃ、緊張していい返し文句なんて浮かばないし、適当な相づちをうって話を流すことなんてできない。
さっきまではもう少し普通に話せたはずなのに、彼女の意識が私を捉え続けてるように思うと、思ったように言葉が出て来ない。
私はとりあえず、マリーさんの真似をしてティーカップの取っ手を摘まんでハーブティーを少しだけ飲んだ。だけど、やっぱりその優雅さを完全に真似ることなんてできなくて、かえって不自然になってしまった。
でも……とてもいい香りのする、美味しいハーブティーだった。
「おいしいでしょう? そのハーブは、うちの子供が育てた物を使ってるんです。ほら、咲ちゃんという子で……この前、お世話になったそうですね」
咲ちゃん……あの、花を育てていた女の子だ。そして、私にシャークさんのアジトのことを教えた子供でもある。
そういえば、何であの子はあのお墓を知っていたんだろう?
「あらあら……話がそれてしまいましたね。今は、私とあなたの時間です。他の人のことなんて忘れて、二人でこの一時を共有しましょう」
マリーさんはクッキーを一つ摘まんで、優雅に口に運ぶ。
私もそれに倣って、おずおずとクッキーに手を伸ばす。そして、ポロポロとかけらを落とさないように、注意して食べる。
甘くて美味しい。思わずもう一つ摘まもうとしかけて、がめついと思って手を引っ込める。
すると……
「クスクス、遠慮しなくてもいいですよ? むしろ、この手で作ったものを美味しそうに食べてもらえるのは嬉しいことです。あなたと私が同じものを、同じ味を、同じように美味しいと感じて気持ちを共有できる。些細ですけど、素晴らしいことだと思いませんか?」
「は、はい。本当に、すごく美味しいです。このお茶も、クッキーも……こんなに美味しいのは、食べたことありません」
私には、この程度しか答えることが出来ない。
マリーさんのちょっと詩的な言葉にも、気の利いた言葉を返せない。
これが、住む世界の違いなのだろうと……なんとなく理解する。お茶やクッキーの味だけじゃない。窓から降り注いで薄いレースのカーテンで幻想的に広がる日の光も、部屋に満ちる空気でさえも私が普段生きている世界と違った感じがする。
私は、いるべき場所を間違えてるんじゃないか。そう思えてくる。
だけど、そんな私にマリーさんは優しく声をかけてくれる。
「あらあら、まだ緊張が解けていませんね。もう少しあなたにも楽しんで欲しいのですが……では、これはどうですか?」
マリーさんはメニューから、女性らしい小さな手のひらでも包み込めそうな小さな瓶を取り出して、その中身を数滴自分のティーカップに落として、小瓶をテーブルに置いてティースプーンでゆっくりとかき混ぜる。
「いい香りでしょ? あなたにピッタリ……嗅いでみてください」
くる くる くる くる くる
マリーさんのティースプーンが微かな渦を生み出すほどに、仄かな……でも、確かにさっきまでなかった甘い香りが漂ってくる。化粧用の香水のようにしつこくはなくて、野に咲く花が放つ香りが風に乗って運ばれてきたみたいな自然な香りだ。
部屋に、マリーさんのティーカップから溢れた香りが満ちる。
私は、仄かなその香りをよく嗅ごうと、意識して鼻から深く息を吸う。
その香りが私の中に入り込んで、私を満たして、私の一部になっていくような……不思議な感覚。
「あらあら、あまり息を吸っているとむせてしまいますよ? 落ち着いて、ゆっくりとはいてください」
マリーさんに言われて、香りを逃がさないように鼻から吸った息を口からゆっくりと吐く。
お茶の香りがますます私に染み込んで、いらないものを、外に出す。
「どうですか? そうやって、ゆっくり呼吸をすると、いい空気を自分の中に取り込んで、代わりになんだか、緊張とか、疲れとか、悪いものが、外に出て行く感じがして、気分がよくなるでしょう?」
くる くる くる くる
マリーさんが言うとおり、だんだん緊張がほぐれていくのを感じて、気分がよくなってくる。
私は、同じように鼻から深く吸って……口からゆっくりと吐くのを意識する。
いつしか、悪いものがなくなって、吐く息もきれいになって……そんな気がしてくる。
「あらあら、そんなに姿勢を正さなくてもいいですよ? もっと深く、楽に腰掛けてください。映画館で、上映時間を待つときのように、疲れない、楽な姿勢を見つけてください」
くる くる くる
私は、椅子の背もたれに背を預けて肩の力を抜く。今気づいたけど……この椅子、すごく座り心地がいい。まるで、私のために選んでくれたみたいに私の身体とピッタリ合ってて……軽く頭をつけると身体と一体になったみたいに……包み込まれたみたいに安心する。
マリーさんの優しさが……私を包み込んでくれている。
「あらあら、まだ手に力が入ってますよ? 手は力を入れず、膝の上に置いて軽く開くと楽になります。ほら、いらない力も、足先から、そして手の指先から、口から吐く『悪いもの』と一緒に抜けて、足先から、頭の先まで、全身が脱力していくでしょう?」
くる くる
言われたとおりにすると、もっと力が抜けていく。
椅子に身を任せて、全身の緊張から解放されて、頭からも煩雑な思考が消えていって、くるくる回るマリーさんのティースプーンをぼんやり見ている。
マリーさんの手はだんだんとゆっくりになって……渦が消えちゃう……
「ほら、体中が温かくて……気持ちいい。あなたは今の頭の中も、このお茶みたいに、温かくて……気持ちいい」
くるり
暖かくて……気持ちいい……
私の思考も……あの渦みたいに……止まっちゃう。
「あら? そろそろ、飲み頃になりましたね」
あ……マリーさんの手が……ティーカップに……
「あ……」
「いただきます……あなたの心、本当に美味しそうですね」
ぼんやりと目を開く。
身体がどうなってるのか、ここがどこなのか……頭が回らない。
「安心してください。無理にものを考える必要はありません。何も考えられなくても、私の声は心に響く。全て、私に委ねてください。何も、心配することなんてありませんよ」
目の前にいるきれいな人は……マリーさんだ。
とってもきれいで、やさしい人。
この人がなんにも心配がないって言うんだったら、全部任せよう。
「あなたは今、とても気持ちいいでしょう? 私の言うとおりにしている限り、その気持ちよさはずっと続きます。私の声を聞くほどに、あなたはより気持ちよく、深い意識に落ちていく……深く深く、落ちて落ちて落ちて行く。でも、怖くない。落ちていくのはあなたの意識の奥なのだから、あなたを拒みはしない。あなたはただ、本当のあなたに戻るだけ。余計な殻を脱ぎ捨てて、まっさらなあなたを、私に見せてください」
落ちてていく、落ちていく、落ちていく……でも、怖くない。
重力がなくなって、心も体も軽くなる。
表層意識がどこかに消えて、なにも考えられない。
私が誰だったかも、思い出せない。
「……今のあなたは、硬くなった心の殻を脱ぎ捨てて、柔らかい、生まれてすぐの赤ん坊のような、裸んぼうの心をさらした無防備なあなた。私の目の前で裸んぼうなんて、恥ずかしい、恥ずかしい。恥ずかしくって、泣きたくなっちゃうかもしれませんけど、身体を隠すこともできない。逃げだしたくても逃げられない。あなたはとても小さくて、弱くって、歩くこともできない」
はずかしい、はずかしい、はずかしい。
マリーさんに見つめられて、はずかしい。
身体を隠すこともできなくて、逃げだすこともできない。
「でも、本当は恥ずかしがったり、逃げたりする必要はないんです。だって、私はあなたが大好きだから。だって、私は……私が、あなたのおかあさんだから。あなたは、私に触られるだけで、私に身を任せるだけで、とても安心できる」
マリーさんが、私をギュッてしてくれる。
それだけで、すごく安心する。
「あら? 手に、何か持っていますね? あなたの小さな手で握るには大きくて、あなたの柔らかい手には硬すぎる。そんなに強く握っていては、あなたの手が痛くなってしまいます。手を、開いてください」
私の手の中……私の手には大きくて、尖ってて、持っていると痛くなる。
だけど……
「……ん……っん」
首を横に振る。
これは、大切なものだから。
手放しちゃいけないものだから。
「……そうですか……それは、きっと綺麗で、あなたにとって大事なものなんですね。でも……」
怒られるかと思ったけど、『おかあさん』はもっと強く、私をギュッってしてくれる。
「もう、そんなものを支えにしなくても良いんですよ。その小さな手を、そんなに強く握りしめて、我慢しなくていいんです。誰かの面影でごまかして、寂しさを我慢しなくていいんですよ……おかあさんの前では、隠さなくていいんです」
さみしさが……こみ上げてくる。
「全部、流してください。いろんな人と会って、人の集まる所に行って、みんなと同じことをして、みんなの話を聞いて……本当は、寂しかったんでしょ? 優しいおかあさんみたいな人を、探してたんでしょ?」
心の奥底に埋めていた思い出が……蘇る。
『なんで普通にできないの!? どうして、私を困らせるのよ!!』
私の心の奥底に刺さる、そんな記憶の棘。
私が幼稚園くらいのころ、母はよく怒っていた。
これは……ごく普通のことだ。夫婦の三分の一が離婚する日本で、しかも育児に関する保障が不十分だと言われる現代で、夫より仕事が出来ても子供が出来たら母親が仕事を辞めなければいけない風潮のあるこの社会で、母親が育児ストレスでヒステリック気味になるのなんて、珍しくもない。
『普通の家庭』=『幸せな家庭』だったら、ほとんどの家庭は、みんな簡単に幸せになれるのだろう。でも、実際には、不和の全くない家庭なんてほとんどない。問題も、その要因となるものも、いくらでもある。
だけどそこに、あえて一つ要因を加えるなら……私が、嘘や隠し事の全くできない、正直すぎる性格だったこと。そして、関わるべきではないものによく関わってしまう変な性質みたいなものがあったことだ。
幼い子供の嘘や隠し事が下手なのは、別に特別なことじゃない。でも私は、おしゃべりだった。
見たこと聞いたこと、なんでも話してしまう子供だった。
『おとうさん、ソファーの隙間にヘソクリ隠してるよ!』……このくらいなら、まだまだいい方。
『○○くんのおかあさん、××くんのおかあさんのわるくちいってたよ』……とかっていうのは、今思えば母親に話すことじゃなかった。
幼稚園の送り迎えで来ていた友達の親は、子供にはわからないと思って普通に『あの子の親、どんな教育してるのかしら』『安物の服ばかり着せて、子供がかわいそうだわ』とかって悪口を呟いている。でも、言葉の意味は完全にはわからなくても、子供にだって雰囲気でそれが『よくないこと』を言っているのはわかるものだ。ただ、私はそういうのを他の子よりよく見ていたし、見ていることにも気付かれにくかった。友達のおとうさんと幼稚園の先生が建物の裏で大人の熱いキスをしているのを見てしまったことだって、一度や二度じゃない。
だけど、私はそれらを変だとは思ってなかった。ただ、不思議に思っただけだった。だから、いつも帰ってから親に質問した……された方は、たまったものではなかっただろうけど。
もちろん、その中には私の両親を不快にさせるような話や、不都合な話もあったけど、その時の私には区別がつかなかった。
先に我慢の限界が来たのは、私と過ごす時間の長いおかあさんだった。
あの人には、私が他人の秘密ばかり探って、人間関係の後ろ暗さを見つけて自慢するひねくれた子供に見えたのかもしれないけど、私は、その時初めて自分が母を苦しめていたと知った。
その時の母の叫び……『どうして普通にできないの』が、今でも心の奥底に響いてる。
今ではもちろん、私もさほど手がかからなくなって、母も過度のストレスから解放されて普通の優しい女性に戻って、普通に仲良し母子で通っている。
だけど、私の心にはまだ怒ったあの人の顔と声が残っている。
何かの拍子にまたあの怖い人になってしまうかもしれない、それが怖い。
だから私は、あの時から、ずっと『普通』にしてる。
起きてるときも、寝てるときも、ご飯を食べるときも、学校でも、家でも、怒るときも、笑うときも、泣くときも、失恋したときだって……どこかがおかしいと思われないように、ずっと『普通』。
いきなりこんな世界に、こんな事件に巻き込まれたって……
「泣きなさい。まだ大人にもなってない、か弱い女の子が、こんな命の危険のある世界に巻き込まれたら……怖くて、寂しくて、わけがわからなくて泣いちゃうのは、それこそ普通のことだから」
握りしめていた手から、力が抜ける。
その中にあった何かが……私を支えていた、強い何かが、ポロリと零れ落ちる。
同時に、涙も零れ落ちる。
この理不尽な世界に巻き込まれたあの日流せなかった、それからずっと流せなかった、たくさんの涙。
「ぅぁあ……帰りたいよお……おかあさん」
私は、小さな子供の時みたいに、こわい顔をしなかった頃の優しいおかあさんに、また、すがりつきたかった。
「あなたは本当は強い……とっても、強い子ですね。いつも誰かに心配されないように平気な顔をして、弱ってる人にはおかあさんみたいに優しくして……ずっと平気なふりをして、『普通』なままでいるのは本当はとても難しい。ライトくんは、それに耐えられなくて壊れてしまったけど……あなたは、彼よりもずっと強かった。嘘に逃げずに、過酷な現実に真っ向から耐えられるほど強かった……強かったから、誰もあなたのか弱い心に気付けなかった」
死んじゃうかもしれない世界が怖い。
嘘ばっかり言う皆が怖い。
誰かに嫌われるのが怖い。
「あなたは強い。『普通』に生きるなんて、私にも、ライトくんにも、どんな大天才にもできないことだもの。きっと、あなたのその強さは、たくさんの人の支えになっている。確かなものが何もないこの世界で、それでも変わらないあなたの姿は、いつか元の日常に帰りたいと思ってる人達の希望になっている。でも……今だけは、弱くていいんですよ。ここは教会、強い人も、弱い人も全てが愛されるべき場所。ずっと大きなものに、平等に包まれる場所。だから……」
ギュッと、私は包み込まれる。
「まだ喋れない子供のように、力一杯泣きなさい。理由なんてわからなくても、泣きたいだけ、泣きなさい。教会では私が、あなたを見てるから」
「ごめんなさいマリーさん、こんな夜遅くまでお邪魔しちゃって」
マリーさんとのお茶会はすごく楽しかった。
ハーブティーも美味しかったし、クッキーもそこらで売ってるものよりずっと美味しかった。
それに、マリーさんとのトークはたわいのない話題だったのに、すごく盛り上がった。
久しぶりに本格的な女子トークをして、なんだかすごく気分がスッキリしたけど、楽しすぎたせいか時間を忘れて話し込んじゃって、いつの間にか外はすっかり暗くなっていた。
でも、マリーさんは迷惑そうにはせずに、ニコニコと見送ってくれる。
「あらあら、またいつでもいらしてください。私も楽しい時間でしたから。どうですか? なんなら今からパジャマパティーに突入というのも。かわいい子もいっぱい居ますし、抱き枕には困りませんよ?」
「ちょっと心揺れるお誘いですけど……ごめんなさい、実はこの後、人と会う予定があって……」
「それは引き止めてはいけませんね。どうぞ、夜のデートをお楽しみください。ちゃんと勝負下着を着ていますか?」
「そ、そういうのじゃないんですって! 私はただ、届け物を頼まれただけっていうか、パシらされただけっていうか……」
「あらあら、これは無粋でしたか。では、どうぞ届け物をお楽しみください」
「もー! マリーさんの意地悪!」
マリーさんの冷やかしを背にして、私は目的の場所に歩き出す。
目的地はギルド『大空商店街』のギルドホーム『本部』。そこで何やら大きな作業をしているらしいライトの陣中見舞いにいくのだ。
生産ギルドの本部なんだから大抵のものは揃うだろうに……なんでわざわざ私に夜食なんて頼むかな……文化祭の追い込みじゃあるまいし。
まあ、頼られて悪い気はしないけど。
前にライトから受け取った空色の羽織りを着て、ほぼ素通りで警備を抜けて『本部』の中に入る。
増改築を重ねて今は五階建ての高層建築(もちろんこの中世ファンタジーの世界観での話)の立派な建物は、外見の割に中がガランとしている。最近は犯罪組織が活発で、この目立つ建物は狙われやすいから大事な人やものを避難させてあるのかもしれない。
ほとんどギルドホームとして機能してない『本部』の階段を上がって、ライトのいる最上階の部屋を見つける。珍しい字体の『関係者以外立ち入り禁止』って表札がかかってたけど、私は呼ばれたんだし入って大丈夫なはずだ。
ドアノブを握って、中に入ると……
ライトと、メモリちゃんが一緒に寝ていた。
二人して手を繋いで、指を絡めて、布団もかけず、部屋に入った私にも全く反応せずに熟睡している。
なんで所にメモリちゃんがいて、しかもライトとしっかりと手を繋いで寝ているのかはわからない。
だけど……
「あらあら、お楽しみ中でしたか。では、私も混ぜてもらいましょうか」
私の身体は、私のものではないようにメモリちゃんの反対側に横たわり、ライトの手を握る。
不思議と恐怖はなくて、むしろ満たされて……夢心地になってくる……
「クスクス、あらあら大変。早くしないとお茶会に遅れちゃう、最後の席が埋まる前に、穴の奥へと落ちましょう?」
自分の声なのに、どうしてか遠くに聞こえるその声で、私の意識は落ちていく。
落ちていく、落ちていく、落ちていく。
だけど今度は……忘れてない。
私は『凡百』、脇役だ。
凡百vsマリー=ゴールド……勝者、マリー=ゴールド
勝負にもならず。




