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デスゲームの正しい攻略法  作者: エタナン
第五章:成長(ビルド)編

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123頁:適度に休憩を取りましょう

 バイトを始めて少し時間がなくなるので、前書き、後書きのコーナーはしばらくお休みさせていただきます。

 仕事に慣れて余裕ができたらまたコーナーを考えたいと思うのでご容赦ください。

 十数年前。

 とある研究所にて。


『実験開始。蛇を入れろ』


 ガラス張りの部屋にそう声が響くと同時に、天井の穴から蛇が落ちてくる。


 少年は目の前に現れた蛇をすぐさま絞め殺す。

 この蛇は毒蛇かもしれないから、自分がかまれる前に殺したのだ。


 すると……


 バチッ!!


「うっ、あ……」


 少年の首につけられた装置から電流が流れ、少年は昏倒する。


 もう何度も何度も、この流れを繰り返している。

 電流も、慣れさせないように少しずつ強くなっている。

 だが、やめることが出来ない。

 『危険かもしれない生物』が現れたら、どうしても殺さずにはいられないのだ。



 遠のく意識の中、少年はいつも研究員の声を聞きながら眠りにつく。


『実験失敗だ。被験体が目覚める前に檻に入れ直せ』







「はっ!!」


 汗だくで目覚めた青年は……『針山』は、無意識に首筋に手を当て、『首輪』が無いのを確認して呟く。


「また……嫌な夢ですね。なんで今頃、あんなことを……」


 その首筋には、一生消えないような酷い火傷の痕が残っていた。










《現在 DBO》


「ここも違うか……これで六軒目だな」


「また次の鍵ですか……本当にこれ、ヒントに繋がってるんでしょうか? 無駄足だけ踏ませて最終的に何もないとか……」



 6月2日。午後6時。

 ライトが『同時多発傷害事件』の調査を始め、与えられたヒントを辿って宿部屋を訪ねること六軒目だ。


 ライトと行動を共にするナビキも、さすがに大した成果がないまま引っ張り回されて精神的にも疲労がたまってきている。

 街と街の移動や昼食のときにはナビと替わったが、宿が高レベルのフィールドを跨いだ先の町ばかりにあり、罠の可能性も考えているためほとんどナビキが出ずっぱりなのだ。精神的HPが無限のライトはともかく、人格入れ替えが制限されたナビキにはキツい。


 ライトは、それを見かねたようにナビキに声をかける。


「ナビキ、疲れたなら今日はここら辺にして次の鍵は明日にするか? 別に即日解決するように言われてるわけじゃないし」


「遠まわしに私が足手まといだって言ってるんですか? 私はまだまだ大丈夫なので、次に行きましょう」


「やせ我慢はやめてくれよ? オレは限界とかないから、うっかりナビキが倒れるまで引きずり回しちゃうかもしれないんだぞ?」


「……じゃあ、私が倒れたらナビとイチャイチャしたらどうですか? 休憩もかねて」


「ナビキ……敵の思惑通りに回り道させられて苛立ってるのは分かるが、キャラが崩壊し始めてるぞ。前はそんな刺々しいこと言わなかっただろ?」


「別にイライラなんてしてません。先輩が私を引っ込めさせてナビとイチャイチャしようとレストランで『アーン』とかやるのを当人視点で見せられようと人がグッスリ『眠て』る隙に一つのベッドの上で一緒に『寝て』いようと、イライラなんてしません。」


「……なんかごめん。だが一つ言わせてもらえば一つのベッドで一緒に寝たことはないし寝る予定もない。プラトニックな交際を心がけています!」


「それはそれでイライラします。焦れったいラブコメなんて当人視点で見るもんじゃないです」


「イライラしてるって言っちゃった!?」


 ナビは現在休眠中だ。

 一日中の活動時間が短くなっているナビだが、こまめに休むことで乾電池のように活動時間の総量を増やせないかという試みをしているのだ。


 しかし、ライトはナビが休眠中でも『ナビの恋人』という立場を変えていないため、ナビキはアプローチする隙もない。

 しかもナビが起きたときには付き合ってる二人の様子をリアルタイムの本人視点で見ているし、歯痒いことこの上ない。


「……てか、やっぱりこれもナビも消えかけてる証拠なのかもな」


「……どういう事ですか?」

 ナビキがライトの思いがけない言葉に驚くと、ライトはやや言い辛いように言った。


「ナビの攻撃性が逆流してる。前はそういうストレスはナビが処理してたんだろうけど、今はナビキが自分で処理してるんだ。イライラするのは悪い事じゃないん……だろうな」


「……」


 ストレスに弱いナビキは『ナビキ』、『ナビ』、『エリザ』の三つの人格で分担してストレスを処理していた。

 いつも怒っているような荒々しさを見せていたナビも、ナビキの一部だった。

 『ナビキ』が一つになってきている。


「……先輩にとって『良い事』ではないんですよね。」


「悪いが、今のオレが愛してるのはナビだからな。素直に喜ぶことは出来ないよ。本当はあいつが意志を曲げてくれたらどうやっても消えないようにさせるつもりなんだけどな」


「……『妹』を大切に思ってくれているようで何よりです」


「皮肉まで言えるようになったか。大した進歩だよ。今のうちにそういうストレスの流し方も憶えておけよ、オレになら何言っても良いから……間違ってもナビには当たるな」


「……先輩はよくできた『人間』ですね」


「覚え立ての皮肉を披露するのはいいが、訂正するよ。オレはよくできた『人間』なんてもんじゃない。むしろその対局……」


 ライトは、部屋の中の鍵を回収し、部屋の入り口のナビキとすれ違いながら言った。



「傷つく心もない『人外(ばけもの)』だ。オレみたいになろうと思うな。人間に戻れるなら、それが一番だろうしな」







 同じ頃。

 とあるダンジョンの深奥にて。


 ダンジョンの探索に来たパーティーが異音を捉えた。


 ガツガツ……ボリボリ……


「……この音は……」

「ああ、何かいるな。気を付けろ」


 ここはそれなりにレベルの高いダンジョンだ。そして、それを探索に来たパーティーももちろんそれ相応にレベルの高い戦闘職。ダンジョンの中では何が出て来てもおかしくないということはよくよく理解している。


 相手を見て敵わないようならターゲットされないうちに静かに逃げる。

 それがダンジョン探索で知らないものに遭遇した時の常識だ。


 それに従って、パーティーは音のする曲がり角の先を覗いた。



「おい、なんだあれ」

「ボスを食い荒らしてやがる」

「やばそうだ、逃げろ」


 そこにいたのは、ボス部屋でボスモンスターの残骸と思われるものを貪る『何か』。

 戦闘職の経験と勘が一瞬で警告を鳴らす『何か』。

 間違いなくプレイヤーもモンスターも関係なく喰らいついてくるほど飢えた『何か』。


 異論なく全員で退避の体勢をとるが……


 ザザッ


「!!」

「いつの間に後ろに!?」



 腹を空かせた『餓鬼』が、獲物を逃すはずがなかった。







 午後7時。

 七軒目。宿部屋に入ったライトと、疲れ果てたように力なく後ろについて入ったナビキは、わかりやすい今までの部屋との違いに気付く。

 そこは……今までの『借りただけ』の部屋ではなく、様々な物が散乱する生活感のある部屋だった。


「ここは……どうやら散々焦らされたが、ようやくヒントらしい部屋に辿り着いたな」


「そうですね……机の上に鍵もありませんしが……」


 今まで鍵が乗っていた机の上には何もない。

 そのかわり、ベッドの上や窓際、チェストの上などに鏡や食器、本、ワンピースなどが放置されている。


「これは逆に次のヒントを探すのが難しくなりそうですね。下手をするとそれっぽい部屋だけど本当は何も重要な物はないとか……」


「その可能性も確かになくはないが……ここまでやって何もこっちに利益がないってことはないだろう。」


「……どうしてそんなことが?」


「これが『ゲーム』だからだよ。オレ達が辿って来た道はこれを仕掛けてきた奴らも通って来たはずなんだ。ここまで苦労して最後に何も配置しないなんてのは、その『ゲーム』の製作者の心理からしたら駄作以下だ。それならせめて『引っ掛かったぜバーカ!!』のパネルくらい見えやすく配置してないとおかしい。それがないなら、ここには次へのヒントかなんらかの『景品』があるはずだ。」


「でも、ここから何か見つけるには……」


「家探しするしかないな。『大空商店街』の鑑識系でも呼ぶか?」


「あちらはあちらで他の方面の調査で忙しそうですよね……私達で調べましょう」


「現状維持とかはしなくていいか?」


「正直言ってギルドの鑑識の人達より先輩の『製作者の意図を読む能力』の方が信頼できますからね。後で怒られそうになったら私が上手く説明しておきます。これでも一応、ギルドの幹部メンバーですし」


「……一応動かす前に写真くらい撮っておくか」


 まるでライト自身が本物の警察の鑑識であるかのように、調査のために用意していた≪インスタントカメラ≫で各所の写真を撮るライトだった。




 部屋の印象としては『散らかった部屋』というのが一番だった。

 物が散乱し、どれもこれも意味深で、逆に意味を見つけるのが難しい。

 総合的な様子からの考察を求められているとするならば『誰かが引きこもった部屋』に近いだろうか。食器が必要以上に大量に、しかも使われたまま洗われることなく積み重ねられている。それに、暇つぶしにでも使ったのか『攻略本』や何度も読み返されたらしき新聞などもある。

 そして、わずかだが壁に傷がついている。


「食事は外から入れられてたみたいだな。この食器の数だと……大体一週間くらいか? 相当に退屈してたみたいだし、引きこもってたって言うより軟禁されてたっぽいな。もしくは監禁か」


「『監禁』って、いかにも犯罪っぽい気配がしますけど……じゃあ閉じ込められてた人はどこに行ったんでしょう?」


「さあ、監禁されて救出されたって話は聞かないから殺されたか、あるいはストックホルム症候群的に洗脳されて犯罪グループに加わったってところだろうな。『蜘蛛の巣』ではそうやって仲間を増やすための誘拐をする専門のチームもあるらしいし」


 『ストックホルム症候群』とは、監禁された人間が長く一緒にいた犯人に対して過度の好意を抱いてしまう現象だ。時には逆方向にそれが作用する『リマ症候群』という現象もあり、立て籠もり犯が親しくなった人質を無傷で開放することもあるが、そういった加害者と被害者の間で作られる絆はテロリストの洗脳などにも利用される。


「ま、吊り橋効果と似たようなもんだけどな。人間は極限状態と完全なリラックス状態の時が一番精神に隙ができる。マリーは相手をリラックスさせる方をよく使うが、多少手段が荒くなって良いなら極限状態に追い込む方が簡単だしな」


「つまりここは、誰かを監禁して洗脳しようとした部屋なんですか……それにしては、なんだか生活感がありますけどね。抜け出そうとする必死さが見えないというか」


「もしかしたら、別に人質とか取られててそれで『勝手に抜け出したらもう一人を殺す』とか言われてたのかもな。そうすれば最小限の監視で相手の動きを縛れる。もう一方は実際に監禁して同じように洗脳してもいいし、なんなら監禁してるらしき証拠っぽいものさえ用意できれば本当に捕えている必要もない。むしろ、そうやって『逃げ出せるのに逃げ出さない』って状況を作った方が『自分の意志で従ってる』って錯覚させられる。『思い込みが実際の感覚を塗りつぶす』ってのは、催眠の初歩だ。」


「催眠に詳しいんですか? もしかしてマリーさんから……」


「これは自前の知識と経験則だよ。だがまあ……詳しく知りたければマリーに教えてもらうといい。紅茶でも出しながら教えてくれる」


 ライトの言葉に、ナビキは部屋の中の物を調べながら少々顔をしかめる。


「マリーさんですか……私は、別に誰かに催眠をかけたいとかそういうことは……」


「別に他人にかけるためじゃない。だが、相手がどんな手段で来るのかを知っておかないと人間相手では生き残れない。最近マリーとあんまり話してないだろ?」


「………」


「まあ、何かされるかもしれないって思って警戒するのは分かるが、マリーはむやみやたらに人を操ったりしないよ。あいつは善意でやってる、それが行き過ぎて変なことすることもあるが、その時にはオレが止める。あいつは顔は笑ってても意外と、人間に怖がられると傷付くタイプだ。人外(ばけもの)としては損な性格だよ」


「……怖がってるわけじゃないんですけどね、ちょっと……」


 その時、ナビキは手に取った本を見て……ライトに呼びかける。


「……先輩! この本、『商店街』で売ってる本じゃありません! それに、ゲームの既存アイテムじゃなくてプレイヤーメイドです!」


 チェストの中を調べていたライトもナビキの言葉の意味を察してナビキの見つけた本を見る。

 このゲームでは、ゲームに元々ある本でなければ大抵は『大空商店街』が生産したプレイヤーメイドだ。そもそも、それなりにページ数のある整った本を作るのはかなりの労力が必要になる上、量産にはスカイの発明した印刷機が必要になる。『大空商店街』では一部の有志プレイヤーが書いた原稿を専門の『筆記スキル』の修得者が複数で本の規格に合わせて清書し、量産する場合はそこからさらに印刷の原版を作る。個人で原稿から清書までを書き上げるのはパソコンもプリンターもないゲームの世界では難しいのだ。


 『大空商店街』の本なら表紙にそのロゴが入っているが、それがない。


「『大空商店街』の傘下のギルドのでもロゴは入ってるし、他に本を作ってるようなギルドは聞いたことがない。つまり……合法とか非合法とか言うのは変かもしれないが、少なくとも『非公式』な本か。」


 ハードカバーの本の表紙には題名らしき『無人の部屋』という文字だけが刻まれている。

 作者名も挿し絵もない。


 ナビキがそれを机の上に置き、ライトもその隣に立つ。

 そして、無言のうちにナビキが表紙の端に手を伸ばし、ページをめくると……




「あれ……」

「なっ……」


 不思議な浮遊感。

 一瞬だけ意識がとぎれたような違和感。

 そして……



「あれ、キミたち誰?」


 さっきまで部屋にいなかった見知らぬ少年がいた。









 同刻。


 『時計の街』から西に数百メートル地点のフィールドにて。

 フードケープを着た少女が東を……『時計の街』を見据えて呟く。


「……そろそろですね。行けますか?」


 背後には飢えに飢えた『何か』、そして眠るように目を閉じながらそれらを従えている『何か』。

 言葉を解することなく『その時』を待ち構える。



 嵐の前の静けさのような静寂の後、『何か』が目を開くと同時にそれを合図にフードケープの少女が叫んだ。



「メチャクチャにして……『ブラッディーパーティー』!!」

(マリー)「こちらのコーナーは作者の都合により一時休載とさせていただきます。また会える日を楽しみにしております。」

(スカイ)「ま、実を言うと紹介のネタも尽きてきてたからね。それにしても、マリーの口調ってこういう公式発表みたいなのにやたら合うわね」

(マリー)「まあ、スカイさんも敬語くらいはやろうと思えば簡単では?」

(スカイ)「どっちも敬語にしたら紛らわしくなるでしょ」

(マリー)「なら一度、私が敬語やめてみましょうか?」

(スカイ)「え、ちょっとそれ聞いてみたい」

(マリー)「では、わた(ジャック)「ちょっと待って!! ボクが復帰する前にコーナー終了ってどういうこと!?」ね。」

(スカイ)「なにセリフかぶせてくれちゃってるの!? マリー聞こえなかったからもう一回やって!!」

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