117頁:危ない人に気を付けましょう
『バレーボールスキル』
バレーボールをするスキル。
遊技系スキル。ジャンプ力の補助と手でボールを掴まずに『弾き飛ばす』技により、高い角度からの攻撃が可能になる。
「ロボット三原則って知ってる?」
ある日、ミカンが部室で正記に唐突に問いかけた。
その手には巨大ロボット同士が戦うゲームがホログラムで起動している。
返却された定期テストの復習をしていた正記は手を止めて答える。
「第一条、人間を殺傷しない
第二条、第一条に抵触しないかぎり人間の指示は聞かなくてはならない
第三条、第一条と第二条に抵触しないかぎり自身の身を守らなければならない
この三つでしたっけ?」
「正解。まあ、例外はあるだろうけどね。例えば軍事用のロボットなら人間を傷つけられないと意味ないし」
そう言って、ミカンは敵ロボットを木っ端みじんに爆発させる。中に乗組員がいるかどうかの設定は知らないが……いたらおそらく生きてはいないだろう。
「……そのゲームの設定について言うなら、ロボット三原則に反してるとは限らないと思いますけど。あの三原則は完全全自動のロボットの電子頭脳のプログラムですから」
「『銃が人を殺すんじゃない。人が人を殺すんだ』ってやつね。まあ、正論ね。そもそもロボットだって人間の道具の延長だし。でも、三原則はなかなか良くできてるわ。何より、人間への根本的な下剋上を最優先に封じてるし第二条は緊急停止と自爆命令を含んでるから安全性は二重に保証されてる。でも……ロボットからしたら、たまらないよね? いつ自爆させられるかわからないんだし。でも、安全性が確立されないと使ってもらうことすらできない。二律背反だよね。人間に従順じゃないと存在意義を満たせないのに、人間に従順だからこそ存在自体が脅かされる。この矛盾を解決しないとどんなに進歩しても完璧な存在には成り得ない。」
「存在の『目的』と『手段』の矛盾ですか……哲学みたいですね」
「『哲学』ねぇ……なら、どうするの?」
ミカンは裏技から『巨大ロボット』vs『フル装備の兵士』というマッチングを設定し、本来はストーリーモードでやられ役の軍隊の一部として出てくる人間の兵士を操作しながら、正記に問いかけた。
「『哲学的ゾンビ』なら、その矛盾をどう克服するのかな?」
ホログラムの中で、人間の兵士が圧倒的な性能差を乗り越えて、ロボットを追いつめていた。
《現在 DBO》
「狙いはスカイさんの権威失墜と『大空商店街』の体制崩壊ですか。私を生け贄にしてスカイさんが助かれば『弱者の代表』として活動を進めていたスカイさんは信用を失います。思い上がる気はありませんが、私は多くのプレイヤーの方々と繋がってますからね……弱者の代表がさらに弱者でしかも決して知名度の低くない私を自分の身代わりにすれば、信用を大きく傷つけることになるでしょう。そして、今のスカイさんの立場は権力抗争で危ないですから、信用を失えばスカイさんはギルドマスターの座を失います。それに、彼女のそれまでの政策も見直されてしまう。ただ彼女を暗殺するだけではライトくんやホタルちゃん、それにナビキちゃんがその意志と体制をそのまま受け継いでしまうかもしれませんが、スカイさんが生きたままで信用を失えば同じ政策は難しいでしょうからね」
「さすがは『金メダル』、理解が速くて助かる」
現在午後二時。
ライトはマリーを赤兎、花火、マックスから引き離して敵の目的を説明しようとしたが、先に全て説明されてしまった。
どうやら、人間関係や権力抗争はマリー=ゴールドの方が得意分野だったらしい。
「ですが……その場合はおそらく人質交換の直後に私は殺されてしまうんでしょうね。私がスカイさんの『代わり』に殺された方が反感は大きくなりますから。もちろん、私も無抵抗に殺されるつもりはありませんが……」
「ちなみに、暗示か何かでカガリを操るっていうのはできるのか? そうなれば人質交換の前にあいつを止められるだろう?」
「……すみません、ちょっと難しいかもしれません。」
「どうした? あれ、多分殺人鬼じゃないだろ?」
「……これ、見てください。」
マリーはポケットから小さな小物を取り出して見せる。
それは……小さな円柱だ。トーテムポールのような模様が彫られている。
「これは……マリーの御守りか?」
「以前にカガリさんに相談を受けたとき差し上げたものです。さっきのダンジョンに落ちていました」
「……作った御守り全部の模様憶えてるのか?」
「人それぞれ最適な『処方』がありますからね。手元にある中で一番その人の心に合った物を渡しています。場合によってはその場で作ることもありますし……カガリさんの時もそうでした」
「……カガリは元々、あんなふうじゃなかった。髪も長かったし服のセンスももっと大人しくてあんなに挑発的じゃなかった。少なくとも、最後のボス戦ではな。あいつに何があった?」
誘拐の実行犯はカガリ。
炎属性魔法使いの最前線ソロ。
赤兎とも面識があり、攻略にも貢献していた実力者だ。
それが何故か、犯罪者側に堕ちている。
「何かがあったのは間違いないでしょう。彼女は私に相談をしに来てくれたことがあります。最前線のソロプレイヤーとして孤高に戦う彼女は、心の内に不安と恐怖を抱えながら頑張っていました。戦いへの恐怖、他人への不信、未来への不安……それらを抱えながらも、期待と使命感に応えるために最前線で戦っていました。元々VRMMOの経験があったことが、彼女に守られる側になるという選択肢を選ばせなかったのでしょう。しかし、それでもやはり精神的には疲労をため込んでいました。そこで私は精神安定のためにこの御守りを渡して、また相談に来るように言いました。」
「一発で不安を全部治療したりはしないのか?」
「普通の人はライトくんみたいな不死身メンタルは持っていませんし、そんな負担がかかるやり方はしませんよ。私は人の手助けをするだけです。それに……あまり一気に干渉すると私に依存してしまう危険がありますし、彼女はその傾向が強かった。だからこそ、他人に頼り始めると依存してしまうと知っていたからこそソロで戦っていたのです。そして今は……」
「シャークに依存してる……洗脳されてるのか。」
「本当にただシャークさんに一目ぼれしたという可能性もあるので洗脳なのか感化なのかは定かではありませんが……少なくとも精神的に正常ではないと思います。まるで薬物中毒者ですよ、今の彼女の精神状態は。そんなボロボロの精神に無理に干渉すると……最悪の場合、錯乱して後先考えず魔法を乱射し始める可能性もあります。なので一度交渉の会話から始めて慎重に……」
「だめだ、マリーはギリギリまで能力は使うな。できれば『救世スキル』も」
ライトは強い口調でマリーを制した。
マリーは疑問を体で表現するように首をかしげる。
「……何故ですか? スカイさんを確実に助けるためには……」
「スカイはオレ達で助けるから、マリーは今回はできるだけ何もせずに無力なフリをしていてくれ。もちろんマリー自身が狙われたら自分の身を守るために能力を使ってくれて構わないが、他人を守るために使うな。シャークの思うつぼだ」
「思うつぼ……ですか。随分とシャークさんを評価しているようですね」
「ああ、シャークは人外連中にとっては一番やり合いたいくないタイプの人間だよ。ある意味スカイよりヤバい。何せあいつは『化物退治』の鉄則を実践してるからな……むしろ、そういうやり方に特化してる。」
「『化物退治』の鉄則……ですか?」
「『負けるのも作戦の内』みたなやり方だよ。これまであいつは何十回とオレにちょっかいかけて来てる。それも金や情報、人質なんかを使って言うことを聞かせた下っ端プレイヤーばっかりだ。失っても痛くない完全な捨て駒で損耗を抑えて、作戦も失敗前提。実際あいつの作戦は一つ残らず潰して来た。いつも放置しておくとそれはそれで厄介なことになりそうな内容だったし、無視するわけにもいかなかったんだが……毎回いろんな角度から攻めて負け方を解析して、オレの弱点を探してたんだな。そして、とうとう辿り着いた。」
「『人間の形をした物を壊せない』ですか……実際問題、それはどれほどの強制力を持つ制約なんですか? ライトくんなら自分の精神を改変する事くらい余裕では?」
マリーの問いに、ライトは首を横に振る。
「この場合は逆だよ。これは精神を自由に改変出来るからこそ、どんな人格でもうっかり人殺しをしないように設定してあるんだ。思考パターンの深いところにな」
「いわば安全装置ですね。前のパスワードで変更できますか?」
マリーの言う『パスワード』とは普段暗示などの効かないライトが敢えて暗示にかかりやすくなり、外から精神を調節するための符号のことだ。
しかし、これにもライトは首を横に振る。
「こっちはちょっと特別なシステムなんだ。……ロボット三原則は知ってるか?」
「一応は……しかし、ロボット三原則は不完全です。曲解が可能で多数を生かすためという口実で少数を見捨てることができ、危険な命令を受けたときの柔軟性にも乏しい。まさかライトくんが自分の行動パターンに組み込むほどの物ではないでしょう」
「その通りだ。さすがにオレでもどうしても人を殺傷する必要性が出てくる可能性は否定できないし、他人から命令されたって簡単に死ねるほど安い存在じゃないと思ってる。だが、同時に安全性も確立する必要がある。なら、ロボットに場面に応じた柔軟な動きをさせたければどうしたらいいと思う?」
「……人間による手動操作……いえ、それでは人間へ完全に従属する形になりますし……あ、もしかして」
「正解。オレは安全装置として自分の中の仮想人格の一人に『人間』相手の殺傷の判断を一任している。それと、他人からの命令に従うかどうかもな」
ライトは自分のこめかみを指でたたく。
あたかも、その中に何かがあるとでも言うように。
「自分自身に命令者としての人格を内包して例外的な行動を可能にしたわけですか……それでは、『人間の形をした物が壊せない』というのは……」
「安全装置はよっぽどのことがない限り他人を傷つけようとは思わないないような人格でないと安全装置にならないからな。だが、そいつは人間とその偽物の区別がほとんどつかない……というより、差別したくないって思ってるようなタイプなんだよ。優しいって言うか甘いって言うか……それでいて頑固だからたちが悪い」
「……なんでしょう? その人格は随分と特別なんですね。ライトくんがそんなに他人事のように話して文句まで言うなんて……どんな人格なんですか?」
「『三木将之』……行幸正記が最初に『作った』人格だよ。ほぼ独立してて状況によっては絶対的な権限を持ってる……役割は逆だがナビキにとってのエリザと同じだ。」
「その『将之くん』が了解してくれないとNPCを盾に取られたときに何もできないわけですか……でもどうするんですか? 私を解析させたくないのはわかりました。しかし、私もライトくんも戦えないとなるとスカイさんを無事に助け出すのは難しいかもしれませんよ? 赤兎さんも花火さんも器用なことは苦手そうですし、私が説得して……」
「……一つ言い忘れたことがある。」
マリーの言葉を遮るようにライトが言った。
「『三木将之』の役割は何も安全装置だけじゃない。元々の担当は将棋やアリバイ工作をはじめとした『戦術』だ。飛車角落ちくらいなんともない」
ライトはニヤリと笑った。
「今回は『桂馬』に頑張ってもらう。」
午後三時。
ダンジョン中央の噴水広場にて。
随分と前からその中央の噴水の前で待っていたらしいカガリとその側で捕らわれているスカイの前にライト、マリー、赤兎、花火は姿を現した。
広場には他にも通行人や休憩している者などが多数いる。先に避難させるにもカガリがそれをさせないように見張っていたのだ。盾にする要員……『人の壁』は十分にいる。
(……60%)
姿を現した四人を見て、煙管を咥えたカガリは眉を上げる。
「あんれぇ? 一人いないねぇ? どうしたの、あのヒーローっぽい人は? ……ま、いっか★ あんな弱いの、いてもいなくても同じだし、それに……不意打ちなんて、させるわけないし★」
視線を下に向けるカガリ。
タイルには模様に紛れ込ませるように描かれた不自然な線……魔法陣が張り巡らされている。
さらに、噴水の頂点でキョロキョロと周囲を警戒する火竜。
さらに、消耗を抑えるためか頭上に控えめに灯っている火の玉は『トーチクラーケン』。おそらくカガリを攻撃しようとすれば即座に展開され、八本の触手でカガリを守り、同時に『燃料補給』を始める。
ここは既にカガリのテリトリー。
不意打ちなど不可能。近付けば火竜に察知され、地雷のように張り巡らされた魔法陣で吹き飛ばされる。
人質のスカイを無事に助け出すには、不意打ち以外にはカガリに自分から手放させるしかない。
仮に正面から戦うとしても……カガリは自分が最大限に有利に戦えるように罠を仕掛けているだろう。
相手は精神状態が正常でなくても最前線で一人で戦って生き残ってきた実力者だ。
「マリーさん連れてここに来たってことは、人質交換するんだよね? じゃあさっさと済ましちゃおうよ★ こっち来て、マリーさん★」
前へ歩き出そうとするマリーの肩をライトが掴む。
(……30%)
そして、カガリに向けて大きな声で叫ぶ。
「カガリ!! おまえは前線で一緒にボス攻略やってたカガリだよな!? なんでこんなことしてるんだ!?」
カガリは首を傾げて少し考えて……
「決まってるじゃん★ シャーク様のためだよ★」
「どうしてシャークにそんなに心酔してるんだ!?」
「それはね……私、ずっと悩んでたんだよ★ なんで私は戦ってるのか、なんで私がこんなことに巻き込まれてるのか、どうやったらこの恐怖から逃げられるか、ずぅっと悩んでたんだよ★ そこの金色さんに相談してもやっぱり恐いのは治らなかったんだよ★ でも、そんなとき、シャーク様が教えてくれたんだよ★ 怖くなくなる方法★」
カガリは煙管を大きく一気に吸って口から離し、キャップを外して杖にする。
「簡単だったんだよ……もっとワガママに生きれば良かったんだよ……強いからって無理に戦わなくても、戦いたくないからって逃げれば良かった」
杖を自分のこめかみに当てる。
「ユウトウセイなんて辞めて、もっと自分をさらけ出せば良かった。もっとテキトウに生きてれば、あんなに期待に押しつぶされて、苦しまされて、追い詰められることなんてなかった。もっと嫌なことはイヤって、やりたくないことはヤリタクナイって、出来ないことはデキナイって言えるようになってれば良かった。NOと言える日本人になれば良かった。そうだったら、シャーク様にも会わなくて済んだのに……」
杖をスカイに向ける。
前に出ようとする赤兎をライトが無言で制止する。
「みんなカアサンが悪いんだ!! 私をこんな風に育てたアノヒトがわるいんだ!! そうじゃなきゃ、悪いトモダチとつるんだりしないよ!! 子供の責任は親がとるんでしょ!? だったら迷惑かけてやる!! 目一杯悪いことして、悪いオトコにひっかかって、アノヒトの信用も、キャリアも、メチャクチャにしてやるんだ!!」
豹変したカガリ。
その様子に、赤兎と花火が驚く。
「言ってることムチャクチャだぜあいつ」
「なんや……ヤクやっとる奴みたいやで……」
ライトとマリーは冷静にカガリを観察する。
「錯乱し始めてるな……」
「そうですね……退行に責任転嫁、それに現実逃避……かなり危険な状態です。」
(……15%)
カガリはスカイに顔を近付ける。
「あなた、カアサンと同じような感じ? 大きなカイシャのジュウヨウポスト? キャリア? なら、子供はワタシみたいに育てちゃダメだよぅ?」
スカイは杖を突きつけられ、錯乱したカガリに迫られ……
それでも怯えることなく、憮然と答えた。
「生憎と、私は子供なんて作る気はないわ。私は……私のいなくなった後には何も残す気は無いから」
カガリが首を傾げる。
そして、少し落ち着いたように顔を上げ、杖を持った腕を力なく下げる。
「ごめんごめん☆ ついつい熱くなっちゃった☆ シャーク様はね、悪い人で、しかもメチャクチャ弱虫でヘタレだけど、実は結構いい人なんだよ☆ 弱虫だから、私みたいな本当は弱い者の気持ちが分かってる。だから、私はシャーク様に言われたことはちゃんとやるよ☆ さあ、マリーさんをこっちに寄越して」
口調を強めるカガリ。
赤兎が飛びかかるような隙も、スカイが逃げる隙もない。
そして、痺れをきらし始めてる。
ライトとマリーは顔を見合わせ、頷く。
(……5%)
「わかりました。そちらに行きますから、スカイさんを離してください」
「マリーさんがこっち来るのが先だよ☆ 私も二人同時に捕まえたら手が塞がっちゃうから人質は増やせないよ☆ マリーさんがこっち来たら、すぐに人質は離す……この仮面には爆発の魔法陣が仕込んであるから下手なことはしない方がいいよ☆」
「……わかりました。そちらに行きましょう」
マリーがカガリに向かって真っ直ぐ一歩を踏み出す。
そして、ゆっくり歩きながら同時に言う。
「ところでカガリさん、随分とあなたに近付きやすくなりましたよね?」
「……!!」
カガリは周囲を見回す。
広場に……ほとんど人がいなくなっている。
プレイヤーだけでなく……NPCも。
もはや数人しかいない。
「あら不思議、私は何もしていませんよ?」
本来NPCは決められたルートを巡回し、決められた座標に留まる設定が成されている。それが一度に全てこんなに目立つ場所からいなくなるなどということはまずあり得ない。プレイヤーが自由にできる領分ではないのだ。
それこそ、NPCに無差別攻撃でもして『一般人なら逃げなければおかしい』という状況を作り出すか……
「まさか……」
耳を澄ますと聞こえてくる……地響きのような足音。火竜と同時にカガリが振り返る。
その先には……
空中にレールを延長しながら走ってくるアジアの龍を象った『ジェットコースター』、そしてそれを追うように地面をかけてくる赤と白の横縞の囚人服を着た大男とその取り巻きらしき子供型モンスター達。
そして……
「うおぉおおお!!」
ジェットコースターの側面から飛び降り、紙一重でスカイとカガリのあるかないかわからないような隙間に飛び込むプレイヤー……マックス。
超至近距離で、カガリは驚きに顔を歪める。
「まさか、『人の壁』をどけるためだけに連れてきたっていうの? ……ボスモンスターを!?」
マックスは驚くカガリを無視し、その隣で驚く以前に状況を飲み込み切れてないらしきスカイに、胸を張って宣言した。
「『ヒーロー』が、助けに来たぞ」
『闇雲無闇』
いつも外套で身を包んだ凄腕の狩人。
噂ではとても無口だけど、実は接しやすい人らしい?
弓の腕が一流だが、実は盲目。
(スカイ)「いつも外套で顔までスッポリで見るからに怪しい人なんだけど……実はあれ、中身女なのよね~。意外よね~」
(マリー)「彼女の場合、あの様相はファッションじゃなくて防護服みたいなものですからね。実は知覚過敏で直に音や光に触れ続けていると疲れてしまうんです」
(スカイ)「なんかそこら辺の裏事情があんたらの部類の『人外』っぽいわね。意外でもないわ」
(マリー)「ちなみに、好物はスイーツ、趣味はウィンドウショッピング、お祭りやイベントが大好きでこの前のクリスマスにはテンションが上がってサンタクロースのコスプレでプレゼントを配っていたそうです」
(スカイ)「意外に感性が普通だった!?」
(マリー)「無口な上にあの服装で勘違いされやすいんですけど、彼女はメールで会話してみると普通に礼儀正しくて善良な人ですから」
(スカイ)「メール弁慶か……」




