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『午後10時半~午後11時~』

□コンビニ店内『午後10時半』


 レジカウンター内で菊地君と、制服に着替えた森君がおしゃべりしていた。

 制服の名札には、バーコードと、『研修中もり』という文字が、記してある。

「すげー、このご時世ニート出来るなんてッ。もしかして家、超金持ちなんじゃね?」

「父は武装運送業の社長です……」

「えッ、すげえッ。いいないいなー羨ましいなー」

 二人の間にニュッと現れるリーン。

「ヒッ?」

「うおっ」

「私語は慎んでください」

「は、はい」

「へいへい」


 もう一つのレジを操作していたマネージャーが声をあげた。

「森くーん、こっちのレジをトレーニングモードにしたから、レジ操作を練習しよう」

「えっ、い、いきなりですか?」

「そりゃそうよ」

 怖ず怖ずとマネージャーがいるレジの前に森君はやってきた。

「まずね、バーコードリーダーで名札のとこをスキャンして……」

 マネージャーが森君の名札をスキャンする。

 ピッという結構大きな音がする。音に反応して、ビクッと森君の体が震えた。

「……い、いいかい? で、このボタンを押すとレジのお金入れてるキャッシャーが開くから――」

 マネージャーが操作するとレジのキャッシャーが開く。

 キャッシャーの紙幣や硬貨を見て、森君は「わぁ」と、感嘆の声をあげた。

「どうしたの?」

「ぼ、僕、紙のお金って始めてみましたッ」

 遠目に見ていた菊地君はさすがに呆れたようで、

「……使い物になんのかアレ」

 と、ポツリと呟いた。



□コンビニ店内『午後11時』


 汗をダラダラ流しながら、森君はレジ操作を練習していた。マネージャーはそれを監督している。

 横では残りの二つのレジに菊地君とリーンがそれぞれ付いて、レジ接客していた。

 5,6人の列が出来ている。

 客は、ロボット、機動隊が持っているような盾とライフルを担いでいる客や異様に体格のいい高身長のヘビメタファッションのモヒカン男など様々。


「ありあとあしたー」

「ありがとうございました」

「ありがとうございましたー……さて、基本的な操作は覚えたかな?」

「な、なんとか」

「思ったより覚えが早いよ森君。じゃ、実際にレジやってみようか。プチ行列出来てお客さん待たせちゃってるし」

「エエッ、もうですか? いきなりレジするんですか?」

「そうだよ。実際やってみて慣れた方が一番手っ取り早いんだから。大丈夫大丈夫。横で袋詰め手伝いながらサポートするから」  


「おいッ、三番目のレジ、あいてないのかよ?」

 モヒカン頭のゴツイ客が苛々した声をあげた。

「はーい、少々お待ちください。ほら森君、『こちらのレジもどうぞー』って言って」

「コ、コチラノレジニモドウゾー」


 ややあって店内はどんどん混雑してきた。

 怒濤の如く押し寄せる客を相手に、森君は必死にレジ接客した。



「ちょっとぉ、レシート渡してくれよ」

「は、はい」



「免許証出せだぁ? 俺いつもここで煙草買ってんだけど」

「す、すみません。今日初めて入ったもので……」

 

 一端客が引けて店内は従業員だけになった。

 ……森君は顔が真っ青になっていた。

「大丈夫? これ、いずれは一人でやってもらうことになるんだけど。レジ接客は基本中の基本だからね」

「は、はぃ……」

 森君、返事はするが目がうつろで焦点が定まってない。

「ねえ、聞いてる? 君ホントに大丈夫か? 顔色悪いぞ」

「だ、だ、大丈夫ですッ」

 森君はくわっと目を見開き、懐から小瓶を取り出して、中から錠剤を手の平に数錠出したかと思うと、それをパクリと飲み込んだ。


 それを見てマネージャーは目を丸くした。

 リーンも森君をジッと凝視。

 菊地君はぽかーんとしている。


「え、え? 今、何飲んだの? 薬? あっ、ごめんね。なんか持病とかそういうのあるの? だったら事前に言ってくれないと」

「いえッ。ただの、ただのビタミン剤ですッ」

「……ホントか?」

「本当ですっ。もう大丈夫です。あ、頭ん中にハチャメチャが押し寄せてきたけど、これで、これでもう、落ち着くはずですから」


「それ絶対ビタミン剤じゃねえだろ……」

 菊地君が小声でそうツッコミを入れる中、リーンはじっと森君を見つめていた。

「……じゃあ次は倉庫の整理整頓や商品の品出し前だし教えるから……こっち来て」

「は、はい」

 フラフラとした足取りでマネージャーの後をついていこうとした森君だったが、突如怪訝な表情でリーンの後ろに視線を向けた。

 リーンは森君の視線の後を追い、後ろを振り返った。

 

 ――そこにはルインズリーダーが立っていた。

 店内の明るい照明で露わになった、ボロに身を包んだ小さな姿は男か女か・・・・人間なのかも妖しい感じがする。

 菊地君、ルインズリーダーのライフルを見てブルブルと震えた。

 マネージャーもやや身構えている。

 当のルインズリーダーはジーッとリーンを見つめたままだ。

 リーン、ルインズリーダーに近づき、しゃがんで視線の高さを合わせて極上の営業スマイルをみせた。


「いらっしゃいませ。何か御用でしょうか?」

 直後、ルインズリーダーはビクーンと体を震わせた。

「くぁ%※!!」

 意味不明の叫びをあげてルインズリーダーはきびすを返し、猛スピードで自動ドアを通って退店していった。

「な、何なんですかアレ」

マネージャー&菊地君「さ、さあ」


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