『午前8時』
□コンビニ駐車場『午前8時』
コンビニ駐車場に、朝日に照らされた車両が何台か止まっている。
バギーとか、窓枠に柵がしてあるバンとか、その隣に妙に未来的なデザインの車などその種類は様々だ。
犬を散歩していたロボットカーが店舗のリードフック(犬を繋いでおくポール)に犬を繋いで入店していく。
その横でリーンはゴミ箱のゴミ袋を交換していた。
いつもの朝である。
□コンビニ店内
レジ前を通り過ぎる私服姿の菊地君。
レジには朝勤の中年の女性店員がいる。
「おさきーっす」
「おつかれさま」
入れ違いでオーナーが店にやってきた。
「あっ、オーナー、お先に失礼します」
軽く一礼する菊地君。
「あ、はい、おつかれさん」
□スタッフルーム
室内は雑然としていた。
事務机にはメモ類が散乱。
床には撤去した販促用のポスターや値札カードを入れたダンボール箱。引き下げた廃棄食品を入れたカゴなどある。
マネージャーが私服に着替えながら、壁に貼られたシフト表を確認している。
シフト表は鉛筆書きで、消されたり、書き足されたりして、汚かった。
マネージャーは今日の夜に『森』という新人バイトが来ることを確認した。
シフト表の隣には『○日は6:00までに〈旧新宿〉駅西口へ移動要請有』と大きく書かれた謎のメモなどもあったりする。
ドアが開き、オーナーが入ってきた。
「あ、おはようございます」
「おはよう。夜、大変だったね」
「まあ、アレも仕事ですから。菊地がもうチョイ使える奴なら助かるんですけどねー」
「ハハハ、まあ、あれだ。休まずちゃんと来てくれるだけでも大したもんさ」
「はぁ、あの……オーナー」
オーナー、ふいっとストアコンピューター(略・ストコン)のモニターの方を向いた。
「あーそうだ、今日の夜に来る新人の子、よ ろしくね」
「森君ですよね。夜勤希望の」
「そうそう」
「えーと、新しく来る夜勤者は経験者で、できれば 銃器所得免許なんか持ってると助かるって お話ししましたよね」
「あー、そのことなんだけどね。まあ、アレだ。コンビニバイトの経験はないんだ」
「え、ないッ?」
オーナーは椅子に座り、ストコンのキーを叩きながら、マネージャーと顔を合わせようとしない。
「あー、でもあれだ。銃の免許は持ってるし、他にもすごいぞ。詳しいことは彼女に後から聞いてくんない? ちょっとトイレ行ってくる」
そそくさとスタッフ用トイレに入っていくオーナー。
マネージャーは顔をしかめた。
ほぼ同時にドアが開き、リーンが顔だけをニュッと覗かせた。
「本日22:00よりトレーニング研修に入る森君は、武装運送業を営んでいるお家の次男坊です。履歴書によると」
「……ほー」
「今年で十九歳。銃器の取り扱いの他、武装トラックや軽戦車の運転も出来るみたいです。履歴書によると」
それを聞いてマネージャー、顔を輝かせる。
「おお、そりゃすごいな」
「それと、マネージャー、夜勤のバイトの接客が悪いと、クレームが何件か来ています」
「……菊地かな?」
「菊地さんですね」
言うだけ言うと、リーンは顔を引っ込めてドアを閉めた。
マネージャーため息をつきながら上着を着こみ、ロッカーをバタンと閉めた。