シーン1
私が小さな二本足を使って立っているのは、黒く塗りつぶされたアスファルトの上だ。小さな石が一様に固まってできたその地面は、トラックが通る度に変形していく。トラックのトレッドに合わせてくぼんだ其処には、前日の雨の跡が残っている。
かといって、それが本当に其処にあるかは分からない。私たちの頭が其処のことを「窪んでいる」と認識しているだけなのだ。なら触れてみればどうか。
ざらざらとした窪みにはきっとたくさんの雑菌が存在しているのだろう。確かに私の触覚からもここが窪んでいるのは感じ取ることができる。でもあくまでそれは「感じている」だけ。本当にそうなのかは、はっきりしない。
ある人はこういった
「我思う故に我有り」
まさしくそうだ。いつも思っていたアンタのこともきっと幻のはず。
俺が路上に現れたとき、彼女はもうすでに路上に存在していた。思わずクスッと笑ってしまうほど仁王立ちの彼女。その彼女が見つめるのは軽四なら簡単にはまってしまいそうなほど深い道の窪みだ。
彼女はこういった。
「お前にはこの窪みが見えるか。それとも、見えていないか」
訳の分からない、そんな質問。でも俺は笑って返す。
「もちろん、見えるとも」
「触ってみたか。感じるか」
もちろん、感じる。これに引っ張られている。窪みに体が持って行かれている。
「よかった。私も惹かれてるような感じがしたから。でも、本当にそんなのか分からなくって」
誰かが自分と同じ感情を持っていようとも、それは俺たちの単なる妄想かもしれない。しかしながら、それが妄想だという証明も何もない。答えもない。ただただぶらぶら吊されているだけ。だけど、
「この暖かみを『暖かい』って感じられている自分が幸せ」
笑って言う彼女に一睡の喜びと不安を感じている自分は確かだ。
横を通る車はその轍にはまるようにして、また私たちに水をかけまいと慎重に通り過ぎていった。
これ「777文字」なんです。
うれしいかな、微妙です(笑´∀`)
ちょっとずつ>^_^<