伝授、そして準備
次の日、時雨はようやく剣の特訓をしていた。
「秋風君、秋風流というのは元々、二刀流の流派なんじゃないか?」
「はい。元は二刀ですが、常に持っている訳では無いので、一刀の技も在ります。」
「君は全て使えるのかね。」
「ええ。跡継ぎですから。」
アランは唸った。全て使えると言う事は、素質はかなりの物だ。
(少し早い気もするが、やってみるか。)
「分かった。奥義を教えよう。」
「もうですか!早くないですか。」
「君なら大丈夫だ。やってみよう。まず、説明しよう。」
アランはこの世界の事を話し始めた。
「あまり知られていないが、この世の万物に魔力はある。一つ一つ少しずつ違うんだ。」
「はぁ。」
「しかし、この魔力を調整してやれば二つが一つになり、魔力は二倍になる。」
「で、何なんですか。」
「む、まあよい。試したほうが早いな。剣を二本用意しよう。」
「あ、自分で出来ます。」
二本の刀を出現させ、構えた。
「奇妙な魔法を使うんだな。まず、一つにする練習をする。魔力を感じ、調整してみろ。」
(どうすんだよ。とりあえず、精神を研ぎ澄ませてみるか。)
時雨の感覚に変化が起きた。何でも無かったただの剣に、オーラを感じた。
(これか。んで、どうしよう?右の方が弱いな。左から移せるかな?)
ズズズッと魔力が動いた気がした。だんだん、剣同士が引き合っているような力を感じた。
力に逆らわず、ゆっくりと剣を近づかせる。やがて、液体の中に入るかのように、
右の剣が、左の剣へと入った。確かに魔力の増幅を感じた。
「入った!すげえ!」
「本題はここからだ。道具の魔力が強ければ、使用者の負担は減る。自分の中に火をイメージ
してみろ。そして、その火を剣に移せ。」
(火、火が俺の中にある。それを剣に・・・)
ボワッ。突然剣が燃えた。柄まで燃えているが、不思議と熱くない。
「おお!素晴しい!それが、レガシー家奥義だ。」
「名前は?」
「無い。昔はあったのだが、それを知る者が伝授する前に死んでしまった。だから、無い。
自由に付けておくれ。」
(そんな事あるんだ。こっちだったらありえねえな。)
「時雨~、終わったよー。」
「!早いな。そちらはもっと掛かると思っていたのだが。」
「雪消さんは非常に飲み込みが早く、苦労しませんでした。」
「ちょうどこちらも終わった所だ。ご飯にしよう。」
昼食を食べ、3人でこれからを話し合った。
「北の幹部って、どんなやつだ。」
「北、と言うか北西の幹部もいますけどね。あいつ等は、八方位の北を基準にペアを組んでます。」
「一気に二人相手って事?」
「まあ、そうですね。でも、東西南北以外の奴らは、基本サポートだと言われています。」
「でもキツイよな。」
「北西は偵察型だそうなので、大丈夫でしょう。北の幹部は、力が強い、とにかく戦いが好きな
性格らしいので、そっちの方が危険です。」
次に現状確認だ。
「木芽、何が出来るようになった?」
「いろんな属性弾を撃てるようになったよ。回復もバッチリ。」
「リリーは?」
「私も特訓し、力をつけました。」
「そういや、お前どうやって戦うんだ?」
「格闘です。自分自身の力に、サイコキネシスで増幅させた力で戦います。」
「マジかよ!ありえねえ。」
リリーは見るからにゴツイ訳じゃない。華奢だ。筋肉があるようには見えない。
(サイコキネシス、よっぽど強いんだな。)
「俺は、奥義を教えてもらった。」
「アレ、出来たんですか!凄いです!」
「で、これからどうする?」
「まずは、北でしょ~。一番近いし、バトルバカっぽいし。」
「変に罠を仕掛けられるより、そっちの方がいいな。」
「ええ、その通りです。」
リリーは、疑問に思っていたことを聞いてみた。
「どうして、破壊神を倒そうと思ったんですか?」
(言っていいのかな?)
(どうだろう?)
こそこそ喋っていると、神様が乱入してきた。
(ダメですよ。喋っちゃ。)
(神様!でも何で?いいじゃんか。)
(あなた達はこの世界の、イレギュラーな存在です。まだ一応この世界の人間、とされているから
いいですが、もしばれると何が起きるか分かりません。)
(目には目、歯には歯、イレギュラーにはイレギュラー、って事か)
(ええ。同時に、魔王もイレギュラーだとばれるのも、好ましくありません。)
(分かった。約束するよ。)
「あの~、どうしたんですか?」
「いや、何でもねえよ。俺たちは、ちょっとした因縁が破壊神にあってな。だから旅をしてるんだ。」
「そうだったんですか。すみません。変な事きいてしまって。」
「気にしないで。いいのいいの。」
「よし、今日は準備の日にしよう。じゃあ、夜までいったん解散!」
時雨たちは幹部討伐に向けて、各々準備をし始めた。
読んでいただきありがとうございます。
次話から、少し更新ペースを落とそうかなと思います。
しっかりと内容を考えて、深いものにしたいです。
次話もおたのしみに。