解答、そして修行
「何だよこれ。矛盾なんかあるか?」
「う~ん。何だろね。」
時雨はひたすら首を捻った。
(見たこともねえぞ、こんな問題。)
「特に時間制限は設けんが、急いだ方がいいと思うぞ。」
「がんばってください!」
(と言われてもなぁ。分かんねえよ。)
時雨が半分諦めていると、
「あ!分かったよ!」
「マジで!おい、嘘だろ。」
「嘘じゃないよ。んじゃ説明するね。」
木芽は勝ち誇った顔を時雨に向けながら、説明をし始めた。
「その宣言した人も男の人なんだよね。なら、その人だって髭が生えるでしょ。」
「あ!そうか!そういうことだったのか!」
「黙ってて。で、その人は自分で髭を剃らないといけなくなる。そこで、矛盾するんだよね。
つまり、美容師さんは自分で髭を剃ると、自分で髭を剃る男になるから、剃ったらダメ。
でも、剃らなかったら自分で髭を剃らない男になる。だから矛盾するんだ。」
「うむ!正解だ。まあ、秋風君はオマケで合格としよう。さっきの組み手では、すばらしい
ものを見せてくれたからね。」
時雨はまた驚いていた。
(おい木芽、いつからそんなに頭良くなったんだよ。)
(いや~、閃いたんだよね。コーポレーションだっけ?)
(インスピレーションだよ。バカ。)
木芽の閃きに驚きつつ、家の道場のような場所へと案内された。
「さて雪消さんは銃士だから、エイミー、来るんだ。」
アランが呼ぶと何処からともなく一人の女性が現れた。腰には物騒な銃がたくさん付いている。
「雪消さん、わしの門下生で一番の銃士の、エイミーだ。魔法も使えるから教えてもらうといい。」
「は~い。よろしくね、エイミーさん。」
「よろしくお願いします。」
(殺伐というか、冷たい人だな。)
そんな事を思いつつ練習場へと案内されていった。
「そして秋風君、君はわしと特訓する。」
「え!アランさんとですか!」
「わしが監督すると言うことだ。基本は門下生と特訓してもらう。レガシー家の奥義も
覚えてもらうぞ。」
「はい、分かりました。」
その頃、木芽はエイミーに魔法弾の撃ち方を教わっていた。
「私、魔法使えないんだけど大丈夫かな?」
「ええ、大丈夫ですよ。大事なのは、出したいもののイメージをすることです。」
「火よ出ろ~、みたいな?」
「その通りです。じゃ、撃ってみましょう。」
木製の的を少し離れた所に置いた。
「火炎弾を撃ってみてください。」
「いきなりですか!無理ですよ!」
「出来ます。あなたは想像力があります。きっと撃てますよ。」
木芽は不安そうに銃を構えた。
(火、火が私の手の中にある。その火を弾に込めて、)
「撃つ。」
放たれた弾は赤く燃えながら、回転しながら飛んで行った。
的はあっという間に燃え尽きた。
「撃てたー!やったー。」
「凄いです!飲み込みが早いですね。この調子でどんどん撃ちましょう。」
木芽はエイミーとの距離が縮まった気がした。
時雨はまた100人組み手をしていた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「よくがんばった。おかげで君の弱点がわかったよ。」
「弱点?はぁ、何ですか。」
「君は無駄な動きがありすぎる。恐らく、一対一なら違うのだろうが一対多数の時、
特に今のような場面では動きが大き過ぎる。」
「そうですか。」
「まずは、その直ぐにテンションがあがる癖を治そう。」
「はい。分かりました。」
当分の間座禅が続いた。
(この世界にも、座禅ってあるんだな。なんだかんだで似ているな。)
「渇っ!集中しろ。一対多数の場面を想像するんだ。」
「はい。」
その日が終わるまで座禅が続いた。
読んでいただきありがとうございます。
「床屋のパラドックス」お分かりいただけたでしょうか?
分からなければ質問してください。
次回、パワーアップした3人が登場します。
次話もおたのしみに