訪問、そして試験
3人は早速北へ向かった。
「本当に直ぐ着くんだよな。」
「はい。半日あれば着きますよ。」
「半日!結構掛かるじゃねえか。」
「?そうですか?でも、テレポートは生物には使いづらいんです。」
「ふ~ん、そうなんだ。」
出てくる奴も猪ではなくなった。スライムのような奴もいれば、ゴッツイ牛のような奴もいる。
「うわ!また牛だ!もう嫌!」
「そんな事言ってる場合か!はああ!」
牛に向かい剣を振るう。しかし、牛もバカではない。ちゃんと避けていた。
「なんでこんなに素早いんだよ。当たらねえ!」
「援護します。」
リリーがサイコキネシスで牛の自由を奪った。
「よっしゃ。今だ!」
牛を切り払った。ズズゥンと崩れ落ちた。
「ありがとうな、リリー。助かったよ。」
「いえ、お役に立てて何よりです。」
「凄い!素晴らしいよ。」
「てめえは何もしてねえだろ。黙っとけ。」
「だってさ、撃って二人に当たるといけないじゃん。」
「そこを調整するから銃士だろうが。」
「まあまあ、それを磨く為に北へ行くんですよ。」
途中ケンカをしながらも、何とかたどり着いた。
「なあリリー、何で北なんだ?何かあんのか。」
「はい。私の実家があります。」
そうして案内されたのは、豪邸だった。
「うわ~、大きいねえ。リリーってお嬢様だったんだ。」
「お嬢様は止めてくださいよ。そんなものじゃないですよ。」
門をくぐると、使用人たちがズラッと並んで挨拶をしてきた。
『ようこそ!レガシー家へ!』
「レガシー?」
「ああ、言い忘れてましたか。私、リリー・レガシーと言います。」
「そうなんだ!ビックリしちゃったよ。」
家は見た目異常に立派だった。元の世界でもこんな家はなかなか見れないほどだ。
「ようこそレガシー家へ。わしはリリーの父、アランと申します。」
「秋風時雨です。」
「雪消木芽です。」
「何緊張してるんですか?もっと気楽にしていいんですよ。」
「お、おう。」(いや無理だって。こんな厳つい人初めてみたぞ。)
アランは能力に頼らず、己の肉体のみで戦う事を信条としている。
盛り上がった筋肉に威圧感を感じているのだ。
「リリー、今日はどうしたんだ。人を連れてくるなんて珍しいじゃないか。」
「お父様、実はこの二人をお父様に鍛えてもらおうと思ったので来ましたのです。」
「ほほう、この者たちを?」
「はい。これから旅をするのに、実力が足りないんじゃないかと思いまして。」
「よかろう。試してみよう。おい、お前達来い。」
アランが呼ぶと、木刀を持った物騒な顔つきの奴らが大量に出てきた。
「わしの門下生じゃ。200人おる。二人で100人ずつ倒せ。出来たら合格じゃ。」
「お父様!それは無茶です。」
「おい、リリーの親父。修行をしたらどれくらい強くなる?」
(ほう、こいつもう先のことをみておる。)「強さは保証しよう。」
「よし!まずは俺からだ。木刀を俺にもよこせ。かかってこいや!」
いっせいに来た。時雨は丁寧に一人ずつ倒していく。
「隙あり!」
「あるわけねえだろ!秋風流抜刀術、燕返し!」
時雨は木刀の柄を、相手の木刀に当て弾いた。そのまま相手の頭を横殴りにした。
「オラドンドンこいや!まだ、一撃も食ろてへんぞ!」
時雨のテンションは最高潮に達した。元からこのような乱闘は好きなのだ。
「よっしゃ!二刀流じゃコラァ!」
相手から剣を奪い自分の物にした時雨は、勢いを増していった。
「秋風二刀流斬撃術、辻斬り!」
縦に木刀をふり、相手に防がせた所で胴を薙いだ。相手は吹っ飛んでいき、何人か巻き添えを
食らった。
「これで、ラストや!」
脳天に一撃をかまし、ようやく乱闘が終わった。
「いや~、やっぱり凄いね。強いよ!」
「はい!凄かったです。」
当の本人の時雨はここ最近戦い通しだったので、倒れてしまった。
「スタミナに問題ありだな。次!」
「は~い。よし、こーい。」
なんとも覇気の無い声で始まった試験だったが、あっさりと終わった。
「二丁拳銃にしといて良かったよ。後ろの敵にも対応できるしね。」
そう、町を出る前に銃をもう一丁買っていたのだ。楽々クリアした。
「踊ってるかのようでしたよ!雪消さん。」
「ありがとね~。」
「これだけ撃っても魔力が尽きないとは、たいしたものだな。」
時雨の意識が戻り、起き上がった。
「終わったのか?」
「うむ。お主らの力はよく分かった。では次だ。」
「次?」
「わしの出す問題に答えよ。知を試させてもらう。」
出された問題はこのような物だった。
〔次の文の矛盾点を答えよ。ある村の男の美容師がこう言った。
「私はこの村の全ての自分で髭を剃らない男の髭を専門に剃る事にする」〕
『意味分からんぞ?』
「答えられなければ、失格じゃ。」
(なんか最近頭使ってばっかだな。)
時雨は心の中で愚痴った。
読んでいただきありがとうございます。
時雨が軽いバトルジャンキーになってしまいました。
技名も変ですね。
最後の問題は「床屋のパラドックス」と言うものです。
よかったら考えてみてください。
次話もおたのしみに。