暴力、そして加入
「一休みしたら、行くぞ。」
「え?行くって何処に?」
「決まってんだろうが。」
時雨たちは、ノビてる盗賊から小銭(と言ってもそれなりの額)をもらって、森へと向かった。
「何でまた森にいくの?」
「あの喋る木も盗賊のグルかもしれねえ。だって、あいつがきっかけで危険な目にあったんだから。」
「あ、そっか。なら許すわけにはいかないねぇ。」
盗賊の町へ来たときの道を辿り、昨日の場所へと着いた。
「さーて、何処だろな。どの木かな?」
「どれだろうね?ホント分かんないね~。」
わざとらしくそう言い放つと、一本の木が揺れた。
「そこか!」
剣と銃を突きつけられ、観念したのか喋り始めた。
「や、やあ。お二人さん。ぐっすり眠れたかな?」
「ふざけんなや、ワレ。お前の所為でどんな目に合ったか分かっとんか!」
「そやで。嘘の道教えおって。うちがど突きまわしたろかコラァ!」
「ひぃ!すみません!盗賊に脅されて、」
「嘘つけや。お前の態度、脅されたようには見えんかったぞ。」
「い、いや誤解ですよ。そんなことは無いですよ。」
「いまいち信用ならんな。それより、本当の町の場所教えろや。」
「知りませんよ。私はそんなもの知りません。」
「ほぅ、そうなんや。せやったら。」
2人は全力で木をど突きまわした。ボコボコにされた木は、自分の運の無さを嘆いた。
「そこのお嬢さんが行こうとした方向であってましたよ。だから、私が引きとめたんです。」
「ホンマやろうな。」
「本当ですよ!疑うなんて心外です。」
「嘘やったら何度でも帰ってくるからな。」
「構いませんよ。」
時雨は木を信じる事にした。
「そこまで言うんだったら、本当だろう。行くぞ。」
「は~い。」
木は二人の態度の激変に驚いた。が、言い出すとまたボコられそうで黙っていた。
今度は猪も少なく、直ぐに町に着いた。昨日程では無いが、活気に満ちていた。
「あんた達、旅の人かい?疲れてるんだったら、ウチの宿に来なよ。安いよ。」
「ありがとうございます。でも、町を見ときたいんで。」
この会話からも、この町が普通だという事が分かる。
「安心したね。もしかしたら、ってのが無くなったじゃん。」
「そうだな。ん?何だこれ。」
時雨の拾った紙には、射撃大会の文字があった。
「なぁ木芽、これ出てみろよ。」
「射撃大会!やるやる!優勝して、賞金もらうよ!」
「ああ、盗賊から拝借したお金だけじゃ、後ろめたいからな。」
木芽はその才能をフルに発揮した。動く的も、次々と出てくる的も、
ついには四方八方から襲ってくる猪をもパーフェクトでクリアした。
「おおーっと雪消選手、またもやパーフェクト!大会始まって以来の快挙だー!」
「いぇーい!優勝目前だよ!」
「がんばれ!木芽。」
応援席から応援していた時雨の隣で、少女が呟いた。
「うわ、すごいなあの人。カッコイイな。」
(木芽を尊敬する奴なんか、初めて見たぞ)
そんな事を思いながら結局、木芽は優勝した。
「射撃、凄かったぞ。」
「時雨に褒められるって、なかなか無いからね。嬉しいな。」
町中を歩き、宿を探す途中、話かけられた。
「あの、雪消さんですよね。」
「うん、そうだけど。」
(あいつだ!木芽のこと尊敬してた奴だ!)
時雨は瞬時に思い出した。物好きだな、と思ったからでもあったが、可愛かったのだ。
「雪消さん達は旅をしてるんですか?」
「うん、そうだよ。始めたばっかりだけどね。」
「もしよかったら、仲間に入れてもらえませんか?」
「へ?」
「私、雪消さんに憧れました。カッコイイな、って思ったんです。」
木芽はこっそり時雨に相談した。
(どうする?時雨。)
(まずは、どんなことが出来るか。あと、名前だな。)
「ねえ、君の名前は?」
「リリーっていいます。」
「私達に付いてきたら、戦うことになると思うけど、大丈夫?」
「はい!私、こう見えても魔道師です。ちゃんと戦えます。」
(だってさ。どうするの?)
(魔法使いはいるだろ。戦えるって言ってんだから、戦力にはなるだろ。)
「よし!じゃあ、リリーちゃん。よろしくね。」
「はい!ありがとうございます!」
「改めて、私は雪消木芽。こっちのノッポは、秋風時雨。」
「よろしくな。リリー。」
「秋風さん、よろしくお願いします!」
時雨たちは魔法使いを仲間に入れ、二日目を終えた。
この決断が後に少し後悔する事になるのだが、それはもう少し後の話。
読んでいただきありがとうございます。
新しい仲間が登場しました。魔法のネーミングが大変そうです。
次回はリリーの話が入ってくると思います。
次話もおたのしみに。