普通、そして連想
「ここかな?」
「そうですね。ここが東の果ての街、バレルです」
「なんだか平和そうだね。北もそうだったけど」
「こっちの幹部は温暖というか、何もしない事で有名なんです」
「変わってんな」
時雨たちはようやく東の果てに着いた。覆面の連中は出てこなくなり、平和に過ごせた。
着いた町はいたって普通で、特に何も無さそうだった。
「普通だね」
「そうです。この大陸で一番平和だと思います」
「じゃ、大丈夫だね~。行こっか」
街の中も普通だった。武器屋の品揃えは良さそうだったが、特に活気が有る訳でもなく、
かといって元気が無い訳でもない。時雨はこの街の風景を見覚えがある気がした。
「何か、あまりにも普通すぎねえか?」
「そうだね、普通だね」
「そうですか?私はこの平和な感じが好きですけどね」
「ミレアさんらしい気がします」
「ホント!何か嬉しい!」
「何がだよ」
宿を決めて、今日の予定を立てる。二階の部屋に決まった。
「今日はどうする?大会も無いし、何にもする事ねえぞ」
「そうですね・・・、今日は4人で街をめぐりましょう!」
「見るところあるのか?この街に」
「ありますよ。とりあえず行きましょう!」
4人で街巡りをする事になった。と同時に、時雨の運命も決まった。
「あー!これ良くないですか?」
「いいね!カワイイ!」
「こっちにもありますね」
「ホントだ!こっちもいい!」
「なあ・・」
「どうする?どれか買う?」
「うーん、迷いますね」
「無駄遣いはできませんからね」
「おい・・・」
「私これ!」
「じゃあミレアはこれにします!」
「私はこれに」
「俺の話を聞け!」
当然荷物持ちだ。街に出てから1時間もしないうちに、時雨の両手が塞がった。
「お前らな、俺の苦労も考えろよ」
「いいじゃん、男が荷物持ちは当たり前だよ」
「だからって、買いすぎだろ!」
「大会の賞金はまだまだ残ってます」
「それに重いんだよ!」
「師匠、それくらいなら私でも持てますよ?」
次の言葉に少し困る時雨。
「とにかく!とりあえず宿に戻って、荷物置いてくるから待ってろ!」
「は~い」
時雨が帰ってくるまでの間、3人はショッピングを続けていた。
時雨はやっとの思いで宿に着き、荷物を置いて一息ついた。
ドン、ドンドンドン。ガサガサガサ。
「今、変な音したよな?ま、いいか。ったく、男を何だと思ってんだよ」
一人で愚痴を言っていた。
「はあ、このまま休みたいけど、戻るのが遅いと何か言われそうだな。しゃあない」
立ち上がり、水を飲んだ。
「戻りますか。しんどいけど」
戻ると、予想どうり文句を言われた。
「遅い~。何してたの?」
「そんなに重かったですか?」
「走り遅いんですね」
「てめえらな・・・好き勝手言っとんちゃうぞ!」
「何怒ってんのさ。早く次行こ?」
「そんなん荷物持ちなんかやってらへんわ!」
「いいじゃんか、時雨が買い物したら私が持ってあげるからさ。これでおあいこだよ」
「ホンマに?それやったらエエわ。行こか!」
リリーとミレアは首をかしげていた。
「何で怒りがおさまったんですか?」
「時雨は何よりも不公平が嫌いなんだよ。自分だけ荷物持ちっていうのが嫌だったんだよ。
だから、こっちも持ってあげるって約束したら公平になったから収まったんだよ」
「面倒くさいですね」
「でも、不公平が嫌いって言うのはいいと思うけど」
「師匠の新しい一面が分かって嬉しいです!」
その後は特に何も起きなかった。時雨の服のセンスが酷いことを他の3人が実感した
くらいだった。
「本当に酷いですね、師匠」
「でしょ~。まあ、ほっといてあげて」
「雪消さんがそういうなら、そうしますけど・・」
「ありがとね」
夜、夕食も済ませ皆寝る準備をしていた。
「お休み~」
「私も寝ます」
「んじゃ、私も!」
時雨一人が起きていた。
「今日は散々だったな。服選びの時は、何か微妙だったみたいだし。それにしても・・」
時雨は考えこんだ。暫くすると、外で物音がした。今まで何も音などしなかったのに。
「?何だ?やっぱり、ここは・・」
呟きつつベランダに出ると、見覚えのある覆面が落ちていた。
「やっぱり!お前ら、起きろ!敵だ!」
「何~、何て~」
「アリーナ!出て来い!ミレアも、リリーもしっかりしろ!」
「全く、私だって寝るのよ?」
「眠いです・・・」
「私もです、師匠。」
「言ってる場合か!荷物の辺りから離れろ!」
ミレアたちは渋々動いた。その瞬間、床から剣が突き出して来た。
「!何で!」
「敵やって言うとるやろ!はよのけ!」
床を突き破り、覆面たちが続々と出てくる。
「この部屋の下は、普通の部屋のはずですけど・・」
「恐らく見えないように隙間を作っていたんだろう」
「何で分かったんですか?」
「荷物を置いた時、妙な空洞音がしたからな。空間があるのかも、と思ったんだ」
「早く外へ逃げましょうよ、こんな奴らほっといて」
「無駄だと思う。多分、この街全体がグルだ」
アリーナは時雨の言葉に耳を貸さずに窓を開け、街の様子を見た。
宿の前は覆面たちで埋め尽くされていた。
「ホントだわ・・、ピンチね」
「最初から怪しかった。あまりにも普通すぎる。多分一般人を装っていたんだろう。
初めて来た頃の、盗賊の町を連想させられたんだ」
覆面に囲またこの場を切り抜けるため、時雨は必死に頭を回転させた。
読んでいただきありがとうございます。
更新が大分遅れてしまいました。これからもこんな感じかも知れません。
でも、確実に更新していきますので、今後もよろしくお願いします。
次話もおたのしみに。




