到着、そして疑問
「ん・・。着いたのか?」
「そうみたいだね。」
気がつけば森にいた。服装はほとんど変わってなかった。やっぱり、神様はケチだと2人は思った。
「でも、木は普通だよな。とくに変わった所も無いし。」
「ぐおおおお!」
「おいおい、木芽。寝てんじゃねえよ。」
振り向けば、そこには猪に似た見たことの無い生物がいた。
今すぐにでも突進してきそうな感じだった。
「え?いきなりピンチ?」
「時雨~。助けて。腰抜けちゃった。」
「バカ!早く逃げるぞ!」
しかし、逃げようとする2人を猪?は逃さなかった。
一直線に突っ込んできた。時雨はパニックを起こした。
「うああ!どないしよ!」
少し長めの木の棒が目に入った。
「よし!頼り無いけどやるしかない!」
棒を手に取り構えた。試合の時のように集中した。時雨は動体視力と反射神経がいい。
だから、カウンターを放つのは得意なのだ。
(相手の動きをよく見ろ。予測しろ。集中しろ。)
必死にそう考え、タイミングを計った。
「ここだ!いけっ!」
居合い抜きのように棒を走らせ、猪の顔面に直撃させた。猪は気絶した。
「ふう、よかった。なんとかなったな。」
「いや~、いつ見てもすごいね!時雨のカウンターは。惚れ惚れするよ。」
「あのな、んなこと言ってる場合か。早く町行って、武器買わねえと死ぬぞ。」
「うん。そうだね。じゃ、いこう!」
木芽は自信満々で歩き出した。
「おい、何処行くんだよ。」
「何処って、町でしょ?こっちじゃん。」
「なんで分かるんだよ。」
「理由なんて無いよ。いつもの事でしょ?」
「はぁ。お前はそういう奴だったな。忘れてたよ。」
木芽の進む方向へ行こうとした時、木が喋り始めた。
「やあ!そこの君達。これから町へいくんだって?道なら知ってるよ!」
「うわ!なんだよ、急に。何なんだよお前は。」
「いやなに、ただの木だよ。道教えようか。」
「ただのって・・。ま、いいか。教えてくれよ。」
「え~、何でよ。こっちでいいんだってば。」
「バカ。迷って着かなかったらどうすんだ。教えてくれるっつってんだからいいじゃねえか。」
「よーし、そうと決まれば話は早い。この僕の足元を見てごらん。」
木の根元には道らしき物があった。いかにも、人が通った形跡がある。
「こんなのがあるのに、見落としてたのか木芽。」
「だって気づかないよ。そんなの。」
「まあまあ。この道を真っ直ぐ行くと町の前に出られるよ。」
「分かった。ありがとな。」
2人は木の言う通りにした。途中、何匹か猪に出会った。
「何か、多くねえか?こんなものなのか?」
「負けるわけじゃないんだし、いいじゃんか。」
「あのな、俺だって疲れるんだよ。この世界に来て、体が軽くなった気がするけど連戦はさすがにな。」
「あ、時雨もなんだ。私もそんな気がしてたんだよね。」
しばらく行くと、森を抜け、町のようなのが見えてきた。
「あれだ!早く行くぞ。」
「うん!」
町は賑やかだった。サーカスのような見せ物があって、それに集まり笑顔になる人々。
魔王の危機を忘れているかのようだった。
「へ~。いい町だね。賑やかだし。あ、ピエロ!あれ、魔法なのかな?すごいジャグリング。」
「ま、それはそれとして。武器屋は何処だ?」
武器屋を探すついでに、サーカスを見ていく事にした。元の世界では見ることの
出来ないようなパフォーマンスだった。
「うお!人間が小っちゃくなった!これが魔法か。」
「うわー。すごいね!すっごく綺麗!」
十分に堪能した後、武器屋を見つけた。
「う~ん。どれにしようか。真剣は使ったことないからな。お、意外と軽いな。」
「私はどれで戦おうかな?」
「日本刀みたいな奴があるな。うん、カッコイイしこれにしよう。」
「やっぱり、私はこれにしよっと。」
神様からもらったお金で余裕で買えたので、ついでに防具も買っていった。残りは宿に使うことにした。
「ここでいいや。」
「お風呂あるかな?」
「無い宿は無いだろ。」
二階に部屋を取り、くつろぎ始めた。
「なんとか今日は無事に生きれたな。」
「そだね。疲れたし寝ようかな。」
「お前歩いてただけだろ。でも、なんか嫌な予感がするな。なんでだろ?」
「ちょっと、やめてよ。時雨の嫌な予感は当たるんだから。おやすみ。」
「ああ。おやすみ。」
(何だ?何かが違う気がするぞ?)
時雨は心に引っかかっているものを探し始めた。
読んでいただきありがとうございます。
時雨の疑問の正体、分かりましたか?
下手くそながらも伏線を張ってみました。
次話もおたのしみに。