~第1話~
今回の作品は基本的に蓮視点がメインです。
優飛やその他はまちまちになるかな……?多分。
ともかく第1話です、どうぞー。
~第1話~
空気が冷たく、もうすぐ冬になろうとしている秋の終わりごろ。
俺は背中に愛用の大剣を背負いただひたすら歩き続ける。
歩く先々で人々が口々に俺を指差し後姿を見送る。
それもそのはず、蓮を背後から見ればその姿は騎士そのものなのだ。
とはいえまだ蓮は騎士としては未熟な位置付けに値する。
服は養成学院で支給された服なのだが、蓮のは特注で作られた服だった。
その理由としては、今まで入校した騎士志望者は、みな腰から剣を提げていた。
しかし蓮は剣を背中に背負うタイプだったため、剣を仕舞う鞘を提げる場所が無いという事が発覚し、特注で作られたとの事だ。
暫く俺は歩き続けると一人の少女が待ちくたびれたように、壁にもたれかかり本を読んでいた。
魔法士課の制服に身を包み、手には恐らく魔術に関する本だろうと思われる本を持っている。
顔つきは少し幼さが残るがなかなか可愛く、後ろ髪はお尻まで伸びるほどある。
「遅いよ蓮、また寝坊?」
俺に気付いた少女が本を閉じ俺に近付きながら声をかけてくる。
本来俺は女嫌いなのだが、この少女だけは特別嫌いになれなかった。
「またってなんだよ、それに時間通りに来たじゃないか」
俺は反論しながらも苦笑を漏らす。
この少女が言うように、俺は時々ではあるが寝坊したりして時間に遅れる事はある。
しかし実際は、学院から帰ってからも俺は休まず毎日4時間は剣の素振りをしたり、手入れを欠かすことは無かった。
それ故就寝時間もまちまちになるが、基本的には夜の12時を過ぎる辺りだった。
「まぁいい、行くぞ優飛」
俺が少女に声をかけると、優飛と呼ばれた少女は
「そうだね、行こうか」
笑みを浮かべ蓮の手を握り共に学院へ向け歩き始める。
俺と優飛の出会いは今から3ヶ月前に遡る。
養成学院には知っての通り騎士養成と魔法士養成の2箇所が存在する。
更には毎年一人か二人は特別な部屋へ行く事が出来るが、未だ卒業したという話を聞いた事が無い場所がある。
魔剣士養成。
魔法士養成と騎士養成の二つを卒業した者のみ魔剣士養成へと行く事が出来るが、二つ同時に卒業など並の人間では不可能である。
故に最近では魔剣士養成の部屋には誰も居らず、閉鎖するという話も持ち上がるほどである。
蓮と優飛の教室は分かれてしまうが、1ヶ月に一度騎士養成と魔法士養成の合同授業がある時には優飛がすぐさま蓮の隣を占拠する。
優飛と俺が出会った時はよく優飛から俺に話しかけていたが、俺はことごとくそれを流していた。
しかし、優飛は諦めずに何度も俺に話しかけてくるので、遂には俺が折れる事を選ばざるを得ない程まで執拗だった。
この頃から優飛はもしかしたら俺だけを見ていたのかもしれない。
その日を境に優飛と会話するうちに俺は密かに
(この子には他の子にはない何かを持っている)
直感でそう考えた。
実際、優飛と話しをし始めた頃から徐々にではあるが周りの反応が変化していた気がする。
そんな優飛を見て俺は優飛にだけは心を少しずつ開いていくようになった。
今思い出すだけでもありがたい事だ、と心の中で呟くと優飛の横顔を見てクスっと笑う。
優飛は俺が笑ったのを見ると頬を膨らませ
「人の顔を見て笑うのは酷くない?」
とちょっと怒り気味に尋ねてくる。
「ごめん、優飛と出会った頃を思い出してな」
俺がそう告げると、優飛も納得したようにクスっと笑い
「あの頃の蓮は凄く暗かったもんね、男の子としか話そうとしないしさ?」
優飛も3ヶ月前の事を思い出しながら言葉を紡ぐ。
「あぁ、あの頃に優飛と出会ってなかったらどうなってたんだろうな」
ふぅ、と一息つきながら俺も言葉を紡ぐと
「昔の事だからね、色んな意味で懐かしいよ」
優飛が遠くを見つめ昔を思い出すように言葉を紡ぐ。
そんな風に会話を交わしながら歩くこと10分、目的地である養成所へと到着する。
優飛とは学科が違うため廊下で別れ、俺は教室へ入る。
昔とは違い今では気軽に声をかけてくる友人(?)が居るため軽く挨拶を交わし、自分の席に着く。
特に何をするでも無くただ窓の外を見つめ
(そういえば初めて優飛と出会ったのは合同練習授業の時だな……)
昔を思い出しながら俺は目を閉じた。
いかがでしたでしょうか?
今回は何気ない日常という感じで表現してみました。
次回は少し時間を巻き戻して過去に触れます。
時間軸としては蓮と優飛が入学して2週間が過ぎた頃、でしょうか。
合同練習授業のシーンを書いてみたいと思います。
それでは。