終了五分前。
『カナがタカシを狙ってるってよ?』
古文の時間に後ろの席からまわってきた小さな紙切れ。
気付かれないよう振り向けば、好奇心いっぱいのユカと目が合う。
おせっかいな笑顔をにらみつけ、わかってるよとつぶやいた。
ユカを連れて、部活帰りのあいつに声かけたのは去年の9月。
グループ同士で仲良くなって、慣れたら二人にしてもらおう。作戦順調…って思っていたら、とんだトラブル発生だ。
カナが仕掛けてくるならば、きっとあの日に決まってる。
それならいっそ。
呼び出したのは前の晩。
みんなが準備にかかる中、ひとり自転車を走らせる。
チョコレートが出来損ないでも勢いだけは一人前。
フライングなら確信犯で。
早く早く、あの子の手が届く前に。
しくじったならもう会えない。
かかるリスクはわかった上で小さく震える手を握る。
さび付いた柱時計を見上げれば。
待ち合わせまでのカウントダウンはトモダチ終了五分前。