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反則探偵ティアラ

 ゴルドの鎧のコーティングも完成して、じゃあ明日出発しようかとみんなで話し合った。

 この街にもしばらく戻らない、とはいえ大会も終わったしやり残した事はない……そう思っていたのだが。


「師匠は神官スキルは何伸ばしました? 私は大会に出る前だったので回復魔法育てましたね。アルフが怪我したら治してあげたいから……」


 などとヘイムが言い出すもので、なんの話かと聞いたところ。


「あの、この街の教会行きました? 大きい教会のあるところで初めてお祈りすると神官はその信仰度に応じて神官スキルを強化して頂いたり、授かったりできるのですよ? 何のための巡礼の旅ですか」


 そう言われて思い出したのだ。なんか色々あって教会に顔出してないな、と。なんならこの街の教会の存在自体を忘れていた。

 我ながら駄目なシスターである。

 色欲に負けてるしね。いやそれは性豪スキル持ち相手なのが悪くない?

 それはそうと信仰度なる聞きなれないワードが飛び出したので詳しく聞いてみると、なんか巡礼とか普段の行いとかで溜まるポイントみたいなもので、これが高いほど強い神官スキルを授かれるらしい。

 他のスキルのように自分でスキルを育てる事も可能だが、神官スキルは伸びが悪いので巡礼で高めるのが一般的なんだとか。

 リトーさんはそこまで考えて私を旅に送り出してくれたんだなあ。ありがとうロリお姉さん。

 ちなみにフィールドダンジョンに貼られる結界なんかはこの信仰値がかなり高い上澄みの人達しか習得できないスキルらしい。

 話題を振ってくれてありがとうヘイム。そういう訳なので慌てて向かいました。

 それでまあ、祈っていると声が聞こえてくる。


「愛しき我らが子よ。よく来てくれました。地母神たる我が貴女に祝福を授けましょう。

 今の貴女の信仰に報いる事の出来るスキルは防御魔法、除霊魔法になります。どちらか一つを選んでください」


 なんかちょっとゲームっぽいなと思ったのは内緒だ。まあそもそもスキル制度のあるこの世界がゲームっぽいんだが。

 さて、どちらか選べという事らしいが除霊魔法は心惹かれる部分がある。俺が寝てる間に終わっていた盗賊の襲撃で襲われ、亡くなった人々を昇天させてあげる事ができるだろう。

 だが、そこまで戻る事はちょっと今すぐは無理。そうなると、戦闘力のないティアラを守る事ができるであろう防御魔法が今必要なものか。

 亡くなった人より生きている人を優先する。それは当然の事なのかもしれないが、シスターとしては少々即物的すぎやしないかとも思う。

 だが、流石にティアラの防御が優先だ。ヘイムに任せる事もできるのだろうが、私はティアラのお姉様である。ならば守るのは私であるべきだ。

 という事で地母神におねだり。私は【防御魔法】を得た。





 などという一幕もありながら、今日ついに<チェンジャー>としての旅が始まった。

 護衛任務などは無しだ。なにかあれば錬金素材なんかを取りに行ったりと寄り道がしやすいようにしている。

 そして徒歩。馬なんて気軽に買えないし、そもそも乗馬が出来るのがゴルドだけ。そのゴルドも金属鎧に身を包んで襲撃に警戒するので馬に全身鎧で乗るのはあまりにも可哀そうだ。

 全身鎧を即座に着脱する方法があれば馬車も選択肢になかった訳ではない。

 ゴルドが鎧を金メッキにしたように、私にも闘技大会の優勝賞金が入っているのだから。

 ちなみに錬金術に使う鍋はリトーさんから貰った鍋とは別に買った。どうせ影魔法で収納するからかさばらないし、なんかよくわからんもの作るのと料理を一緒の鍋にしたくなかった。

 ここで錬金アイテムの事をなんかよくわからん扱いしちゃうあたりが私の錬金術に関する知識の浅さが透けて見える。

 ああ、錬金術で鎧の着脱を即座に出来るアイテムとか作れればいいのか。でもなあ、それやるとゴルドが普段鎧を脱ぎ始めてセクシーゴルドの状態で話に加わってきそうでなあ。あの状態のゴルド苦手だしやめとこ。……ん?


「皆さん、警戒。ティアラはそばを離れないでください」


 私の指揮の元、各員が戦闘態勢に入る。【鷹の目】で遠くの魔物を見た。


「クマみたいなのが二体。名前とかはちょっと分かりませんが、友好的ではなさそうに見えます」


 モンスターの知識が無さ過ぎてふわっとした事しか言えない。すると、ゴルドが双眼鏡で周囲を見渡す。


「ふむ、あれはオウルベアだな。大体クマであっている。しかしあの距離を目視するとは。大したものだ」


 そう賞賛すると、さらに続ける。


「さてどう倒すかだ。リーダーが魔法で倒すのが一番楽だろうが、どうする?」


 鎧着てる時のゴルドは私をリーダーと呼ぶのか。まあ、ちゃん付けよりはいい。


「オウルベアは魔法を使ってきますか?」

「いや、単純な【剛力】。シンプルな相手と言えばそうだ」

「強さは?」

「私なら問題なく……いや、あまりこれを使い慣れてないからな」


 そう言って、左手に持った一枚の盾を動かす。

 今まで両手で剣を扱っていたゴルドが、剣と盾、全身鎧の重騎士スタイルになっている。


「じゃあ慣れてきてください。ゴルドさんとアルフは近接で殴り合い。ヘイムはそのサポートを」


 それぞれが了承の意を示すと、少しずつ三人は魔物との距離を詰めていく。

 とはいえ周囲は平野。隠れる場所などありはしない。よって不意打ちは不可能。

 普通に気付かれ、肉弾戦に入っていく。最初に斬り付けたのはゴルド。しかし、浅い。

 今まで両手で握っていた剣を片手で振るうのだ。感覚が違って当然。

 攻撃を受けたオウルベアが腕を振り下ろすと、盾であっさりと受け流し、その隙をついて突きを一発。

 剣に比べて明らかに習熟した盾の腕前は、なんでも盾を使うと決めた日からアルフとの訓練でひたすら盾でアルフの剣撃を受け続けていたらしい。

 その特訓していたアルフもまた、もう一匹のオウルベアに切り付けていた。しかし、こちらも浅い。

 これも理由は単純で、まだ身体が出来ていない少年戦士だから。

 クマほどのガタイを切り付けるだけの筋力がまだ無いのだ。

 こちらもやはり、オウルベアが反撃を行う。それを躱すと、しかし回避が深すぎた。それに対する反撃ができない距離だ。

 そうなれば、身体能力に優れたオウルベアの追撃が行われるのは道理。また躱す。深すぎる。追撃、回避、深すぎる。

 腕を振り回すオウルベアに、成す術がないといった様子だ。


「ヘイム!」

「うん!」


 振り下ろされるオウルベアの腕。今度は回避ではなく、ドーム状の防御魔法に受け止められた。

 通り抜けるように、アルフは胴を切り付ける。

 それでも、まだ足りない。

 動きこそ鈍ったものの、激昂した魔物は攻撃を繰り出し……一枚の盾が攻撃を受け流す。そして、傷口に追撃を加えた。

 ゴルドが一匹目の相手を終え、援軍に来たのだ。

 こうして<チェンジャー>としての初戦闘は、無事勝利に終わった。


「しかし、まだ街からそう離れていない距離で魔物に出会うとはな」

「フィールドダンジョンの結界が緩んでいるのでしょうか。アルフはどう思う?」

「いやあ、そしたらあんなもんじゃ済まねえだろ」


 そんな話をしている間に、こちらも脳内で話をする。


『今の戦い、どう思う?』

『ゴルドのやつは弱くなった。慣れない戦いなんだろうなって感じだぜ』

『守りは大事だからしょうがないよ』

『アルフくんは駄目ねえ。筋力がないから防御用の装備がつけれない。だから慎重に回避しすぎて隙が大きい』


 ふむ……いや、どうにかなるかもしれない。

 その日、それ以上の魔物との遭遇が無かった私達は、野宿することになった。

 馬車なら宿場町くらいには行けるはずなのだが……ないものねだりしても仕方がない。

 夕食を摂った後、私は錬金術の練習を始めた。

 それを見ているティアラとヘイム。剣士組は警戒と剣術訓練。

 今回の素材は布。そして私の魔力。

 布も私の【生活魔法】から作っているので全部私の魔力が素材と言ってもいいかもしれない。

 ちょっと珍しい仕様だと思ったのは【生活魔法】から布が生み出せること。確かに衣食住に関わることなので生活魔法の一環なのか? あんまりしっくり来ていない。

 作れる事はありがたいのであんまり突っ込まなくてもいいか。

 で、今回作るのは護符。布を折って、魔力を込めて、固めて終わり!

 お守りみたいな形になった。

 込めた魔力は、具体的にはエンチャント。ティアラには土の魔力の籠もった護符を渡した。


「興味深い」


 今の私では魔力に無駄が多すぎて一回しか使えないそれは、ただし一回ならば第三人格が闘技大会で行ったのと同じくらいの強度の防御力になる事ができるだろう。

 で、ゴルドには火のエンチャントの護符、アルフには水の護符、ヘイムには風の護符を渡した。

 それぞれ攻撃力の強化、回避と反射神経の強化、機動力の強化である。

 風のエンチャントは主人格である私が闘技大会で見せた高速移動だ。

 練習なので複数作り、使い勝手を見てもらいながらそれぞれ夜の警戒をしながら交代で眠った。


 次の日の昼ごろ。やっと宿場町についた私達が目にしたのは、言い争う人々だった。

 なんだ、またトラブルか……?

 そこでは目つきの悪い一人の眼鏡の男性に詰め寄る人々の姿があった。


「やめーや、オレには関係ないゆうとるやろ」

「そんなわけあるか! お前がドルフに毒を売ったんだろ!」

「そうだそうだ!」

「なんでそうなるんかなあ、オレは知らんって」

「お前は商人だろ! 毒くらい売っててもおかしくない!」


 どうにもきな臭い話をしているようだ。

 関わらない、というのも手なのだろうが……


「あれは【分身】の商人スバルか」

「知ってるんですかゴルドさん」

「ああ。あの詰め寄られてる方は一人で各地に店を持つ商人。助けてやればいい事があるかもしれん」

「一人で各地に店ってのは、支店を出してるって事か?」

「いや、全部本人だ。【分身】というもう一人自分を増やすスキルを使ってな、各地で店を出している。

 ふむ、こっちの地域にも手を出してきたか……」


 そう話していると、こちらに気付いたスバルという男が参ったとばかりに近寄ってくる。


「ゴルドやないか。ちょっと助けてくれへん? こいつら、オレがカタギに毒売った言うてしつこいねん」

「そうか、大変だな」

「分かってくれるか。そんでな、その毒つこうて人が死んどるいうてめっちゃ責められてる。

 助けてーな」


 ゴルドは知り合いだったのか。私にはアーレンスからコピーした【毒物知識】があるから多少の役には立てるかもしれない。


「お前らもこの男の仲間か!?」

「分かってるのか! 人が死んでるんだぞ!」


 そういってがなり立てる男達に、俺は……


「ひぇぇ」


 びびっていた。第三人格の登場である。


「騒がしい」


 そう一喝したのはティアラだった。


「どうにも、この話……裏がある」

「なに?」

「これは殺人事件。解決は受付嬢である私に任せて」


 ああ、うん【読心術】で全部分かってる奴ね。

 だがしかし俺以外の皆には読心術の事は秘密の筈。どうやって解決に導く――?

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