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異世界転移、女体化、チート付き。ただし……

 目の前にクソデカ爺さんが立っている。

 どのくらいでかいかというと視界が全部爺さんで埋め尽くされるくらい。しかも俺は泡みたいなものに包まれながら浮いていた。

 しゅげえ。

 そんなでっかい爺さんをしげしげと眺めていると頭の中に流れ込んでくる声。それはこう言うのだ。


『お前には異世界に旅立ってもらう』

「はあ」


 はあ、である。突然何言ってるんだろうと思うが、このクソデカ爺さんが非現実の塊である。そう言う事もあるのだろう。


『だが、異世界とは危険なもの。お前のような一般人にしてみれば物騒な場所だ。すぐ命を落とすだろう』


 やばいじゃん。


『なので、条件を呑めば一つチートを授けてやろうと思う』


 これ選択肢出してるように見せて実質一択だな?


『女体化だ。お前は異世界において美少女の姿を取ってもらおう』

「なんでですか?」

『儂の趣味である』


 趣味かー、趣味ならしょうがない。


「ちなみにどういった趣味をお持ちで?」

『美少女になった事に慣れない男が慌てている様子を見るのも好きだし、男に言い寄られて困ってる中身美少女の男を見るのも好きだ。あと単純に観察するなら美少女のガワの方が良い』


 うーん性癖に忠実。というか待って?


「もしかして俺観察動物みたいな扱いされます?」

『される。我ら神族が世界を観察してるからな。お前はゲームが好きだったな?』

「はい」

『お前は儂らの世界におけるMODだ。完成された一つの世界に異世界の魂を一つまみして、どう変化するのか。それを楽しむために選ばれた』


 なるほどー。大した趣味だなあ。


「ちなみに選考基準は?」

『うむ。出来る限り薬にも毒にもならない奴。はじめての試みなのでな。無難に行こうという話になった』

「んじゃ、無難に生きた方がいいです? チートとか無い方がいいんじゃないですか」


 そういうと、目の前の山のような爺さんがちょっと慌てた声で言う。


『いやいや、それはまた別の話だ。無難な奴を選んだはずが大暴れ、それはそれで面白い』


 どれだけ俺を女体化させたいんだ。


「分かりました。女体化は受け入れます。チートください。チートは選べますか?」

『うむ! なにか希望はあるか?』

「そうですね、とりあえず転移先について教えてください」

『ああ、言ってなかったか。お前にも分かりやすく言えば剣と魔法のファンタジーだな。魔物がいたりダンジョンがあったり冒険者がいて……といえば分かるか』


 うーむ王道。なら方向性はやっぱりこれ。


「はい。じゃあ楽して強くなりたいです」


 そう言うと、爺さんがそのでかい身体で腕を組んだ。


『我々視聴者側の面白さも加味すると条件付きのコピー能力はどうだ? 一度見た相手の能力を自分のものにする』

「なるほど、楽に強くなれますね。条件とは? 人数制限? 一人しかコピーできないとか」

「いや、いくらでもコピーしていいし、剣が得意なものをコピーして、その後魔法が得意なものをコピーすればどちらも得意な存在になれる」


 おお! それは強いな……じゃあ適当な人をコピーして最低限の実力を身に着けて、そのあと少しずつ強者に近づいていくムーブで世界最強か。


『ただし』


 などと考えていたのを読んでいたかのように、この爺さんは言った。


『一度コピーするごとに人格が一つ増える』


 ……? よく分からない。

 そういう顔をしていると爺さんは補足してくれた。


『例えば剣が得意なものをコピーしたとする。すると、お前は多重人格になる。もしかしたら殺人鬼の人格が目覚めるかもしれん。それを御し切れなければ身体の支配権を奪い取られ、お前の新たな人格が勝手に人を殺し、お前は捕まる。そういうリスクだ』


 え、リスク重。


『とはいえ、別人格に勝手にコピー能力を使われて人格を増やされて破滅させられるのは面白くないだろう。主人格のお主だけが使えるチートにしておこう』

「いや……あの、さすがにデメリットでかすぎて」


 嫌なので他のにします。そう言いたかった。


『うむ! 我ながら面白い能力に仕上がった! さあ! 転移者モッドよ! 我らの世界を楽しむとよい!』


 だが俺を包む泡に連れられて天へと登っていく。

 拒否する事を知ってて強制的に連れられたのか、それとも爺さんが耄碌してて聞いてなかったのか。それは分からないが……分かっているのはこの能力と付き合いながら異世界に行くことになったのだ。女になりながら。



 まあ、嫌な予感はしてたんだ。

 テンプレ的な展開だから全部飛ばすんだが、大き目の街に入りました。冒険者ギルドに行きました。最底辺ランクからのスタートです。まあ、ここまではいい。

 何が悪いかって? このチートだよ。このチートは『一度でも会った事のある相手を選択、能力を複製し自分のものにして、代わりに人格を一つ増やす』。

 まあ重い条件だが手軽に強くなりたいって言ったのは俺だからな。

 ただね? これ……どこにも鑑定付きなんてついてないんだよ、説明に。

 つまり、俺は慎重に相手を選ばないと口だけの馬鹿の能力をコピーしてなんも強くなれず、人格を増やすだけになるリスクを孕んでるわけだ。

 少なくとも、俺は自分の目で見たものを信じる。だから一回は一緒に冒険するなりして実力を見てからコピーしたいわけだ。

 だが、そんなこの町一番の冒険者みたいなやつと俺がお近づきになるチャンスもなく。というか初日でそんなチャンスが巡ってくるならそっちの方がチートだわ。

 とはいえ妥協案は、ある。週に一回やっているという初心者講習会。ここでちょっとランク高めの冒険者が付き添ってくれて俺達のようなルーキーに色々教えてくれるらしい。

 このランク高めの冒険者があたりならそれをコピーするという選択肢もなしではない。

 無しではないが……そのために人格増やせるかと言われるとちょっと素直に頷けないのも事実。

 でも最低限の実力は持っておかないといけないよなあと思うのもまた事実。

 なにせこの身体。弱いのである。

 筋力も持久力もゴミ。そんな一般、いや一般以下の女性。それが俺。

 見た目はいい。水色の長い髪は綺麗だし、顔も前髪を伸ばしていてメカクレになっているが、取った宿の鏡で一人で見てみたところ――いや、やめておこう。メカクレの髪の下の話をするのは国際条約に反する。まあ美人だよ、という話である。

 で、胸がでかい。すごいでかい。まともに運動できない原因ともいう。

 そんな目元隠してるから地味な感じだけど、胸はすげえでかい運動能力最低のルーキーが冒険者登録となると何が起こるか分かるね?

 そうだね、お約束のチンピラに絡まれるやつね。

 ここも省くんだけど、イケメン紳士の高ランク冒険者が助けに入ってくれたんだけど、割とガチ目の喧嘩が始まっちゃって。

 事情聴取に俺も巻き込まれて。今、夜。

 するとギルドの受付嬢がこういう訳だ。


「今一人歩きの女性の方を狙った殺人鬼が徘徊してるから気を付けてくださいねー」


 って。

 は? 宿まで遠いんだが。

 女が一人で安宿に泊まる方の危険性は考えてた。

 だから俺はギルドから遠くてもちょっといい宿で値段も手頃なところを選んでだね?

 ギルドに泊まらせて貰えないかといったら、事情聴取騒ぎの間にもう女性冒険者達が予約してて泊まれる余裕はないらしい。

 そんなわけで、今ギルドからの帰宅中。フラグだなあと思いましたよ受付嬢の発言が。

 それでまあ、嫌な予感がしてたって言ったと思うんだが、そしてなんでワクワクの冒険者生活初日をまるまるカットしたか。

 ここまで言ったら何が起こるか大体分かると思う。


 ――私、モッド。今誰かが後ろにいるの。


 さらに言えばなんか霧も出てきた。

 足音が、完璧に俺の歩くタイミングと同じ。

 早足になれば向こうも早くなるし、普通に歩けば向こうも普通の速度に。

 止まるのは無理。怖すぎ。

 大声を出す? 刺激できると思うか?

 ストーカーに付きまとわれる感覚ってこんな感じなんだね……

 だが、相手が遊んでるからか、もうちょっとで宿、というところまでなんとか辿り着けた。

 もう走るしかない! そう思って急いだ結果、胸がぶるんぶるん揺れておせえ!

 しかもそれで殺人鬼(仮)を刺激してしまったようで、足元に痛みが走った。

 転倒する俺。ふくらはぎから切り傷による出血。何をされた?

 武器のようなものは転がっていない。となると魔法、風あたりを使ったんだろうかと目星をつけてみる。

 せめてなんらかの武器の投擲であってくれれば。こっちがその武器を持って迎撃する意志も見せれたのに。それに威圧された殺人鬼(仮)が帰ってくれる可能性だって。

 足音がしない。霧が深い。

 でも明らかに近づいてくる影。顔も見えない。

 痛みを堪えながらなんとか立ち上がってよろよろと逃げる俺。もう片方の足に走る痛み。再度転倒。

 見ればやはり出血。周囲に武器にらしきものはやはりなし。

 近寄る影を見上げる。

 これだけ近ければ流石に顔も分かる。服装も分かる。

 男だった。

 知らない男。首から十字架をかけたその男は。


「神、父……?」


 糸目の男だ。優男風に見えて、割とがっちりとした体格をしている。


「はい、神父さんですよ。貴女を救いに来ました」


 ……助かった? 途中から殺人鬼と神父が入れ替わっていた? 神父が近づいてきたから殺人鬼は逃げたのか。


「大変だったようで」


 右脚の怪我が治っていく。見た目には出血していたので分かり辛いが、傷口はもうない。


「今、助けます」


 そう言って近づいてくる神父に安心――することはできなかった。


「寄るんじゃねえ! この似非神父!」


 治った右脚で倒れた体勢から蹴りを放つ。しかしガードされる。

 左脚も治癒魔法で治しながらそのままバク転。距離を取り直す。


「なにを!?」

「複製完了。――暗殺者モッド、導入。

 よろしく頼むぜえ! ベースモッド!」


 俺に、第二の人格が目覚めた。

 この能力……なるほど。切札を切ったのは正解だったらしい。

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小説書く時にわちゃわちゃしてもらったり、息抜きに格ゲーやシャドバする相手を探しています

そんなファンが出来るような作品に仕上げるつもりですので、よろしくお願いします!

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