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3つの星  作者: §◆蓮◆§
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星座の線の絆

初めまして。レンです。今回は連載という形でチビチビ書いて行きたいです。ヒマな時間に読んでいただけたら幸いですので、よろしくお願いします。

朝起きて、カーテンを開け、窓を開ける。冷蔵庫から白飯を取り出し、ラップもそのままにレンジへ放り込む。顔を洗い、歯を磨き、髪を整える。

手慣れた作業で朝を迎えるようになってどれくらい経つだろうか。一人暮らしを始めてからは、そろそろ三年になる。



大学を出た後、都内のコンピューター企業に就職し、友達と離れた生活は充実していた。だが、楽しくはなかった。楽しい事がなくても朝は来る。だからこうして休みの日でもいつもと変わらないリズムで時間を過ごしていく。



いつもの朝が終わり、ソファーに座る。いつもはここで会社に行くのだが、今日は休日。久々に仕事が残っていない休日だった。



何をしよう…。一人で映画を見に行くのもいいかもしれない。そう決めてソファーから立ち上がると、不意に家の電話が鳴った。めずらしいことだ…。うちの電話がなるなんて、どれくらいぶりだろう。久々の感触がする受話器を手にとり、耳にあてる。



「はい。白石です」

「あ…、熊谷ですけど…」


くまがい…?



「もしかして…和也?」

「ああ…。瑛太だよな?お前、携帯解約したのか?携帯繋がんないし、引っ越し先の電話番号わかんないし、大変だったんだぞ」



電話先で懐かしい声が怒っている。瑛太の思い出の中で光り輝く三年間がある。その三年間に、彼はなくてはならない存在の人だった。熊谷和也くまがいかずや。瑛太にとって和也は、人の感情を教えてくれた大切な友人である。



「なあっ、聞いてんのかよ瑛太!」

「あ…ゴメン。大丈夫だよ、俺元気だし」

「おまえなぁ…。まぁ…死んでなくてよかったわ」



ぶっきらぼうな言い方だが、瑛太には和也の気持ちが伝わってきた。三年間も話さなかったのにこんなに自然なのは、自分にとって彼はやはり特別なのだと思った瑛太は、少し嬉しくなった。



「ところで瑛太、ハガキ…見たか?」

「ハガキ…?」



ハガキなんて来ただろうか…。そういえば、ここ最近新聞さえまともに読んでいなかったかもしれない。



「ハガキがどうかした?」「まぁ…まだ見てないならいいんだ。見たらこっちに連絡くれよ」



そう言うと和也は瑛太の言葉も聞かず受話器を置いた。まったくなんだったのか…。瑛太は釈然としない様子でキッチンの戸棚を開けた。中からプラスチック製の箱を取り出す。中にはいろとりどりの棒つき飴が詰まっている。蓋を開け、赤色の飴を取り出すと箱をもとの位置にもどした。


考え事をするときは飴を舐める。瑛太の癖だ。高校時代にも試験勉強の度に口に詰め込んだ。フンワリと甘いイチゴ味が口に広がる。


いったいなんだったのだろうか…。わざわざ家の電話番号まで調べて電話してきたんだ、きっと用事があったんだろう。



ソファーにハマったおもい腰をあげ、玄関への扉を開ける。下駄箱の上には手の付けられていない、未開封の手紙、ハガキ、書類がこぼれんばかりだった。


自分がどれだけ余裕のない生活をしていたか、一目瞭然だった。



仕方なく、和也の言っていたハガキを探しつつ、整理をすることにした。



ほとんどは自分にはなんの関係もない、ただの広告だった。時折母からの手紙や、海外にいる姉からの絵葉書が混じっていた。



ふと、数あるハガキの中に、見覚えのある名前を見た気がして、瑛太はハガキの海に目をこらした。



「いのうえ……みのる…?」



そこには確かに、光り輝く三年間には欠かせなかったもう一人の友人の名があった。



井上実。高校時代では和也と瑛太、実でいつも一緒に居たものだった。



しかし、一体なぜハガキなんか…。用があったなら和也が電話番号を知っていたのだし、わざわざハガキにすることもない。



考えていても仕方がない。瑛太はハガキを裏返して内容を見た。…途端にリビングまで走り出し、電話の着信履歴から和也を探し、かけ直した。普段落ち着いていて、冷静な瑛太をここまで驚かせる内容が、そこにはあった。



『僕たち結婚します。』



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