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閑話6 ミカエル・ケルビーン6

わしは、ミカエル・ケルビーン。


アタシーノ公国の大公を務めておったが、今は隠居の身じゃ。


わしの可愛い可愛い孫は、凄すぎる。


オーブンなる物を作りおってな、アップルタルトを世に送り出した。


あれはやばい。うますぎて、わし、死ぬ。


そうかと思ったら、次はパンだ。パンはの、ふわふわしとってな、具を挟んで食うてもよし、昼の弁当にもよし、バターと砂糖をかけて小腹が空いたときにもよしの、万能な食いもんだ。


パンができてからと言うもの、民はランチ、なる昼ごはんを楽しむようになった。おにぎりは有ったがの、パンはおにぎりよりも外で食べやすい。手に飯もつかんしの。それにサンドイッチにすれば、おにぎりより具材に栄養があるらしく、満足感が出るしの。外でおにぎりだけの食事よりも、豊かな食事じゃ。


だがな、さすがにサンドイッチだけでは夕飯には物足りん。まあ、これは仕方がないの。


と思うておったらな、今度はピザじゃ!


何でも、パンと材料は同じらしい。じゃがな、チーズたっぷりで、新野菜のピーマンが程よく焼かれていて風味がいいしの、ケチャップとの相性も良い上に腹がいっぱいになるしの、見た目も豪華だぞ。ピザとは、カロリーとやらが高いらしくてな、年寄りでも一切れ食べるだけで、体力が回復していくらしいの。まさに命の料理じゃな。


かと思うておったらな、今度はビニールだ。


ビニールができてからというもの、菓子やらなんやらの保存が可能になってな、冷蔵庫のない平民でも家で食べられるものが増えた。持ち運びも便利でな、封を開けさえすれば新鮮な菓子などが食えるしな。


ミチイルは次々と新しいものを考えるのう、などと内心、自慢をしておったらの、今度は魚じゃ!


まさか海から食いもんを獲ってくるなぞ、誰が考え付くものか。神しかおるまい。


なんでも、舟とかいう水の上を進める乗り物を作ってな、それで魚を獲るらしいな。その魚は鰹節とかいう調味料になってな、それがまた、スープとは別もんじゃ。あっさりしているのに風味が高くてな、飯や醤油なんかと相性がいい。食が進まぬ時なぞはな、鰹出汁を使ったお茶漬けなんぞにするとな、スルスルと飯が食えて、年寄りなんかが喜んでいるそうじゃぞ。


ま、わしは食が進まん事などないがな! グフグフッ


と思うておったらな、今度は、なんと、女神の調味料、マヨネーズじゃ!


なんだあれは……どんなものにかけてもコクが出てうまい! 野菜につけてもうまい! パンに塗ってもうまい! ゆで卵につけてもうまい! 焼いた肉に付けてもうまい! それに、ツナマヨじゃ!


ツナマヨ……あれは、おにぎりを神の食い物に変えおった。あれはうまい! いくつでも食える! わし、昼ごはんは毎日ツナマヨおにぎりでも構わんぞ! 神の料理のツナマヨおにぎりだがな、中にチーズを忍ばせてもうまい! 醤油を足して味付けしてもうまい! 刻んだキュウリを混ぜてもうまい! 食パンにツナマヨを塗ってオーブンで焼いてもうまい! そして、ツナマヨに鰹節を混ぜてもうまい! ツナマヨのツナは鰹じゃと聞いとるがな、鰹に鰹を混ぜるなぞ、誰が考え付くというのだ! 神しかおるまい。


これは大変な時代になったもんだ、と喜びに打ち震えて毎日ツナマヨを食うておったらの、次は……


次は、なんと、魔石じゃ!


魔石とはな、煙も出ず、燃やしても減らず、長い事燃え続ける燃料だ。しかも灰も出ないと言う。魔石そのものも、薪と比べるととても小さいしな、運送も効率がいい。しかもじゃ、魔石は北の資源採集場に無尽蔵に転がっておると言うではないか!


竹ができて燃料が使いたい放題になった時も驚いたがの、今度は、より効率的で無尽蔵のエネルギーじゃぞ!


しかも、その魔石を使って、冷蔵庫も冷凍庫も民が自分たちで作れるようになった。


今までの冷蔵庫はの、ミチイルだけが作れてな、ミチイルが生きている間だけしか使えんものだったらしいの。だが、平民でも冷蔵庫が作れるようになってな、大きさも好きに変えられるから、平民の家にも冷蔵庫が置けるようになる日も来るというではないか!


ま、それはまだまだ先の話だそうじゃが。


これは大変な話だ、わし、それまで生きておるかのう、などと思うておったらの、ミチイルは過去最大級の奇跡を起こしおった!


そうじゃ、太陽じゃ!


ミチイルは太陽を作り出したんじゃ!


太陽じゃぞ? 何をどうしたら太陽を作れるというんじゃ?


ミチイルは、家の中で使える小さい太陽をな、小さい太陽を……小さい太陽で、公国をキラキラ輝く国に変えおった!


燭台でもな、大変革じゃったがな、電球は燭台とは比べもんにならん。燭台は、持って歩くと消えることもあったしな、なにより外では使えんからな。その点、電球は太陽じゃから、外でも使えるし、鼻息で消えることもないぞ!


何でも、その小さい太陽を呼び寄せる時には、神の国の礼儀があるらしくてな、掛け声が必須というらしいからの、もちろんわしも厳格に守っておる。それはそうじゃろ、なにせ太陽じゃからな!


神への礼儀は絶対に忘れたらいかんぞ!


と思うて、日々驚愕しながら屋敷の中で小さな太陽を眺めておったらの、ミチイルは今度もやりおった!


次は、トンカツじゃ!


トンカツじゃぞ! あれはうますぎての、わし、死ぬ。


サクサクしているのに肉がジューシイでな、それにかけるウスターソースがまたうまい! 気がついたら、茶わんの飯が蒸発して無くなるくらいだ!


そう言えば、なんで飯を入れる器なのに、茶わんというんじゃ? お、そうか、お茶漬けも食うからだな!


ま、そんな事よりトンカツはな、パンに挟んでもうまい! カツサンドと言うんだがな、あれはなんだ。カツサンドに比べりゃ今までのサンドイッチなぞ、子供の食いもんだな。カツサンドはな、大人の男の食いもんじゃ! 公国中の男たちがな、カツサンドカツサンドと呪文を唱えながら歩いておるわ。


さすがミチイル、わしの孫は男心をわかっておるの! と思うとったら、次は……


次はの……。


ミチイルじゃのうて……メアリじゃ。


メアリがセルフィンからカチコミに来たぞ。もちろんメアリも、わしの可愛い娘だ。不憫にもセルフィンで以前のわしらのように暮らしておる。それが、マリアがパウンドケーキを送ったらしくての、どういうことだとアタシーノに乗り込んできおった。


ま、本当は礼を言いに来たのと、ミハイルに世辞を言いに来たのだがの、屋敷に着いた時には当初の目的は無うなっててな、完全にプンプンじゃ。


じゃがな、仕方がないだろう。女神様の神託だからな、ミチイルの奇跡は、いくら娘だからと言ってな、他国へ漏らす訳にはいかんのだ。


じゃが、メアリはな、ミチイルに慈悲をすがってしもうた。


わしの可愛い可愛いミチイルはな、やさしい子じゃから、当然のようにセルフィンにも慈悲を授ける事にしたぞ。


もう、ミチイルの存在は隠すだけじゃ無くてな、救い主として確立していく時期、なんだそうだ。


わしの孫はまだ11歳じゃぞ?


何万人もに慈悲をさずける必要もないじゃろが! せめて成人するまでくらいは子供らしく育って欲しかったがな、ミチイルはやはり救い主。セルフィンを見捨てる事はできんかったんじゃろうな。


わしは少しでもミチイルの助けとなるためにな、一緒にセルフィンへ行くことに決めた。なぜかジェームズもついて来たがな。ま、ジェームズとは生まれた時から一緒だしな、居る方が自然だから、自由にさせておる。


ミチイルと一緒の旅は、楽しかったのう~


バンガローなる小さな家を出した時には、腰が抜けそうになったぞ。中は狭いがな、寝台はもちろん、小さいキッチンとトイレと風呂までついておる!


わしの孫は、屋敷から小さな家まで、自由自在じゃ! すごいのう~


そんでな、シャーベットなる冷たい食いもんがあっての、冷たい食いもんじゃぞ? 冷えた食いもんじゃ無うて、冷たいんじゃ!


焼き肉という男の食事を済ませた後にの、食べたシャーベットと来たら……うますぎて、わし、死ぬ。


じゃがな、食べ過ぎると体に悪いらしいの。冷凍庫があればシャーベットは魔法で簡単に作れるらしいがな、ほどほどにせんとな。まだまだ長生きせんといかんしの!


ミチイルとの楽しい旅もな、あっと言う間に終わってしもうてな、セルフィンに着いた。


着いて早々ミチイルはの、大使館なる屋敷を建ておった。わしが住む屋敷じゃぞ!


ミチイルの別邸に引っ越す計画はの、マリアが断固阻止しおってからに、わし、せっかくミチイルが用意してくれた、わしの部屋にの、ただの一歩も足を踏み入れておらん。足を踏み入れるどころか、まだ見てもおらん……


じゃがな、そんなわしをミチイルが気遣ってくれてのう、わしの屋敷をセルフィンに建ててくれたんじゃ!


やさしいのう、わしの孫は。


セルフィンに着いてからの、ミチイルは毎日毎日、奇跡の連続じゃ。ようあれだけ奇跡を成せるもんだと、わし、頭が下がる思いじゃぞ。実際に頭を下げたらミチイルが嫌がるからな、心の中だけじゃけどな。


セルフィンの公都も、あっという間に様変わりじゃ。


畑も十分な広さがあるしの、もう既に収穫するばかりの米やら野菜やら……もうセルフィンの民も飢えずに済むの。


わしも、完璧に農業を修めた身じゃ。娘のメアリが嫁いだ国だしな、このセルフィンで農業を軌道に乗せ、一日も早くアタシーノ公国と同じような生活を送れるようにせんといかん!


さあ、ミチイルと奇跡を成すんじゃ! 


このセルフィンにミチイルの名を知らしめるんじゃ!


と思うておったに……


ミチイルは、わしを置いてアタシーノへ帰ってしもうた。


わし、悲しくての、死んでしまいそうじゃ。


じゃが!


そんな事も言うてはおれん。早くセルフィンの治政を軌道に乗せねばな!


と思うて毎日毎日、民の指導と農業の指揮をしておったらな、アタシーノから大親方どもがセルフィンにやってきた。暮らす場所は大使館に付属するアタシーノ公国民の寮だからな、知らぬ仲でもないしの、じじい共と毎日楽しく暮らしておるぞ。


じじい共が来てからというもの、セルフィンでもすぐさま、色々な製品が製造されるようになってきた。


ミチイルが工場なども、ある程度用意して行ったからな。後は材料と人さえいれば、いくらでも製造ができるというもんだ。じじい共は嬉々として、セルフィンの職人たちに指導をしておるぞ。


こうして数か月、セルフィンもすっかり様変わりした。


セルフィンの民は布一枚から作務衣になり、米が中心とはいえ、飢えることなく腹いっぱい食べ、燃料を使って料理も始め、職人たちも育ってきて、簡単なものなら作れるようにもなったらしい。


もともと女神信仰もある国だしな、職人が魔法を使えるようになるのも速かったらしいの。


メアリが国を事実上取り仕切っていてな、夫の大公は静かなもんじゃ。ま、メアリは女傑だからな、適材適所でいいと思うぞ。


さて、明日からも頑張らねばな。


国は違うとはいえ、元は同じ民だ。そしてわしも元は為政者。わしに出来ることは、何でもせねばなるまいて。


と思うて決意を新たにしとったらな、今度はアタシーノじゃ。


何でも、アタシーノ公国の公都をまるごと移転するんじゃって!


わしの孫、すごすぎん?


屋敷どころか、街まで丸ごと全部ひとりで作るんじゃと!


さすがわしの孫、街どころか、国まで一瞬で作ってしまうに違いあるまい!


アタシーノに帰るのが、さらに楽しみになったわい!


ミチイル、わしはセルフィンで元気に頑張って活躍しておるぞ!


心配せんでも大丈夫だからな!


お祖父さまは、一刻も早くセルフィンを自立させて、アタシーノへ帰るからな!


グフグフッ




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