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1-93 移転完了

しばらく過ぎてから、新公都への引っ越しが完了した。


これで旧公都は廃墟。


さて、人払いを手配してもらい、とりあえず全部撤去して、南北街道を敷きなおそう。




***




「さすがに人っ子一人いないと、寂れた感が満載だね」


「ええ、そうね。わたしもここで育ったから、これだけ誰も居なくなると何とも言えない気分になるわ……」


「そうですね。私も、パラダイスに居りましたからマリアよりは住んでいる時間が短いとはいえ、ここで生まれ育ちましたからね」


「伯父上も、母上も、故郷が無くなるようで寂しい? 旧公都も残す?」


「その必要なんてないわ。アタシーノ公国は、もう昔の公国じゃないもの。この旧公都には、民が苦しんでいた辛い記憶もあるのよ」


「そうですね。父上が居ない間に旧公都を取り壊すのもどうかと思いましたが、新しい公都ができると知って、誰よりも喜んでいるのが父上ですから」


「じゃ、遠慮なく壊しちゃおう。もう、イヤな記憶なんていらない! 形ある物、いつかは壊れるんだからね」


「あら、ミチイル、とてもいい事を言うじゃない」


「そうですね、私もそう思います。昔の事は、思い出さない方が幸せです。楽しいばかりの公都じゃありませんでしたから」


「うん、じゃ、行くよ!」


ピカピカピカピカ ピッカリンコピッカリンコ……


「ほんと、壊すのは、あっという間なのね」


「ええ、あっけないものです」


「うん、壊す、っていうか、アイテムボックスに入れる時にバラバラにしながら収納するだけだしね。さて、旧水路も埋め立てて、南北街道も敷きなおそう。今は西に迂回して少し遠回りだからね、これで北から南まで、新公都の真ん中も通って一直線だよ!」


「以前の街道はどうするのかしら?」


「うん、一部を残すよ。中央工業団地にも接続している道路だしね、旧公都をぐるっと四角く囲う感じに敷きなおそう。そして、旧公都南側の南北1km東西2km分の200ヘクタールは畑にして、農業部に丸投げするから、伯父上、後はよろしくね」


「わかりました、ミチイル様」


「そして、残りの北側の200ヘクタールは、中央工業団地沿いは、新たな倉庫を建てよう。物量を増やさないとならないしね。残りは当面、空き地。使う予定も今のところないし、各工場とかも、現状で間に合っているんだよね、伯父上?」


「はい。むしろ余裕が残っていると報告があります」


「じゃ、それでいいね。これで新公都は北と南に畑ができて、畑で挟まれている状態だけど、いいよね、別に」


「いいわよ、もちろん。畑は食料だもの。食料に囲まれて生きていけるなんて、こんなに幸せなことはないわ」


「本当に。ミチイル様が生まれたと聞いたときには、そんな話もあるのか、くらいでしたが、よもやこんな日が来るとは思いませんでした」


「そうだよねえ、伯父上たちは、話にしか聞いてない状態で、10年もパラダイスに暮らしていたんだもんね」


「そうね。でも、下手に公都に戻って来て、変わって行く暮らしを見ていたら、パラダイスには戻りたく無くなってたはずよ。これも女神様の思し召しよ。ね、お兄様」


「ハハハ 確かに!」


「じゃあさ、伯父上、ちょっと話があるから、別邸に来てもらえる?」


「よろこんで」




***




「伯父上、大公屋敷はどう? 何か不都合はない?」


「はい。今までの大公屋敷と比べると、夢のような屋敷です。本当にありがとうございます」


「良かったよ。この別邸と同じ作りだけど、増築前の作りだからね、設備は最新式にはしたけど、ここよりほんのちょっぴり狭いし」


「ですが、執務棟が別棟でありますから、むしろ今までより余裕を持って暮らしています。もし必要があれば、職人たちへ手配して増築したり部屋を分割することもできますので、ミチイル様の手を煩わせる事もありません」


「そっか。それで、時の鐘の運用はどう? あの時計、誰にも見られないようにお願いね。大公家だけの秘密。ま、僕が死んだら使えなくなっちゃうだろうけど、その後の事は、日時計もできたしね、時間は計れると思うから」


「はい、門外不出の宝物として管理しています。アラームが鳴ったら、セバスが鐘撞係に知らせていますから、誰の目にも触れておりません。大公と執事だけです」


「ほんとうにねえ、あれはびっくりするものよね。真っ黒なガラスに数字が浮かぶんですもの」


「ハハ それでね、伯父上。エデンの王国にさ、アルビノ人の味方になってくれそうな貴族っているかな?」


「ふーむ、いると言えばいますが、内容にも因ると思います。アルビノ人との混血の貴族が少数いますから」


「あ、なんか小さいころに聞いたような気がする……公国と王国の物流を引き受けている貴族がいるんだっけ?」


「ええ、いるわよ。牛に荷車を牽かせて、南村の交換所と王都の間を延々往復している足軽運送が」


「あしがるうんそう……なんか、モヤモヤするけど、まあいいや。その足軽さんのうち、例えばね、アルビノ人が荷車使ってたりマッツァ以外のものを食べてたり、服を着てたりしたら、どう思うかな、伯父上」


「……正直、わかりませんが、あそこの家は女神信仰をしているはずなので、女神の祝福関係であると言えば、見て見ぬふりをする可能性はあります」


「あ、それもなんか小さいころに聞いたような……ま、いいや。北部には入れないエデン人なんだよね?」


「それも正直、よくわかりません。北部に入って来たことはありませんが、南村辺りなら問題なく滞在できるのではと思います」


「あ、それもなんか……混血の人は魔力器官が一応あるんだったけ」


「その話は良くは知りませんが、少なくともアルビノ人に対して、変な行動をとったり、理不尽なことは言わないと思います。何百年間、ずっとこの公国とやりとりしてきている貴族ですから」


「そっか。じゃあ、その貴族を懐柔しよう。母上から伯父上も聞いていると思うんだけど、僕の救い主としての使命があるからね、世界に出て行かないといけないの、僕。でも、今のままじゃ難しいし、何よりも、今のアルビノ人の状態は何とかしたい。だからね、僕が次にやる事は、エデンに人頭税で出している公国人を引きあげさせたい。向こうに公国人がいると、何かあったときに身動きが取れないしね。人質とかにされたら困るから。だからまず、公国人を公国に帰す」


「そんなことが……可能なのかしら……?」


「うん、何かはしないとダメだろうけどさ、要は王国人が欲しがるものをあげる代わりに、税を減らしてもらうの。その減らしてもらう税は、公国人。他の税は、当面払い続ける。もしエデンの王国から公国人がいなくなったら、王国は存在できなくなっちゃうのかな、伯父上」


「うーん、雑用とかで扱き使われている人は居なくなっても、エデン人の平民で代わりが可能です。建設工事とか、土木工事の技術者が居なくなると困るとは思いますが、実際、今は工事もほとんど無いので、数年の間は問題は起こらないかも知れません。後は、家具や道具などは、もともと南村で作ったものを足軽運送が運んでいるだけですから、特に問題はないと思います」


「僕が思っている一番の懸念事項はね、エデンの王国が、武力を使う事なの。この世界に武力がどの程度あるのか知らないんだけどさ、たとえば、公国人がエデンの王国の中で誘拐されたり暴力を振るわれたりする?」


「それは一応はありません。問題にならないような小さな争いはありますが、基本的には、エデン人はアルビノ人に手は出さない、手は出してはならない事になっています。エデンの王国が三つに分かれて以来、どこかの王国だけが突出してアルビノ人から搾取するのを防ぐため、お互いがお互いを監視している状況です。もし、アルビノ人が全員死に絶えたとしたら、困るのは当のエデン人ですので、表向きはひどい扱いは受けません」


「ああ、うまく飼い殺しをしているんだね」


「それと王国の武力ですが、武力として招集されるのは、半農半貴族の男爵家だけです。集められる武力の総数は一王国で1000人ほどかと思いますが、多少の刃物を持っているだけですし、その刃物を作っているのはアルビノ人です。それに、エデン人の殆どは北部に入れませんので、王国内に公国人が居なければ、武力の心配は必要ないと思います。今はもう王国から引き渡されるマッツァが無くても構いませんし、いざとなったら、私達が北部に籠ればいいだけですので」


「じゃあ、公国人がアタシーノへ引き上げれば問題ないね。それとセルフィンはどう? まだマッツァが必要?」


「セルフィンも民が飢えることは無くなったそうです。仮にセルフィンからマッツァが無くなったとしても心配ありません」


「思っていたより速いね。それなら憂いももうないし、良かったよ」


「それにね、わたしたち大公家はね、制度上、エデンの三王家の次に身分が高いの。王家の分家である公爵家よりも上なのよ」


「そうですね、まがりなりにも一国の主ですからね、大公家は」


「でも、表面上の扱いはそうだけれど、心の中じゃ、呪われた民と思われていて婚姻対象でもないし、取るに足らない存在だと思っている王国貴族も少なくないわ」


「そうですね、学園などでも、そんな感じですし、貴族は自分たちが踏ん反りかえっているのが矜持ですし、自分たちが大公家に頭を下げるのは抵抗がありますから、関わらないようにしている感じではないかと思います」


「ああ、下手に関わったら、向こうがへりくだらないといけないから、接触を避けてるんだ」


「そうね、そんな感じよ」


「とすると、そこら辺の貴族が積極的に文句を言ってくる可能性は、現状、それほど高くないのか……」


「でも、王家はわかりません。わたしたちよりも身分が高い、唯一の存在ですから」


「ああ、それは大丈夫だと思う。むしろ、王家から接触されたいの。王家に食い込めば、王国の問題は解決したも同然じゃない?」


「ふーむ……この大陸のルールは、年に三回行われるエデン会議で決まりますので、大陸全体のルールに関しては正直なんとも言えません。しかし、パラダイス王国に関しては、取り込めるというか、状況次第でパラダイス王国内に限っては、公国の立場の変化が起こる可能性は低くはないと思います」


「うん、王家がね、自分たちの利益を優先してくれてね、僕たちと取引をしてくれるなら……」


「そこで、人頭税を無くす取引をするのね!」


「うん。でね、僕の計画は……」




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