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1-92 増産開始

「それでね、ジョーン。この公国で、製造に余裕があるって話なんだけど」


「はい! 民が一日中働かなくても良くなりました! みんな慣れて来ましたし、逆に作業を取り合っているような状態です」


「作物とか、原料の方は大丈夫? 余っている?」


「はい! 一生懸命作ると、消費しきれなくて余ってしまうようになりましたので、農業部の方も、仕事をセーブしているようです」


「そう。なら、生産を増やして欲しいの」


「はい、それは可能ですけど、食べ物が余っているのに、食べ物を増やすのですか?」


「うん。とりあえずね、パウンドケーキとクッキーとマドレーヌ。これは今よりも種類を増やしていこうと思う。そしてね、新たにポテトチップスも作って欲しい。ポテトチップスはね、ポテトフライがあるでしょ? それと作り方は同じような感じだけど、ジャガイモを薄く薄くスライスしてね、油でカリカリに揚げて塩を少々まぶしたものなの。とっても美味しいんだけど、食べすぎると良くないかな。油もたくさん使うしね、贅沢なおやつなんだ。そして、あまり日持ちがしないんだけど、今はガス袋あるでしょ? 日に当たらないようにすれば、長持ちするはず。いま、パウンドケーキとかはどのくらい日持ちがするの?」


「はい。ガス袋を使って日光を遮っておけば、既に半年以上、品質に変化がなく保管できています」


「なら、ポテトチップスも同じくらい日持ちすると思う。ジャガイモをね、そのままじゃ大きいから食べやすいサイズに切った後、スライサー魔法で1mmくらいの薄さにスライスして、軽く干物魔法をかけて少しだけ乾燥させて、一枚ずつ油に入れてカリカリに揚げるの。油から出したら熱いうちに細かくした塩を適量振ってね、完全に冷ましてから、花鰹の袋サイズのガス袋で密閉して欲しいんだ。壊れやすいから空気も一緒に詰めてね」


「はい。かしこまりました。それで、クッキーなどの種類を増やすというのは、なんでしょうか?」


「うん、今は数種類だけでしょ? それの味を増やしていくの。後でまた詳細は訊いてくれればいんだけどね、いま言っちゃうと、プレーンパウンドとフルーツパウンド、紅茶パウンド、抹茶パウンド、カボチャパウンド、ニンジンパウンド、春菊パウンド。そしてプレーンクッキーと紅茶クッキー、カボチャクッキー、抹茶クッキー、ニンジンクッキー、春菊クッキー、レーズンクッキー。さらにプレーンマドレーヌと、紅茶マドレーヌ、抹茶マドレーヌ、レーズンマドレーヌ、アップルマドレーヌ、メイプルマドレーヌ。これで全20種類」


「あわわ……とても覚えきれません」


「うん、詳細は少しずつ教えるよ。とりあえずね、紅茶パウダーとカボチャ、ニンジン、春菊のパウダー、フルーツのラム酒漬け、ドライレーズンとドライアップルは大丈夫でしょ?」


「はい。今もあるものですし、無いものも作れますから大丈夫です」


「うん。それで、メイプル風味のはね、廃糖蜜をアップルブランデーで薄めて砂糖を混ぜてメイプルシロップを作る。本当は全然違うものなんだけど、新たな風味のシロップになると思う。そして、抹茶というものだけど、これは母上、かな」


「あら、わたしにも何か仕事がもらえるのかしら?」


「うん。茶の木は母上の管轄のままでしょ?」


「ええ、もちろんよ。公国の最重要作物である椿の木ですもの。他には任せられないわ」


「ハハ その茶をね、今は普通にやわらかそうなのを摘んでいると思うんだけど、それをね、芽が出たばかりの小さい薄い色の葉っぱだけを集めて欲しいの。ちょっと大変だけど、この世界じゃみるみるうちに葉っぱが出てくるでしょ? それを頂点の小さい小さい葉っぱだけを集めて、圧力鍋魔法で加熱して、干物魔法で乾燥させてほしいの」


「わかったわ。おやすい御用よ。指示しておくわ。出来上がったのは調味料工場?」


「うんと、飲んだりするのには使わない予定だから、パン製菓工場だね」


「わかったわ。わたしに任せてちょうだい!」


「うん、よろしくね。それでね、ジョーン、いま言ったのは抹茶という飲まない茶にする予定なの。この小さい芽だけのお茶はね、石臼魔法で最大限、微粉末にして欲しいの。これは石臼魔法が得意な人じゃないと無理かな。そして、その抹茶パウダーをお菓子に使う。野菜のパウダーと同じ感じで」


「はい、イメージはできました。そして、メイプルシロップも、材料の砂糖を一部置き換えて使う感じでしょうか?」


「うん、さすがジョーン! とても頼りになるから助かるよ。メイプルシロップは水分があるからね、クッキーとかには難しいから、取り敢えず高級志向のマドレーヌに使おう」


「かしこまりました」


「うん、これらをね、取り敢えずは作れるようにしておいて欲しい。後で、毎日山のように作ってもらう事になると思うから」


「大丈夫です。すぐに体制を整えます!」


「うん、農業部にも増産の指示をおねがいね。母上もジョーンも、よろしくね」




***




「わざわざごめんね、カンナ。忙しいのに」


「ミチイル様のお召とあらば、何を措いても参じます」


「うん、ありがとう。それでね、平民にもだいぶん服が行き渡っているね? 色のついた服を着ている人もいる感じだけど」


「はい。服飾部はもともと人数が多うございますので、何も問題はございません。むしろ、余力があるほどでございます」


「そうなんだ、じゃさ、生産を増やして欲しいんだ。それも大量に。できそうかな?」


「どのような服をご所望なのかによりますが、問題ないと存じます」


「うん。とりあえずね、以前の作務衣あるでしょ? 手術着みたいなの。あれをね、万単位で作って欲しい」


「丈の長い作務衣でしたら、あっという間に仕上がりますので、いくらでもご用意が可能でございます」


「うん、取り敢えず増産してもらう作務衣は、すべて色なし、そして貴族用には厚手の綿、平民用には普通のリネンで作って欲しいの」


「かしこまりました。いつまでにどの程度、ご用意致せばよろしゅうございますか?」


「うん、いつまでっていうよりかはね、しばらくはずっと、生産し続けてもらうことになると思う。当分は作務衣だけど、その後は普通にシャツ、ブラウス、ズボンにしてもらう。あ、これも増産分は色なしで、素材はいま言った貴族用と平民用に分ける感じだね。だた、作務衣じゃないと、服のサイズを考えないといけないから、子供用の数サイズと大中小くらいのサイズ分けは必要になるかな」


「かしこまりました。作務衣以外ですと少々お時間を頂くことになるかと思いますが、生産体制を整えておきます」


「うん、よろしくね。取り敢えず、作務衣の生産は始めてくれる? あれ、子供用少しと大人用のサイズしかないからね。まだ時間の猶予はあると思うんだけど、とりあえず平民用は大人用20000着、子供用5000着、貴族用も2000着くらい、後は普通の服もぼちぼちそろえて行って欲しい」


「かしこまりました」


「それからセルフィンの方はどう? 服は足りてる?」


「はい。ジェームズからの伝言によりますと、作務衣は民に行きわたっているそうでございます。この公国でも生産しておりますが、向こうでも作務衣は作れるようになって来たとか。ご心配は無用にございます」


「うん、良かったよ。ありがとう。それと母上」


「なあに? またわたしにお仕事をいただけるのかしら」


「仕事っていうかさ、母上たちはいろいろな色のついたワンピースが普段の服でしょ? まあ、母上のは布地が多くて色の種類も多いけど」


「ええ。でも、わたしの服は自分で作っているから、平民に負担はかけていないわよ」


「うん。それもね、平民が少しは作れるように手配して欲しいの。ゆくゆく、必要になっていくと思う。それも当面は色なしでいいんだけどね。色付きの服はね、あくまで公国専用で、公国内でのみ着用可と言うことにして、エデンにはバレないようにして欲しいの」


「ええ、もちろんよ。いまでも向こうじゃ布巻でみんな暮らしているんですもの、その辺は大丈夫よ」


「それからね、今は色が付いていない布は、生成り色でしょ? それをね、精白魔法を使うと、真っ白い布ができると思うの」


「なんですって!」


「うん、ちょっとやってみようか。えっと、『晒ふきんで綿布』そして『精白で漂白』 」


ピカピカッ


「んまあ! なんてこと! 白く輝くようなきれいな布!」


「誠でございますね! なんて美しいんでしょう」


「うん、これは当面、公国貴族用にしてもらえる? 母上のドレスワンピースにぴったりだと思うんだ。それにね、白い布を食紅魔法する方が、ずっと色がきれいに出ると思うよ」


「ミチイル、この綿布は、普段わたしたちが作っているのよりも薄くて艶があってしなやかなんだけれど、どうやって作るのかしら?」


「うん。晒ふきん魔法で布を作るんだけど、糸が必要でしょ? その糸をね、なるべく細く、でも丈夫な糸にするの。細く細く丈夫で表面が毛羽立ってない糸のイメージ。その糸で布をつくれば、こんな感じになる。ただ、細い糸だと経糸と横糸の数が増えるでしょ? その分、晒ふきん魔法の負担が増えてね、一度にできる布が少なくなるんじゃないかな。だから、この布は貴族用だね。母上向き」


「そうだったのでございますか……糸を細く丈夫に滑らかにする……」


「うん、カンナ。カンナはもともと織物していたから、わかるでしょ? 糸が細くなると織物が大変になるもんね」


「はい。今では手織りすることはございませんが、確かにより細かい作業と手間と時間が必要となりましょう」


「うん。その手間暇と技術がね、この高級布の品質に出るんだろうね」


「高級布! なんて貴婦人にふさわしい響きなの!」


「ハハ 母上も頑張ってみて」


「ええ、何かがみなぎって来たわ!」


「じゃ、母上にカンナ、よろしくね」




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