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1-89 時の鐘

そして、新公都の区ごとに公共の建物を建てていく。


まずは教会ね。これは少し大きく作っておこう。一区全員で使うからね。ま、使うと言っても集会がある訳でもなし、思い思いに教会に来て、祈ったり捧げものをしたり、時には誰かと話をしたりという、そんな交流の場みたいな使い方。


祈ったり捧げものをしたりだとかは、別にいつでもどこでも各家庭でもできるからね。でも、なにか象徴的な建物があると、宗教ってまとまりやすいかな、って思ってさ。大した意味はないよ。


そして、給食センターに、配給所。


給食センターは、言わずもがな、給食を出すところだけど、今もずっと混み合っているからね。現公都には一つだけだし、あとは中央工業団地にレストランがあるだけだから、レストランはそのまま残して、新たに三か所増やす感じ。なので、給食を出す施設が合計五つになる。ま、今までは月に一回とかがせいぜいだったけど、今度からは月に二回か三回、給食が食べられるようになると思う。料飲部には頑張って欲しい。


そして配給所だけど、ここってさ、今じゃ配給するものがたくさん種類があるからね、見た目はスーパーみたいよ。お金を払わないだけで、スーパーと機能も変わらないしね。民が、好きなものを好きなだけ自分で取って、配給を受ける場所だから。


公国民は争わないからね。ま、だれかが何かを独り占めしようと思っても、現状では無理だしね、仮に何かを人より多く集めたとしても、貨幣経済じゃないから、自分で食べる以外に使い道もないもん。もし、もしも万が一、エデンの王国に持って行こうと思った人がいたとしてもね、なにせ貨幣経済じゃないから。この世界の価値あるものは、ほとんどすべてアルビノ人が作っているんだもん。エデンに公国の物を持ち込んだとして、何に交換する?って思ったらね、交換で手に入るものが果物か家畜のエサだよ?


公国の物をエデンに持って行っても、労力がかかるばかりか、他の民に総スカンをくらった挙句に、牛のエサのマッツァを貰っても、意味がないでしょ。だから、誰も物を不当に横流しもしないし、人より多く食料を集めたりもしない。


うん、これはこれで、いい社会だと思うんだ。なので、当面はこれを継続するよ。資本主義社会や自由主義社会が、すべて正しくて幸せな世界とも限らないからね。


そして、交流センターも各区に一つずつ建てる。これは子供とお年寄りがお互いを面倒見合う、とても素晴らしい施設なの。お年寄りは、若い人ほど働けなくても、子供と一緒にいて、何かあったときには誰かに知らせることもできる。家が狭かったせいか、なぜか核家族社会の公国ではね、お年寄りは独りで暮らしている人も結構いるの。だから、誰かといれば寂しく無いしね、キッチンも併設されて食材も使いたい放題だからね、家じゃなくても、交流センターでみんなで料理をして、食事したりもできるし、洗濯もできるし、お風呂も入れるからね。そして子供は、お年寄りから話を聞いたり、お年寄りの手伝いをしたり、一緒に遊んだりしてね、少しずつ集団社会となじんで行っている。学校が無いからね、集団生活を過ごせる施設は、大切だと思うんだ。


こう考えると、この老幼一体施設は、とてもいい施設だと思うよ。


そして最後の施設は……公衆浴場だよ!


今まで燃料や管理の問題があったからね、ちょっと難しかったんだ。小規模なお風呂しか作れなかったし、小さいものしか管理もできなかったから。


でも、僕の別邸に作った温泉施設(自称)をね、規模を大きくしたら、公衆浴場になるじゃん?


僕の露天風呂はね、僕の趣味のために作ったんじゃないの!


この公衆浴場のプロトタイプとしてね、研究のためにつくったんだから! 僕のわがままじゃなかったんだよ!


うん。


それで、この自動給湯式温泉?ボイラーを大きく作って、浴槽も大きく作って、男女別に建設して、露天じゃなくて普通に屋根をかけたら、公衆浴場の、完成です!


いやー、これは一つのエポックメイキング事件じゃない?


『はい、救い主様』


『ああ、アイちゃん、僕、やったよね?』


『はい。救い主様は、いつも人間どもの事に、お心を配っておいででいらっしゃいます』


『ハハ ま、お風呂自体は前から入れるようにはなってたけどね~ でも、公衆衛生って、とっても重要なんだよ! 病気も防げるし、あ、病気は無い世界だったわ、いやそれだけじゃなくてさ、清潔にすれば臭くもないし、あ、クサ臭腐敗菌は居なかったんだった……あれ? もしかして、そこまで重要な施設じゃなかったかも?』


『衛生上の問題はなくとも、肉体疲労が減少したり、精神的疲労も軽減されたり、するのではと思料致します』


『そう! それそれ! 僕が言いたかったのは、それなの~ さっすがアイちゃん、何でもわかってるよね~ ありがと』


『救い主様の、御心のままに』




***




「コホン……という事で、公共施設もすべて建設が終了したし~ 後は明日からにしよう、母上」


「何が、という事でなのかはわからないけれど、これだけ建物を建てたんですもの、ちゃんと休まないとダメよ」


「はーい」


「今日の晩御飯は、何かしら」


「なんだろうね……っていうか、まだ準備してないんじゃない?」


「そうかしらね……夕方までには時間が結構ありそうだものね」


「うん、この世界は時計が無いからね~ せめて時を計るものがあれば、鐘を撞いたりして時を知らせる事もできるだろうけど……」


「そうね。料理する時だって、もっと時間が分かりやすくなったら便利よねえ」


「母上は、ほとんど料理しないじゃない~ でも、時計は無理でもキッチンタイマーくらいはほ」




***




――ピロン キッチンタイマースキルが使えるようになりました。時計付きキッチンタイマーを制作できますが、維持には無次元の力と魔力を要します




***




「えっと……とりあえず『キッチンタイマースキル』 」


ピッカリンコ コトリ


「……ちょっとこれ、オーパーツ過ぎじゃないかな……」


「あら、何かしら? なんだか電球が四角く平らになった感じね!」


「うん、分厚いスマホみたい……えっと、時計モードで、タイマーもセットか……ま、出来たものは便利に使おう! じゃ、朝8時と昼12時と夕方17時にタイマーをセットして~ これで時間を確認して、鐘を撞けばいいんじゃないかな。あ、新大公屋敷に鐘楼堂を作って帰ろう」


「何かわからないけれど、新大公屋敷に寄って行くのね?」


「うん」




***




「さて、まだ誰も引っ越ししてないから、無人だしね、敷地に鐘楼堂をば。ピカッとね、はい、完成です!」


「まあ! ずいぶん高さがある……東屋?かしら」


「うん。漬物石魔法で階段付きの石垣を屋根の高さくらいに作ってね、その上にまな板魔法とすりこ木魔法で木製東屋を建てて、上からアルミカップ魔法で作った鐘を吊るしてあるの。この金串魔法の金属製の棒で叩くとね、カーンって音が鳴るよ」


「ちょっと叩いてみましょうよ~ ミチイル~」


「ハハ そうだね。じゃ、僕が行くよ。母上はエレガントなワンピースだからね、上に登ったら危ないもん」


「大丈夫よ、と言いたいところだけれど、エレガントさを失う訳にはいかないから、心配だけどミチイルにお任せするわ!」


「大丈夫~ ゆるい階段だし~ よっせよっせ、じゃ、叩くね~」


カーン カーン カーン


「なかなかの音ね。初めて聞く音だけれど、なにか哀愁をさそうわ……」


「ああ、夕方近くなってきたからね、この時間の鐘って、早く家に帰りたくなるものなんだよ」


「そうだったのね! じゃ、さっさと帰りましょう!」


「うん、そうしましょう!」




***




キッチンタイマーの時計は、あまりに近未来すぎるし、そもそも僕のスキルだからね、これは一切流通させない事にした。


なので、新大公屋敷で大公家だけが管理し、8時と12時と17時の一日三回、タイマーが鳴ったら鐘楼堂の鐘を鳴らして、公都に時を知らせてもらうようにする。鐘はひとつだけだけど、公都の建物は全部平屋だし、2階の高さに鐘楼を設置したからね、公都で一番の高層建築になって、どこからも見えるし、どこに居ても鐘の音が聞こえる。うん、充分だね。


そして、日時計も作った。


そりゃ、時計があるからね、この星は太陽の方角も角度も常に一定だし、昼と夜の長さも半分ずつ常に一定だし、あとは時計を見ながら一時間ごとに日時計に印をつけて行くだけの、簡単なお仕事ですので。


で、この日時計は現物を見ながら簡単に作れるし、頒布自由としたよ。これで時間を計ってもらってね、公国の勤務時間は、朝8時に鐘がなったら適当に出勤、昼には適当にご飯休憩、そして17時の鐘がなったら退勤、という勤務体系にすることにした。


南村と北村と中央工業団地には、日時計を見ながら鐘を撞く要員を配置。鐘も北部工業団地で作ってもらって各所に設置してもらい、のちのち公国中で鐘が鳴るように手配した。


後は伯父上、よしなに~




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