1-86 念願の
アタシーノ公国の、僕たちの別邸に戻って来た。
途中の宿場でセルフィン道中の牛運送の人達に会ったけど、今は電球があるから、多少夜が遅くなって暗くなっても道を進めるらしい。ま、一本道だしね、魔獣が出る訳でもないから、ゆっくり行けば危なく無いし。でも、夜になると日が落ちて、寒くなるからちょっと大変なんだって。
北部公国の公都あたりは、日中は25℃くらいで過ごしやすいけど、夜は15℃以下になっちゃうからね。少し寒い。ましてや荷車とかコーチに乗っていたら、風も当たるし余計に寒いかも知れない。
荷車やコーチで火を焚くわけにもいかないしね、そういえば、冷蔵庫とかさ、魔石で冷えるものはあっても、火を出さずに温かくするようなものは無かった。魔石はエネルギーなんだから、熱にも変換できるはずだけど……
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「ふう。そもそも魔石から魔力とかを取り出す方法もわかってないしね、吸わせることはできるっていうのは、ペルチェ石で分かったけど……そういえば、僕が勝手にペルチェ石って言っちゃってるけど、本当のペルチェ板は、電気を流せば一方は冷たくて一方は温かくなるんだったっけ……ペルチェ式冷蔵庫とかは排熱が」
――ピロン ペルチェ式冷蔵庫魔法が使えるようになりました。ペルチェ板が作れます
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「うおーい! 雑だな! 冷蔵庫魔法なのに板が作れますとか、疑問しか湧いてこないよ! いや、これでパネルヒーターを作ればいいんだね。うん。冷房にもなるんだと思うけど、冷房は北部じゃ要らないもん。冷蔵庫も冷凍庫もあるしね、うん。これはパネルヒーター専用だ」
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ということで、ペルチェ石を板に加工してペルチェ式冷蔵庫魔法をかけると、一方は温かく、一方は冷たくなる金属板が完成。あれ、この魔法があればペルチェ石とか必要ないんじゃ。ま、いいや。魔石を接触させる意匠を施して、これをコーチとか御者席とかに取り付け、暖房にすることにした。これからセルフィンとの移動も増えるしね、少しでも移動しやすいようにしないとね。
なんて思っていたけどさ、お部屋の暖房にも使う事にしちゃった。とりあえず別邸だけだけど。今は魔石暖炉使っているからね、それをこのパネルヒーターに変更。衝立みたいにしたポータブルのと、壁面に固定設置のタイプ。火を直接使わないし、安全性もアップしたんだけどさ、部屋全体が温まる訳でもないからね、なにせ後ろ側は冷たいし。なので、暖炉もそのままにしといた。あれ、パネルヒーター必要かな……
そしてね、とっても驚いたことに、タイヤができたの。
そのタイヤはね、当然ゴムじゃなくて、牛の腸なの!
腸詰魔法でね、牛の腸を使って太いソーセージを作っている時に、肉の用意をしないまま腸詰魔法を使ってしまった人がいたんだって。そしたら、肉が無いからかなんなのか、中に空気が詰まっちゃったんだって。そう言えば腸詰魔法は、思いのまま腸詰できます、ってやつなんだよね。肉以外も詰められたのね……それでね、面白いから時々それを作って遊んでいたらしいの。そしたらね、魔法のかけ具合で腸がめちゃめちゃ丈夫になって、踏んでも刃物で切ってもどうにもならない、とんでもないゴミができたらしいんだけど、それをクッションにすることを思いついた人がいて、でもね、思いついてもどうにもならないでしょ。太い牛の腸とはいっても10cmも太さは無いんだもん。ボヨンボヨンはしてるけど、言わば丈夫な長細い風船なんだもんね。
それでね、これは何かに使えないだろうか、と相談されたから、タイヤチューブに使えそうと思ってね、密閉シール魔法でコーチの車輪の外側にくっつけたの。
そしたら!
衝撃を吸収する、ゴムより丈夫な、刃物でもなかなか切れない、とんでもないタイヤができました!
作る時にちょっとコツが必要でさ、空気を詰めた後は加工が難しいから、殺菌消毒魔法をした牛の腸を車輪の外側に一周巻いて先にシールしておいて、その後、腸詰魔法で空気を詰めて腸を丈夫にしたら、それで完成。
何がなんだかわからないけど、ま、魔法だから~ 便利だから、良しとするよ。
で、そのタイヤを使った荷馬車やコーチがね、スピード出しても揺れが少ないの。ま、サスペンションとかは無いし、そもそも牛だからね、速いと言っても軽い荷物で時速20km位なんだけど、それでも速度は今までの倍あるしね。重い荷物の時にも、速くはならないけど、牛が楽になった感じ。ついでに、板バネみたいなのもあるよ、と職人に言っておいた。後は勝手によろしくやってね。
そういえば、マッツァを食べた牛が、走れるようになってたんだっけ。不思議だけど、不思議なんて思わないで!
そもそも、この世界は全部、もともと不思議だから~
という事で、僕は深くは考えない事にし、物流と人の流れが、よりスムーズになったことを喜ぶことにしたよ。
で、母上も、色んな色の食紅を作って、色のついた服を作り出した。まだ単色だけどね。
下手に模様とか絵の存在を教えたら、大変なことになりそうだし、僕は黙ってる。
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そして僕は、バンガローを作ったときから考えていた構想を、実現させることにしたの。
バンガローの給湯設備ね、銅の水タンクの下に魔石コンロで火を燃やして、上の銅タンクの水をお湯にする、そこから延ばした水道管に魔力を流すとお湯が浴槽に出る。銅タンクで減った水は、新たに井戸からつないだ水道管が供給する。
これってさ、井戸の水をちょろちょろと流しっぱなしにして、銅タンクに供給し続けてね、その下で魔石を燃やし続けてね、そして銅タンクからは普通の管を浴槽に延ばしたら、さ、お湯がずっと浴槽に流れっぱなしにならない?
僕の頭の中では、かけ流しの温泉もどきが出来上がっているんだけど。
つかさ、魔力を主原料にしていると思われる地下から湧いている水なんだから、いわば冷鉱泉でしょ。それを沸かしたら、温泉と言ってもいいんじゃないかな~
という事で、温泉を作りたいと思います!
僕の別邸の東棟は、サニタリーのほかは居室が2室だけど、使ってない。使ってないけど、それを潰すのもね、一応ひとつはお祖父さまの部屋だし。だから、お祖父さまの部屋の奥に、温泉スペースを増築。西棟の同じ場所には、増築した僕の研究室があるからね、温泉を建て増ししたら、また左右対称の建物になるしね、ちょうどいい。
まず、西棟の僕の研究室と同じ広さになるように石壁で囲んで、北側に少し傾斜をつけて石床を設置。そして東西方向で石壁の仕切りを設置し、スペースを南北半分ずつに。南側の部屋にさらに石壁をプラスして空間を東西二つに区切って、東側は銅タンクと魔石コンロの給湯設備の空間にし、換気窓とともに外の井戸と銅タンクを水道管でつなげて設置して、ただの管を浴槽側へ通す。そして、西側の空間は脱衣所。脱衣所と東棟廊下との間は木製扉、脱衣所から浴室へも木製扉、脱衣所と東側ボイラー室の間は金属ドア。ボイラー室では魔石を燃やすからね、可燃物禁止ね。さらに脱衣所の西側壁には小窓に、はめ込みガラス窓! とうとう初のガラス窓をつけちゃった。窓の手前側には木製開き扉をブラインド代わりに付けておく。そして、脱衣所とボイラー室には屋根を鉄骨銅板葺きでかけ、外の露天空間には石の大きな浴槽を、銅タンク側に壁付け。床面排水の穴を床の一番低いところに開けて、浸透桝に排水処理したら……
かけ流し露天風呂の、完成です!
露天風呂だけど、竹板を石壁の上に乗せたら、天井板になって、いちおう屋根にもなるよ。僕なら、アイテムボックスに出し入れすれば、露天にしたり竹板で屋根を置いたりできるからね。
うん、アイテムボックス様様!
さっそく、魔石コンロに魔石をいくつか詰めてフランベで火を点け、銅タンクに水をちょろちょろちょろと流してみる。タンクがいっぱいになったら、上側に取り付けた配管からオーバーフローしたお湯が浴槽に溢れて出てくるはず!
なんだけどね、僕には次元魔法がある!
早速時間を進めちゃう。やった! 適当な温度、というか少し熱めのお湯が、浴槽にちょろちょろちょろと流れてきたよ!
で、僕には次元魔法がある!
そして、浴槽にお湯がなみなみと溜まって、程よい温度。ちょろちょろが熱くても、溜まっていく間に適温になった。もし、温度を上げたければ、魔石コンロの魔石を増やせばいいし!
魔石も、一度火をつけたら煙も出ず、青い炎でゆらゆらと燃えるのに任せていれば、一か月とか二か月とか燃えっぱなしのエコ燃料だから!
もう手放せないよね!
さ、露天風呂に入ろう!




