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1-73 マイキッチン

魔石問題も、とりあえずひと段落したし、僕は趣味の時間~


僕の趣味といえば、もちろんクッキング~


別邸のキッチンは、最新式にリフォームしたんだ~


洗い物とかは食洗機魔法があるし、野菜とかを洗うのも殺菌消毒魔法使っちゃうし、給食センターレベルのシンクはもう必要ないからね、シンクは半分削っちゃって、できたそのスペースに業務用サイズの開き戸木製冷蔵庫、デカい茶箱でチェストタイプの冷凍庫を設置。うん、これだけで、キッチン感が爆上がりするよね~


そして、かまどって言うか、熱源も魔石燃料対応。灰の処理とかも要らないしね、コンパクトに作り直して、かつ、高さも上げて使いやすくした。今まではかまどだから、低かったのね。だけど今じゃ、ガステーブルみたいな感じ? ご飯もかまどで羽釜使わなくても炊飯器魔法で炊けるしね、でかい寸動鍋用に魔石かまどは一つだけ残して、後は、バーベキューコンロみたいな魔石コンロを6つにしたんだ~ 設置した台の下には鍋収納スペースがあるよ!


それで、燃料庫は前みたいに大きなスペース要らないからね、その部屋は、小窓を設置して、でかいオーブン&七輪専用スペースにしたの。オーブンは熱いし、七輪は煙いからね。でも、七輪は七輪でしか出せない美味しさがあるでしょ? だから、七輪も少し残したの~ 焼き鳥とか焼き魚はね~ やっぱ炭火で七輪に限るでしょ~ 炭じゃなくて煙もちょっと出ちゃう薪だけどね!


そして、かつての冷蔵庫部屋は、食器&食材のパントリーへ変更。真っ暗な部屋だったから、元々ある隣のパントリーとつなげたりキッチンとの間に窓を切ったりして、何とか薄暗い空間、くらいまでになったの。なんかさ、パントリーってアゲアゲな気分にならない? 僕だけ?


『はい、救い主様。残念ながら私めにはわかりかねます』


「ああ、アイちゃん。パントリーってね、食材がいっぱいあるでしょ~ 自分で作った保存食とかさ~ 並べちゃったりしてね~ 瓶に入った保存食とか果実酒とか果実酢とかピクルスとか~ ズラッと並んでいると……あー! この世界にガラス瓶ないじゃん!」




――ピロン ガラス瓶魔法が使えるようになりました。ガラス石があれば、お好みのガラス容器が思いのままです




「んふ、んふ、んふ~ ねね、アイちゃん、ガラス石ってさ、燃料で使い終わった魔石だよね~?」


『左様にございます』


「グフグフ……ん、あれ? 僕、こんな笑い方したこと、あったっけかな……ま、いいや! じゃ、ここらで新魔法『ガラス瓶』そして『コルク栓』 」


ピカッ コトリ


「うほー! 蓋つきのガラス保存瓶が、ズラーッと! やった! でも、ガラス石は半透明なのに、ガラス容器になると普通に透明なのねえ?」


『厚みが薄くなるからでは無いかと愚考致します』


「うん、ま、どうでもいいや! ガラス瓶が思いのままってところが重要だからさ! これでパントリーにガラス瓶をズラズラっっと並べて~ ……うーん、でも薄暗いからね……せっかくのガラス瓶の輝きも、くすんじゃうよ……うーん…………ガラスでしょ、電気の代わりの魔石エネルギーでしょ、それに……金属? ガラス、電気、金属。もしかして、もしかしたら、誰かが何とかうまいことやっちゃったら、電球とかできちゃわない? 金属を極細に加工してグルグルにするとか……難しいのかな……でも、そうだ、初期の電球って竹フィラメントだよね、竹ならできるんじゃない? 電球の中にどんな気体を入れるのかは良くわかんないけどさ、電球、良くない? 独特の柔らかい明かりだしね! 蛍光灯の下だと陰影が無くて料理がまずく見えちゃうし、やっぱ食卓の明かりは電球に限」




――ピロン 食卓の明かり魔法が使えるようになりました。材料があれば食卓の明かりが思いのままです




「……えっとー、この場合の材料って、いま言ったやつ?」


『私めには判然と致しませんが、そのようですね』


「ま、試してみよう『食卓の明かり』 」


ピカッ ピカーッ


「おわおわおわ! 電球じゃん! しかも透明ガラスじゃなくて白い! なんこれ? どういうこと?」


『魔法でございますから』


「ハハ そうだったよね~ ま、いいか~ これってどうやって消すんだろう。えっと、金属の台座に上が電球でしょ……電球ってより見た目はランプに見えるけど……ん? ここにはめ込み式の蓋が……パカ……お、ここに魔石をいれるんだね。それで、このでっぱりを? 押し入れる? お、消えた! んで、でっぱりを引き出す……お、ついた! きっと、このでっぱりが電球部分と魔石部分を接触させたり絶縁したりするんだね! でも、なんで? どうやって魔石からエネルギー吸い出すの?」


『魔法でございますから』


「ああ、うん、そうだった、そうだった。仕組みはわからなくてもいいよね~ 魔法で作れるんだから! さ、これをたくさん作って、家じゅうにばらまこう。いま燭台を置いてある台に、そのまま置けばいいよね~ さ、ピカピカピカピカピカ……じゃ、僕、電球を置いてくるね!」


『救い主様、クッキングをする予定ではなかったのでしょうか』


「あ、忘れてた……ま、照明設置工事の後にしよう。設置工事っていっても、置き換えるだけだけどね! じゃ、アイちゃん、後で~」




***




ふう。思いがけず女神様の祝福が激しすぎて、僕としたことが、取り乱しちゃったよ……


さ、どこまで説明したかな~ あ、パントリーでしょ~ うふうふ そして、キッチンの真ん中はデカい調理台が二つ! 前は石造りだったけど、リフォーム後はね、茶箱タイプの木の上に、大理石風な石の天板を置いてみました~ 下の木箱は横向きにして、中に棚板を設置、調理道具なんかを収納できます! そして、大理石風テーブルトップですよ! とても現代的じゃございませんこと?


『この場合の現代とは、このアタシーノ星(くそぼし)の事でございますか、それとも地球の現代でございますでしょうか』


「ああ、アイちゃん、地球の地球の。僕の生まれ死んだ日本ではね、最近じゃ人工大理石ってのが流行ってたの」


『ご教授、痛み入ります』


「はは、アイちゃんは相変わらずだね~ じゃ、これでリフォーム後のキッチンの紹介も終わったから、クッキングクッキング~」


『救い主様の、御心のままに』


「ねえ、ミチイル~! さっき置いていったこれ、なんなの! いろいろ触っていたら、太陽が部屋の中にできたみたいに、とても明るくなったのだけれど!」


「ああ、母上~ それはね、電球っていうの。燭台の代わりの照明器具だよ! それがあるとね、夜でも明るいの~」


「夜でも明るいの~ってレベルじゃないわよ! これは、とんでもないわ! 部屋の中に太陽が現れるんですもの!」


「うん、そうだね~ でも何でか熱くもならないし、明るいし、便利だから~ いいんじゃない?」


「ええ……ま、それもそうね! さすがわたしのミチイルね、とってもすごいわ!」


「ハハ 僕のスルースキルは、母上ゆずりかも~」


「何を言っているのかわからないけれど、ミチイルは何か料理をするのかしら」


「うん、今日はね、パウンドケーキを作るんだ」


「あら、じゃあ、わたしもご一緒するわ!」


「ふふ では、始めまーす。まず、室温にしておいたバターと同量の砂糖をキッチンロイド魔法でバタークリームにしまーす。そしたら、バターと同量の溶き卵を少しずつ混ぜて行って、ふわふわになるまでキッチンロイドしまーす。その後は、バターと同量の薄力粉をパラパラパラと入れ、上下を返すように練らないようにさっくりと石臼魔法で混ぜまーす。混ざり切る前に、あらかじめ用意しておいた、レーズンとドライリンゴのラム酒漬けを、ドサッと加えて、完全に混ぜまーす。混ざったら、銅で作ったパウンド型にバターを塗って薄力粉をまぶしておいたのに、全部入れちゃいまーす。周囲を少し高く、中心を低くへこませたら、180℃のオーブンに入れまーす。後は小一時間くらい焼いて、こんがり焼けたら、フルーツパウンドケーキの、完成です!」


「ミチイル~ とてつもなくいい匂いがするわ~ お菓子を焼いている間って、とても幸せな気分になるわね!」


「そうだよね~ 匂いだけで美味しい感じがするよね~ 焼き立ては、その時だけの美味しさがあるし。でも、このパウンドケーキはね、焼いてから数日経ったら味が落ち着いて、とても美味しくなるんだよ」


「あら、そうなの? 作ってからしばらく経ったら美味しくなるなんて、ステキじゃない!」


「そうだよね~ 日持ちがするからね、遠くの人とかにもあげたりできるしね~」


「あら、じゃあクッキーみたいに、出かける時のお土産とかにも使えるわね……」


「うん。今はビニールで密閉もできるしね、ま、そうは言っても長期間保存はできないかなあ、ガス袋とかあるとい」




***




――ピロン ガス袋魔法が使えるようになりました。材料があれば、お好みに成型密閉もでき長期間保存可能な包装が思いのままです


 


***




「ええ……もしかして、型抜きとかシーラーも必要ない系な、一体化魔法ができたかも……うん、魔法魔法。考えるな!気合じゃ! ハハハ」


「なにか良くわからないけれど、そのケーキ?が焼けたら、私たちですぐに食べられるのでしょう?」


「うん、4本あるしね、一本はすぐ食べてみようよ。残りはスライスして、後でガス袋に小分けしよう」


「楽しみね~ じゃ、わたしはサロンでお茶の準備しとくわね」




***




「母上、お待たせ~」


「まあ! 白いお皿に綺麗にならべられていて、とてもエレガントね! 形もそろっていてキレイ」


「うん。紅茶の準備はできてる~?」


「もちろんよ! 淹れるわね……コポコポ はいミチイル、どうぞ」


「うん、ありがと。じゃ、母上~ 砂糖の代わりにこれを入れてみて」


「なにかしら……コンポートみたいな感じがするわね」


「うん、材料は同じなんだけどね、ペーストにしてあるの。リンゴと砂糖を石臼魔法でペーストにしてね、濃縮してあるよ。これを紅茶にいれるとね、とても美味しいアップルティーになるよ」


「んまあ! ほんとうだわ! リンゴの皮だけのより、甘くて香りもたっぷりで、とても贅沢な味ね!」


「うん、これはリンゴジャムとか、リンゴのコンフィチュール、とかいうかな。煮詰めてないし、コンフィチュールの方が正確かな」


「こんふぃちゅーる……まあまあまあ! なんてエレガントな響きなのかしら! これはすぐさま貴女会案件ね!」


「ハハ ケーキもどうぞ」


「いただくわ……モグ……まあ! 柔らかいしバターの風味が贅沢だし、中のフルーツが濃厚だし、ラム酒の香りがまた高貴な感じがして、とても美味しいわ!」


「うん、うまくできた~ 残りはカットしてガス袋に入れておくから、誰かにあげてもいいよ~ 多分一か月も二か月も日持ちすると思う」


「まあ、是非そうさせていただくわ! ミチイル、ほんとうにやさしくていい子ね。わたしは幸せよ!」


「うん、僕も母上と二人で暮らして気楽だし、楽しいよ」


「うふふ」


「ハハハ」




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