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1-67 ピザ

山型食パンができた。


パン製菓工場では、毎日食パンを焼き、配給所で希望者に配給しているんだけど、もの珍しさもあってか、常に品薄らしい。ま、でも地球と違って、それほど時間がかからずに少人数でもパンが焼けるからね、慣れれば普通に供給できるようになると思うよ。


レストランでもオープンサンドを出しているようだしね。


まだパンは一種類だけど、食パンは基本の生地だからねー これがマスターされたら、次々教えて行こうと思う。


でさ、パン生地も出来て~ チーズもあって~ ケチャップもあって~ ソーセージベーコンもあって~ オーブンもできたし~ とくれば、もう後は決まってるよね!


そう、ピザだよ、ピ・ザ!


でもさ、ピーマンがないの。僕、ビザの最小構成は、トマトとタマネギと加工肉とチーズと、そしてピーマンなの。ピザソースもケチャップも無くてもいいの。塩コショウとかスパイスソルト味とかでもね、この最小構成の具材さえあれば、僕の中ではピザなの。逆を言えば、この具材がないと、ピザもどきなのね……


だから、どうしてもピーマンの風味が欲しい。


なので、もちろんお取り寄せ。……したんだけど、もちろん無し。


仕方ないから昔にトマトとナスに品種改良した、ナス科の原種植物を再度取り寄せる。そして、トマトっぽくなり始めたら、実が固くて中がスカスカのを選り分けていって、ピーマンに近づけていく。途中で、目に染みるようなツンとした感じのものもでき始めたから、それはそれで分化させて、別個に品種改良。その結果、ピーマンとマイルドなトウガラシが完成。


とりあえず、少量は屋敷の裏庭のお慈悲リンゴ近くに家庭菜園を作って離して植え、後の種は例によって農業部に丸投げ。ピーマンとトウガラシを一緒に植えるとピーマンが辛くなったりするからね、離すの。そうそう、屋敷のお慈悲リンゴの原木は、剪定もしてないのに、いつも常にリンゴがいっぱい、花もいっぱいなの。花は桜みたいな花でね、とってもいい感じ。リンゴはバラ科サクラ亜科だからね。


ん? あれ? もしかして品種改良したら梅とかできちゃったりする?


『私めには判りかねます、救い主様』


「ああ、そうだよね、アイちゃん。ま、地球の女神様のお慈悲だから、そのままにしておこうっと」



さーて、ピザを作ろう!




***




「本日は、お招きありがとうございます! ミチイル様」


「うん、ジョーン、こうやって料理作るのも久しぶりだよね~」


「そうね、以前は私たち三人だけで料理してたものね」


「母上は見てただけでしょ~」


「いやあねえミチイル、私は貴重なご意見を提供していたじゃない!」


「いつも思うんだけどさ、その表現はどこで学んだの?」


「さあ? どこなのかしら……? そういわれてみれば……」


「ま、まあ、別にいいよね! さ、今日はピザを作りまーす」


「パチパチパチ」


「まず、薄力粉に水と油と塩を少し入れて、酵母を足し、キッチンロイド魔法でで捏ねまーす。生地ができたら発酵させているうちに、タマネギとベーコンをスライサー魔法で薄切りに、トマトはスライサーで角切りに、そして新野菜、ピーマンでーす。このピーマンから抽出魔法で種と芯を取り除き、スライサー魔法で薄く輪切りにしまーす。ニンニクを石臼魔法ですりおろしたら、ケチャップと混ぜておきまーす。チーズも用意して、後は生地の発酵待ち~ 待つのだるいしピッカリンコしちゃおうかな」


「ミチイル様、このピーマンはピザ以外にどのように使うのでしょうか?」


「あ、そうだね。じゃ、この時間にピーマンレシピも教えよう。まず、ピーマンから種を抽出したら縦半割にして、そのまま弱火で網焼きしときまーす。そして、種を取ったピーマンをスライサーで縦薄切りにし、油を少し敷いたフライパンで炒めまーす。炒め終わったら火から下ろし、田楽味噌を少量混ぜてー、味噌ピーマンの、完成です! ささ、次は種を取って縦半割にしたピーマンの中に、薄力粉をまぶしまーす。ハンバーグの種を、魔法でちゃちゃっと硬めに作りまーす。小麦粉をまぶしたピーマンの内側にハンバーグ種を詰めまーす。多めに油を敷いたフライパンに、肉側を下にしてピーマンを入れて、蓋をして焦げ目がつくまでじっくり焼きまーす。その間に、網焼きにしたピーマンに万能ダレを塗って、さらに焼きまーす。ハンバーグを詰めたピーマンが焼けたら、皿に盛ってケチャップをかけ、ピーマンの肉詰めの、完成です! そして、網焼きピーマンも同時に、完成です! 最後にもう一品、種を取ったピーマンを縦薄切りにして油を敷いたフライパンで炒めまーす。万能ダレを絡めて強火で汁気を飛ばしたら、ピーマンのキンピラの、完成です!」


「わわわ、すごいです、ミチイル様」


「ほんとうね。もうジョーンの手助けもなくお料理ができるのね」


「ハハ 僕も大きくなったからね~ そしてピーマンはね、米粉の代わりに薄力粉の衣で天ぷらにしても美味しいよ」


「確かに、野菜は天ぷらにすると、コクがでてとても美味しいわね~」


「うん。本当は天つゆがあるといいんだけどね……さ、ピザ生地も発酵したから、これを丸く薄めにパスタマシーン魔法で延ばしまーす。延ばしたらデカいパイ皿に敷きこみフォークで穴を開けて、生地にニンニクケチャップを薄く全体に塗りまーす。その上に、ピーマン以外の具材を散らしまーす。そして、チーズをたっぷりかけて、最後に輪切りにしたピーマンも散らして、高温のオーブンに入れまーす。ささ、焼いている間に、さっきのピーマン料理も召し上がれ」


「これは、どれも新しい味ね。とても美味しいわ」


「ほんとうですね、マリア様。ピーマンに少し風味があるので、大人の味に感じます」


「そうだね、ピーマンは子供が嫌いな野菜の二大巨頭だから~ ささ、ピザが焼けたから、ダイニングで食べよう!」


「んまあ、とってもとっても美味しそうな匂い!」


「ほんとうです! チーズが焼ける匂いなんでしょうか」


「うん、そうだね。チーズは焼くとね、とっても美味しいの~ さ、一切れお供えもしたし、熱いうちに食べよう。いただきまーす!」


「んまあ! 何かしらこれ! チーズがトロトロ! 貴婦人が食べるのには少々難しい気がするけれど、それでも齧りつきたくなるわ!」


「モグモグ……ほんとうれす」


「ワインが欲しくなるのは、なぜなのかしら!」


「ハハ ピザはお酒と相性がいいしね、とてもはっきりした味の食べ物だし、これでパンも肉も野菜も取れるからね、これだけで食事になるの。朝ごはんには無理かも知れないけど」


「そうねえ、朝からはあれだけれど、忙しい昼には、これだけササっと食べられるし、楽かも知れないわね」


「そうですね、これだけ用意しておけば、後は勝手に食べてもらうこともできますね」


「まあ、冷めたら美味しくないんだけどね、オーブンに軽く火を残しておいて、後で食べる人が少し温めて食べたらいいと思うよ。ただ、レストランとかで出したら、手間が大変かも知れない」


「ですが、とても美味しいですし、検討してみたいと思います」


「うん、頑張って~ そして今日は~ デザートもご用意してます! 母上もジョーンも、サロンでお茶の準備をして、待ってて~」


「あらあら、もうお腹がいっぱいなのだけれど、デザートは別腹というものね」


「そうです! デザートは、どんなにお腹がいっぱいでも食べられます!」


「ハハ じゃ、僕は用意して持って行くからね~」




***




さて、デザートと言ってもね、オールスパイスをちょっと使っただけのリンゴのコンポートなんだけどね。小麦粉使ったお菓子とか、まだろくに作ってないし、今は満腹の後だからね~


さて、白い器に冷やしておいたコンポートを盛って~ 生クリームもラム酒入れて八分立てにして~ アレも持って~ トレーに乗せて慎重に運ぼう。大きくなったとは言っても、まだ子供だからね~


あ、お供えするのも忘れずに~




***




「お待たせ~」


「あら、ミチイル、その白いお茶碗みたいな食器は、初めてみるわね」


「うん、工業製造部でティーセットは作られるようになったでしょ? それと同じなの。形が違うだけで。これは汁気の多い食べ物用に作ったんだ~」


「まあ、中身は何かしら~」


「うん、先に紅茶の用意をしよう。練乳あるよね?」


「はい、ここにあります!」


「うん、ありがと。では、普通に紅茶を入れる時に、これも一緒にポットに入れて~ はい、ティーカップに注いで~」


「まあ、お紅茶から何か独特な香りがするわ」


「そうですね、複雑な匂いがします」


「うん、それでね、カップの紅茶に練乳を好きなだけ入れてみて~ そして、この白磁のデザートボウルの中は、リンゴのコンポートでーす。生クリームを好きなだけかけて食べてね」


「まあ、リンゴを煮たものよね? この前のアップルタルトとは違って、見た目が透き通ってて綺麗だわ!」


「ほんとうですね! アップルタルトも貴女会でいただきましたが、とてもサクサク濃厚でおいしかったです!」


「うん、アップルタルトと中身は同じ系統だけど、仕上げが違うの。とてもあっさりしていて満腹でも食べられるよ。さあ、召し上がれ!」


「いただきまーす」


「んまあ! アップルタルトはほんのり温かくてほろ苦くて濃厚だったけれど、コンポートは冷たくて見た目もキレイであっさりしているわ!」


「でも、生クリームと一緒に食べると、とてもコクがあって、おいしいです!」


「あら? このミルクティーは何か鼻に抜けるような香りがするわ。何かしら」


「うん、オールスパイスっていうスパイスだよ。これはねチャイティーっていう、飲み物だね」


「これはこれで、なにか神秘的なお味ね」


「はい、男の方とかが好みそうです」


「うん、スパイシーな風味だからね。本当は微妙に作り方は違うんだけど、この方が簡単だしね、これで充分」


「たまには、こういうお紅茶も目先が変わっていいわね! 早速貴女会に加えましょう!」




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