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1-66 新工場

僕は、いろいろ気を使うこともやめて、ろくに人にも会わず、母上と別邸で日々を送っている。


でも、とりあえず最低限、ジョーンに炊飯器魔法を、ピーター爺に天ぷら籠魔法と蒸籠を、トム爺にティーセット魔法を、ドン爺にパイ皿と石窯の作り方を教えた。


トム爺もドン爺もピーター爺もみんな元気だったよ。みんな北部で暮らしているんだって。北村も人口が増えて本当に村になっているらしい。そして、北の石拾い場から、手あたり次第にそこら辺に落ちているものを、石に限らず、なるべく多く別邸まで運んで欲しい、とお願いした。そのうち届くと思う。


そういえば、海産部のジョン爺は元気かな。昆布も任せっきりだけど、何も言って来ないから大丈夫だろう。今じゃ塩も、抽出魔法で簡単に大量生産してるしね、海ではそれほど大変な思いはしてないはず。


お慈悲リンゴも、一か月の法則にしたがって、順調に収穫が始まった。とりあえずは切って食べるだけなんだけどね。でも、イチゴに続く貴重な果物だから、みんな好きみたいよ。実がでかいから、一個あれば10人以上でたくさん食べられるしね。


オールスパイスは、出来すぎちゃってるから一旦保留。もともと大量に使うものでもないしね。


そうそう、カンナを筆頭に服飾工場では服の生産がハイペースらしい。男はズボンとシャツ、女性はズボンの人とシンプルなスカートの人が増えた。上はブラウスね。でも、色がね、一色だけだから、なんか何処かの共産主義の国民全員が着る服に見えちゃって、なんだか微妙。


色とかあるといいんだけど……


ま、それより先に、パン製菓工場を作ろう。


新メニューは全然お披露目してないんだけどさ、取り急ぎパンを作れるようにしないとね。




***




「とりあえず、給食センターの定型パターンで建物を5つ、と。そんで、発酵成型などの作業スペースと設備もそれぞれつけて、そして大量のオーブンを別室に集約、と。オーブンは熱いからね、室温が高くなっちゃうから。梱包場に、入出荷センターに、倉庫でしょ、そして、正面に配給所、裏に福利厚生施設、と。ま、こんなもんかな~ 後は道具類を充分な量ピカピカピカピカ……っと。うわー、なかなか壮観だよねえ?」


『はい、救い主様。さすがでございます』


「うん。もうすっかり建物を建てるのは慣れちゃったもんね~ 特に魔力も問題ないし~ そういえば、僕の魔力器官は、どのくらいに育った~?」


『はい! 救い主様の魔力器官は、さらに想定外の成長をなさいまして、今や、なんと、ゴマ粒くらいの大きさでございます』


「うーん、馬鹿にしてる? 訳じゃないんだよねえ」


『そんな、救い主様を馬鹿にするなど! 救い主様のご不興を頂戴してしまった以上、この私め、そこらの豚に』


「あーあー 冗談だよ、冗談! アイちゃんって、ほんと豚が好きだよね~」


『魂が豚に入り込むのは、地球の聖書では定番の逸話でございますので』


「あ、そうなんだ~ でも、芥子粒が二粒だったんだから、ゴマ粒でも、前と比べたらそりゃ大きいよね、ハハ」




***




さて、パン製菓工場は完成し、パン作りを教える事にしたんだけど、今までみたいにジョーンにだけ教えていたら、後でジョーンの負担が大きすぎるからね、テレビ番組の収録みたいに、キッチンスタジアム方式で料理を教える事にしたよ。


料理を覚えたい人たちは、キッチンに隣接する作業所で、声も発せず質問もせず観ているだけ。僕は、観客は居ないものとして扱う。ま、生徒は本当にテレビを観ている感じ? これでも地球を思えば全然大丈夫だよね、たぶん。


後は、ジョーン厳選のアシスタントを数名キッチンに配置して、手足として使うの。アシさんを足に使う……いや、なんでもないよ。


ま、僕としては、ジョーンと母上と一緒に料理を作っていた時と、何ら変わりない。テレビの収録と思えば、観客がいても何てことないしね~


そして、中央工業団地の一斉休日がやってきた。




***




「さあ、今日はいよいよ、パンを焼きたいと思いまーす」


「パチパチパチザワザワザワ」


「まず、酵母を作りまーす。今まではマッツァナンにレーズン酵母を使っていましたけど、リンゴでも酵母が作れまーす。スライサー魔法でリンゴを皮ごと細かく切って、砂糖と水と一緒に甕に入れまーす。後は時々混ぜながら一日くらい置けば、リンゴ酵母の、完成です! 今日は時間が無いので醸造スキルでピッカリンコ。さて、続いては、強力の小麦を石臼魔法で粉にしまーす。これは穀物工場で粉にしてもらったのを仕入れるようにしてくださーい。それを、一番大きなボウルに入れて、水と菜種油と塩を適量を足し、リンゴ酵母を入れたら、新魔法、キッチンロイドで捏ねまーす」


「はい! ミチイル様!」


「ジョーン、どうぞ」


「そのキッチンロイド魔法では、どのような事ができるのですか?」


「はい、良い質問ですね。キッチンロイドでは、卵や生クリームの泡立て、パンや麺の生地を捏ねる事ができます。これらのレシピは、後々ご紹介したいと思います」


「ありがとうございます」


「はい、キッチンロイドでパン生地を捏ねる時の仕上がり目安は、生地を少し取って伸ばしてみまーす。ちょっと生地を少しくれる? ありがとう。このように、薄ーく伸びれば捏ね上がりでーす。途中でブチっと切れてしまうなら、もう少しキッチンロイドしてくださーい。パン生地が捏ねあがったら、布巾を濡らして上にかけて、半時くらい発酵させまーす。もちろん、正確に時間は計れませんから、生地が倍くらいに膨らんだら発酵完了でーす。今日は時間が無いので、醸造スキルでピッカリンコしまーす。さ、このように大きく膨らみまーす。次は、発酵が終わった生地を上からやさしく押して、ガス抜きをしまーす。そうそう、そんな感じ。この時、キッチンロイド魔法は使わないでくださーい。パン生地が台無しになりまーす」


「はい! ミチイル様!」


「ジョーン、どうぞ」


「なぜキッチンロイド魔法を使っちゃダメなんでしょうか?」


「いい質問です。パン生地は必要以上に捏ねると、生地が傷んで伸びと弾力がなくなるからです。捏ねるのは発酵前の最初だけ、後はなるべく生地を傷ませないようにやさしく扱ってください」


「かしこまりました」


「ガス抜きが終わったら、スライサー魔法で生地を切り分けまーす。ここに、四角い銅の食パン型がありますので、その型の内側に薄く菜種油を塗りまーす。この型に入れた時に、型の三分の一程度の量になる感じで、生地を切り分けてくださーい。今日は10等分かな。切り分けた生地を、型の横幅に合わせてスライサー魔法で3cm厚くらいに長く伸ばしまーす。そして、その伸ばした生地を端っこからクルクルと丸めて型に一つずつ入れまーす」


「はい! ミチイル様!」


「ジョーン、どうぞ」


「なぜ生地を伸ばしてクルクル丸めるのでしょうか」


「非常に良い質問です、ジョーン。生地を一度伸ばして丸めることで、生地に目ができます。この目が、弾力を生むのです。もしパン生地に目が無かったら、ただ膨らんでヘニョリとしたパンになってしまうのです。ですから、薄く伸ばして丸めます」


「かしこまりました」


「はい、生地を型に入れたら、そのまま二回目の発酵を行いまーす。二次発酵と言いまーす。パン生地が乾燥しないように、下にお湯を張ってあるこの棚、ホイロと言いますが、このホイロに生地を入れた食パン型を入れて扉を閉めまーす。四半時くらい経つと、パン生地が食パン型の上近くまで膨らみますから、それで二次発酵は完了でーす。例によって今日は、醸造スキルでピッカリンコしまーす」


「ミチイル様、オーブンの用意が整っています」


「ありがとう。さあ、二次発酵が済んだら、型を、180℃に温めたオーブンの中に入れまーす。新魔法のオーブン魔法が使えるようなら、180℃と念じてオーブン魔法を使ってくださーい。使えなければ、経験と勘でオーブンの温度を見極めてくださーい。オーブンに入れたら、オーブンの横蓋をはめて、半時から1時間くらい焼きまーす。例によって時間が計れない場合は、半時くらいしてから、オーブンの中を見てみます。オーブンの中の型から大きくパンが盛り上がり、綺麗な茶色になったら焼き上がりでーす。今日は、焼き上がりまで少し時間がありますから、パンと付け合わせる具材を用意したいと思いまーす」


「はい! ミチイル様!」


「ジョーン、どうぞ」


「パンに付け合わせる具材とはなんでしょうか?」


「はい、いい質問です、ジョーン。このパンは、山型食パンというのですが、これはマッツァナンと同じような食べ方をします。ですので、バターや砂糖をかけて食べても良いのですが、食事としてパンを食べる場合、他の料理を合わせると、栄養バランスが良くなるのです。ですから、なるべく他のものと一緒にパンを食べるようにしてください」


「かしこまりました」


「はい、ではまず、トマトとキュウリをスライサー魔法で薄く切っておきまーす。キュウリには軽く塩を振っておきまーす。次に、鶏もも肉を照り焼きにしまーす。そして春菊の葉っぱを洗ってちぎっておきまーす。後は鶏肉が焼けたらスライサー魔法で薄く切っておきまーす。次に、卵を溶いて、塩と牛乳を入れ、バターを溶かしたフライパンで小さめ1cm厚程度のオムレツを作りまーす。最後は、クリームシチューを牛乳多めにトロミも濃くして作っておきまーす。後は、バターを冷蔵庫から出して、やわらかくしておけば、具材の完了でーす」


「ミチイル様、パンのチェックをお願いします」


「はい。パンはとても美味しそうな色と香りに焼けました。中まで火が通っているかどうかを確認するためには、パンの中心に竹串を底まで刺して静かに抜きます。焼けていれば何もついてこず、焼けて無ければネバッとした生地がついてきますので、それで判断してくださーい。オーブンで焼くものについては、すべて、この方法で焼けたかどうか、確認できまーす」


「ミチイル様、オーブンから型を出し終わりました」


「はい、ありがとう。オーブンから型をだしたら、すぐに、ミトンをはめて型を逆さにし、型からパンを出しておきます。型に入れたままにしておくと、中で湯気の湿気が悪さをして、クニャクニャパンになりますので、注意してくださーい。さ、パンが冷めたら、山型食パンの、完成です!」


「ミチイル様、先ほどの具材を並べ終えました」


「はい、ありがとう。では、食パンを1cmくらいの厚さにスライサー魔法しまーす。これで、一つの山型食パンから10枚取れますから、10枚切りといいまーす。パンの厚みは自由に変えて大丈夫でーす。これで100枚のスライス食パンができました~ 今ここには……50人くらい居ますから、一人二枚ずつパンを取って半分に切り、先ほど用意した具材を、半分にしたパンに一種類ずつ乗せて、自由に試食してくださーい。クリームシチューはパンに付けて、オムレツはケチャップを付けて、トマトとキュウリはドレッシングを少しかけてパンにバターをたっぷり塗って、照り焼きチキンと春菊は一緒に乗せて、はい、これでオープンサンドの、完成です! では、いただきまーす」


「 !!!!! 」


「あ、料理を作ったら、必ず神棚にもお供えしてくださいねー」




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