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1-62 トリセツ

「お姉様~ 助けて~」


「あらあら、今度はまたどうしたのかしら? ついこの前に救い主をあげたばかりじゃないの」


「うん、それはありがと~ お姉様がくれた魂はね、とってもいい仕事してるわ~」


「あら、そうなの?」


「うん! あたしの星でもね、もうオムライスが食べられるようになったのよ!」


「あらあら、それは随分早いじゃない。良かったわねえ」


「えへへ! それでね、お姉様。オムライスの味が、イマイチ足りないの~」


「……私には良くわからないけれど、ああいうソース?とかにはたくさん材料が必要らしいわね。スパイス?とか」


「それよ! なんかあたしの所の特級天使も、そんなことを言っていたわ!」


「それなら、スパイス?とかの文化が成熟するのを気長にお待ちなさいな」


「いやよ! それに、あたしの星にはスパイスとかほとんどないのよ~ 無いものは成熟し様がないでしょ~?」


「あらまあ、それはそうね……でも、どうして無いのかしら? 普通、色々取り取り植物も動物も果物も資源も用意するものなのに。あなたも習ったでしょう?」


「う、うん、だからあ~ お姉様の所の食材を、分けて!」


「まったく……何が、だからあ、なのかしら……」


「お姉様しか頼れないんだもん。うちの特級天使が言うにはね、あたしの星には材料が足りないんだって! だからお姉様からもらった魂も、とても苦労してるんだって! だからあ、お姉様の星の食材、ちょうだい!」


「あらあら、まったくしようがない子ねえ。まあ少しなら分けてあげても構わないけれど、あなた、自分の星に郵送する星神力が、その郵送料を支払える位ちゃんと貯まっているのかしら?」


「そ、それは……」


「あなた、私の星に来るのだって、星神力が必要でしょう? それに、ここにこうやって滞在するのにも、力を消費し続けるでしょう?」


「そ、それは大丈夫よ! ここに来るのくらいは全く、ちっとも、これっぽっちも問題ないわ。ただ、食材をあたしの星に送るのは……どうなんだろう」


「あら、あなた、きちんと星神力を管理していないのかしら? どのくらい使ったか、きちんとしておかないといけないわよ? ただでさえ、星を造るのにも力を使ったのだし、多少は公共無次元力を拝借したとしても、後で返さないといけないのだから」


「わ、わかっているわ、お姉様。それくらいは、私だって習ったもの! でも、食材を送るのは、よく考えないとダメかも……でも、特級天使と……約束しちゃったし……?」


「……そうね。それなら、スパイスの種を一粒だけ送ったらどうかしら? 郵送料も少なくて済むだろうし。 あなたの所の特級天使もスパイスって言っていたのでしょう?」


「うん、そうね! そうするわ! でも、材料もうんたらかんたらって言っていたかな? 言っていたような? チラッチラッ?」


「なあに、その、チラッ、とかいうのは……全く、本当に末っ子でわがままなんだから、仕方のない子ね。それじゃあ、スパイスは自分の力で送りなさい、というか持って帰ったらいいんじゃないのかしら? 種持ち込みの分の星神力は普通に必要にはなるけれど……後は私の力で、ほんのすこしだけ、あなたの星に食材を転送しておいてあげるから。これからは星神力をきちんと管理するのよ? いいわね?」


「うわー! さすがお姉様! さす姉! お姉様~ありがと! 大好き! ずっとずっと憑いていくわ!」


「なにか変な意味に聞こえるのだけれど?」


「うん、大丈夫! 何も間違ってないから、心配しないで~ じゃ、郵便ビューローに行ってあたしの星にササっとスパイスを郵送して、また直ぐに戻ってくるから~ あ、お姉様、戻ってきたら即、読みたいから、ずっと続きが気になっている『転スロ』の新しい巻を用意しておいてね!」


「ええ? なんの事をいっているのか、ぜんぜんわからないのだけれど? 転スロ?」


「いやあねえ、お姉様~『転生したらスロットだった件』よ! スロットの絵柄が揃ったら、お菓子がじゃんじゃん出てくるっていう、血沸き肉躍る一大スペクタクルな話なのよ! じゃ~お願いね!」


「ちょっと自分で持って行き……あら、もう居ないわ。まったく、星間郵送するだけでも星神力をたくさん払わないとならないのに……しようのない子ね。ま、あちらには適当に食べ物をほんの少しだけ転送させておきましょう。困っているのは私が送った魂でしょうし……それくらいはしてあげてもいいわね。さあ、今回は誰を使おうかしら……うふふ」




***




――ピロン お荷物をお届けに上がりましたが、お留守のため持ち帰りました。ご確認ください




***




「えっ? なんか言った?」


『私めとしては何も言っておりません、救い主様』


「うーん、いまロイド氏の声が聞こえたっていうか……?」


『なんと言っていたのですか?』


「宅配便の不在連絡メールみたいな……感じ……?」


『では、そうなのではないでしょうか』


「え? 宅配便とか不在連絡とか、そんなのあるの? っていうか宅配便って、何? どこから? 誰に? っていうか、なぜ棒読み?」


『救い主様にメール連絡があったのなら、あて先は救い主様ではないかと愚考致します』


「ああ、それはそうだね……って、ご確認くださいってさ、どこへどうやって確認するのさ?」


『私めには判りかねますが、お荷物を受け取ればよろしいのではないでしょうか』


「え? でもどうやって? ……ん? 荷物を受け取る? ……なんかモヤモヤするんだけど……あーーっ! もしかして宅配ボックス?」


『かも知れません』


「あ、そうだよ、僕、この別邸の僕の部屋に宅配ボックス作ってないよ! お取り寄せとか全然しなかったから、すっかり忘れてた!」




***




「ミチイルが、すごい勢いで自分の部屋に走って行ったわね。ズボンを見せようと思っていたのに……あら? 裏庭に大きな木が生えているみたいね?」


「左様でございますね、マリア様」


「またミチイルが新しい木でも植えたのかしら……」


「救い主様のなさる事ですから」


「そうね。何か赤くて大きな実がなっているけれど……」


「まあ、なんでございましょうねえ」




***




「大公屋敷にあった宅配ボックスは解体しちゃったままだったもんね~ さ、漬物石!」 


ピカッ ドゴッ


――ピロン お荷物が届きました


「 ? これは……何かの種?」


『そのようですね、救い主様』


「何の種なんだろう……一粒しかないけど」


『植えてみてはいかがでしょう』


「うん、そうだけど……そもそも、誰から? 得体の知れない種とか、植えないでしょ、普通!」


『……コホン……ええっと……私めに取り扱い説明書が届いております』


「え? この種の?」


『左様でございます』


「誰から?」


『送り主は……あの女神(くそ)のようです……ックソが』


「えっ?」


『……この種は、オールスパイスというスパイスの種、だそうでございます』




***



――アイちゃんへ オールスパイスを特別に送っておいたわ! オールスパイスっていうくらいだから、きっと全てのスパイスの詰め合わせな種のはずよ! と~っても貴重な種だから一粒だけだけどね! これでよろしくやっといて! 美しいあなたの女神より 追伸 お姉様が食材を送ってくれていると思うわ――




***




「ふーん、オールスパイスか~ 確かに色々使えるかな~ ケチャップに入れると、それだけで美味しいケチャップになるしね~ あ、たっぷり使えばウスターソースとかなら作れるかな~ あ、ウスターソースができたら、それをチョメチョメしてとんかつソースもどきもできるかも? ん?チョメチョメって、何?」


『存じません、救い主様』


「ああ、アイちゃん。とりあえず、それなりには役に立ちそう……かな? 今は山椒しかないからね、スパイスが一つでも増えたら、それだけでも全然違うよね! さすが女神様、慈愛に溢れているよね~ あ、良く考えてみたらスパイスの種類が倍になったんじゃない?」


『ああ! 救い主様! なんと!』


「どうしたの? アイちゃん。なんか棒読みだったり、ヅカっぽい感じになったり、忙しいね今日は ハハハ」


『失礼致しました。あと、地球の女神様からも何か食材が届くようでございます』


「え? そうなの? 僕、地球の女神様……って、え?地球も女神様なの? いや、僕、お会いしたことが無いんだけど?」


『救い主様が違う星で大変なご苦労をなさっておいでですから、慈悲を賜ったのではないかと思料致します』


「そうなんだ~ 感謝が届くかどうかわからないけど、ありがとうございます! 地球の女神様」


『きっと届くと思います』




***




「……でさあ、地球からのお慈悲は、いつ頃お届け予定なのかな~?」


『存じません』


「そうなの? アイちゃんって何でも知ってるから、てっきりもう知っていると思ったけど」


『余所の神のなさる事については、私めの管轄外でございます』


「そっか、そりゃそうだよね。ふむ、こうやって宅配ボックスを眺めていても、仕方ないよねえ。ま、そもそも留守中に荷物を受け取るボックスなんだから、もう見てなくてもいいよね?」


『はい、何も問題は無いと愚考致します』


「うん、じゃあ母上たちの所に行こうっと。ズボンの約束してたもんね~ 女神様系を優先しちゃったけどさ、ずいぶん待たせちゃったかも~」




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