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1-57 ゴミ食材

今日は、給食センターの定休日。


久しぶりに給食センターに来たよ。




***



「さて、本日は久々の、新メニュー開発会議を執り行いまーす」


「パチパチパチ」


「さ、今日は今まで捨てていたゴミを食材として使いまーす。まず、あらかじめ用意してもらった、肉を取った後の鶏ガラを、綺麗に洗いまーす。寸動鍋に鶏ガラをいっぱいになるまで入れ、鍋の鶏ガラがかぶるくらいの水も入れまーす。そして、アオネギの捨てるような部分と山椒の粒を数粒とニンニクを丸ごと一個入れまーす。分量は適当でーす。そしてこれに圧力鍋魔法を長めにかけまーす。強い魔力で時間をかけすぎると濁ってしまうので、気をつけてくださーい。スープに色がついて鶏ガラが本当にゴミのようになったら、塩を薄味になる程度、入れまーす。これで、鶏ガラスープの、完成です! 中の具はゴミなのでコンポストで捨ててくださーい」


「ささ、そして、鶏ガラスープと全く同じ作り方で、これまた捨てていた豚の骨を用意しまーす。そして鶏ガラスープと同じように圧力鍋魔法で煮まーす。これは最強の魔力で好きなだけ圧力鍋しても大丈夫でーす。もし、かまどで長時間煮る時は、臭いがすごいので気をつけてくださーい。スープが牛乳のようになったら、豚骨スープの、完成です! 鶏ガラスープも、豚骨スープも、残ったら甕に入れて冷蔵保存してくださーい」


「ミチイル……これは……ゴミでしょう? ゴミよね? だってゴミの臭いがするもの」


「……そうですね。とんでもない臭いがします……口に入れる食べ物の臭いではないと思います!」


「ハハ 母上もジョーンも、辛辣~ とりあえず、鶏ガラスープは臭いが少ないから、ちょっと味見してみて」


「……じーっ」


「大丈夫だって! じゃあ、鶏ガラスープを小鍋に入れて、火にかけてくれる? そして、醤油をちょっと足して、ニラの微塵切りも少し入れて、最後に溶き卵を回し入れて、器に盛ってね。これで、ニラかきたまスープの、完成です!」


「あら? これはケダモノ臭くないのね」


「本当ですね。では、いただきます」


「 ! これがあのゴミなのかしら? こんなに美味しいスープは初めてだわ!」


「そうですね、とても味が深くてコクがあります。昆布の出汁とは全然違いますね」


「でしょ~? この鶏ガラスープはね、出汁として使えるんだよ。シチューの出汁とか粕汁の出汁とかね。スープを取る時に昆布を入れておいてもいいよ」


「なぜ今まで捨てていたのかしら?」


「うん、圧力鍋魔法があるとはいえね、本当は何時間とか丸一日とか、長時間煮込むものなの。だから燃料が使い放題じゃないとね、難しくて……魔法を使える人が多くなったとは言ってもね、圧力鍋魔法は継続して魔力を注がないとならないでしょ? 途中で魔力が少なくなっちゃったら、煮ている最中のものが、今度こそゴミになっちゃうから。燃料があれば、続きはかまどでできるもん」


「なるほどね~ 何事も順序というものがあるものなのね」


「そうですね。ミチイル様の思慮深さには、いつも驚かされます」


「ハハ じゃ、こっちの豚骨スープの方を味見してみて~」


「……ミチイル、実は私の事が嫌いなのかしら?」


「いや、大好きだけど」


「じゃあ、なんでこんな嫌がらせを」


「違うってば! 豚骨スープはとても美味しいんだよ。ラーメンとか……あ、まだ小麦粉使ってないもんね……豚骨スープは、麺が作れてからにしよう。うん」


「……ホッ」


「豚骨スープにはコラーゲンがたっぷりだからね、飲んだら肌が若返ったりするんだけど、ま、それはもっと後にしよう」


「な! な・ん・で・す・って?」


「ん? だから豚骨スープは美味しいんだって」


「いえ、その後に何と言ったのかしら?」


「え? コラーゲン?」


「その後よ!」


「肌が若返る?」


「それよ! これを飲めば……お肌が……いいわ。飲むわよ。湯呑に少しだけちょうだい!」


「あ、じゃあ、味噌を溶かして入れよう。味噌とかは臭みも減らしてくれるからね。ジョーン、味噌汁にするくらいの味噌を入れてくれる?」


「かしこまりました」


「はい、じゃあ、召し上がれ!」


「う……う……」


「無理しなくてもいいんじゃない? 母上」


「いやよ! ジョーンも一緒に飲むわよ!」


「……か……かしこ」


「いいから、早く! さ、せーの」


「……? あら? それほど酷いものではないわね」


「……本当ですね。ケモノ臭いですが、吐きそうになるほどではありません」


「ハハ なかなか酷いね! ま、無理しなくていいと思うよ! じゃ、次! 次は~ ジョーン、冷蔵庫に余った漬物とか佃煮とかある? うん、じゃあ少しずつ持ってきて。そして味噌も少しね。さらに、アオネギの微塵切りとセリの微塵切りも用意して、ご飯あるよね? うん、ご飯を茶碗に盛って、お茶の葉もってきてくれる? お湯を急須に電気ポット魔法で~」


「ミチイル様、お茶です」


「ありがとう。じゃ、急須に茶葉を入れてっと。ん? なんか妙に色が悪い茶葉だね」


「あ! そちらは古くなって捨てようと思っていた茶葉でした。すぐに新しいのを」


「うん……ちょっとお茶を確かめてみよう。 トポトポ……ん! これは紅茶の色だけど……フウフウズズッ……おー! 紅茶の味!」


「ミチイル、今日はゴミばかりね……色がおかしくなったお茶はコンポストしないとだめよ」


「違うの! これは発酵してるの! お茶を発酵させるとね、紅茶っていう飲み物になるんだよ。この世界じゃできないと思っていたけど、さすが召喚物! 何かの菌もついてきたかも! 紅茶はね、貴婦人の飲み物なんだよ~」


「なんですって! 貴婦人の?」


「……飲み物?」


「うん。色も綺麗なんだよ、本当は。白い器とかあれば、綺麗な色に見えるんだけど、この赤茶けた陶器だと、イマイチだよねえ」


「でもミチイル様、確かにいつものお茶の香りとは違いますが、これはこれで良い香りに感じて来ました!」


「うん、とりあえず、砂糖入れて飲んでみよう。湯呑に紅茶?を注いでくれる? そして砂糖をスプーン一杯入れて飲んでみよう」


「あら? これはとても香り高いし、甘いのにサッパリしていて美味しい気がするわ。さすが、貴婦人の飲み物ね」


「本当ですね、これはこれで番茶とは別に飲みたくなる味です! 貴婦人にふさわしいです!」


「でしょ~ あ、砂糖の代わりに練乳を入れたらミルクティーになるよ。試してみよう」


「あらあら? これは砂糖だけよりもまろやかで、とても美味しいわ。さすが貴婦人の飲み物ね」


「本当です! わたしはとても美味しいと思います! 貴婦人にふさわしいです!」


「うん、完全に紅茶だね。お茶の葉を収穫して乾燥するときにね、乾燥させる前に茶葉に圧力鍋魔法を軽くかけて加熱してから干物魔法で乾燥させるお茶と、今までみたいにそのまま乾燥させるお茶に分けて、作ってもらおう」


「それは私の管轄だから、指示しておくわ」


「うん、よろしく、母上。それじゃ、新鮮な番茶を、さっきのご飯の上からかけて、残り物のおかずや漬物といっしょに、お茶ごと食べれば、お茶漬けの、完成です!」


「あら、お茶とご飯って一緒に食べても美味しいのね」


「本当です~ 冷たくても美味しいかも知れませんね」


「うん。朝に炊いた冷ご飯とかに熱いお茶をかけて食べたりするよ。何も食事の用意が無い時とか、急ぎの時とか、夜にお腹が空いたときにちょっと食べるとか、覚えておくと便利。特に平民には助かる料理かも知れないね」


「はい。平民に伝わるようにしたいと思います」


「じゃ、次~ ハンバーグを焼きまーす。焼けたら万能ダレを入れて、照り焼きハンバーグにしまーす。完全に完成する前に、いままで使って来なかった、チーズを適量乗せて、蓋をしてチーズが溶けるまで焼きまーす。皿に盛り付けたら、照り焼きチーズバーグの、完成です!」


「あら? チーズが流れちゃっているわよ?」


「うん、これで合ってるよ。照り焼き味でも、塩と山椒の味でも、ケチャップ味でも美味しいよ」


「んま! チーズというものは濃厚でまろやかで美味しいのね!」


「モグモグ……ほんとうれす」


「んじゃ、次~ 鶏ガラスープと牛乳を同量鍋に入れて火にかけまーす。塩でスープの味にしまーす。アオネギを微塵切りにしておきまーす。鍋にご飯を入れまーす。ご飯が柔らかくなったら、チーズも入れまーす。さっと煮て、器にもってアオネギをかけたら、チーズリゾットの、完成です!」


「まあ、ご飯って、こんなにドロドロになるものなのね」


「うん、おかゆって言って、味も具も何もない米だけで、こんな風にもできるよ。お年寄りとかには食べやすくていいかも知れないね」


「ミチイル様、このシチューのようなご飯は、とても美味しいです。チーズがトロトロしています!」


「んまあ! 本当だわ! チーズがコクがあってまろやかで、お腹もいっぱいになるわね!」


「うん、チーズは栄養価が高いからね。少しだけ食べてもたくさん栄養があるんだよ。バターも練乳も牛乳もチーズも、乳製品は全部栄養があるし、似たようなまろやかなコクがあるからね。本当はもっともっとチーズの料理があるんだけど、小麦とオーブン待ちなの」




***




――ピロン オーブン魔法が使えるようになりました。オーブンの温度管理が思いのままです




***




「うん。オーブンは早くつくろう。オーブンっていうか、石窯? になるとは思うけど」


「何かわからないけど、楽しみね」


「本当ですね、マリア様」


「じゃ、次~」


「ちょっと待ってミチイル! 私たち、もうお腹いっぱいなのよ!」


「うん、じゃ、次回にしよう~」




***




お開きになってから、豚骨スープは母上とジョーンで分けたみたい。母上は、後で誰かに別邸に運ばせて、夕食後とかに独りで飲んでるっぽい。


男爵家に豚骨スープを持って帰ったジョーンは、夜、カンナとキッチンで豚骨スープを飲もうとスープを温めていたら、大公家に魔獣が出た! と大騒ぎになったらしいよ。


やれやれ。




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