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1-56 10歳になった

中央工業地帯の構想を練りに練って日々を過ごした。


考えることがいっぱいでね、後で変更するのも、それなりに大変だからね、よく考えることにしたの。


そして、僕と母上は別邸に引っ越した。引っ越しと言っても、持ち物なんてないからね。服しかないもん。家具とか寝具とかは置いていくし。公国は共産社会だからね、個人の財産とかも無いし、ほんと、個人の持ち物が無いの。大公家の僕でさえそうなんだから、平民の引っ越しなんて、家族全員その日のうちにササっと終わると思う。南村があっと言う間に過疎化する訳だよ……


別邸は、母上渾身のインテリアであふれたよ。インテリアと言ってもね、家具とかだけど。いわゆる芸術品とか、この世界には無いからね……ん? 無いのかな。エデンの状況はわからないや。家具は、年輪が無いから木目も無いつるっとした竹材製だけど。でもね、飾りも彫刻も無いけど表面がしっとりつやっとしてるの。貴重な椿油を木肌に塗ったみたいよ。ニス、までは行かないけどワックスだよね。色も落ち着いた感じになって高級感が漂ってる。


各自の部屋にはベッドとクローゼットと椅子とテーブル。応接室には応接セット。ローテーブルとソファーね。ソファーは、木のベンチに羽毛入りで硬めの長いクッションが取り付けてあるだけだけど、今までになかった逸品。今までなかったと言えば、クローゼットもだね。そもそも収納する服も無かったからね。それに扉だって存在して無かったし、蝶番と木が使えるようになって実現した家具。母上の部屋にはね、石を石臼魔法で微粉末にしたクレンザーで銅の板をピカピカに磨いて作った、銅鏡の姿見を設置してあげた。母上、とてもびっくりしてたね。


そしてサロンは、ティーテーブルとチェアのセットが数組に、ソファーも置いてある。貴女会の部屋らしい。そうそう、キジョカイは貴族女性の会で貴女会だってさ。僕、母上に変なこと言わなくてよかったよ……


家具の打ち合わせをしたり、搬入したりする時に別邸に出入りしていたトム爺たちは、別邸の風呂を見て、北部工業地帯にも風呂を作ったらしい。職人たちは汚れるからね、風呂も毎日入って欲しいよ。手間暇はともかく、水と燃料は使いたい放題なんだからね~


使用人も、カンナが差配して平民女性が日替わりで掃除とか洗濯とかしてくれてるし、料理人もジョーンの差配で朝と夕方、これも日替わりで料飲部の女性が来てくれている。燃料や食料もちゃんと配送してくれてるしね、これで別邸は何の問題も無く稼働。


別邸に暮らすようになってから、女性たちが下着として腰巻を使っていたことが判明したよ。風呂に入るとき、洗濯室に服以外にもヒモがついた布があってさ、褌か何か? と思ったら、女性用下着なんだって。以前の大きな布巻服の時も、腰には小さい布を巻いていたらしい。そして、タコ糸魔法で糸が自在に作れるようになったから、太い糸を腰布に取り付けて、ヒモで結んで着用できるようになって、布の面積が少なくて済むからゴワゴワしなくて快適だったんだって。


これって、このヒモ付き腰布を筒状に縫った後に、さらに股下を切って布端を縫い合わせたら、そのまんまステテコじゃね? って思ってね、カンナに言ってステテコ作ってもらったの。はい、僕、ようやく下着を手に入れました!


そしたら母上も同じようなものを下着にし出した。ステテコと殆ど同じだけどさ、なんかゴロが悪いから、女性用のはドロワーズだよ、って教えてあげた。


これを厚めの布で、もっと体に合うように色々工夫して、裾も足首まで長くしたら、ズボンになるよ、ってカンナに教えといたから、そのうちズボンもできるはず。


大公屋敷の時は、母上の生活実態とか知らなかったからね、別邸で以前よりも生活が近くなって、初めてわかる事もあるんだね~


そして、アタシーノ公国の大公が、いよいよお祖父さまから伯父上に代わるみたい。大公家の分家の誰それが、伯父上の代わりにアルビノ人の管理をするから、パラダイスに向かったんだって。向こうで引継ぎとか済ませたら、伯父上一家が家族で公都に戻ってきて、大公屋敷に入り、お祖父さまは別邸に引っ越し。いつになるかは、はっきりとはしないけど、近いうちにそうなると思う。


さて、僕もやる事をやらないとね。




***




中央工業団地の用地に来た。別邸の反対側でも、別邸から僕の足で徒歩15分くらいしたら着くからね、コーチ牛車も使わなくて済むから気が楽だよ。


これから建てる工業団地の建物の基本設計は、すべての建物で、石壁石床竹板葺屋根とした。いちいち考えて変えていたら面倒くさいからね。そして、井戸は各工場にひとつは作る。


まずは、当初の予定通りに、服飾工場を作ろうと思う。


でもその前に、この中央工業団地が稼働を始めたら、運送関係の仕事がとっても増える。これは間違いない。なので、家畜農場部から分離させて運輸部を新設、この工業団地内に運輸部本部を設置することにした。


いちいち牛を家畜農場まで取りに行っていたのでは非効率だから、運送の牛も中央工業団地で暮らしてもらう。用地の一番西端の南北5ヘクタール分をそれに充てた。別邸から1km西ね。別邸が中央工業団地の東端で運輸部が西端。


南北街道に接する面に、配送センターと風呂付御者待機施設、荷車保管施設を建てて、北寄りに牛舎と飼料庫と井戸、そしてその北4ヘクタールをレモングラス畑にして、すべてをブロック塀で囲った。運送の牛は雄牛だから、牛乳関係の施設は無しね。ここで常に運送牛を数十頭ほど常駐させて、レモングラス畑で放牧。繁殖の管理とか何とかは、家畜農場と連携して、宜しくやってもらう事にした。


そして、その東隣に、服飾工場を建てる。南北街道に接する面に、リネンと綿花の集積施設、リネンの繊維化施設と井戸、リネンと綿花の製糸施設、織布施設、縫製施設、井戸付き洗濯施設と検品施設、製品保管施設、製品出荷センターや雑倉庫などを、奥に長いコの字型に配置。それぞれ、100名は収容可能な小体育館並みの広さの建物になったよ……土地も2ヘクタール分くらい使ったし。あんまり広すぎても使いにくいとは思うんだけど、しかたないよねぇ。


そして、コの字型の中央部分に、奥行きが長い福利厚生施設を建設。井戸、キッチン、広い食堂、洗濯室、トイレ、広い休憩室、広い談話室、燃料庫、そして風呂。風呂は大浴場とかは無理っぽいから、少し大きめの石浴槽とボイラー暖炉の風呂場を10室くらい作った。これなら何とかなるかな。ゆっくりはできないだろうけど、体くらいは洗えるはず。この福利厚生施設は、今後の工場の標準設備にしようと思う。


服飾工場の北の3ヘクタール分は、とりあえず綿花畑とリネン畑にしといたよ。土地が必要になった時いつでも撤去できるだろうし、ちょっと原料が足りない時にも便利だろうと思うしね。


この服飾工場の稼働で、川でめいめいが小規模に行っていた、リネンの繊維採取もいっぺんにできるしね、今まで各自一人一人が最初から最後までやっていた作業を、それぞれの施設で、それぞれ分担して分業にするからね、効率も上がると思う。人が集まって仕事すると、技術の継承も容易になるしね~ その差配と後進の育成はカンナに任せよう。


さて、さすがに今日は疲れたから、別邸に帰ろうっと。




***




「母上、ただいま~」


「あらミチイル、お帰りなさい」


「今日の夕ご飯は、何かな~」


「今日はハンバーグ定食よ。照り焼きハンバーグにサラダにご飯にお味噌汁ね」


「そっか~ メニューも増やさないとね」


「そんなに急がなくてもいいのよ」


「でもさ、早く粉ミルクも作らないといけないし、そのための工場も建てないと」


「あらあら、粉ミルクは余裕はないけれど、必要な分は作ってもらっているから大丈夫よ」


「そう?」


「ええ。ミチイルは自分のやりたいように、何でも好きにしてちょうだい。ミチイルが気に病む必要なんて、少しもないのよ」


「うん、母上」


「それで、今日は何をしてきたのかしら~?」


「今日はね、運輸部の……」




***




――こうして、ミチイルの日常は過ぎていく


――女神信仰もより活発になり、捧げものが増え、祈りも、ミチイルへの崇拝も、マリアへの崇敬も、日々増していく




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