1-52 キジョカイ?
北部工業団地を作ってからしばらく経った。
後は自由にして~任せるね、と言ったけどね、あっと言う間に職人たちが集まって来て、村が出来つつあるらしいよ。
北部は岩がゴロゴロしてるしね、竹材も使いたい放題になって、職人たちが自分たちで好きなだけ建物を建てられるようになったんだよね。
今までみたいに側は石造りで屋根は竹材に変更してもいいし、基礎だけ石にして後は木造の建物でもいいし、自分たちの好きなようにできるしね、石は漬物石魔法、竹は筍掘り魔法、釘とかの金属部品も色々な魔法ですぐに作れるからね、しかも熱源使いたい放題になったから、鉄も使いたい放題になってね、ものすごいスピードで家が建てられるんだって。なので、自分たちで自分たちの住宅を建てているらしい。
以前の南の村とは違って井戸があるからね、飲料水も工業用水も心配いらないし、牛運送も増やしたらしく、燃料や製品を積んで南へ運び、帰りには食料を積んで戻るから、食べ物にも困らないってさ。
なかなかシステマティック~
南の村とか北の村とか言うのも面倒くさいし、北部工業団地の村は北村、南の村は南村と正式に改名した。いや、そのまんまだけどね……
しかも南村は、エデンの税を作る仕事だけすればいいから、人口が減っていってるみたい。エデン税製造業務は、数人で午前中で終わっちゃうしね、後は石畳道路が切れる場所から南村、森林の交換所までの2km間を人力で運ぶだけで済むから、その荷運びに数十人が必要なくらい。そりゃ人口が減ってもおかしくないね。つーか、北村に移住しているんだろうね、きっと……
あ、そうそう、石畳道路とか言うのも面倒だし、このあと道路も増えるだろうし、南北街道って名前にしよう!
その南北街道は、基本的にアタシーノ川に沿って、川の西側を北の石切り場から南村手前まで大きな道路を通したんだけど、公都は迂回しているの。既に家とかあったからね。北から来た街道は公都の西側を回り込んで、公都南の畑手前で、また川沿いに戻る感じ。
なんか非効率だから、いっそのこと全部西側に敷きなおした方がいいかな。いや、それとも公都を移転する?
ま、考えておこう。
そして、小麦も収穫が始まった。
とりあえず、メニュー開発用に貯蔵し、後は家畜飼料として使っている。そのうち小麦も足りなくなると思うけど、手が回らないからね……ちゃんと料理にするのはもう少し後にしよう。
この間に、新メニューも増やした。
筍を使った天ぷらや昆布との煮物、網焼き筍の味噌掛け、甘酢を使って野菜の酢の物、甘酢を使って、唐揚げの甘酢あんかけ、ハンバーグの甘酢あんかけ、酢豚など。筍と酢の料理ね。
で、今日は給食センター定休日。
という事で~
***
「はい、今日も新メニューを教えまーす」
「パチパチ」
「まず今日は、ご飯の料理でーす。無洗米を羽釜に入れて水加減をしてから、コップ半分くらいの水を減らしておきまーす。その間、筍を小さく薄切りにしまーす。米が充分水を吸って真っ白になったら、そこへ味醂をコップ半分入れまーす。そして塩をスープの味になる量で入れまーす。そして昆布を米の上にのせて、その上に切った筍を乗せて、後は普通にご飯を炊きまーす。ご飯が炊けたら昆布を取り出し天地返しをして器に盛りまーす。最後に、ご飯の上に山椒の葉っぱを一枚乗せて、筍ご飯の、完成です!」
「さ、続いてご飯の料理をもう一品。無洗米の水加減を少なくして昆布を一枚入れ、硬いご飯を炊いておきまーす。その間に、筍とニンジンを小さく薄切りにして万能ダレで煮ておきまーす。溶き卵に塩を少し入れて油を敷いたフライパンで薄く卵を焼いておきまーす。セリの葉は塩水でさっと茹でて絞って、小さく切っておきまーす。薄焼き卵が冷めたら、スライサー魔法で細く細く切りまーす。これを錦糸卵と言いまーす。硬めのご飯が炊けたら火から下ろして昆布を取り出し、甘酢を多めに入れて、よく混ぜまーす。これを寿司飯といいまーす。混ぜている寿司飯の粗熱が取れたら、万能ダレで煮ておいた筍とニンジンを入れて混ぜまーす。混ぜたご飯を器に盛り、上にセリをばらまき、その上から錦糸卵をまんべんなく散らし、仕上げに山椒の葉っぱを一枚乗せたら、散らし寿司の、完成です!」
「なお、山椒の葉は使う前に、手でビンタをしておくと、香りが良くなりまーす。さ、召し上がれ~」
「今日も絶好調ね、ミチイル」
「ええ、今日もわくわくします」
「筍ご飯は、あっさりとしているけれど、滋味深い味ね。筍と山椒の葉の香りが上品だわ」
「この散らし寿司は、見た目がとっても華やかですね。人が集まる時などに良さそうです」
「ささ、今日は忙しいよ~ お次は~、たくさんの山椒の葉っぱだけをサッと茹でて水に晒しまーす。その山椒の葉を石臼魔法でペーストにしまーす。そこへ味噌と砂糖を同量加えて、さらに石臼したら、木の芽味噌の、完成です! これは、半分にして網焼きにしたナスや焼いた筍なんかにかけて食べまーす。茹でたジャガイモやカボチャにもかけるし、豚肉や鶏肉の網焼きに乗せたりしても美味しいでーす。甕に入れて殺菌消毒魔法してから冷蔵保存でーす」
「さささ、次は、卵を多めに割って溶き卵にしまーす。そこへ塩を少し入れて良く混ぜまーす。さらに初使用の牛乳を卵の十分の一くらいの量で卵に混ぜまーす。温めたフライパンに、これまた初使用のバターをスプーン一杯入れまーす。バターが溶けたらガスコンロ魔法で強火にして、さっきの溶き卵を入れまーす。卵を入れたら、すぐさま菜箸で良く混ぜ、卵がまだ半分生のうちに、フライパンの片方へ寄せていきまーす。寄せた卵が焦げないうちに、フライパンを逆さまにしながら皿にひっくり返して盛ったら、オムレツの、完成です! 上にケチャップをかけてどうぞ!」
「ささささ、次はいよいよ登場、牛乳料理! まず、ニンジンを小さめに切って多めのバターで炒めまーす。そこに薄切りにしたタマネギを入れてさらに炒めまーす。そこへ、一口大に切った鶏肉を多めに入れまーす。炒めながら塩で下味をつけまーす。具に火が通ったらそこへ、小麦を石臼魔法で粉にした新素材、小麦粉を少しずつ入れて、具材ともども炒めまーす。汁気が無くなるくらい小麦粉を足して炒めたら、そこへ少しずつ昆布の出汁を鍋の三分の一くらい入れまーす。入れたら良く混ぜてくださーい。そのまま少し煮たあと、牛乳を鍋の八分目まで入れて、混ぜながら加熱しまーす。鍋の中が沸いたら、そこへ味醂粕を適量入れまーす。味見をして塩を足しまーす。牛乳を入れてからは煮すぎないでくださーい。スープ皿に盛り付けて、クリームシチューの、完成です!」
「まあ、これは想像もつかない料理ね」
「でも、トロっとしていて綺麗な白色で、良い匂いがします」
「では、召し上がれ!」
「 ! これは、今までの料理とは全く違う系統の味ですね」
「ほんとうね、とても濃厚だわ。味もとろみも。それにお腹に溜まる感じで。とても美味しいわ!」
「さささささ、次は、鍋に牛乳を入れて弱火にかけまーす。その中に、牛乳の半分くらいの量の砂糖を入れまーす。混ぜながら加熱して、牛乳がポコポコいい始めたら火からおろし、濃縮魔法をかけまーす。鍋の中が三分の一くらいになったら、練乳の、完成です! 小さな甕に入れて蓋をして殺菌消毒魔法して保存しまーす。常温で日持ちがするので、広く流通させられまーす。これは、マッツァナンに付けて食べたり、イチゴにかけて食べまーす。栄養がありまーす」
「ささささささ、次も牛乳でつくる調味料食材でーす。まず、牛乳から脂肪分を抽出しまーす。この脂肪分は生クリームといいまーす。これを混ぜ続けているとバターができまーす。そして、脂肪分を抽出した残りの牛乳に、干物魔法をかけまーす。カラカラになるまで干物をかけてくださーい。カラカラになったら石臼魔法で粉にしまーす。これを小さな甕に入れ、殺菌消毒魔法をかけて常温保存しまーす。これで、脱脂粉乳の、完成です! ちなみに、脂肪分を抽出せずに粉にしたものは、粉ミルクでーす。この粉ミルクは、お湯で溶いて液体に戻すと、母乳の代わりに赤ちゃんのご飯となりまーす!」
「え? ちょっとミチイル待って! 母乳の代わりですって?」
「うん。母乳の方が一番いいんだけどね、母乳が足りないとかの時には、母乳の代わりに使えるんだよ」
「ちょ、ちょっとそれは……これは大変な事なのでは? マリア様」
「ええ……お父様に相談しなくちゃ……後で貴女会でも話し合いましょ」
***
母上たちは、バタバタとしてしまって、新メニュー開発が中断しちゃったよ。
まだチーズも使ってないのに……
それにこれから、小麦粉の料理が控えてるのにねぇ……
でも、キジョカイって、なに?
鬼女会、じゃあないよねえ……




