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1-51 北部の変遷

やっと味醂ができたよ……


醤油と砂糖もいいけどさ、やっぱり醤油って味醂があってこそってもんだよね。なにせ付け醤油としては使ってないしね、というか溜まり醤油だしね……


あ、番茶も出来たから、お茶漬けとかも食べられるかも~ 佃煮もあるし、漬物もあるしね~


それに、冷ご飯が残っても、熱いお茶をかけたら美味しく食べられるからね~




***




「ミチイル様、ピーターが参りました」


「よっ、待ってました!」


「外で待っています」


「わかったー」




***




「ミチイル坊ちゃま、ようやく完成したのですな、へへへ」


「おう! 坊ちゃん! こりゃ大変なもんじゃ! カッカッカ!」


「あ、トム爺も来てたんだね~ ピーター爺も、ありがとう」


「カッカッカ! コーチ、だったかの! それがあっても牛がいなけりゃ動かんぞい!」


「あ、そりゃそうだよね……で、それが馬車……じゃなかった、コーチだね~ すごいよ! ピーター爺! すっかり馬車じゃなかった、コーチじゃん!」


「へへへ 牛に牽かせて動いていても、きしまない箱を作るのと、軸受けに多少苦労しましたな」


「うん、中は~? お、ちゃんと向かい合わせにベンチが設置されてる~ ん? クッションもあるじゃない!」


「カッカッカ! 羽毛布団を小さくして、中に羽もパンパンに詰めてもらったんじゃ! これならコーチが揺れても尻も痛うないじゃろ!」


「すごいね~ みんな、色々自分たちで考えてくれて、どんどん便利になっていくよ!」


「へへへ 蝶番も開き扉も出来ましたからな、開き扉の片側部分だけを箱の出入り口に付けてみたんですな」


「うん、とってもいい感じ! これ、竹で出来ているんだよね? 全く竹感がゼロだけど……まるで高級木材みたい」


「そうですな、竹は木材としても一級品ですな、密度は高いのに重くも無いですしな、魔法で綺麗に加工もできますしな、中の節も綺麗に取り除けますしな、このように幅の広いきれいな板材も取れますしな、何よりあっという間に育って木が使い放題ですからな、へへへ」


「そっか~ 良かったよ! お、中が暗くならないように、前方は窓が切ってあるんだね~ 窓に一応扉もついているの?」


「カッカッカ! 牛を動かす人間が前に座っているときはの、窓の開け閉めはできんのじゃがの!」


「それでもすごいね~ で、牛も問題なくコーチを牽ける感じ?」


「何も問題ないの~ 甕をびっしり積んだ荷に比べれば、こんな木の箱、軽いもんじゃ! カッカッカ!」


「そうですな。軸受けを鉄にしましてな、そこにぴったりの軸を通してましてな、ミチイル坊ちゃまに言われたグリスを塗っておりますのでな、実に滑らかに車輪が回りますのでな、速く動く上に牛にも負担が少ないようですな、へへへ」


「お? 良く見たら、コーチの引手を牛に固定する部分は、皮で作ってあるんだね! ハーネスじゃん! 引手も短くて牛も近い!」


「カッカッカ! ハーネスいうたんか、それは皮職人が色々考えての。引手を短くせんと長くなりすぎての、曲がったりするのに不便での、なんとか短い引手を牛に付ける方法を模索しとったな!」


「すごいよ! 僕、びっくり! この世界でも技術が発展し始めた!」


「カッカッカ! 相変わらず坊ちゃんのいう事は、わからんの!」


「ミチイル坊ちゃま、早速コーチに乗ってみたらどうですかな、へへへ」


「うん! ってもしかしなくてもトム爺が牛を操作する感じ?」


「もちろんじゃ! 初めて坊ちゃんが乗るんじゃからな! わしがするに決まってるんじゃ! カッカッカ!」


「トムは相変わらず暑苦しいですな、へへへ」


「じゃ、北へ行こう! 竹も気になるし」


「合点じゃ! ほれ、牛、進め~ トントン」


「ブモー」




***




「牛って、とっても賢いね~ お尻の辺りをトントンするだけで前に進んだり止まったり」


「カッカッカ! エデンの牛も、そんなもんじゃ! おとなしくて言う事をよく聞くの!」


「そうですな、速度も人がリアカーを引くのと、そう変わらない速さですな、へへへ」


「そもそも人がリアカー引くのって、どのくらいの速さなの? たとえば公都から石切り場まで」


「そんなら一時間くらいかの~ リアカーは女どもが歩く速さと変わらんからの! わしはもっと速いけどの! カッカッカ!」


「トム爺、前見てないで大丈夫~?」


「カッカッカ! 何も問題ありゃせん!」


「そうすると時速10kmくらいって事なんだよね、確か。公都から南の村まで女の人が普通に歩いたら2時間くらいだったような」


「そうですな、でもですな、荷車やコーチを牽いた牛が速く進めるのはですな、石畳道路があるおかげですな、へへへ」


「そうじゃの! 土の上なら、その半分も速くないからの! カッカッカ!」


「今、通ってる土の上も結構揺れるしね。公都中心の大公屋敷からも、石畳の道路を繋げたいね……家があるから無理かな、今ある細い道路そのままならいいかな」


「坊ちゃんの好きにすりゃええ! カッカッカ!」


「そうだね。はあ、ようやく石畳道路までついたか……っていうか牛ってこんなに速く歩けるものなのね…………ふーん、この辺りはリアカーで運搬する人が多いね。石切りとかはどうなってるの?」


「ありゃ、一日に牛で2回分も運べば足りるからの! 今じゃ牛で運べるようになったしの! それに牛の荷台も大きゅうなって石がたくさん運べるようになったからの! 楽過ぎて昔からすりゃ今は天国じゃの! カッカッカ!」


「もしかして、早速竹で牛の荷台を作り直したの?」


「そうですな。コーチよりも手間がかかりませんからな、あっという間に作れますからな、それに竹は使いたい放題ですからな、牛の荷台も早速作りなおしたんですな、へへへ」


「そっかぁ」




***




「テンサイ畑も随分広くなって……砂糖工場にラム酒工場……」


「お、この辺りも桐がすっかり森になって来たね~ 金工に木工の作業所と……」


「あ、川向うはワイン工場とブドウと椿っていうか茶の木と山椒がすこし。ブドウと茶の木はもう少し増やしてもいいかも知れないね」


「おう! 家畜農場部に言うておくぞい!」


「うん。あ、そういっているうちに家畜農場が見えてきたね……ここもすっかり大規模になっちゃって」


「そうじゃの~ カッカッカ!」


「加工肉の作業場と燻製小屋、冷蔵庫も問題ない?」


「カッカッカ! なんも問題ありゃせんぞ!」


「飼料も?」


「おう! トウモロコシが主じゃからの! それに乾燥マッツァが交換所で余りまくっての、それも全部食わせとる! 他の搾りかすなんかは増減があるがの! 大豆がちいと減ったくらいかの!」


「そっか……そう言えば僕の魔法じゃ見えなかったけど、多分精白する時に米ぬかもでるよね……それも飼料に入れて、これから麦もできてくるからね、麦のふすまは飼料にしよう。それと、牛は雑草たくさん食べるだろうしレモングラス畑を増やした方がいいかもしれないね。レモングラスで放牧してもいいし」


「合点じゃ! 指示しとくぞい! カッカッカ!」


「って言ってるうちに、もう竹林に着いたね……しかし、本当に図ったように一定のエリアにこんもりしてるね、竹……」


「そうですな、何も問題はないですな。竹が採り切れない事くらいが問題と言えば問題ですな」


「公都からこの辺りまでは何キロくらい?」


「だいたい5kmくらいじゃの!」


「ということは、ここからさらに北に5kmで石切り場だね? トム爺に小さいころ連れていってもらったけどさ、あの時はおんぶだし、あっという間だったからね」


「カッカッカ! さ、着いたぞい!」


「お疲れ様~」




***




「この竹林の中心くらいに井戸を掘ったんだったね?」


「そうですな、井戸を中心に竹林がありますな、へへへ」


「そうすると、ここから2~3kmくらいも南に行かないと木工場がないんだよね?」


「そうじゃの!」


「いくら牛の荷車も使えるとは言っても、ちょっと離れているよねえ……ここにも木工場と金工場作ろうかな。材料も燃料も近いし」


「そりゃええの! ドンのやつなら、ここに住む言うじゃろ! カッカッカ!」


「へへへ わしとしてもですな、ここに工場がある方がいいですな、へへへ」


「確か金属石とか拾うのも、石切り場よりさらに北なんだよね?」


「そうじゃの! 石切り場より10kmくらい北に行ったとこらへんじゃの!」


「じゃ、木材も金属石も燃料も、ここが一番近いんだね。ここにつくろう! そうだ、組織も再編しよう!」


「再編、ですかな? へへへ」


「うん。コーチとかもそうだけどさ、色んな材料と技術一緒に使うでしょ?もう木工とか金工とか土木とかさ、そういうくくりじゃなくて、全部ひっくるめて工業製造部にしよう! そして、ここに、それらをひとまとめにしてモノづくりができる工業団地をつくる!」


「何やらわからんがの! 坊ちゃんの好きにすりゃええぞい! カッカッカ!」


「じゃ、木工部と金工部と土木部と建設部を全部まとめて、工業製造部を発足します! 管理はそれぞれの部門は今まで通り、工業製造部全体はトム爺とピーター爺とドン爺の元親方たち共同管理としまーす!」


「管理はわしだけでも十分じゃ! 坊ちゃん! こん爺どもと一緒」


「はーい、異論は認めませーん! それと、後進の指導もお願いしまーす! さらに、仲良くお願いしまーす!」


「……………………」


「では、もう北部工業団地を造っちゃうね! あ、竹に飲まれたら困るから、少し南に作ろう! それっ!」




***




という事で、有無を言わさずに組織再編、そして北部工業団地を建てた。


もうさ、組織がぐちゃぐちゃでわかりにくかったからね。一種類の材料や一種類の技術のものづくりじゃ収まらなくなってきたもん。


多くの人がここの一か所に集って、それぞれものを好きな様に作って、切磋琢磨してほしい。


なので、建物は分けず、全部いっしょくたの建物にしたよ。


もう、今時の日本の廊下のない学校みたいな建物にしちゃった。


各教室との境界壁はあるけど、廊下側は壁がなくてシースルー?


誰でも通れるし、作業場はオープンなの。とはいっても、大きく金工と木工エリアを分けて設置した。部屋の数は多めにして、それぞれ5ずつ。


鋳造の炉は建物の一番奥の端っこにしたし、竹を薪に加工する燃料工場や、建物にくっつけて物流センター倉庫もつくり、運搬用の荷車ステーションもつくり、牛舎も少し離して併設、川から水を引かずに、新たに井戸を掘って飲み水も工業用水も完備、キッチンと冷蔵庫と食堂も併設、ついでに仮眠室と休憩室も作ったよ。


そうそう、竹は特に危ないことも無く、煙も少なく静かに燃える優秀な燃料になることが分かったのね。これから竹燃料がメインになっていくかも。


そして、建物の壁と床は石造り、屋根は鉄骨に竹の板張り、鋳造関係のところだけは銅板葺きにした。


窓には板戸、玄関など入口には開き扉。


結局、端から端まで100mほどの建物と、いくつかの別棟になっちゃった。


でも一か所で色々出来る方がいいよね。あ、もちろん南の村は今まで通り。エデンの税の仕事があるからね。その代わり、南の村では税の仕事以外は厳禁にした。やりたい仕事とエデンに知られたくない仕事は、全部北部工業団地で行うの。


ふふふ、これで僕も発注が一回で済むようになるよ!




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