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1-49 コーチ

竹を植えて帰った翌日。


とりあえず金工部に焼き網魔法を教えて、焼き網を作ってもらうことにした。給食センターの分はすぐに納品。後は必要に応じて作ってもらうようにしたよ。


これで焼き物のバリエーションが増える!


もっと早く気がつくべきだったよ……


さて、リサと話をしないと。


母上、予定が空いているかな~


と、早速屋敷に届いた一番番茶を飲んで一息ついていたら、屋敷にピーター爺がやって来た。




***




「ミチイル坊ちゃま、大変なことになったのですな、へへへ」


「どうしたの?」


「それがですな、昨日の竹が、一気に大木になって、一日で広大な竹の林になったのですな、へへへ」


「え?」


「それでですな、竹を木材として使おうと思っておるのですがな、よろしいですかな、へへへ」


「そりゃもちろんいいんだけど、あの竹、高さ20mくらいあったでしょ? それが一日で?」


「さようですな、へへへ」


「そんなに……そんなモンスター竹、このまま成長を繰り返したら、森どころか、この公都も竹に飲まれちゃうんじゃ……」


「それがですな、どうやら成長に水が多く必要なようでしてな、ミチイル坊ちゃまが神の御業で作ったと聞いた井戸、でしたかな、その井戸を中心として数百メートルの範囲でだけ、竹が林になりましてな、それより外には竹が広がる気配がありませんな、へへへ」


「なんと……そりゃ都合がいいね……」


「そうですな、その範囲は数十ヘクタールはありますのでな、竹を採っても切っても減らないと思うのですな、へへへ」


「うん、じゃあ、遠慮なく使いたい放題使って、何でも作っていいよ~ あ、その前にね、僕が乗る荷車を作って欲しいんだ~」


「ミチイル坊ちゃまが乗る、荷車、ですかな?」


「うん。今まで荷車は当然荷物だけだったでしょ? でも、僕が乗って移動できるようにしてほしいの。僕、いつも移動するときにトム爺の力を借りないとならないからね、トム爺が居なくても移動できる手段が欲しいんだ」


「なるほどですな、かしこまりました。へへへ」


「それでね、本当に荷台だとね、ちょっとどうかと思うから、荷台じゃなくて箱型にしてほしいんだ。その中に椅子を設置してほしいの。僕は見たことが無いけど、エデンの王国でピーター爺たちが木造の家を作っているんでしょ? たぶん、そんな感じでね、床と壁と天井で人が4人くらい向かい合って座れるくらいの小さな木造の小屋?みたいなの作ってね、下に車輪を4輪つけたらいいと思うんだ」


「へへへ それは見たことも聞いたことも無いものですな、しかし、すぐに作れると思いますな。昔と違って、今は魔法で木材を素早く自由に切断できますしな、金属部品もすぐに作ってもらえますしな、打ちやすくて丈夫な釘も使いたい放題ですからな、一日か二日もあれば完成できると思いますな」


「すごいね! ピーター爺! 僕、びっくりだよ!」


「へへへ わしはミチイル坊ちゃんの方がびっくりですな」


「ハハ それでね、荷物よりは軽いけど人間が乗るしね、安定して丈夫な方がいいと思うの。でね、車輪は鉄の軸の両端に木製の車輪でしょ? その車輪の円周っていうか、地面と接する部分にね、鉄を一周ぐるっと巻き付けて欲しいの。そして、軸受けも今は木製でしょ? その軸受けも金属製にしてね、軸受けと軸が接する面に油を、そうだね、家畜の脂を精製したものがいいと思うんだけどね、それを塗れるようにしてほしいの」


「ほうほう、それはまた興味深いですな。何なら車輪も鉄製の方が丈夫になりそうな気もしますな、金工部に作れるかどうかはわかりませんけどな、へへへ」


「うん、木製車輪の外側に金属の板を巻くのなら、今のパスタマシーン魔法と溶接でできると思うけどね、鉄の車輪は作れないと思う。僕の馬車も、あ、牛車も、うーん、なんかしっくりこないから、僕が乗る荷台はコーチって名前にしよう! その僕のコーチもね、今までの荷台より鉄が増えるからさ、さっき言った動物の精製脂、これもグリスっていう名前にするけど、そのグリスをね、鉄の部分の全部に塗っておくと鉄が長持ちするし、軸受けにも毎日塗れば摩擦が減って滑らかに動くようになるからね」


「ほうほう、金工部のやつらにも教えてやろうと思いますな、へへへ それでミチイル坊ちゃん、グリスは現在どこが作っているのですかな?」


「うん、今はどこも作ってないけどね。多分捨ててる脂が多いと思うから、そうだね、家畜農場部に言って、牛の脂を精白魔法で精製してくれって言えば作ってくれると思う。後のコーチの細かいことは、ピーター爺に任せるよ。今言った感じで、僕のコーチをとりあえず作ってみて~ 作ってから改良方法を考えよう」


「かしこまりました。へへへ」


「じゃ、出来たら教えてね。それと竹はどんどん使って。使わなくても、どんどん切り倒しておいてね。燃料にも使いたいから。あ、燃やすと撥ねるかも知れないから気をつけて。それと、見つけたら筍もお願いね~」




***




母上が見あたらないので、給食センターに随時配送にくる農業部の人に、リサに話があるから来て欲しい、と伝言をお願いして、僕は屋敷で少しだけのんびりすることにしたよ。


最近、本当に暇なし。


さ、番茶でも飲んで……この番茶も、ゆくゆくは緑茶にしたいよね。でも、蒸したり……あ、蒸すのは圧力鍋魔法でいけそうかな。手で揉んだり……は魔法でできないよねぇ。石臼だと粉々になるしね。茶葉は手もみしかないかな。そして、乾かす……のは干物魔法でいけるしね、あれ、こう考えると手もみ以外はササっとできるじゃん。


それに、急須だよ、急須。今みたいにポットでもいいけどさ、茶葉をお茶と分ける手段がないと面倒だしね。あ、焼き網魔法ができたんだから、焼き網を細く細かくするイメージで茶こしができるじゃん!


後で作ってみよう。


あ、麹仕事もあったな……


そろそろ新メニューも……


おわー、僕って、ほんと忙しいじゃん!




***




「ミチイル様、リサが参りましたが……」


「うん、ありがとう。応接室に通しておいてくれる? それと番茶と水差しに水を入れて応接室にお願い。あと、湯呑もね」




***




「リサ、ごめんね、忙しいのに」


「いいえ、とんでもないです、ミチイル様」


「今日はね、新しい穀物を農業部で栽培してほしくてさ、小麦っていうんだけどね」


「穀物ですか? トウモロコシみたいな感じでしょうか?」


「ううん、一番近いのは米かな。ただ、米とは違ってね、ご飯にはならないんだけど、粉にしてね、パンとか麺とかお菓子とかになるの。米とはまた違った万能穀物だね」


「どれも聞いたことがありませんけど、何だか美味しそうな気分になってきました。それは田んぼでですか? それとも畑ですか?」


「うん、小麦は畑だね。ただね、実際はどうかはわからないんだけど、米と違って輪作障害があると言われているからね、他の作物と輪作をすることだけ、気をつけておいて欲しいの」


「かしこまりました」


「ああ、うっかりしてたよ。とりあえず番茶を入れるから。ピカピカピカッ はい、これ番茶っていう飲み物なの。新しい飲み物だよ」


「では、いただきます。ズルズル なにやらホッとする味ですね。食後とかに飲んだらさっぱりしそうです。レモングラスとは全然違いますね。青臭くも無いですし」


「ハハ レモングラスはほんと、みんなに不評だったからね。でも今は使い道があるし、栽培しなくても勝手に雑草で増えてくれるから、良かったよ」


「はい。この番茶は、冷たくしても美味しそうです」


「あ、そうだね。今は冷蔵庫の余裕がないけど、そのうち冷えた飲み物も給食センターで出せるようにしたいね。でね、話を戻すんだけど、この小麦ね、二種類あるんだ。一つは薄力粉になる小麦で、もう一つは強力粉になる小麦なの。どちらも小麦なんだけど、使い道が違うんだ。混ざらないようにして欲しいの」


「ちょっと見させていただきます……見た目はそれほど大きな違いはありませんが、間違う事はないと思います。ではこれも、米と同じような扱いでいいのですか?」


「うん。畑を作って種まきして、米みたいに穂先に実がびっしりついて、色が黄金色になったら収穫。とりあえず、麦の茎も稲わらみたいに使えるんだけど、稲わらよりも硬いからね、麦も米俵に入れた方がいいかも知れない。外側に米と違うなにか目印をつけてもらえればいいと思う。あ、麦わらは一部を大公屋敷に届けてくれる? 後は当面コンポストして畑にまいていいよ。おそらくね、この麦も一か月くらいで収穫できると思うから。まだ米ほど量がなくてもいいけどね、そのうち大増産してもらう事になるからね」


「はい、かしこまりました。手間も米と変わらないようですし、何も問題ないと思います。では収穫次第、給食センターへ運ぶ、というのでよろしいでしょうか」


「うん、それでお願いね~」




***




さて、麹仕事に取り掛かりますか……




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