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1-48 竹

とりあえず、家畜農場部に椿の若葉を摘んで乾燥させてもらうようにした。若葉を摘んだら木の成長も止まっちゃうけど、大きくなり過ぎないからちょうどいいよね。


さ、北へ向かおう。


桐の林の、さらに北側に来た。桐もかなり大きくなってきたね~ なんか普通に材木として使えそうな桐もあるし。まだ苗を植えてから三年くらいしか経ってないんだけど、すでに森っぽい。




***




「さ、まずここで竹の品種改良をしよう」 


ピッカリンコ ピッカリンコ ピッカリンコ


「なんかどんどん太くて大きい竹になっていくんだけど……お、表面がつるっとしてるのもあるから、これを品種改良しよ。節が目立たない方が色々使えるよね~」


ピッカリンコ ピッカリンコ ピッカリンコ…………………………


「こんなもんかな~ とっても太くて巨大な竹だけど……直径1mくらいありそう、っていうか表面に節も無いし竹に見えないよ……つるつるの緑色の大木だね、これは」


「坊ちゃん、相変わらず神の業じゃの! こんな太くて高い緑の木なぞ、わし、初めてみたぞい! カッカッカ!」


「ほんとだよね~ 僕も初めてみるもん。ちょっと切って中を見てみたいんだけど、これ、鋸で切れるのかなあ。ま、いいか。試してみよう 『匠の包丁で鋸』!」 


ピカッ


「おお! 坊ちゃん、わしが試してみるからの!」


「うん、お願いね」


「……坊ちゃん、こん木は刃物が入っていかんぞい。表面でつるつるすべるだけじゃ……」


「うーん、魔法じゃないと切れないとか? うーん、斧とか作ってみるか……木工部に相談しないとね。エデンとか桐の森で木を切り倒してるのは木工部でしょ?」


「そうじゃな……わしは石職人だからの…………大木は切り倒せんし………………」


「いやいや、トム爺は石魔法で何でもできるでしょ! いつも頼りにしているんだから! ありがとう、トム爺! あ、そうだ! 筍を収穫するためにも竹を召喚したからね、筍たべよう、筍! いますぐ生やすからね、筍掘りしよう! トム爺!」




***




――ピロン 筍掘り魔法が使えるようになりました。竹を根元から思いのままに切って筍を掘り上げる事ができます




***




「そうかの! わし、頼りになるかの~! カッカッカ!」


「う、うん。じゃトム爺、ちょっと待っててね。『促成栽培で筍!』 」


ピッカリンコ ニョキニョキニョキ


「……坊ちゃん、特に何かが変わった感じもせんのじゃが」


「うん、良く見ると、地面にちょっとだけ竹が芽を出しているの。この芽をね、筍と言って、これを土の中から掘り出して食べるんだよ。筍は竹の子って意味なの。これを掘り上げるのが筍掘り」


「ほー、そうじゃったか。なにせ食ろうた事がないからの……」


「じゃ、ちょと掘るね。『筍掘り』 」 


ピカッ ゴロン


「なにやらでかい根っこのようなもんが出おったぞい!」


「うん、これが筍?……なの。これはね、これより大きくなるとエグくて食べられないから、このくらい芽を出したときに掘るんだよ。そしてね、掘った後もなるべく早く処理しないとエグくなっちゃうからね、美味しく食べられる旬……期間の事なんだけど、その旬が短いの。この世界では季節が無いから旬って言ってもわからないと思うけど、それで筍って言うんだよ、って言っても漢字の説明だから意味不明だよねえ」


「カッカッカ! 坊ちゃんのいう事はいつもようわからんからの! 坊ちゃんのやる事に間違いなんぞありゃせん!っちゅうことが分かっておれば十分じゃ! カッカッカ!」


「うん、じゃトム爺、七輪作ってくれる? 空気穴の金物なくて土だけでもいいから。僕はまな板と包丁とコンポスト薪を作るからね」


「合点!」




***




これって本当に筍なんだろうか……掘り上げてみたら、直径が30cmくらいあるんだけど……


ま、成長した竹が直径1mくらいあるんだから、いいのかな。早く竹を割って中を確認しないとね。


それにしても……品種改良スキルなら一瞬で結果がでるけど、促成栽培スキルだとコマ送りみたいに時間が進むっていうのかな、前にリサが言っていた早回し、とはちょっと違う気がする。さっき、筍が地面からカクカクカクって低フレームレートな感じで芽を出してきたもんね……


ま、余裕ができたらゆっくり考えてみよう。




***




「さてと、後は筍を焼くだけ……って、網が無いじゃん! そうだ、僕、すっかり忘れてた! 金網を作ってない! 金網があれば七輪で肉とか焼けるじゃんね! フライパンで焼くよりずっと美味しいのに! ああ、僕のバカバカバカ……金網なら金串魔法で針金つくって、金工部で編んでもらえば焼き網つくれ」




***




――ピロン 焼き網魔法が使えるようになりました。材料があれば焼き網が思いのままです




***




「る……恐れ入ります……ぺこり。さ、『焼き網』 」 


ピカッ トサッ


「おう、坊ちゃん、七輪ができたぞい!」


「うん、じゃコンポスト薪を入れて~ フランベガスコンロでピカピカっと。そんで焼き網のせて~ トム爺、筍持ってきて~ はい、ちょっと皮剥いて筍のせて~ 結構デカいけど焼けるかなあ。ま、弱火にしとこう。んじゃ、小麦の……あ、筍食べたら水も飲みたくなるよね。ちょっくら『井戸スキル』でピッカリンコして~ あ、トム爺、この自噴井戸の周りをさ、さっきみたいに石で泉にしておいてもらえない?」


「おしきた!」


「うん、よろしくね~ じゃいよいよ小麦の品種改良をしよう! 僕、ちょっとあっちにいるから~」




***




さて、小麦の品種改良をしよう。とりあえず、いくつか実がなるまで繰り返そう


ピッカリンコピッカリンコ………………


うん、これも米並みに収量高そう。でも、最低でも薄力粉と強力粉が欲しいよねぇ。粉にして捏ねてみないとわからないけど……あ、そうだタンパク質を抽出できるよね?


『はい、救い主様』


『あ、アイちゃん。ありがと』


うん、とりあえず、タンパク質が多い麦と少ない麦で分化させよう。


ピッカリンコピッカリンコ………………


うん、こんなもんかな。見た目も結構違うし、強力粉と薄力粉は間違わないね、きっと。


これを大々的に栽培することにしよう。するのはリサたちなんだけど。




***




「坊ちゃ~ん、石の泉ができたぞーい!」


「うん、ありがとう。さすがトム爺、いい仕事するね~」


「カッカッカ! そうじゃろそうじゃろ~」


「さて、そろそろ……ん? 誰か来たみたい」


「お? あやつはピーターじゃな」


「これはミチイル坊ちゃま、お久しぶりでございますな、へへへ」


「うん、元気だった? どうしたの? こんなところまで」


「はい、ミチイル坊ちゃまが神の御業をなしているという噂を耳にしましてな、へへへ」


「ハハ 耳がはやいね」


「おんし、北の木工場に居ただけじゃろうが」


「へへへ してミチイル坊ちゃま、何やら立派な大木がたくさん生えていますな」


「うん、竹っていう木だよ。この木はね、成長が早くてね、燃料に使えるかと思って植えたんだよ。桐とはちょっと特性が違うんだけど、材木としても使えるかも知れない。少なくとも家具とか荷車の荷台とか食器とか、あ、そうそう、屋根にも使えると思う。増えたら自由に使ってくれていいから」


「へへへ それは朗報ですな。早速一本切り倒してみても構いませんかな」


「うん、構いませんけど、鋸で切れないの。あ、ちょっと待って。危ないから離れててくれる? 竹を思いのまま切れるんだから……『筍掘り!』 」


ピカッ ズドーン


「あ、切れた。いやこの竹、ものすごく肉厚なんだけど……これ、厚み10cmくらいあるよ? ちょっと割ってみよう。つかその前に、長すぎるから1mくらいに『筍掘り』ピカッ そして縦に竹割『筍掘り』ピカッ ハハ 早口言葉みたいになっちゃったよ」


「おお! 坊ちゃん! 刃も立たなかった大木が一瞬じゃ! カッカッカ!」


「ヘヘヘッ? これは見事な材木ですな、密度も桐以上のようですし問題なく使えますな……長さも20mくらいもありますな……中に……50cm位の間隔で補強材?ですかな」


「ふー、魔法なら問題なく竹を切れるね……ピーター爺、中のそれは節っていうの。なぜだか外側からはぜんぜんわからないけど……ん? その節、確かに補強材に見える、っていうか、補強してるね、竹を」


「ふむ、これは最良の木材ですな。中は空洞ですけれどな、補強されていますしな、年輪もありませんし厚みも十分なものですからな、たとえ丸くとも取り方を工夫すれば50cm幅くらいの板材にもできますな、非常に強度がありそうですからな、どの方向を切っても木材として使えると思いますな、へへへ」


「そっか~ 竹は早く成長するし燃料にいいかな、とは思ってたんだけどね、筍も食べられるし。でも材木に使えるならずっといいね! これで桐が育たなくても竹が使えるかも知れないし。多分ね、一年もかからずに成木になると思うの、この竹」


「それは大変なことですな、へへへ 早速木工部のやつらにも伝えておきましょうな」


「うん、よろしく~ じゃ、トム爺もピーター爺も、筍を食べよう! 何も持ってきてないから調味料がないけど」


「楽しみじゃ! カッカッカ!」


「本当ですな、へへへ」


「いただきまーす!」




***




筍は、デカくて肉厚だけど、普通に筍だった。割ってみたら中には普通に節もあったけど、皮を全部向いたら表面はつるつる。塩も何もつけてないけど、美味しかったよ。


そして、筍掘り魔法をピーターに教えて、ついでに後片付けもお願いして、さらに品種改良された竹の種をあちこちにばらまいて、その種に念のため自噴井戸の水もかけてからトム爺と帰った。


竹がピーター爺のいうように、優良な材木になったらいいな~ そしたら真っ先に、僕用の牛車を作ってもらおう!


きっと一年くらいで竹が使えるようになるはず。


そうじゃなくても燃料になるしね~ あ、竹は燃やすと撥ねるから危ないんだよね、それも何か考えよう。


楽しみ~




***




――ミチイルが採らなかった筍は、ミチイルがいる間にも、みるみる育っていたのだが、ミチイル達は気が付かなかった


――ミチイルが帰るころには、既に2mくらいに育っていたのであるが




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