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1-40 一週間一か月一年

公都西の海岸で養殖?させた昆布が繁茂した。はんも、って言葉、初めて使ったかも。はんもだよ、はんも。なんか、ものすごく手に負えない響きじゃない?


とりあえず海産部に、昆布は縁のヒラヒラ部分と、真ん中の芯部分とに切り分けてから、乾燥させて定期的に公都に届けてもらうように指示。


ヒラヒラはワカメとして、さっと茹でてサラダにトッピングしたり、スープに入れたりしている。昆布はとりあえず貯蔵中。海藻は日本人じゃないと消化できないって話があったような気もするけど、ま、大丈夫でしょ。食べられるのをスキルが探してくれたんだしね。


陶器の食器も、続々と届き始めた。色も質感も、甕と全部同じだけどね。


そうそう、荷車は無事にできて、今では土木運送が、北から公都そして南の畑を往復しまくっているよ。


さらに、牛の荷車も完成。これは人間が走るよりは遅いらしいんだけど、それでも何倍もの荷物を運べるし、なにより石切り場から石を運ぶのに重宝しているみたい。


そりゃ、今まで人が担いで運んでいたんだもん、いくら速度が遅くても、何十も石ブロックをいっぺんに運べるからね、人手も少なくて済むし負担は減ったはず。


でも、エデンにバレないように、使用可能なエリアは、南側の石畳道路が途切れるブッシュ地帯までと設定している。そのまま南の村まで行ったら、万が一もありえるからね。だから、ブッシュ地帯南側と森林地帯の交換所までの数キロは、相変わらず人力なの。


正直、なんでこんなにバレないように神経をとがらせているんだろう、と思わなくもないけど、母上曰く、神託だから守らないとならないらしい。まあ、女神様のいう事なら仕方ないか……


そして、料理のバリエーションを増やすべく、もう一度、野蒜(のびる)を取り寄せて、臭いが強いものを品種改良していった結果、ニンニクとニラみたいなのができた。もちろん、農業部に丸投げしたよ。


そして、胡椒は存在してないのかダメだったけど、山椒でお取り寄せしてみたらビンゴ!


胡椒とは違うけど、ジャパニーズペッパーっていうくらいだからね……肉に合いそう。届いた山椒は、よわよわぽわぽわの草レベルだったけど、品種改良して木になり、山椒の実が取れるようにした。これも、もちろん農業部に丸投げしたけど、大公家の敷地にも植えといた。


そうそう、給食センターは週休一日にしたの。


一週間とかいう概念はなかったけどね。計算が面倒くさいから一週間は6日にして、5週で一か月、一か月30日、金星期とかの期間は4か月、一年は12か月の360日に設定した。この世界じゃ、僕が設定すれば、その通りになるからね。うるう年? そんなの知らん……季節もない星だから、いくらズレてもわかんないもん。何十年も経ったら金星とかとズレちゃうかも知れないけど……その頃はどうせ僕、死んでるもんね~


で、とりあえず給食センターは5日営業したら1日休みを繰り返すことに。本当は労働している全員がそうなればいいんだけどさ、エデンとかに人頭税で出ている人もいるしね、農業関係とかはシフト組まないと休めないしね、職人たちは週休にできそうだけどさ、エデンの交換所とかも毎日交換しているからね、色々考えた結果、全員の週休化は無理だった。


で、給食センターの休みの日は、ときどき新メニューの開発の日に当てることに。そうすると結局休みじゃないんだけどね……


そうそう、平民の料理教室を開催するつもりだったけど、料飲部でキッチン要員ね、これがまた、日替わりレベルでみんなやりたがってね、かなり多くの人が入れ替わり立ち代わり給食センターで料理をしているもんだから、必要ないと判断したの。給食センターのメニューが増えれば、あとは勝手に平民の女性たちに広まるからね……


ということで、今日は新メニュー開発の日。




***




「はーい、みんな~ 今日は新しいメニューを教えまーす!」


「みんな~って、わたしとジョーンしか居ないじゃないの、ミチイル」


「……今日は、とても繊細な料理だよ! まず、卵を殻のまま茹でて、殻を剥いておきまーす。そして、イマイチ人気が無かった大根の皮を剥きまーす。なんと、皮むき器魔法を使うと、あーら不思議、一瞬でペロンと完了でーす。そして、大根を厚い輪切りにして、水を入れた大鍋にドボドボっと入れちゃいまーす。そして、少しふやかしておいた新食材の昆布をたくさん、細めに切って一緒に入れまーす。そこに水で戻した乾燥大豆を戻し汁ごとコップ一杯と、塩と砂糖をカップ半分くらいずつ入れて、後は大豆が柔らかくなるまで、コトコトと弱火で煮まーす。はい、おでんの、完成です!」


「完成です……って、作業が終わっただけで、まだ完成してはいないんじゃないのかしら? ミチイル」


「うん、まあね。これはとても繊細な味なの。一度に作っておけば、後は皿に盛りつけるだけだから、楽なんだよ。スープとしてメニューに加えよう! 昆布の出汁と大豆の出汁で美味しいはず。もっと他の出汁もあればいいんだけど、今は無理だからね」


「ミチイル様、だいたいどのくらいの時間がかかるのでしょう?」


「うん、ジョーン、2時間くらいかな。朝一で仕込めば昼前には食べられるよ。冷めても大丈夫だから、平民向きかも知れない」


「かしこまりました」


「で、おでんを煮込んでいる間に~ これもイマイチ人気がなくて家畜のエサになっているニンジンを千切りにしまーす。本当はスライサーがあると」




***




――ピロン スライサー魔法が使えるようになりました。薄切りも千切りも思いのままです




***




「ということで、新しい魔法も教えまーす。 『スライサー』 ピカッ シャコシャコ はい、これでニンジンが一瞬で千切りできました~ これを、油を多めに入れたフライパンで炒めまーす。そしたら、塩を少なめの適量入れて、ニンジンがくたくたになったら、溶き卵を入れて、全体を混ぜまーす。卵に火が通ったら、ニンジンシリシリの、完成です!」


「ミチイル、ニンジンって、堅くて妙な臭いがして微妙な色の野菜よね?」


「うん、オレンジ色っていうの。確かにニンジンはサラダじゃ美味しくないよねぇ。でも、このニンジンシリシリは、砂糖を入れてなくても甘くて美味しいんだよ!」


「楽しみですね、マリア様、ミチイル様」


「はーい、それでは残りの時間に、メインの料理をします! まずは、鶏肉をボウルに入れて石臼しまーす。適当に細かくなったら、フライパンもしくは鍋に入れて火にかけまーす。鶏の皮から脂がでるので油は必要ありませーん。ずっと混ぜ続けて鶏肉の色が変わってきたら、砂糖を多めに入れまーす。汁気が無くなってきたら、塩とワイン酢を適量入れまーす。そしたら、ここで新食材、ニラを細かく切ったのをどっさり入れて、さっとひと混ぜして~ ご飯の上にかけまーす。はい、鶏そぼろご飯の、完成です!」


「ミチイル、その草は臭いが大変な気がするのだけれど……」


「色は綺麗ですね。それと嫌な臭いではなく、お腹が空いてくるような匂いです」


「うん、ニラはね、この香りが美味しいんだよ。今、農業部に栽培するようにお願いしたからね、多分、すぐに収穫されてくると思うよ。さ、メインと付け合わせを作っている間に、最初に仕込んだおでんが良い感じになっているはず。試食しよう!」


「まぁ、今日の料理は、陶器のうつわに良く合っている気がするわね!」


「はい、マリア様。銅のうつわは何か、物足りなく思えてきました」


「では、いただきまーす!」


「 ! このおでんのスープは、本当に繊細な味ね、でもさっぱりしておいしいわ!」


「この昆布?も、柔らかくて味わい深いですし、卵を茹でたのも、こんなに美味しいなんて!」


「それに、大根は大きすぎるのじゃないかしら、と思っていたけれど、長く煮込めば、こんなに柔らかくなるのね!」


「本当に! こんなに味がつくものなんですね」


「ニンジンも、サラダで食べるものとは別物じゃないかしら」


「はい、こんなに柔らかいですし、臭いも全然感じないです!」


「そして、このそぼろご飯! ご飯に何かをかけて食べるなんて、そんな方法があったのね! ニラも独特な香りで、どんどん食べたくなっちゃうわ!」


「本当に、これは男の人が好きそうなご飯ですね」


「みんな~ 美味しかったかなー?」


「……ミチイル、あなた、その変な話し方、まだ続けるのかしら?」


「ハハ そういう気分の日もあるでしょ~」


「あなた、まだ8歳じゃないの……年寄りみたいなことを言って」


「はーい。それじゃ、ジョーン、これを今度の新メニューにして、給食センターで出してね。さっきも言ったけど、最初におでんを大量に仕込んでおいて、ニンジンシリシリも、鶏のそぼろもね、前もって作り置きしておけるから、注文が入ってから盛り付けだけで回せるよ。もし、大鍋のかまどが欲しくなったら、増やせるから、知らせてね~」




***



――この世界に、和食が初めて登場した




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