1-39 物流
給食センターが稼働した。
服飾部から、料理が好きな人を50人ほど集め、料飲部を発足させて魔法を訓練し、シフトを組んで営業している。
今のところ、ケチャップを作ってもらい、メニューは、ご飯と卵スープとミニサラダが付いたハンバーグ定食のみで、希望者にはプラス牛乳。
あ、そうそう、油とワイン酢と塩を使ってね、ドレッシングも作ったの。やっぱサラダにはドレッシングだよね~
ワインも火入れしていないから、どんどん酸っぱくなっちゃってね……
とりあえず、公国民が一巡するくらいまでは、このままで行く予定。給食センターを一日フル稼働させても、何か月もかかるしね。
毎日毎日、物流を流さないとならないから、人手が心もとなくなってきた気がする。
物流も改革しないとならないから、木工部に、桐を使って荷車を作ってもらう事にした。
桐は少ないけど、最悪、僕が魔法で成木にできるしね。
でも、南の村で作ると、万が一、エデンにバレる可能性もあるから、木工場を北の桐林の近くに作ることにしたよ。
荷車はほとんど木製だけど、唯一、軸だけは鉄製なの。そりゃそうだろうと思うけど、その鉄を鋳熔かす必要があるので、これも南の村じゃまずいから、小さな金工場も北に作ることにする。
***
「ごめんね、トム爺。僕、結構大きくなってきたけど、重いよね」
「カッカッカ! なんのなんの! 坊ちゃんはまだまだ石より軽いからの!」
「うん。でも、そんなに急がないでいいからね。ゆっくり行ってくれる?」
「合点じゃ!」
「ところで……トム爺たちさ……年齢が……もう58歳くらいになってない?」
「カッカッカ! 良く数えておらんが、わしもドンもジョンもピーターも同じくらいの歳じゃからな、そんなもんかの!」
「体が重いとか、動かないとか、疲れるようになったとか……そういうことはない?」
「カッカッカ! わしらは元気が有り余っとるの! まだまだ死ぬ気もせん! 若いもんにも負けん! ドンも毎日走って南の村へ出かけとるぞい! ジョンも、お、そういえばジョンのやつ、何やら海で草がえらいことになっとる、言うとったな」
「ん? あっ、昆布か!」
「わしらで海に草をばらまいたじゃろ? たぶんそれじゃ!」
「もしかして、昆布が増えたかなあ」
「海が草だらけに、とか何とか言うとったがの! わしは見に行っておらんから知らんの! カッカッカ!」
「じゃ、近々連れてってくれる? トム爺。それと、体に何か変化を感じたら、すぐに知らせてね」
「おうよ! わしに任せとけば万端じゃ! カッカッカ!」
「ハハ よろしくね~」
「おうよ! ほれ坊ちゃん、あそこでピーターが手ぐすね引いて待っとるわ!」
「あ、あれが木工の大親方だね。僕は会ったことが無かったけど……」
「そうじゃ! おう、ピーター、待たせたの!」
「お初にお目にかかりますな、ミチイル坊ちゃま。ピーターと申しますな、へへへ」
「うん、ピーター爺、今日はよろしくね」
「坊ちゃん! ピーターのやつは放っておいて、早う作ろうぞい!」
「ハハ じゃ、ピーター爺、ここに木工場を建てるね。ちょっと離れてて~」
ピカピカピカッ
「おお! いつみても坊ちゃんの魔法はすごいの! カッカッカ!」
「これは……聞きしに勝る奇跡ですな、ヘヘヘ」
「うん、それでねピーター爺、ここで荷車を作って欲しいの。あそこの桐で。桐は軽くて柔らかいから難しいかなあ?」
「ここの桐は密度が高いのですな、荷車も問題ないですな。ヘヘヘ」
「ところでさ、荷車ってどんな感じのものなの? 僕、見たことがないんだよね」
「はい、板の下側に軸受けを設置して鉄で作った軸をとりつけてですな、軸の両側に木の車輪をつけますな。板の前方に木材の長引手を取り付けてましてな、その引手を牛の首にに固定しましてな、牛に引かせるのですな、へへへ」
「荷台は板一枚で、車輪は二輪なんだね?」
「そうですな、へへへ」
「じゃあね、その牛用の荷車をね、人間用にサイズを小さくして作って欲しいの。荷台はね、縁もつけて箱にして欲しいんだ。リヤカーって言うんだけどね、それを人が牽いて荷物を運ぶの。そうすれば一人でもたくさんの荷物を運べるからね」
「鉄が無いと難しいと思いますな……」
「それはの! この後に坊ちゃんが金工場をここにも作ってくれるからの! ピーターは心配せんでええぞ! カッカッカ!」
「うん、とりあえず、桐の林の近いところに鋳造設備完備の金工場を作っちゃうね」
ピカピカピカッ
「これはまた、見事ですな、へへへ」
「ハハ トム爺、建物の中の炉の感じとかさ、後で微調整しておいてくれない? 僕じゃ経験がないからよくわかんないの」
「合点じゃ! これでドンのやつも、南の村じゃのうで、ここに入りびたりよるじゃろ! カッカッカ!」
「でもさ、ここじゃ燃料が手に入りにくいの。桐はそんなに無いしね。最近は籾殻炭もコンポスト薪も給食センターで使い出したからね、燃料は思う存分は使えない。それに鉄は銅よりも融点高くて、燃料いっぱい使うからねぇ……南の村なら少ないとはいえ、森林地帯の木も燃やせるだろうけどさ、ここじゃ、ね……」
「カッカッカ! それもそのうち、こん桐どもが大きゅうなって解決するじゃろ!」
「うん、早くそうなるといいけど……それとね、ピーター爺、荷車なんだけどリアカーはできるだけ多く作ってもらうとして、牛用の荷車も作って欲しいの。牛用のはね、荷台は箱型で少し大きくつくってね、車輪は四輪にして欲しいんだ」
「かしこまったのですな、へへへ」
「じゃ、金工部にも指示しておくから、協力して作ってね。とりあえず一台できたら大公家に知らせてね~」
***
「ねえ、トム爺、前に、大人しそうな牛を選り分けて置いてもらったでしょ? あれ、どうなった~?」
「お? そのまんま自由にさせとるの!」
「荷運びに使えそう?」
「おそらく問題ないじゃろうの! ただ、スタイン男爵連中と違ごうて、わしらは牛の扱いには慣れとらんからのー」
「わしら、って、もしかして、牛の荷運びも土木部でしてくれる予定?」
「カッカッカ! もちろんじゃ! わしらが育てて食ろうとるしの! わしらが適任じゃとも!」
「石切りとか、金属石拾いとか、大丈夫? 影響ない?」
「なーんもありゃせん! 鉄ノミでチマチマ石を切りよった時にくらべりゃ、石仕事なんぞ、魔法であっと言う間じゃ! 家畜の世話も、ほとんど手がかからんからの、飼料を合わせるのと餌をくれてやるくらいじゃ。水は勝手に流れ込んどるしの! カッカッカ!」
「そっか~ 安心したよ~ もし、牛が荷物を運んでくれるようになったら、さらに時間ができると思うしね、牛じゃなくても、人間用の荷車ができれば、今までよりずっと短時間で多くの荷物が運べるようになると思うから……よろしくね」
「おう! 合点じゃ! 坊ちゃん、そろそろ家畜牧場じゃ!」
「じゃ、作業場に行こ!」
***
「おー、ベーコンとソーセージ、順調にできているみたいね~ まだ給食センターでは出さないけど、そのうちメニューふやそう。ベーコンとかは、焼くだけで食べれるからね、平民向きだから、このままでも問題ないけどね~」
「そうじゃの! 火さえ起こせばすぐに食えるからの! 公国中で大人気じゃぞ! カッカッカ!」
「そんなトム爺に、魔法の新しい使い方を教えまーす!」
「カッカッカ! さすが坊ちゃんじゃ! じゃが、使い方かの? 新しい魔法じゃのうて」
「うん。甕魔法なんだけどね、甕魔法で食器とか作ろうと思うの。ちょっとみててくれる?」
ピカピカピカピカッ
「おお、甕と同じ感じじゃが、形が大分変わっとる!」
「うん、素材とかは同じだけど、イメージで色々変わると思ったんだよね~ これで、陶器の皿も、茶碗も、湯飲みも、できるでしょ、そしてこれ、水差しね。甕に持ち手と注ぎ口つけただけだけど、この持ち手をもって口から注げば、水とかコップに入れやすいじゃない? 便利だと思うんだ~」
「これは種類も多くて、作り甲斐があるの! 石魔法といえばわしらじゃからな! カッカッカ!」
「うん、土木部のみんなで練習して、作れるだけ作ってね。とりあえず先に、大公家と給食センターにお願いね!」
***
――こうして、アタシーノ公国の物流に大変革が起き、より早くより多く、物が運べるようになった




