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1-36 貯蔵革命

カンナに魔法を教えたら、使えるようにはなったんだけどね、さすがに僕みたいに綿花から直接は作れなかった。


でも、綿布を用意して、それを材料にしてみたら、何とか作務衣を作れるようになった。


カンナが管理者の服飾部総動員で、魔法の練習をしてるみたい。


服飾部って言ってるけど、実態は、各家庭で内職をしていた女性達だからね、人数がとても多いらしいよ。


とりあえず、綿製品は公国内でのみ使用可とした。エデンにバレちゃうからね。


針も金工部に作らせることにしたし、糸もできたし、これで縫物ができるようになるはず。


残念ながら僕には割烹着や作務衣以外の見本を用意できないけどね、いろいろ試してみてもらう事にした。


とりあえず、割烹着を2枚カンナに渡して、2枚重ねたまま、それぞれの端を縫い合わせて、中に綿を薄く詰めてもらったの。


そう、どてら? ちゃんちゃんこ? みたいな感じ。これで夜も温かいわ~


そろそろ下着も欲しいな~




***




そんなこんなで、しばらく経った後、トム爺から連絡があった。


北部の家畜農場が軌道に乗ったみたい。




***




「うわーーーー! トム爺、なにこれどうなってんの?」


「カッカッカ! わしら、それはもう頑張ったんじゃ!」


「頑張ったんじゃ! はいいけど、頑張りすぎじゃない? なにこの囲いの数! 1ヘクタール分くらいあるんじゃないの?」


「おうよ! 牛も豚も鶏もの、どんどん増えよりおって、囲いを作るのが追っつかんかったわい! カッカッカ!」


「それにしても、増えすぎ……牛も豚も数えきれないくらいいるじゃん! 鶏は、ほとんど養鶏場だし!」


「わし、そろそろ家畜を食うてもええんじゃないかと思うんじゃ! 卵も、これ以上孵したら公国人より増えそうじゃしの! カッカッカ!」


「うん、僕、家畜を処理するの多分できないから……トム爺に任せるよ」


「合点じゃ! 牛の肉や豚の肉は、塩漬けじゃ! 鶏の卵は交換所じゃな。鶏の肉は薄めに塩をして交換所で配ることにするからの! 今は七輪も皆持ってるからの、肉も焼いて食えるわい! カッカッカ!」


「うん、そうだね~ 子牛に飲ませる牛乳は余るくらいだと思うし、乳首を掴んで絞ったら牛乳がでてくるからね、トム爺たちは飲めるなら飲んでいいよ~ でも飲むときは搾りたてだけにしてね。それとね、家畜の皮とかも使えると思うけど、鶏の羽も使えるからさ、とりあえず集めて別に保存しておいて~ あ、それと、悪いけど卵とか肉を毎日、大公屋敷にも届けてもらえる? あ、肉は処理した日だけでいいから」


「もちろんじゃ! 抜かりないぞい!」


「ごめんね~ それとさ、家畜のエサ、足りるの?」


「カッカッカ! その辺も抜かりないぞい! 農業部に言うての、トウモロコシを増産してもろうておる! 何ならこの近くにトウモロコシ畑を作らせるからの! 坊ちゃんは何も心配いらんぞ!」


「ありがと~ ほんと、トム爺、頼りになる~ あ、作業小屋も増やそうね。ちょっと大きめの食肉工場にしよう。3種類で3つにしようね!」


ピカピカピカピカピカ……………………




***




家畜は、大変なことになっていた。


なんでも、一か月で成長して、繁殖するんだって。はいはい、無限の力様、ありがとう。


でもさ、塩漬けにしても限界があるよね。しょっぱ過ぎるしね。


塩分は少し控えて、燻製とかにもしてもらおう。


でもさ、もっと肉が増えたら……どうしよう。


「……うーん……とりあえず、干し肉と燻製くらいしかないよね。それでも、今までを思えば贅沢ってなもんだよね! できれば、あまりしょっぱくない肉をみんなが食べられるようになればいいけど、そんなの冷蔵庫でもなけ」




***




――ピロン 冷蔵庫スキルが使えるようになりました。ただし、維持には無次元の力と魔力を要します




***




「れ……ば…………え? いいの? ほんとに? やった~」


『はい、救い主様。一向に構いません』


「あ、アイちゃん、ありがと~」


『私めは何もしておりませんので』


「ほんとに~? ま、いいや! でさあ、冷蔵庫スキルって、どうやって使うの?」


『私めには判りかねますが、部屋や建物などに使うのがよろしいのではないでしょうか』


「あ、そうだよね。一般的な冷蔵庫とかだと小さいしね、どのくらい無次元の力を横取りするのかわからないけど、数は少ないほうがいいような気がする」


『無次元の力を取り込むために、救い主様の魔力も、維持に必要になるかと思います』


「僕の魔力も使って維持するってこと?」


『左様でございます』


「僕の魔力が常に使われ続けるんだね?」


『はい。しかしながら、救い主様は魔力が減っても即座に補充されますので、事実上無制限ですから』


「あ、そうだよね~ じゃ問題ないか! ん?でもさ、常に僕の魔力を使うために、僕がずっと冷蔵庫に張り付いてないとダメなんじゃないの?」


『その必要はありません。無次元の力、ですので、存在場所にはとらわれません』


「へぇー 良くわかんないけど、それならいいや~ じゃ、とりあえず大公屋敷に冷蔵庫、作ろうかな~」




***




「あ、ジョーン、今日はジョーンが料理なんだね~」


「はい、ミチイル様。カンナはここの所、忙しくしておりますので……」


「ハハ そうだよね~ ところでさ、このキッチンの勝手口? 出入口のすぐ外に、小屋を作りたいんだけど、邪魔になる?」


「いえ、ミチイル様のお好きなようになさってください」


「うん、じゃ、ちょっと作っちゃうね~ ジョーンは仕事してていいよ!」




***




「ちょっと呪文が煩雑だけど……しかたないかなあ?」


『救い主様は、無詠唱で魔法がお使いになれるのでは?』


「あ、そうだったそうだった、すっかり忘れてたよ……ということは、呪文にとらわれず、イメージだけでいけるよね?」


『そのように思料いたします』


「んじゃ! 『冷蔵庫スキルで、一坪冷蔵小屋!』 一気にGO!」


ピカピカピカ ピッカリンコ ドスン


「うおー、つい呪文も言っちゃったけど、小屋!だけで建物できちゃうなんて、楽ちん~ 」


『救い主様、ですので』




***




「ねえ、ジョーン、この小さな建物なんだけどさ、冷蔵庫って言ってね、中が冷たくなる小屋なの。この中に食べ物を入れておくとね、分解されちゃうっていうか、面倒くさいから腐っちゃうって言うけど、腐るまでの時間がね、延びるんだ~ だから、肉とかもね、塩を使わなくても、何日かは腐らないの。ちょっと言葉で説明してもわからないと思うんだけど、とりあえず家畜農場から、塩をしていない肉と、卵も持ってきてもらうからね、この冷蔵庫に入れておいてくれる? もちろん料理に使ってもいいから」


「冷たい、とは、北の方のさらに北に行くと雪があって、とても寒いと聞きますが、そのような感じでしょうか?」


「うんうん、その通り! 冷たいとね、腐る菌が鈍くなってね、腐るまでの時間が長くなるの。普通に食べ物置いておくと、だんだん分解されてとけちゃって食べられなくなるでしょ? そうなりにくいんだよ」


「私には想像がつきませんが、ミチイル様のご指示の通りにしておきます」


「うん、あ、そうだ。入り口に桐のドアもつけておいたから、出し入れする時以外は閉めてね。持ち上げないといけないから大変かも知れないけど……悪いけど、よろしくね~」




***




冷蔵庫が作れるようになったので、公都の交換所と北の家畜農場に、それぞれ教会くらいの大きさの冷蔵庫を設置した。


そして、家畜農場に、燻製小屋も設置した。




***




「トム爺、燻製の仕方は理解できた~?」


「おう! ばっちりじゃ! 要は塩漬けにして少し乾かして、燻製小屋に吊るして、その肉の下で、桐葉やらレモングラスやら木の皮やらブドウの葉っぱやら、そんなのを燻せばいいんじゃな?」


「うんうん、さすがトム爺、何でもすぐにわかっちゃうね~」


「カッカッカ! 燻す前までは、今までの魔獣の塩漬けと一緒じゃしの! ちょろいちょろい!」


「燻製にするとね、塩を少なくしても長持ちするんだ~ 塩漬けだとスープにしか使えないでしょ? 燻製は、そのまま焼いて食べられるからね!」


「なんと! 想像もつかんが、聞いているだけでうまそうじゃの! カッカッカ!」


「うん。豚肉もあるし、豚の腸もあるでしょ、もちろん塩もあるし、レモングラスもあるから、本当は腸詰っていう」




***




――ピロン 腸詰魔法が使えるようになりました。思いのままに腸詰できます




***




「……食べ物があるんだけど、ちょっとここで試してみよう。トム爺、豚肉はこれを使うからさ、豚の内臓っていうか、豚の腸が欲しいんだ。腸ってわかるかなぁ……内臓の中でね、太い紐みたいになっている部分なんだけど……」


「おお、それなら良く見るの! 豚の内臓の中でも量が多いからの! おい! そこの! 豚の内臓の紐みたいなやつを持ってこい! 洗って持ってこいよ!」


「わかりました。大親方」


「坊ちゃん、ちいと待っとくれの!」


「うん。それと、塩とね、レモングラスもエサにするから、ここにあるよね?」


「おう! これじゃ!」


「大親方、ここに置いておきますんで」


「んじゃ、材料もそろったし、新しい魔法を使おう!」


「カッカッカ! そう来なくっちゃの!」




***



「 『腸詰で美味しいソーセージちょうだい!』 さあさあ!」


ピカッ


「おお……お? いや、ソーセージはソーセージだけど、生じゃん!」


「おおっ! 坊ちゃん、もう食えるんかの?」


「いや、生だから、さっき言ったように燻製にしないとダメ」


「そうかの……」


「じゃ、燻製小屋に、長い金串で吊るして、燻製にしよう。燻製にするときは小屋の中に人が入れないくらい、ガンガン火を燃やしてね。石と金属屋根の建物だから、燃えないしね。あ、金属の板をドア板にしよう……こんなんでいいかな~ そうそう、トム爺も腸詰魔法やってみる?」


「おう!」




***




トム爺も腸詰魔法を無事に成功させた。


料理の魔法だしさ、石とか土木とかのトム爺には無理じゃね?って思ったけど、拗ねたら困るから一応トライしてもらっただけなのに……なんか不思議だけど、できるんならいいよね!


肉はこれで、塩漬け、干し肉、燻製、腸詰、そして生と、結構種類が増えた。


牛はね、食べてもいいけど、もしかしたら運搬に使えるかも知れないから、大人しそうな牛は別にしておいて、ちょっと様子を見てもらう事にしたよ。


運搬手段が手に入るといいんだけどな~




***




――ミチイルは、またもや魔道具を作り出した。ミチイルが生きている間の限定稼働だが……


――そして、料理が増え、お供えが増え、祈りも増え、星神力も増えた




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