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閑話3 ミカエル・ケルビーン3

わしは、ミカエル・ケルビーン。


このアタシーノ公国の大公を務めておる。


わしの可愛い可愛い孫は、凄すぎる。


米というものを育て始めたと思ったら、葉菜だ。これは生で食べてもサクサクうまいし、たくさん育つ。あっという間に公国中で食べられるようになった。


リネン草も、なにやら巨大になって、女どもが助かっておるらしい。大きくなって何がどう助かるのかはわからんが、カンナが喜んでいるので、良いのだろう。


塩も楽に大量に作れるようになった。


と思ったら、公国民が全員腹いっぱいに食べられるという米が、ついにできた……


民が飢えることが無い……この言葉は、いまいちピンと来なかったのだが、事実らしい。マリアが言うには、米とはとてもお利口さんなんだそうだ。全部自分で始末をつけるそうな。お父様も見習いなさいと叱られたが、理不尽ではないか?


しかし、お土産?とやらでミチイルが持って帰ったおにぎりが、とても、とてもうまかった。


わしは、このうまい米がたくさん余るほど育ち、こうして皆が食べられる日が来るのかと思うと、涙が零れるのを止める事ができなかった。


為政者の家に生まれ、為政者になる事が定められておったわしだが、民が飢え、寒さに震え、冷たいものを食み、奴隷のようにエデンで扱き使われるのに、忸怩たる思いであった。いくら、何百年続く歴史であってもだ。


それが、それが…………ああ、女神様、救い主様、感謝申し上げます。


その救い主様は、わしの孫じゃがの! グフグフッ


……え? わし、こんな笑い方なのか? 考えてみれば、わし、心の底から笑ったことなどなかったな。こんな笑い方だなんて、知りとうなかったわ。


なんか知らんが、恥ずかしい笑い方のような気もするし、ミチイルには内緒にしておこう。そうしよう。


そして、この米は、民が、より自由に使える燃料ももたらした。今じゃ、民の家々で、七輪を使い米のご飯が炊かれ、温かい食事を皆が食しておる。


今まで、民は限られた仕事をしておったが、ミチイルの業で仕事が増えた。しかし仕事が増えた分、民が楽になり飢えもなくなったから、民は喜んで新しい仕事に取り組んで居る。


そこで、公国の生産体制を整えることになった。組織、というそうだ。


これにより、仕事の分け方が明確になり、自分がどこで何をすれば良いのか、民にもわかりやすくなって、効率がよくなった。そして、同じ系統の仕事で魔法の適正とやらに沿った魔法の研鑽が進み、民の間でも、かなり魔法が使われるようにもなった。


これで、民の仕事はもっと楽になるだろう。飢えもなく、時間も余裕が生まれるはずだ、などと感慨にふけっていたら、ふけっている暇なぞ、吹き飛んだぞ。


ミチイルは、野菜や砂糖や酒や果物、教会や工場、貯蔵庫、畑、そしてなんと、木まで生み出しおった。


わしらはもう、毎日毎日、目が回るような忙しさだ。生産体制を整え、人員を整え、箝口令をさらにきつくし、民への周知を徹底し、エデンにバレない様に気を配る毎日だ。


うわさを耳にした、王国へ人頭税要員として派遣している民も、公国に帰りたいとこぼす始末……パラダイスに住まわせておるミハイルも大変だが、わしだって大変なんだぞ!


今はマリアもおるし、何とかなっているのだが、これでマリアでも嫁に行ってしまったら……わし、いろいろ死ぬ。


当のマリアは、結婚はしない、ミチイルとずっと一緒にいる、と言い張っておるけどな。しかも、ここのところは、何やらマリアも民の信仰を集めておるらしいしの……どうなっておるのだ……


それにしても、あのイチゴとラム酒はすごいな。


細かく切ったイチゴに砂糖とラム酒をちょろっとかけたものはな、あれは、うますぎてわし、死ぬ。


この世に、こんなにうまいものがあるとはの、エデンの果実など、比べようもないわ。


エデンの酒も、公国にはないものだし、それなりにうまいものだがな、ラム酒は別格じゃ。ほんの少しの量でもアルコール度数?とやらが高くて、ガツンとくるしな、香りもとてもいい。


イチゴも、甘くて、さわやかで、何より色が綺麗じゃ。それと砂糖とラム酒の取り合わせと言ったら……うますぎてうますぎて、わし、毎日毎日食っておったわ。


そしたらミチイルが、イチゴでお腹いっぱいにしてばかりいると体に良くない、というからの、わし、泣く泣く食べる回数を減らしたし。


そもそもラム酒も砂糖も、まだ民には回してないからな、今のところ、大公家だけで消費しておる。


わしだけ、我がまま言う訳にもいかんしな……


わし、少しだけ、ほんの少しだけ、残念な気分も、無きにしも……


と思っとったら! 今度は!


ミチイルは燭台というものを作りおった!


照明じゃ、明かりじゃ、言うておったけどな、夜になっても部屋を明るくするものだぞ。


こんなの、エデンの王国でも、もちろん無いぞ。王国どころか、この大陸のどこを探しても明かりなど、無いわ。


薪を燃やしたら、明るくなるのは知られておったがな、家の中で薪を燃やす愚かもんはおらん。


この公国は屋根以外は石造りの家だからな、まだいいが、王国の建物はほとんど全部、木で出来ておるからな、家の中で薪など燃やしたら、明かりどころか、家まで全部燃えてしまうわな。


ま、エデンの家なぞ、全部燃えてしまっても、いい気味だとしか、わしは思わんがな! グフグフッ


あ、まずいまずい、笑っちゃいかんいかん……ミチイルには絶対内緒だぞ。


それを、薪でもなく、油?植物油?行燈油、だったかの、それで、小さい小さい火を灯しおった。


火は小さいから、気をつければ火事にもならん。しかも大公家で使っている燭台は、手で持って持ち運びもできる。


小さい火だが、なにせ元が真っ暗だったのだ。こんな小さい火でも、こんなに明るくなるとはな……


公国中が、この小さな火で、日中みたいに明るくなる日が来るのも遠くないだろう。



可愛い可愛い、わしのミチイル……お祖父さまも頑張るからの!




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