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1-33 7歳になった

そんなこんなで時は過ぎて、僕は7歳に。


行燈は、公国世界を震撼させたの。


ドン爺たちが頑張って行燈をたくさん作って、平民の家庭に徐々にいきわたり始めた。金属石を鋳熔かす燃料は、いまじゃ余裕があるからね、金属、使いたい放題なの。でも、南の鋳造所でいつもモクモク煙だして、エデンにバレないかなぁ。


リサの農業部もね、菜の花栽培を増やして、菜種油と行燈油を大量生産モード。今はまだ、菜種油の需要がそんなにないから、行燈油と混ぜて使ってる。そのうち揚げ物をするようになったら、菜種油も、もっと必要になっちゃうね。今は揚げ物が危険だから、広めるのは保留中なんだ。


大公屋敷にも、燭台が至る所に置かれるようになった。もちろん僕の部屋にも。


ま、僕は夜に明かりがあっても、そんなにすることは無いんだけどね、本もない世界だし。でも、平民は、特に女性たちは、リネンの布仕事を夜もできるようになって、とっても喜んでいるんだって。行燈はあんまり明るくはないんだけどね……


仕事の時間が増えて喜ぶってのも、なんだかね……でも、リネンの布は需要が増えたからね。菜種を絞るのも、ワインを濾すのにも、風呂敷っぽく使って野菜とかを運ぶのにも、穀類を入れて使ったりも……とにかくものすごく布が必要になっちゃった。


甕は重いからね、軽い布が便利で人気なんだよね、ま、当然だと思う。


そうそう、ワインも順調にできた。だいたい仕込んでから一か月くらいでワインになってね、それをリネンで濾して、大きな甕に保存。桐で甕の蓋も作れるようになったからね。それを適宜、徳利へ移してる。お酒は注意が必要だからね、自由に流通させるのは当面しないで、とりあえず保管してるよ。


でも、長く放っておいたら、酢になっちゃいそう……ん? 酢も作れるじゃん! ワインビネガーにしちゃってもいいかな~


そして、農業部に植えてもらったテンサイもね、だいたい一か月で収穫できることがわかったよ。それで、砂糖と廃糖蜜を作ってもらって、砂糖は甕で保存、廃糖蜜は酵母を混ぜてラム酒にしてから蒸留して徳利へ入れてもらっている。砂糖は各家庭に少しずつ配給して、ラム酒は徳利で保管してるの。ワインともども、貯蔵庫を増やしたよ。


桐の林も順調でね、まだ数か月だけど、みるみる育っている。でもま、材木として使えるようになるのは、まだまだ年数が必要だね、当たり前だけど……でも、僕が品種改良した作物とかはみんな早く育ってるからね、つい、桐にも期待しちゃったけど、木はさすがにねえ……無理だったみたい。


それで、ずっと延び延びになっていた、布仕事の視察?を、ようやくすることになった。


カンナにお願いしてから、ずいぶん時間が過ぎちゃった……だって、食文化じゃないし、僕が見ても、何かできるとは思えなかったからね、食べ物優先したんだもん。


で、いよいよ、布仕事! の視察……




***




「やあ、カンナ。お邪魔するね~」


「ようこそおいでくださいました、ミチイル様。本日はこのような所まで申し訳ございません」


「お願いしているのは僕だからね、逆にごめんね。でも、セバス男爵屋敷って、大公屋敷の敷地内にあったんだね、僕、知らなかったよ」


「はい。私ども男爵家は、大公家の執事や侍女でございますから、大公屋敷のすぐ横に住まいがある方が、都合が良いのです。

ジョーン、もう仕事に戻ってもいいわ」


「かしこまりました」


「ジョーン、僕を連れて来てくれてありがと~ 僕、敷地内でも独りで出歩けないからね……」


「とんでもないです! では失礼します」




***




「まずカンナ~ リネン草からどうやって繊維をとるの?」


「はい。それではこちらへどうぞ。こちらでリネン草の茎から繊維を取り出します」


「へぇ~ この茎を水にさらしておけば、繊維がとれる? 繊維になる? なんか皮がほぐれてる感じだけど……あ、皮がバラバラして繊維の束みたいになってるね!」


「はい。茎を水に数日間、浸けておくと皮がほぐれてくるのです。そして、ほぐれた部分から、繊維を一本一本、摘み上げて、糸束にいたします。残った茎の芯は、以前は箒や屋根材として使っておりましたが、今はミチイル様の新リネン草になりましたので、残る芯も、このように太いですから、コンポストで燃料に使うようになりました」


「そうだったんだ~ このリネン草が浸けられている石のプールの大きさぴったりに、茎を切っているんだね~」


「はい。以前は、長さも茎の太さも、まちまちでしたが、今の新リネン草は大きく長く、繊維もたくさんとれますので、この石プールと同じ長さに揃える事が可能となりました。ミチイル様のおかげでございます」


「ハハ 平民でも、各家庭に石プールがある訳じゃないよね~?」


「はい。石プールは川の近くに設置されていて、繊維にする作業はそこで共同して行い、布にする作業は各家庭で、と分けております」


「そりゃそうか~ でも、繊維を一本一本、大変だねえ……」


「大変ですが、今はかなり効率が上がりました。以前は繊維の太さも長さも、まちまちでしたが、今は繊維の太さも長さも同じになりましたので。一度の茎の処理で、たくさんの繊維が取れるようにもなりましたし、糸にする作業も効率が上がりましたし、以前とは比べ物にならない位、手間が減りました」


「役に立って、よかったよ! じゃ~次は、布を作るところをお願い~」


「かしこまりました。こちらでございます」


「うお……これはまた……大変そう。これで布を織っている? というより編んでいる感じ? 」


「これで織っております。高いところに設置してある金属棒に、リネン糸をかけて糸の下には重りを取り付けます。重りを付けないと、縦糸がまっすぐになりませんので、布が歪んでしまうのです。その後、縦糸と経糸との間を、交互に横糸をくぐらせていって、くぐらせた横糸を下に手繰り寄せる、これを繰り返して布を織っております」


「この、何百本もある縦糸の間を、手で横糸をくぐらせるの?」


「はい。とても集中力の必要な作業でございます」


「ちょっとこれは……よく考えてみれば仕方がないけど、古代エジプト並みの織り方だったわ……」


「よくわかりませんが、慣れれば誰でもできます。公国の平民女性は皆、行っておりますので」


「うん、ご苦労さま。僕、何ができるかわからないけど、ちょっと色々考えてみるね~」


「ミチイル様の、御心のままに」


「じゃ、悪いけど、大公屋敷まで送って~」




***




想像よりも、いや、ある意味で想像通りなのかな、低文明な布の織り方だった……


これじゃ、服などできるはずもないよね。布を織るので精一杯だもん。色も一色だけの生成り色。


リネン草は、やっぱりどうやら麻、だよね。触り心地も着心地も、麻だもんね。


この世界に綿はないかな……とりあえず、試してみるか。


「 『お取り寄せスキルで綿ちょうだい!』 ほんとお願い! カモン! 」


ピッカリンコ ポサポサポサ


「やった! 綿が来た! …………って、これ、綿なの??」


『はい、救い主様。スキルが探しましたので、間違いはございません』


「だよねえ。でも、小さな草に、たんぽぽの綿毛以下の綿?がちょろっとついてるだけだよ」


『そこは救い主様の御業で、いかようにもなるのでは』


「うん、そうだね! んじゃ、もういっちょう! 『品種改良スキル』 」



ピッカリンコ ピッカリンコ ピッカリンコ……………………



はい、僕の本領発揮! いつから本領になったんだろう……ま、いいや、本領を発揮して、高さは大人の膝くらいなんだけど、スイカくらいの大きさの綿がモサモサできる、綿花ができた!


下手に高く育っちゃっても、取り回しが大変だもんね。


さっそく、もっと種を増やして、リサに丸投げしよう!


あ、種から油もとれるかも~


仕事増やしてごめんね、リサ~




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