1-31 調味料増
そう、今日はまだやる事があるのだ。
木の種を品種改良するの!
部屋でやったら、どんなことになるか、わからんからね……
で、何の種かわからん種を、とりあえず品種改良。畑からはもうすこし北のあの辺にしとこう。
ピッカリンコ ポワン
うーん、ちいさな苗木が数本。
これだけじゃ、何の木かもわからんね。あ、そうだ。出来立てほやほや促成栽培の出番じゃね? 品種改良と何が違うのかわかんないけどさ。
ということで、
『促成栽培スキルで種まで育って何かの木!』 ピッカリンコ ワサワサワサ
これは……桐っぽい。森林地帯に桐なんて生えてるのかな……あ、所有権があるとだめだから、森林地帯の木じゃないね、たぶん。
数本ある立派な木のうち、太いものを選抜して品種改良を続ける。
ピッカリンコ ピッカリンコ ピッカリンコ……
ふぅ。
辺り一面、品種改良の残骸で桐がいっぱい生えてる……あちこち地面に植えながら品種改良をたくさんしたからね。
あ、太いだけじゃなくて、早く育つ桐が良いな。早生桐、だっけ。
では『促成栽培スキルで5年分育って早生桐!』 ヘイカモン!
ピッカリンコ
これで、一番育ったのを育成品種にしよう。でも、たった5年分の成長なんだけど、なんか既に材木に使えそうなほど立派な桐ばかりなんだけど……
ま、いいか。ピッカリンコ ピッカリ……………………
後は、この早生桐を種になるまで育てて、種をそこら中に種まきした。
これで桐が育ったら、この辺りは桐の森ができるだろう。つか、既に桐の林、くらいなんだけど、べつにいいよね~
***
「坊ちゃん! 立派な木が森になっとるの! 今すぐにでも材木になりそうじゃ! ピーターのやつが見たら、びっくりして死んでまうぞい! カッカッカ!」
「そ、そうなの? いや、そうかもね。エデンの王国以外に木は無いんだもんね、存在しないものがいきなりできたら、びっくりするわ、誰でも」
「カッカッカ! 無かったものがいきなり出来るんは、みな坊ちゃんで経験済みじゃ! びっくりするやつは女神信仰が足りんの!」
「ハハ ま、今さっき種まきしたのが育成品種になるからね、これから生えてくる木はだめだけど、今ある木は、切って使ってしまってもいいよ~」
「カッカッカ! みな大騒ぎするじゃろうの! ピーターのやつに自慢してやろうの!」
「じゃ、育成品種は種の状態だからわかりにくいし、とりあえず苗にしとくね。苗には手を出さないでって伝えといてもらえる?」
「合点じゃ!」
「では、『促成栽培スキルでさっき植えた早生桐は苗にGO!』 ヘイカモン!」
ピッカリンコ ワササッ
「これで大丈夫だね~ じゃ、トム爺、本当はもう一つやろうと思ってたんだけど、僕、疲れちゃったから帰ろう。また今度、連れてきて~」
「お疲れ様じゃの! じゃ、おんぶじゃ!」
「はーい」
***
数日後、僕はトム爺と一緒に北へ。
今日はテンサイ畑の、アタシーノ川を挟んだ反対側の荒れ地に来た。
ここでブドウを植えようと思う。
ブドウ棚は作れないけど、低木なブドウをたくさん植えればいいよね。
促成栽培スキルもあるし、すぐにでも実がなるようにしとこう。
***
「トム爺、このあたりにブドウを植えるからね、トム爺はなるべく蓋がぴったり閉まる100リットル程度の甕を作ってくれる? あ、僕が最初につくるから、それと同じように作って~」
「まかせろい! カッカッカ!」
「ついでに、ワイン工場も建ててしまおう。んじゃ、行くよ~」
ピカピカピカピカ………………
「じゃ、後はよろしくね~ 僕はブドウを植えてるから」
***
この辺りでいいかな。
ブドウの種を種まきでピカッ、種まきでピカッ、と何回かした後、促成栽培スキルでピッカリンコ。
品種改良により巨峰サイズの実がなるブドウを整然と、とりあえず100本ほど植え、収穫直前レベルまで促成栽培。まだ少し早いけど、ちょっと実をもいで食べてみたら、巨峰サイズなのに皮まで食べれる甘酸っぱいブドウだった。うまい。
これを収穫して、実を踏んで果汁を甕に入れておけばワインができるはず。この世界のブドウには酵母がいるからね。っていうか、本当は酵母を作ったエデンの果樹のレーズンと同じ酵母がいるか種かどうかわかんないんだけど、この世界、ものの種類が少なくて、びっくりする位シンプルワールドだからね、きっとエデンの果樹と取り寄せした山ぶどうっぽいものは、同じ種類だと思うの。
もし違ってて酵母が無かったら、お祖父さまにお願いして、エデンのレーズンの元となってるエデンの果実を、丸のまま持って帰ってもらおう。難しそうだけど、いつかできると思う。仮にも一国の大公なんだからね。
発酵させる甕はトム爺に作ってもらっているから、後は増やしてもらうようにお願いすればいいけど、ブドウをつぶして甕に移すのには何か方法がいるよね。デカい甕にして、甕の中で踏んでもらう事も、出来ないことはないけどさ、そんな大きさの陶器だと、運ぶのはおろか洗うのも出来なくなっちゃうし。
「うーん、何かいい方法は……銅とか金属でタライみたいなの作ってもらってもいいけどさ、金属だとブドウの酸で腐食するよね。味も変になっちゃいそう……あ、そうだ、こないだ植えた桐があるじゃん。育成品種以外はもう使えるしね、桐でタライ……桶……寿司桶?」
***
――ピロン 寿司桶魔法が使えるようになりました。材料があればお好みの寿司桶が作れます
***
「ハハ そう来なくっちゃ! では行きま~す! 『寿司桶!』 」
ピカッ ゴワンゴワンゴワン
桐で出来ている大き目な寿司桶がいくつかできた。これ、つなぎ目ないけど、まさかのくり抜き? ま、いいか~
これでブドウをつぶしてもらって、甕に移そう。あ、木があるならブドウ棚も行けるけど、低木にしたし、不都合が起きてから考えることにしよ。
トム爺にもブドウを試食してもらって、屋敷にもブドウを持って帰って好評だったわ。トム爺にも屋敷のみんなにも口外しない様にお願いしたよ。みんなが食べちゃってワイン仕込む前にブドウの実がなくなっちゃったら、困るしね。
***
農業部には、テンサイ畑の管理と砂糖、廃糖蜜作りからのラム酒造りにブドウ畑の管理とワインの仕込みを指示。
土木部は、砂糖の甕とワインの甕とラム酒の徳利を増やしてもらう。テンサイ畑の近くに桐が生えたからね、栓も問題なくなったし。
木工部は、桐の林をみて狂喜乱舞してたみたいだけど、とりあえず寿司桶魔法で桶を少数だけ作ってもらう。まだ木は少ないからね、他の木工に使いすぎないように指示。
そんなこんなでしばらく時が過ぎた。
***
リサを始めとした農業部がうまく回りだして、一息ついたらしいので、母上と一緒にリサに会いに南の畑へ。
農業部とは言っているけど、専業はリサを始めとした少数のマネージャーだけで、後は、職人と兼業なの。
でも、みんな農業で働きたがるから、人数としては一番多い。農業部で働いていると、配給以外にも食べ物が手に入るからね、人気なんだって。
それで、既に毎日何百人も農業に従事していて、人は十分に足りているみたい。ただ、魔法が全員使える訳ではないから、何でもできるって感じでもないってさ。でも、人がたくさん居れば、できること増えるしね、北の農場?もそこまで手がかからないし、問題ないってさ。
そうそう、テンサイは順調に育っているけど、まだ収穫できる状態じゃ全然ないみたい。やっぱり僕が畑を作って植えたら、異常だったってことだね。
何はともあれ、現状の農業関係は、すべて農業部に任せている。
僕も時間に余裕ができているから、そろそろ懸念事項の一つを解消したい。
***
「リサ、お疲れ様」
「マリア様、ミチイル様、ようこそ」
「ねぇリサ、菜の花も栽培してもらって、種、菜種っていうんだけど、菜種も貯蔵庫にたまっているよね?」
「はい。使い道がないので、俵にかなりの量がございます」
「うん。それをそろそろ油にしようかと思ってるんだ」
「油?ですって……? 魔獣の塩漬けをスープにしたときに、上に浮かんでくるギラギラしたものよね? ミチイル」
「うん、それも油なんだけど、それは脂なんだよね」
「何をいっているのか、全然わからないわ、ミチイルはいつものことだけど……」
「ハハ 魔獣の脂は動物の脂で、今日作る菜種油は植物の油なの。使い道とか味とかが違うんだよ」
「そうなのね……楽しみね」
「じゃあ、貯蔵庫を見てみようか。お、かなりあるね~」
「はい。栽培は継続していましたので」
「じゃ、今日はリサに、新しい魔法を覚えてもらいます! 良く見ててね、イメージがつくように。 あ、その前に甕を作っておこう」
ピカピカピカッ ボトボトボト
「じゃ、行くよ~それっ『石臼!』 」
ピカッ ギュルルルン
「……??」




