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1-26 国の生産体制

「うわ~! ご飯ご飯~! ひさびさ~ うれしい~ つやつやピカピカ~」


「カッカッカ! よくわからんが、うまそうじゃの!」


「ほんと、とっても良い匂いで、きらきら光っているわね~ それでミチイル、これはどうやって食べるのかしら?」


「うん、数えきれないほど食べる方法があるんだよ~ 一番基本なのは、ご飯としてそのまま食べる、次は、味をつけて食べる、なんだけど、今日は、塩で味をつけて食べます!」


「マッツァナンも、とても美味しかったけれど、ご飯もたぶん美味しいわね。ミチイルだもの」


「うん、これは絶対においしいよ。あー早く食べよう! リサ、悪いけど葉物の一番おおきい葉っぱを数枚収穫して、川で洗ってくれる?」


「かしこまりました」


「じゃあ、行くよ!」




***




『おにぎり』 ピカッ




***




「カッカッカ! 葉っぱの上に白い石っころみたいなのがいっぱいじゃの!」


「いやねえ、トム爺。もっと違う言い方をしてちょうだいよ。ええっと…………よく考えてみたら、同じような大きさのものって、無いわねぇ」


「カッカッカ! じゃろう? マリア様」


「いただきま~す! 母上もトム爺もリサも皆も、早く食べてみて~ 熱いから気をつけてね」


もぐもぐもぐ


「 !!! 」




***




おにぎりは大成功! というか、米の栽培が大成功、だよね。


北海道のブランド米は、無事にこの世界でも育った、というか育ちすぎ? アタシーノ川の水だけで、肥料も要らず病気も知らず害虫も無しで、一合の米が1tだもん。しかも一か月もかからずに。ま、今回は早苗からだったけどさ、種の状態から植えても、多分一か月と少しくらいで育つだろう。


僕だけじゃなくて、地球の米も、チートだった!


とりあえず、米俵をこのままにはできないから、教会よりも小ぶりの建物を近くに建てて、今日の玄米を収納しておく。次の栽培の種に使わないといけないからね。


リサに、収穫と精白とわら仕事の魔法を教えておいた。そのうちできるようになるだろう。農業系の魔法だしね、リサの適性に合っていると思う。


籾殻炭は木工系の人の方が合っているだろうから、そっちの人達に片手間にやってもらおう。オガ炭と同じなんだから、練習も要らず使えると思うしね。


後は、リサが水田を作れるようになるといいんだけど、水田は石の水路付きだから、石工系の適性が必要な気がする。あ、田んぼだけリサに作ってもらって、後は種を植えるときに流しそうめんで水を入れてもいいかな。


僕は水田で作ったけど、水が有ったのは一瞬だけで、後は地面に水が吸われて無くなってたもんね。そのまま放置してたから、水稲というより陸稲で育ったはず。うん、いけそう。


おにぎりが10個くらい残ったから、そのまま葉っぱに包んで屋敷に持って帰った。




***




あれから、またしばらく時が過ぎた。


新たに使えるようになった「田んぼ」魔法をリサに教え、リサが陸稲用の田んぼを作れるようになって、田んぼを増やした。水路の代わりに、トム爺たち石工系が川から流しそうめんで水道管を田んぼに引いた。そして、苗は作らず、田んぼに直播きで米を栽培することに。リサは、公国の全員が米を食べられるようにすると張り切っている。


でも、全員が食べられるようにしようと思ったら、いくら高収量の米でも、計算上100ヘクタールくらい必要になるから、僕も時々田んぼを作っているよ。


それと、これも新たに使えるようになった「種まき」魔法もリサに教え、これもするする覚えてくれた。リサは草好きで農業に適性があるからね。それで、出来た田んぼに片っ端から米を植えてる。これを続けて行けば、すべての田んぼが作り終わったころ、最初に植えた田んぼが収穫できるようになると思うから、また植えなおして、エンドレス作業で米が大量に出来続けるる……ムフフ


これでリサだけで、一通りの稲作畑作ができるようになったから、公国の職人たちの組織を見直した。


まずは、ドン爺たちの金工関係を金工部、トム爺たちの石工関係を土木部、ジョン爺たちの塩関係を海産部、リサの農業部、カンナたちの服飾部、ペーターたちの木工部、これらをすべて横断する組織として、僕の建設部。


ペーターには僕まだ会ったことがないんだけど、それぞれ正式な責任者は、現親方たちという事にした。元親方のドン爺トム爺始め大親方たちは、喜んで好きな魔法を使っているからね、自由にしてもらうことにしたの。


そして僕の建設部は、僕だけ。僕が好きにいろんなものを建設しちゃうんだ!


あと、それぞれの組織なんだけど、もともとの税のための仕事に取られていた時間と労力が、魔法で激減したから、余った人はリサの農業部をメインに活動してもらう。結果的に、作業として農業部で働く人員が一番多くなった。ま、当然だよね、1万人が食べるものを生産するんだもん。


そうは言っても、完全な縦割りの組織だと、そもそも総人口も少ないしね、能力が硬直化しちゃうから、それぞれの責任者以外は流動的に動くことにしたの。なんかカッコよく話してみたけど、ぶっちゃけ、全ての職人は、手が空いたら農業に従事してねっていうだけね、ハハ……


僕たちが農業にいそしんでいる間、土木部と金工部に、七輪を大量に作ってもらった。すべての平民に行きわたらせたいからね。材料はいくらでもあるから、手間暇以外は問題ないし。金工部にはさらに、銅鍋を七輪と同じ数だけ作らせた。銅石は北でたくさん拾えるらしいんだけど、それを鋳熔かす燃料の木材がね、普段使っている分しか手に入らないから圧倒的に足りなくて、コンポスト薪と籾殻炭をこっそり南の村へ運んで、燃料として使ったよ。


そして、建設部で米蔵となる建物を公都に建てて、出来上がった米は、種もみ以外は全部、その米蔵に保管。そして、まだ備蓄がないけど燃料蔵も建てた。ここにコンポスト薪と小さめサイズの籾殻炭を収納する予定にした。今は南の村で絶賛使用中だからね、燃料は。




***




順調に計画は進んで、既に米はたくさん米蔵に、七輪と銅鍋も家庭に配給があらかた終わって、燃料も公都に運ばれて、公国民が米を食べられるようになってきた。


生産物が増え、公国民に配給するのが大変になってきたので、配給を管理する人員が必要になった。でも、公国では非生産民は多くないので、大公家の分家が配給の管理をすることになったの。ついでに精白魔法も覚えてもらって、無洗米にしてから配給してもらっている。つか、分家なんてあったのね……大公家の敷地内の別棟に住んでいるらしいよ。


配給が進んだと言っても、まだ米だけでは満足に食べられるほど量がないんだけど、一日に一食くらいはご飯を食べられるようになってきた。すると、今まで火を使って調理していなかった平民は、火を点けるのが大変だって問題が表面化しちゃった。


「うーん、何か簡単に火を起こせる方法があればいいんだけど……ライター?マッチ? 食文化に大いに関係してるけどさあ、食べ物だけじゃないもんねえ……料理調理製菓……いや、どれも火を使うじゃん! 食文化に限定された火、ねぇ……料理に火をつける……あ、フランベとか」




***




――ピロン フランベ魔法が使えるようになりました。炎があがります




***




「やった~ この魔法で火がかんたんに使えるよね?」


『はい、救い主様』


「この魔法を広めよう。アルビノ人なら使える可能性は高いもんね」


『救い主様のおっしゃる通りと思料いたします』


「ふふ、アイちゃん、堅いよ~ それでさ、疑問があるんだけど」


『なんでしょうか?』


「北海道の米ね、とってもとっても優秀だけどさ、育つの速すぎじゃない? 肥料もあげてないのに」


『以前もお話しましたが、この世界では魔力が、肥料や栄養の代わりですので』


「あ、それはそうなんだけど、病気にもかからないし、害虫にもやられないし」


『以前もお話しましたが、そもそも畑作がありませんでしたので、病原菌も害虫も、このアタシーノにはおりません』


「そうなんだよね。それも覚えているんだけどさ、魔力が肥料替わりって言っても、米は地球のものなんだよ? 地球では魔力なんてなかったのに、どうして魔力を使えるんだろう、あの米」


『地球でも魔力に相当する力がありますので、それを使っていたと思われます』


「え?? あの米は、地球の魔力を使って育っていたっていうの?」


『はい。この星の魔力とは別の力ですが、元は無次元の力で同じです。地球の女神様は、無次元の力を電力という力に変化させて、地球を満たしています。地球上では、どんなところにいても、電力を取り出すことができるシステムになっているはずです』


「うーん、そんな気はしないんだけど……電力作るのにたくさんエネルギーが必要だし……あ、電力といえば、静電気?も一応電力か……確かに、地球のどこでも静電気起こせるよねぇ。静電気を力として使えるのか?っていわれると、ピンと来ないんだけど」


『あらゆるものに静電気も使われているはずです。静電気というより、元は無次元の力なので、静電気も電力も雷も同じです』


「あ、そうか! 雷だ! 雷って、神鳴りっていうもんね。神の力だ……あ、それに、雷が田んぼに落ちると豊作になるって話もあるよね、電気分解が起きて窒素がどうとかこうとか……雷って、雨に田んぼって書くもんね、稲は電力を、ひいてはこの世界の魔力を使えるポテンシャルがあっても、全然おかしくないんだ! アハハ~」


『左様にございます』


「それで、電力の代わりの、元は同じ力の魔力が豊富なこの世界だから、魔力も使用できる米は、稲が能力爆発して、成長も爆発したんだね~ あー、すっきりした!」


『お役に立てて、光栄でございます』


「んもう、堅いんだから~ アイちゃんは~」




***




――ファンタジーであり、諸説もあるので、真に受けない方が良いと思われる


――こうしてミチイルは、毎日忙しく時を過ごしていった




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